[10月21日21時30分 天候:雨 東京都墨田区菊川 愛原のマンション]
マンション裏手の駐車場に、救急車が到着する。
といっても、普通の救急車ではなく、BSAAが保有する軍用の救急車だった。
自衛隊の野戦用または災害派遣用救急車のそれに似た外観をしている。
自衛隊のそれと同様、見た目はゴツいトラックの形をしていた。
くすんだ緑色の車体の横っ腹に、大きく赤十字のマークがペイントされている。
覆面パトカーに付けられているような赤い回転灯が点灯していた。
自衛隊と区別する為か、赤十字の下には白地でBSAAともペイントされている。
善場「お待たせしました!」
白い防護服に身を包んだ善場主任と、BSAAの隊員数名が駆け付けた。
善場「リサの状況は!?」
愛原「あ、はい。何度か嘔吐を繰り返した後、意識を失いました。その時のショックか、第0形態から第1形態へと戻っています」
BSAA隊員1「直ちに搬送します!」
善場「よろしくお願いします」
リサはベッドに寝かせていたが、BSAA隊員達はリサをそこからストレッチャーに乗せた。
やっていること自体は、普通に消防署から出動してきた救急隊員なのだが……。
BSAA隊員2「あなた達は離れて!」
ここは日本かと思うほどの銃火器で武装しているところは、やはり軍隊だろう。
BSAAは国連軍の一派であり、バイオテロある所、BSAAありと呼ばれている。
これに批准している国家は、国軍と連携または別行動での活動が認められている。
日本においては、自衛隊や在日米軍がその連携先とされている。
しかし今回、自衛隊などの姿は見えなかった。
つまり、BSAA極東支部日本地区本部隊が独自で出動しているのだ。
もちろん、活動に当たっては、銃火器の使用も認められている。
彼らは自衛隊とも在日米軍とも違うのだ。
愛原「善場主任、私達は……」
善場「そうですね。皆さんにも来て頂いた方がよろしいでしょう。すぐにご支度をお願いします」
愛原「はい!……高橋、急ぐぞ!」
高橋「はい!」
リサは先に救急車まで搬送された。
善場「今のところ、大きな変化は無いようですね。最悪、制御不能の状態まで変化することも予想されたのですが……」
愛原「……!」
私は今まで、制御不能となって化け物と化した日本版リサ・トレヴァー達を思い出した。
今までが、奇跡だったのだ。
『2番』のリサは、確かに特別だった。
だけど、それは当たり前ではない。
偶然に偶然が重なり、更に偶然が重なった、それこそ宝くじで何億円もの賞金が当選したくらいの奇跡に過ぎない。
愛原「場所は、浜町の診療所ですね?」
善場「そうです。救急車とは別に車を用意してあります。それで参りましょう」
[同日22時00分 天候:雨 東京都中央区日本橋浜町 某診療所]
リサを乗せた軍用救急車と、その後ろを付いていく私達。
それは何の車だか分からないが、シルバーのクラウンの覆面パトカーだった。
これもBSAAの車なのか、はたまた警察関係の車なのだろうか?
運転しているのは、善場主任の部下だと思われる。
そして主任は助手席に座り、私達はリアシートに座っていた。
高橋はパトカーのリアシートに乗っているということで、物凄く居心地が悪そうにしていたが……。
車は例の診療所の入っているビルの、地下駐車場へと入って行く。
そして荷捌き場に止まり、車はそこに停車した。
愛原「やっぱりエレベーターに乗せて行くか……」
大きなビルであり、当然ながら防災センターもある。
そこには警備員達が詰めているわけだが、搬送されてきたのが化け物とあらば、警備員達も通常の動きはできなかった。
警備員「7階まで直行で行けるように、設定してあります!」
BSAA隊員1「了解!」
確かにこういう時、警備員が同行するのだが、さすがにこれは無理だったようだ。
何しろ、防護服を着用する事態なのだから。
因みに私達は、着用していない。
そして、診療所のある7階まで直行する。
愛原「!?」
診療所に入ると、入ったこともない場所へと向かった。
ドアには小さく、『特別処置室』と書かれていた。
通常の処置室は別にある。
これが、リサを受け入れられる大きな理由であった。
愛原「リサは大丈夫なんでしょうか?」
善場「分かりません。ですが、制御不能の状態となりますと、殺処分もあり得ます」
愛原「殺処分……」
善場「安全の為です。ご理解ください」
愛原「今はまだ大丈夫なんですよね!?」
善場「今は……ですね」
[同日22時20分 天候:雨 同診療所]
医師「特異菌に不確定の反応があります。恐らく、特異菌が彼女にとって、不適合だったのでありましょう。それをTウィルスが抑え込んでいた為、通常通りの生活が送れていたものと思われます。何らかの内外的な要因により、Tウィルスの力が弱まったか、或いは逆に特異菌の力が強まったかして、バランスが崩れ、特異菌が増殖し、彼女の体と精神を蝕んでいるものと思われます」
愛原「Gウィルスは?Gウィルスでは何とかできないのでしょうか?」
医師「Gウィルスは、あくまでも遺伝子の変化を起こすもの。よって、特異菌に干渉することはないのでしょう」
愛原「特異菌を弱らせるか、Tウィルスを強めるかのどっちかか……」
善場「それで、このままですと、彼女はどうなりますか?」
医師「良くて植物人間のようになり、悪くて特異菌に支配され、転化が起こるものと思われます」
愛原「それなら、特異菌の治療薬を投与すればいいのでは?BSAAにあるんですよね?」
医師「それは危険です。今度はGウィルスが暴走する恐れがあります。Gウィルスもまた制御が困難なウィルスです。それができたのは、Tウィルスがバランス役になっていたに過ぎません。それを今度は特異菌が抑えている状態なのです。特異菌だけ排除したら、今度はGウィルスが暴走する恐れがあります」
あっちを立てればこっちが立たずか……。
高橋「万事休す……ですね」
愛原「うう……」
何か……何か方法は無いのか!?
その時、私は公一伯父さんの姿を思い出した。
愛原「公一伯父さんの薬って……使えませんかね?」
善場「えっ!?」
愛原「公一伯父さんの……化学肥料ですよ。どんな枯れた苗でも、立ちどころに復活させるという……」
善場「な、何を仰ってるんですか?」
医師「その薬品の名前、何と言いますか?」
愛原「えっと……」
私はスマホを取り出した。
確か、伯父さんとのメールのやり取りの履歴に、薬品の名前が出てきたはずだ。
愛原「ああ、ありました。『アイコール』です」
変な名前だが、伯父さんの発明品ということで、愛原の愛と公一の公から取って付けた名前だと聞いた。
医師「アイコールか……」
善場「科学肥料なんか投与したって、意味がありませんよ?」
さすがの善場主任も、表情を変えていた。
善場「白井の発明品と掛け合わせて、遺骨を蘇らせるなんて、やりましたけど……」
医師「……いや、実は実験の段階で、あの薬品には別の使い方があることが分かりました」
善場「別の使い方?」
医師「Gウィルスを弱らせる方法です。アイコールには、Gウィルスを弱毒化させる効果があるとの実験結果が出ています。それでもってGウィルスの暴走を抑えるのです。そしてTウィルスには既にワクチンがありますし、特異菌にも治療薬があります。それを両方投与するのです。そうすれば、これら3つのどれかでも暴走せずに、彼女を治療することができるでしょう」
善場「そんな上手い方法が……」
愛原「いえ、主任!やりましょう!このまま何もしないよりはマシです!」
私は公一伯父さんに電話した。
愛原「もしもし、伯父さん!?急な話で申し訳ない。実は……」
私の話に公一伯父さんは、『本当に急な話じゃのー』と驚いていた。
だが……。
公一「分かった。そういうことなら、すぐに譲ろう。お前が来るまで起きているから、すぐに取りに来なさい」
と、言ってくれた。
愛原「すぐに行きます!まだ、新幹線の終電に間に合うはずなので……」
善場「先ほどの車を使ってください。部下には、私から連絡しておきます」
愛原「分かりました!行くぞ!」
高橋「はい!」
私と高橋は、急いでエレベーターに向かった。
マンション裏手の駐車場に、救急車が到着する。
といっても、普通の救急車ではなく、BSAAが保有する軍用の救急車だった。
自衛隊の野戦用または災害派遣用救急車のそれに似た外観をしている。
自衛隊のそれと同様、見た目はゴツいトラックの形をしていた。
くすんだ緑色の車体の横っ腹に、大きく赤十字のマークがペイントされている。
覆面パトカーに付けられているような赤い回転灯が点灯していた。
自衛隊と区別する為か、赤十字の下には白地でBSAAともペイントされている。
善場「お待たせしました!」
白い防護服に身を包んだ善場主任と、BSAAの隊員数名が駆け付けた。
善場「リサの状況は!?」
愛原「あ、はい。何度か嘔吐を繰り返した後、意識を失いました。その時のショックか、第0形態から第1形態へと戻っています」
BSAA隊員1「直ちに搬送します!」
善場「よろしくお願いします」
リサはベッドに寝かせていたが、BSAA隊員達はリサをそこからストレッチャーに乗せた。
やっていること自体は、普通に消防署から出動してきた救急隊員なのだが……。
BSAA隊員2「あなた達は離れて!」
ここは日本かと思うほどの銃火器で武装しているところは、やはり軍隊だろう。
BSAAは国連軍の一派であり、バイオテロある所、BSAAありと呼ばれている。
これに批准している国家は、国軍と連携または別行動での活動が認められている。
日本においては、自衛隊や在日米軍がその連携先とされている。
しかし今回、自衛隊などの姿は見えなかった。
つまり、BSAA極東支部日本地区本部隊が独自で出動しているのだ。
もちろん、活動に当たっては、銃火器の使用も認められている。
彼らは自衛隊とも在日米軍とも違うのだ。
愛原「善場主任、私達は……」
善場「そうですね。皆さんにも来て頂いた方がよろしいでしょう。すぐにご支度をお願いします」
愛原「はい!……高橋、急ぐぞ!」
高橋「はい!」
リサは先に救急車まで搬送された。
善場「今のところ、大きな変化は無いようですね。最悪、制御不能の状態まで変化することも予想されたのですが……」
愛原「……!」
私は今まで、制御不能となって化け物と化した日本版リサ・トレヴァー達を思い出した。
今までが、奇跡だったのだ。
『2番』のリサは、確かに特別だった。
だけど、それは当たり前ではない。
偶然に偶然が重なり、更に偶然が重なった、それこそ宝くじで何億円もの賞金が当選したくらいの奇跡に過ぎない。
愛原「場所は、浜町の診療所ですね?」
善場「そうです。救急車とは別に車を用意してあります。それで参りましょう」
[同日22時00分 天候:雨 東京都中央区日本橋浜町 某診療所]
リサを乗せた軍用救急車と、その後ろを付いていく私達。
それは何の車だか分からないが、シルバーのクラウンの覆面パトカーだった。
これもBSAAの車なのか、はたまた警察関係の車なのだろうか?
運転しているのは、善場主任の部下だと思われる。
そして主任は助手席に座り、私達はリアシートに座っていた。
高橋はパトカーのリアシートに乗っているということで、物凄く居心地が悪そうにしていたが……。
車は例の診療所の入っているビルの、地下駐車場へと入って行く。
そして荷捌き場に止まり、車はそこに停車した。
愛原「やっぱりエレベーターに乗せて行くか……」
大きなビルであり、当然ながら防災センターもある。
そこには警備員達が詰めているわけだが、搬送されてきたのが化け物とあらば、警備員達も通常の動きはできなかった。
警備員「7階まで直行で行けるように、設定してあります!」
BSAA隊員1「了解!」
確かにこういう時、警備員が同行するのだが、さすがにこれは無理だったようだ。
何しろ、防護服を着用する事態なのだから。
因みに私達は、着用していない。
そして、診療所のある7階まで直行する。
愛原「!?」
診療所に入ると、入ったこともない場所へと向かった。
ドアには小さく、『特別処置室』と書かれていた。
通常の処置室は別にある。
これが、リサを受け入れられる大きな理由であった。
愛原「リサは大丈夫なんでしょうか?」
善場「分かりません。ですが、制御不能の状態となりますと、殺処分もあり得ます」
愛原「殺処分……」
善場「安全の為です。ご理解ください」
愛原「今はまだ大丈夫なんですよね!?」
善場「今は……ですね」
[同日22時20分 天候:雨 同診療所]
医師「特異菌に不確定の反応があります。恐らく、特異菌が彼女にとって、不適合だったのでありましょう。それをTウィルスが抑え込んでいた為、通常通りの生活が送れていたものと思われます。何らかの内外的な要因により、Tウィルスの力が弱まったか、或いは逆に特異菌の力が強まったかして、バランスが崩れ、特異菌が増殖し、彼女の体と精神を蝕んでいるものと思われます」
愛原「Gウィルスは?Gウィルスでは何とかできないのでしょうか?」
医師「Gウィルスは、あくまでも遺伝子の変化を起こすもの。よって、特異菌に干渉することはないのでしょう」
愛原「特異菌を弱らせるか、Tウィルスを強めるかのどっちかか……」
善場「それで、このままですと、彼女はどうなりますか?」
医師「良くて植物人間のようになり、悪くて特異菌に支配され、転化が起こるものと思われます」
愛原「それなら、特異菌の治療薬を投与すればいいのでは?BSAAにあるんですよね?」
医師「それは危険です。今度はGウィルスが暴走する恐れがあります。Gウィルスもまた制御が困難なウィルスです。それができたのは、Tウィルスがバランス役になっていたに過ぎません。それを今度は特異菌が抑えている状態なのです。特異菌だけ排除したら、今度はGウィルスが暴走する恐れがあります」
あっちを立てればこっちが立たずか……。
高橋「万事休す……ですね」
愛原「うう……」
何か……何か方法は無いのか!?
その時、私は公一伯父さんの姿を思い出した。
愛原「公一伯父さんの薬って……使えませんかね?」
善場「えっ!?」
愛原「公一伯父さんの……化学肥料ですよ。どんな枯れた苗でも、立ちどころに復活させるという……」
善場「な、何を仰ってるんですか?」
医師「その薬品の名前、何と言いますか?」
愛原「えっと……」
私はスマホを取り出した。
確か、伯父さんとのメールのやり取りの履歴に、薬品の名前が出てきたはずだ。
愛原「ああ、ありました。『アイコール』です」
変な名前だが、伯父さんの発明品ということで、愛原の愛と公一の公から取って付けた名前だと聞いた。
医師「アイコールか……」
善場「科学肥料なんか投与したって、意味がありませんよ?」
さすがの善場主任も、表情を変えていた。
善場「白井の発明品と掛け合わせて、遺骨を蘇らせるなんて、やりましたけど……」
医師「……いや、実は実験の段階で、あの薬品には別の使い方があることが分かりました」
善場「別の使い方?」
医師「Gウィルスを弱らせる方法です。アイコールには、Gウィルスを弱毒化させる効果があるとの実験結果が出ています。それでもってGウィルスの暴走を抑えるのです。そしてTウィルスには既にワクチンがありますし、特異菌にも治療薬があります。それを両方投与するのです。そうすれば、これら3つのどれかでも暴走せずに、彼女を治療することができるでしょう」
善場「そんな上手い方法が……」
愛原「いえ、主任!やりましょう!このまま何もしないよりはマシです!」
私は公一伯父さんに電話した。
愛原「もしもし、伯父さん!?急な話で申し訳ない。実は……」
私の話に公一伯父さんは、『本当に急な話じゃのー』と驚いていた。
だが……。
公一「分かった。そういうことなら、すぐに譲ろう。お前が来るまで起きているから、すぐに取りに来なさい」
と、言ってくれた。
愛原「すぐに行きます!まだ、新幹線の終電に間に合うはずなので……」
善場「先ほどの車を使ってください。部下には、私から連絡しておきます」
愛原「分かりました!行くぞ!」
高橋「はい!」
私と高橋は、急いでエレベーターに向かった。