[4月9日10時30分 天候:晴 千葉県富津市 東京湾フェリー“かなや丸”船内]
船は数分遅れで、金谷港を出港した。
岩壁の釣り客の見送りを受けて、東京湾内の航路を進む。
〔♪♪♪♪。本日は、かなや丸に御乗船頂きまして、真にありがとうございます。皆様に、船内の御案内を申し上げます。売店、カフェテリアは2階客室フロアに。お手洗いは、1階客室フロアにございます。航海中、車両甲板は立入禁止です。また、客室内は禁煙となっておりますので、宜しく御協力お願い致します。本船では、常に船旅の安全に努力致しておりますが、万一、本船に非常事態が発生した場合は、非常ベル、船内放送などにより、皆様にお知らせ致しますので、その際は必ず係員の指示に従って、行動してくださいますよう、お願い致します。また、救命胴衣の保管場所やその着け方など、客室内に掲示しておりますので、お確かめください。ありがとうございました〕
リサ「わたしが暴走したら?」
愛原「まあ、それも非常事態の1つに入るだろうな。エブリンがそうだったんだから」
リサ「まあ、研究所に連れて行かれると分かったら、暴走したくもなるよねぇ……」
愛原「お前は連れて行かないから、暴走するなよ?」
リサ「分かってるよ。わたしは、あんな欠陥特異菌の化け物じゃないんだし。崇高なるGウィルスの鬼だよ」
愛原「それも制御に失敗すると、怖いんだよなぁ……。まあいいや。食べ終わったら、ちょっとデッキに出てみないか?」
リサ「そうしよう!」
食べ終わった空き容器などはゴミ箱に捨てて、洗面所で手を洗った。
いや、サイダーが噴出した際、やっぱり少し手に掛かったからだ。
リサ「それ、塩水?」
愛原「いや、真水だよ」
リサ「船のトイレの水は、海水を使うって聞いたことある」
愛原「あー、そうかもしれないな」
この船はどうだか知らないが。
とはいえ、大なり小なり、船内では真水は貴重だろう。
豪華客船だって、大枚はたいて乗船している客は入浴が制限されることはないし、何なら大浴場やプールまであるくらいだが、船員は船長などの高級船員以外はシャワーのみと聞いたことがある。
船首甲板は立入禁止なので、船尾甲板に出てみる。
リサ「おー!風が気持ちいい!」
愛原「こういう経験、内陸に住んでたら滅多に無いな」
愛原「八丈島に行く時は夜行船だったから、のんびり海を眺めるなんてことはできなかったな」
辛うじてレインボーブリッジの下を潜る所は見たが。
海風がビュウッと時折強く吹いてくる。
愛原「リサ、スカート気をつけろよ?」
リサ「うん、分かってる」
リサはそう言って、片手でスカートを押さえた。
リサ「ねぇ、先生!わたしを撮ってよ」
愛原「いいよ」
リサは手すりに寄り掛かって、ポーズを取った。
愛原「あいよ!」
そして、リサを撮影する。
リサ「先生と船旅なうって、『魔王軍』のタイムラインに載せるんだ」
愛原「そういうことか。レイチェルには連絡したのか?」
リサ「今、久里浜港に向かってるって」
愛原「そうか。久里浜駅から少し離れてるから、駅からバスで行く方法とか分かるかな?」
リサ「えっ?何か、『船で行く』みたいなことを言ってたよ?」
愛原「えっ!?」
リサ「まさか、軍艦で向かったりして?」
愛原「いや、それは無理だろう。東京湾フェリーの港に、軍艦は入港できんぞ?」
リサ「そうだよねぇ……」
それとも何か?
上陸用舟艇の操縦訓練でもやる気なのか?
それはそれで、ちょっと見て見たい気もするが。
愛原「……少し肌寒いな」
リサ「そう?」
日に当たれば暖かいのだが、まだ海風は冷たさを感じる。
リサ「わたしは涼しくていいけどね」
愛原「お前は体温が高いから、暑がりだもんなぁ……」
リサ「そうかな?」
愛原「ま、とにかく船室に戻ろう」
船室に戻ろうとすると……。
リサ「あっ、カモメ!」
というより、ウミネコだ。
まあ、ウミネコはカモメ科の鳥なので、間違いではない。
もちろん、鳴き声が猫の鳴き声に似てるからその名が付いたというのは、誰でも皆知っていることである。
愛原「ウミネコだな。都内でも、海に近い所ではよく見かける」
リサ「美味しそう!おらぁーっ!!」
愛原「狩るな!」
リサ、いきなり鬼形態に変化し、長く尖った爪でウミネコを捕まえようとした。
ウミネコ「クェッ!?」
突然のリサの行動に驚くウミネコ。
どうやら、魚を咥えていたらしく、驚いて魚を吐き出してしまった。
それが甲板に落ちる。
リサ「美味しそうな鳥肉ーっ!待てーっ!」
愛原「美味そうな魚だな。何だこれは?」
高橋「何やってんスか、先生?」
愛原「これはアイナメかな?」
高橋「どうですかね?」
パール「それより、リサちゃんが狩りしてますけど?」
リサ「捕まえたーっ!」
ウミネコ「ギャー!ギャー!」
愛原「放してあげなさい!」
昼食は海鮮を楽しむつもりが、危うく鳥肉を食わされるところだった。
私はリサを船室に連れて行った。
高橋「先生、こいつは暫く、外に出さない方がいいですね」
愛原「久里浜港に着くまでは、ここで大人しくしてるように!分かった?」
リサ「はーい……」
2階客室の後ろ半分は売店とカフェテリアになっているが、前半分は客席が並んでいる。
そのうち、左舷と右舷の窓側はボックスシートになっていて、あとは進行方向の座席が並んでいる。
やや背もたれは低く、リクライニングはしない。
ボックスシートは既に先客で埋まっていたので、真ん中の座席に座った。
愛原「お前達はどこに行ってたんだ?」
高橋「喫煙所で一服と、1階の客室っスね。あそこ、自販機コーナーあるんで」
愛原「そうなのか」
船尾甲板の別の場所には喫煙所がある。
また、2階客室には売店があるが、1階は1階で自販機コーナーがあるらしい。
便によっては売店の営業が無い場合もあるので、その時は自販機コーナーを利用することになるのだろう。
船は数分遅れで、金谷港を出港した。
岩壁の釣り客の見送りを受けて、東京湾内の航路を進む。
〔♪♪♪♪。本日は、かなや丸に御乗船頂きまして、真にありがとうございます。皆様に、船内の御案内を申し上げます。売店、カフェテリアは2階客室フロアに。お手洗いは、1階客室フロアにございます。航海中、車両甲板は立入禁止です。また、客室内は禁煙となっておりますので、宜しく御協力お願い致します。本船では、常に船旅の安全に努力致しておりますが、万一、本船に非常事態が発生した場合は、非常ベル、船内放送などにより、皆様にお知らせ致しますので、その際は必ず係員の指示に従って、行動してくださいますよう、お願い致します。また、救命胴衣の保管場所やその着け方など、客室内に掲示しておりますので、お確かめください。ありがとうございました〕
リサ「わたしが暴走したら?」
愛原「まあ、それも非常事態の1つに入るだろうな。エブリンがそうだったんだから」
リサ「まあ、研究所に連れて行かれると分かったら、暴走したくもなるよねぇ……」
愛原「お前は連れて行かないから、暴走するなよ?」
リサ「分かってるよ。わたしは、あんな欠陥特異菌の化け物じゃないんだし。崇高なるGウィルスの鬼だよ」
愛原「それも制御に失敗すると、怖いんだよなぁ……。まあいいや。食べ終わったら、ちょっとデッキに出てみないか?」
リサ「そうしよう!」
食べ終わった空き容器などはゴミ箱に捨てて、洗面所で手を洗った。
いや、サイダーが噴出した際、やっぱり少し手に掛かったからだ。
リサ「それ、塩水?」
愛原「いや、真水だよ」
リサ「船のトイレの水は、海水を使うって聞いたことある」
愛原「あー、そうかもしれないな」
この船はどうだか知らないが。
とはいえ、大なり小なり、船内では真水は貴重だろう。
豪華客船だって、大枚はたいて乗船している客は入浴が制限されることはないし、何なら大浴場やプールまであるくらいだが、船員は船長などの高級船員以外はシャワーのみと聞いたことがある。
船首甲板は立入禁止なので、船尾甲板に出てみる。
リサ「おー!風が気持ちいい!」
愛原「こういう経験、内陸に住んでたら滅多に無いな」
愛原「八丈島に行く時は夜行船だったから、のんびり海を眺めるなんてことはできなかったな」
辛うじてレインボーブリッジの下を潜る所は見たが。
海風がビュウッと時折強く吹いてくる。
愛原「リサ、スカート気をつけろよ?」
リサ「うん、分かってる」
リサはそう言って、片手でスカートを押さえた。
リサ「ねぇ、先生!わたしを撮ってよ」
愛原「いいよ」
リサは手すりに寄り掛かって、ポーズを取った。
愛原「あいよ!」
そして、リサを撮影する。
リサ「先生と船旅なうって、『魔王軍』のタイムラインに載せるんだ」
愛原「そういうことか。レイチェルには連絡したのか?」
リサ「今、久里浜港に向かってるって」
愛原「そうか。久里浜駅から少し離れてるから、駅からバスで行く方法とか分かるかな?」
リサ「えっ?何か、『船で行く』みたいなことを言ってたよ?」
愛原「えっ!?」
リサ「まさか、軍艦で向かったりして?」
愛原「いや、それは無理だろう。東京湾フェリーの港に、軍艦は入港できんぞ?」
リサ「そうだよねぇ……」
それとも何か?
上陸用舟艇の操縦訓練でもやる気なのか?
それはそれで、ちょっと見て見たい気もするが。
愛原「……少し肌寒いな」
リサ「そう?」
日に当たれば暖かいのだが、まだ海風は冷たさを感じる。
リサ「わたしは涼しくていいけどね」
愛原「お前は体温が高いから、暑がりだもんなぁ……」
リサ「そうかな?」
愛原「ま、とにかく船室に戻ろう」
船室に戻ろうとすると……。
リサ「あっ、カモメ!」
というより、ウミネコだ。
まあ、ウミネコはカモメ科の鳥なので、間違いではない。
もちろん、鳴き声が猫の鳴き声に似てるからその名が付いたというのは、誰でも皆知っていることである。
愛原「ウミネコだな。都内でも、海に近い所ではよく見かける」
リサ「美味しそう!おらぁーっ!!」
愛原「狩るな!」
リサ、いきなり鬼形態に変化し、長く尖った爪でウミネコを捕まえようとした。
ウミネコ「クェッ!?」
突然のリサの行動に驚くウミネコ。
どうやら、魚を咥えていたらしく、驚いて魚を吐き出してしまった。
それが甲板に落ちる。
リサ「美味しそうな鳥肉ーっ!待てーっ!」
愛原「美味そうな魚だな。何だこれは?」
高橋「何やってんスか、先生?」
愛原「これはアイナメかな?」
高橋「どうですかね?」
パール「それより、リサちゃんが狩りしてますけど?」
リサ「捕まえたーっ!」
ウミネコ「ギャー!ギャー!」
愛原「放してあげなさい!」
昼食は海鮮を楽しむつもりが、危うく鳥肉を食わされるところだった。
私はリサを船室に連れて行った。
高橋「先生、こいつは暫く、外に出さない方がいいですね」
愛原「久里浜港に着くまでは、ここで大人しくしてるように!分かった?」
リサ「はーい……」
2階客室の後ろ半分は売店とカフェテリアになっているが、前半分は客席が並んでいる。
そのうち、左舷と右舷の窓側はボックスシートになっていて、あとは進行方向の座席が並んでいる。
やや背もたれは低く、リクライニングはしない。
ボックスシートは既に先客で埋まっていたので、真ん中の座席に座った。
愛原「お前達はどこに行ってたんだ?」
高橋「喫煙所で一服と、1階の客室っスね。あそこ、自販機コーナーあるんで」
愛原「そうなのか」
船尾甲板の別の場所には喫煙所がある。
また、2階客室には売店があるが、1階は1階で自販機コーナーがあるらしい。
便によっては売店の営業が無い場合もあるので、その時は自販機コーナーを利用することになるのだろう。