[5月1日15:45.天候:雷雨 栃木県那須塩原市某所 ホテル天長園]
心なしか雨足が強くなってきたような気がする。
そして、外からはホラー演出の為か、都合の良いタイミングで雷鳴と雷光が轟いた。
高橋:「誰だ!?」
女将:「女将でございます。御挨拶の方、よろしいでしょうか?」
リサが第1形態に戻ってまで警戒した相手は、このホテルの女将を名乗っているようだ。
高橋の言によれば、確かに着物姿の楚々とした女性の姿があるという。
愛原:「開けてくれ」
高橋:「は、はい」
愛原:「リサは人間の姿に戻って。多分、大丈夫だ」
リサ:「あ……うん」
リサは大きく息を吸い込むと、第0形態に戻った。
現段階でこれが逆に『化けている』状態なので、1の1つ前である0に分類されている。
女将:「失礼致します。本日はお足元が悪い中、当館をご利用頂き、ありがとうございます。従業員一同、心より歓迎申し上げます」
女将を名乗る人物は私より多少年上と思しき、着物がよく似合う楚々とした女性であった。
とても、リサ・トレヴァーには見えない。
もっとも、第0形態のリサだって、知らない人が見れば正体に気づかれることはない。
女将:「どうぞお掛けになってください。今、お茶お入れしますね」
愛原:「あ、ああ。どうも……」
私は座椅子に座った。
私がそうすると、他の3人もそれに倣う。
リサと高橋はまだ険しい表情のままだ。
女将:「どうぞ。それでは当館の御案内をさせて頂きます」
朝食と夕食は部屋食ではなく、最上階のレストランだそうだ。
それと大浴場。
天然温泉で、露天風呂もあるそうなのだが……。
この天候が回復してくれないと、なかなか外に出られないか?
女将:「何か御質問等はございますか?」
愛原:「ああ……うん。ちょっと聞きたいんだが……」
女将:「はい。何でしょう?」
愛原:「あなたは何番だ?」
女将:「何番?何の事でございましょう?」
高橋:「おい、トボける……!」
愛原:「まあまあ。例えばこのコの左腋の下には、『2』という番号が入れ墨されている。あなたの左腋の下には、何の番号が入っているのかと思ったんだ」
女将:「そういうことですか……。私は『369』です」
愛原:「こりゃまた凄い番号だね」
女将:「まさか、私と同じ実験体の方が来られるとは思いませんでした。しかも、トップナンバークラスは『とても危険な存在』と伺ったのですが……」
愛原:「確かに。『とても危険な存在』でしたよ。特に『1番』は。今はもう、この『2番』以外はこの世にいませんから」
女将:「お客様方は『2番』の方に連れて来られたのですか?」
愛原:「えっ?」
リサ:「……!!」
すると、リサが尚、女将を睨み付けた。
この時、リサの瞳が赤くボウッと光る。
女将:「申し訳ございません。とんだ失言を。お許しください」
愛原:「引率者は私だが……」
女将:「さようでございますね。失礼致しました」
愛原:「正体が分かったところで、もう1つ聞きたい。あなたは上手く人間に化けているようだが……人間を襲って食べたことはあるのか?」
リサ:「……!」
女将:「……申し訳ございませんが、回答しかねます」
高橋:「否定しないということは、食ったことがあるということか」
愛原:「ここのホテルの従業員全員がそうなのか?」
女将:「そういう者もいますし、今は人間に戻れた者もいます。例えば、愛原様と応対させて頂いたフロント係は後者でございます」
人間に戻れた者もいた!?
まるで善場主任だ。
愛原:「あなたは人間に戻らないのか?」
女将:「厳しい選択でございます。それでは、ごゆっくりどうぞ。失礼致します」
女将はそう言って、部屋を出て行った。
高橋:「先生、ヤバいんじゃないですか、このホテル?バックレるのなら今のうちでは?」
愛原:「この雷雨ん中か?それに、そんなことしたら契約不履行で訴えられるぞ?」
高橋:「で、ですが……」
愛原:「まあ、そこは絵恋さんに決めてもらおう。どうだ?」
絵恋:「わ、私は……リサさんと一緒にいられるのなら別にいいです」
愛原:「そういうことだ。じゃあ、早速風呂に入ってこよう。BOWがスタッフを務めるホテル。なかなか面白そうじゃないか」
高橋:「リサでさえ『人間を食ったことがないから』という理由で、辛うじて見逃されているくらいですよ?なのに、『人間を食った』ことのある女将がBSAAにブッ殺されてないっておかしいじゃないっスか!」
愛原:「おいおい。人の話はちゃんと聞けよ。女将さんは食人行為を認めてないぞ」
高橋:「否定もしてないじゃないスか。リサはちゃんと聞けば、『してない』ってガン否定しますよ」
リサ:「うん。私は一切人を食べてない」
愛原:「それでリサ、あの女将さんからは人を食べた臭いはしたか?」
リサ:「したと言えばしたし、しないと言えばしない……」
愛原:「何だそりゃ」
リサ:「BOWそのものの臭いはしたけどね。それは私と同じ」
脂汗をかくと独特の臭いを放つあれか。
愛原:「仮にあの女将さんに悪意があるとしても、リサがいる限りは襲って来れないだろう。うちのリサはラスボスクラスだからな」
高橋:「はあ……」
愛原:「じゃあ、ちょっと着替えようかな」
私はクローゼットを開けた。
中には浴衣が入っている。
愛原:「ほら、リサも」
リサ:「うん」
絵恋:「リサさん、あっちで着替えよ!」
リサがその場でベストを脱いだのを見た絵恋さんが、慌ててリサを隣の六畳間に引っ張った。
ベストを脱いだリサを見て分かったのだが、リサもスカートの腰の部分を負って、裾を短くしているようだ。
高橋:「先生、何なんスかね?このホテル……」
愛原:「最初は宗教法人天長会が経営しているホテルだと思っていたが、それだけでは無いようだな」
私達は浴衣に着替えると、タオルを持って大浴場に向かった。
愛原:「リサ、あの女将さん、オマエの能力に気づいたみたいだな?」
リサ:「あの人も使えるのかな?」
愛原:「分からん」
絵恋:「リサさんの汗、いい匂い!お風呂に入っちゃダメ!」
リサ:「ダメだ。私はお風呂に入ってサッパリしたい」
絵恋:「え~?」
もうすっかりリサの『奴隷』と化している絵恋さん。
リサの能力は、正にこれだ。
『1番』もこの能力を使って私を取り込もうとしたらしいが、失敗している。
心なしか雨足が強くなってきたような気がする。
そして、外からは
高橋:「誰だ!?」
女将:「女将でございます。御挨拶の方、よろしいでしょうか?」
リサが第1形態に戻ってまで警戒した相手は、このホテルの女将を名乗っているようだ。
高橋の言によれば、確かに着物姿の楚々とした女性の姿があるという。
愛原:「開けてくれ」
高橋:「は、はい」
愛原:「リサは人間の姿に戻って。多分、大丈夫だ」
リサ:「あ……うん」
リサは大きく息を吸い込むと、第0形態に戻った。
現段階でこれが逆に『化けている』状態なので、1の1つ前である0に分類されている。
女将:「失礼致します。本日はお足元が悪い中、当館をご利用頂き、ありがとうございます。従業員一同、心より歓迎申し上げます」
女将を名乗る人物は私より多少年上と思しき、着物がよく似合う楚々とした女性であった。
とても、リサ・トレヴァーには見えない。
もっとも、第0形態のリサだって、知らない人が見れば正体に気づかれることはない。
女将:「どうぞお掛けになってください。今、お茶お入れしますね」
愛原:「あ、ああ。どうも……」
私は座椅子に座った。
私がそうすると、他の3人もそれに倣う。
リサと高橋はまだ険しい表情のままだ。
女将:「どうぞ。それでは当館の御案内をさせて頂きます」
朝食と夕食は部屋食ではなく、最上階のレストランだそうだ。
それと大浴場。
天然温泉で、露天風呂もあるそうなのだが……。
この天候が回復してくれないと、なかなか外に出られないか?
女将:「何か御質問等はございますか?」
愛原:「ああ……うん。ちょっと聞きたいんだが……」
女将:「はい。何でしょう?」
愛原:「あなたは何番だ?」
女将:「何番?何の事でございましょう?」
高橋:「おい、トボける……!」
愛原:「まあまあ。例えばこのコの左腋の下には、『2』という番号が入れ墨されている。あなたの左腋の下には、何の番号が入っているのかと思ったんだ」
女将:「そういうことですか……。私は『369』です」
愛原:「こりゃまた凄い番号だね」
女将:「まさか、私と同じ実験体の方が来られるとは思いませんでした。しかも、トップナンバークラスは『とても危険な存在』と伺ったのですが……」
愛原:「確かに。『とても危険な存在』でしたよ。特に『1番』は。今はもう、この『2番』以外はこの世にいませんから」
女将:「お客様方は『2番』の方に連れて来られたのですか?」
愛原:「えっ?」
リサ:「……!!」
すると、リサが尚、女将を睨み付けた。
この時、リサの瞳が赤くボウッと光る。
女将:「申し訳ございません。とんだ失言を。お許しください」
愛原:「引率者は私だが……」
女将:「さようでございますね。失礼致しました」
愛原:「正体が分かったところで、もう1つ聞きたい。あなたは上手く人間に化けているようだが……人間を襲って食べたことはあるのか?」
リサ:「……!」
女将:「……申し訳ございませんが、回答しかねます」
高橋:「否定しないということは、食ったことがあるということか」
愛原:「ここのホテルの従業員全員がそうなのか?」
女将:「そういう者もいますし、今は人間に戻れた者もいます。例えば、愛原様と応対させて頂いたフロント係は後者でございます」
人間に戻れた者もいた!?
まるで善場主任だ。
愛原:「あなたは人間に戻らないのか?」
女将:「厳しい選択でございます。それでは、ごゆっくりどうぞ。失礼致します」
女将はそう言って、部屋を出て行った。
高橋:「先生、ヤバいんじゃないですか、このホテル?バックレるのなら今のうちでは?」
愛原:「この雷雨ん中か?それに、そんなことしたら契約不履行で訴えられるぞ?」
高橋:「で、ですが……」
愛原:「まあ、そこは絵恋さんに決めてもらおう。どうだ?」
絵恋:「わ、私は……リサさんと一緒にいられるのなら別にいいです」
愛原:「そういうことだ。じゃあ、早速風呂に入ってこよう。BOWがスタッフを務めるホテル。なかなか面白そうじゃないか」
高橋:「リサでさえ『人間を食ったことがないから』という理由で、辛うじて見逃されているくらいですよ?なのに、『人間を食った』ことのある女将がBSAAにブッ殺されてないっておかしいじゃないっスか!」
愛原:「おいおい。人の話はちゃんと聞けよ。女将さんは食人行為を認めてないぞ」
高橋:「否定もしてないじゃないスか。リサはちゃんと聞けば、『してない』ってガン否定しますよ」
リサ:「うん。私は一切人を食べてない」
愛原:「それでリサ、あの女将さんからは人を食べた臭いはしたか?」
リサ:「したと言えばしたし、しないと言えばしない……」
愛原:「何だそりゃ」
リサ:「BOWそのものの臭いはしたけどね。それは私と同じ」
脂汗をかくと独特の臭いを放つあれか。
愛原:「仮にあの女将さんに悪意があるとしても、リサがいる限りは襲って来れないだろう。うちのリサはラスボスクラスだからな」
高橋:「はあ……」
愛原:「じゃあ、ちょっと着替えようかな」
私はクローゼットを開けた。
中には浴衣が入っている。
愛原:「ほら、リサも」
リサ:「うん」
絵恋:「リサさん、あっちで着替えよ!」
リサがその場でベストを脱いだのを見た絵恋さんが、慌ててリサを隣の六畳間に引っ張った。
ベストを脱いだリサを見て分かったのだが、リサもスカートの腰の部分を負って、裾を短くしているようだ。
高橋:「先生、何なんスかね?このホテル……」
愛原:「最初は宗教法人天長会が経営しているホテルだと思っていたが、それだけでは無いようだな」
私達は浴衣に着替えると、タオルを持って大浴場に向かった。
愛原:「リサ、あの女将さん、オマエの能力に気づいたみたいだな?」
リサ:「あの人も使えるのかな?」
愛原:「分からん」
絵恋:「リサさんの汗、いい匂い!お風呂に入っちゃダメ!」
リサ:「ダメだ。私はお風呂に入ってサッパリしたい」
絵恋:「え~?」
もうすっかりリサの『奴隷』と化している絵恋さん。
リサの能力は、正にこれだ。
『1番』もこの能力を使って私を取り込もうとしたらしいが、失敗している。