報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“大魔道師の弟子” 「飴玉婆さんを追え」

2019-03-31 20:31:28 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[3月14日07:00.天候:曇 埼玉県さいたま市中央区 稲生家]

 勇太:「おはよう……」
 宗一郎:「おう。眠そうだな」
 勇太:「昨夜はもう……いや、何でもない」
 佳子:「早く顔洗っといで」
 勇太:「うん……。マリアさんは……今日は2階のシャワー使ってたな……」

〔「……昨夜8時頃、東京都江東区のマンションで、男子高校生が何者かに両目を繰り抜かれるという猟奇事件が発生しました」〕

 宗一郎:「朝からエグいニュースが流れるな」

 勇太:「両目……?」

〔「男子高校生は両目を失う重傷を負い、病院で手当てを受けています。尚、警察が駆け付けた時、繰り抜かれた両目は行方不明となっており、被害者の男子高校生はしきりに『飴玉婆さんに目玉を取られた』と話しているということですが、部屋には侵入された形跡が無いことから、男子高校生が何らの事情で自ら両目を繰り抜いた疑いが……」〕

 勇太:「『飴玉婆さん』!?」

 勇太は目を丸くした。

 宗一郎:「思春期の錯乱かねぇ?春休みの時期、学生は色々と不安な時期でもあるからねぇ……」
 勇太:(まさか鈴木君はこのことを言ってたのか!?)

〔「……この事件なんですが、実は1995年にも似たような事件が発生しておりまして、まず第一の事件が千葉県松戸市にあります私立鳴神学園高校で、第二の事件が2008年頃に都内の東京中央学園上野高校で発生しております。……」〕

 勇太:(2008年の事件は僕が追い掛けたんだよ!)

 そしてその事件の犯人は、ポーリン組のキャサリンであった。
 魔法使いの老婆に化けていた(のか今の若い姿が世を忍ぶ仮の姿なのかは不明だが)キャサリンに対し、暴行を働こうとしたり、飴玉を強奪しようとした輩に対しての報復であった。
 もしもキャサリンが稲生に関心を持って近づいていたら、稲生はイリーナ組ではなく、ポーリン組に所属していたかもしれない。
 当時のキャサリンは東京中央学園にも愛想を尽かして離れた直後であった為、稲生が遭遇することはなかったし、仮に遭遇していたとしても、当時は威吹が付いていた(憑いていた?)から、威吹が冷たくあしらったかもしれない。

 稲生は洗顔した後、再びダイニングに戻って来た。
 既にマリアがそこにいた。

 佳子:「早いとこ食べなさい」
 勇太:「はーい。いただきます」
 マリア:「いただきます」

 勇太は朝食の焼き鮭に箸をつけながらマリアに言った。

 勇太:「あ、マリアさん。さっきテレビでやってたんですけど、どうやらキャサリン先生の同類が現れたらしいですよ?」
 マリア:「キャサリンというと、ポーリン組に所属していた人だね。今はハイマスター(High Master)になったことで、独立した人だろう?」
 勇太:「そうです。昨夜、鈴木君から連絡があって、キャサリン先生の後釜のような人が『飴玉婆さん』をやるって話、マリアさんは聞いてますか?あの、高校の門の近くに張り付いて、下校する生徒の中から寂しそうなコに対して魔法の飴を配るというものなんですが」
 マリア:「さあ、知らないな。師匠はロクに手紙も読まないんで、私が代読することになってるんだ。師匠の利権に預かりたいという手紙は数多くあるが、そういう手紙は無かったなぁ……」
 勇太:「先生が直接聞いて、マリアさんに教えていないという可能性は?」
 マリア:「無きにしもあらずだけど、そういう場合は師匠が率先して動くからね。でも今は、大師匠様とのパーティーに耽ってる。だから違うと思う」
 勇太:「そうですか。つまりそれは『無断活動』ということになりますよね?」
 マリア:「一体誰なんだ?」
 勇太:「それが分からないから、きっと鈴木君は僕に電話して来たんだと思いますよ?」
 マリア:「あの鈴木という男、私のことは諦めて、今度はエレーナに乗り換えただろ?」
 勇太:「そうですね」
 マリア:「エレーナも狡賢いヤツだから、鈴木を上手く利用してるかもしれないな」
 勇太:「鈴木君、可哀想だな」
 マリア:「まあ、魔法使いに惚れても大変なだけってことさ。勇太みたいに魔道師にでもならなきゃ」

 マリアはニッと笑った。

 マリア:「師匠の計画通りだったかもしれないね」
 勇太:「それでもいいんです。僕はマリアさんと一緒になれれば」
 マリア:「うちの師匠はまだその辺優しいから、それで良かったけどね。他の師匠達だったら、きっと利用されるだけされて、あとはポイかもしれないよ」
 勇太:「怖っ!」
 マリア:「同じ女の私でも、『そこまでやるか?』というくらいエグいやり方をするヤツもいるからね。勇太も気をつけなよ」
 勇太:「同じ魔道師なのに?」
 マリア:「同じ魔女の私も裏切り者扱いされて、イジメられたんだから」
 勇太:「そ、それもそうか……。それで、どうします?『飴玉婆さん』の件」
 マリア:「大師匠様とのパーティーはまだもう少し続くから、私達でやるか。どうせエレーナも報酬目当てで動くだろうから」
 勇太:「分かりました」
 マリア:「で、『飴玉婆さん』が出たのはどこ?」
 勇太:「えーと……多分、東京中央学園かと」
 マリア:「何それ?」
 勇太:「鈴木君、東京中央学園に現れた『飴玉婆さん』の話について僕に聞いてきましたから」
 マリア:「キャサリン師に聞けば良かったのに。本人なんだから」
 勇太:「きっとその辺、鈴木君は知らなかったんでしょうね。もう被害者も出てしまったみたいですから、急いで探しませんと」
 マリア:「今なんて言った?」
 勇太:「さっきのニュースで、飴玉婆さんに目玉を繰り抜かれてしまった男子高校生がいたらしいんですよ。きっと、東京中央学園のコです。第二の被害者が出る前に……」
 マリア:「あのさ、もしその2代目飴玉婆さんがキャサリン師のやり方を踏襲しているのだとしたら、被害者を出した後は2度と出没しないぞ?」
 勇太:「あ゛っ……!」

 盲点であった。

 マリア:「で、次いつどこの高校に現れるか分からないんでしょ?」
 勇太:「そ、そうですねぇ……」

 もしかしたら、来年度になるのかもしれない。

 勇太:「ダンテ門内の誰かですかね?」
 マリア:「キャサリン師のマネなんて、誰でもできるわけじゃないからな。一応、あの学校に行ってみるか」
 勇太:「そうですね。そうしましょう」
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“魔女エレーナの日常” 「飴玉婆さん」 2

2019-03-30 18:53:39 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[3月13日20:00.天候:晴 東京都江東区森下 ワンスターホテル]

 鈴木:「『飴玉婆さん』ですよ。御存知ない?」
 稲生:「確かに新聞部で特集を組んだことがある。だけど、その正体は当時ポーリン組のキャサリン先生だっただろ?」
 鈴木:「先輩が特集したのはそうです。ところが、またどうやら現れているらしいんです。もちろんそれはキャサリンさんとは別人ですし、キャサリンさんも知らないそうです」
 稲生:「じゃあ、他の組の誰かかな?」
 鈴木:「先輩は御存知ないんですか?」
 稲生:「いや、知らないなぁ。一応、マリアさんにも聞いてみるけどね。なに?それは最近?」
 鈴木:「今日エレーナが仕入れた情報です。エレーナに言わせると、本来それはその国を拠点としている組に連絡しなければならないとのことです。つまり、稲生先輩達に話が行ってるはずなんです」
 稲生:「僕は聞いてない。マリアさんかイリーナ先生は知ってるかもしれないな。一応、聞いてみるよ」
 鈴木:「お願いします。キャサリンさんの場合は、何か無礼な人間がいて、そいつを痛い目に遭わせたらしいですね」
 稲生:「……まあね。命までは取ってないけど、障害者にはしてしまったんだよ。魔女を怒らせると怖いよ?最悪、命取られるからね?」
 鈴木:「はい。警告なら既に何度も受けています」
 稲生:「何度も警告で済んでる鈴木君も凄いよ。最悪、最初の1回で死ぬよ」
 鈴木:「正法信仰の功徳」
 稲生:「う、うん。そうかもね。とにかく、マリアさんに聞いてみるから」
 鈴木:「よろしくお願いします」

 鈴木は電話を切った。

 鈴木:「エレーナ、マリアさんに聞いてみるってよ?」
 エレーナ:「マリアンナに聞いたところで、何も知らないと思うな。……ってか、何でアンタまたしれっとチェック・インしてんのよ」
 鈴木:「キャンセルが1つ空いて、功徳〜〜〜〜〜!!」
 エレーナ:「うるせーよ」
 鈴木:「夜現れるの?早速張り込みに行こう」
 エレーナ:「キャシー先輩のやり方だと、夜はいないぜ?」
 鈴木:「そうなの?」
 エレーナ:「当たり前だろ。下校する生徒を選んで飴玉をあげるんだぜ?生徒のいない夜に張るわけないだろ」
 鈴木:「それもそうか。じゃあ、今日張り込んでおけば良かったな」
 エレーナ:「私達の姿を見て、逃げるかもしれないぜ」
 鈴木:「なるほどなぁ……」
 エレーナ:「私には直接関係無いけど、イリーナ組のシマ荒らしをしてるようなもんだ。もしその情報が本当だとするなら、イリーナ先生がどういう行動を取るか見物だぜ」
 鈴木:「エレーナは?」
 エレーナ:「は?」
 鈴木:「エレーナだって、日本で働いてる時点でシマ荒らしじゃないの?」
 エレーナ:「違うって。私はただ『協力者』の所で働いてるだけ。『協力者』ってのは中立だから、そこで働く分にはシマ荒らしにならないの」
 鈴木:「そういうもんか」
 エレーナ:「私がホテルで働いたところで、別に稲生氏やマリアンナに迷惑掛けるわけじゃないだろう?別にここでは魔道師としてではなく、ただのスタッフとして働くんだ」
 鈴木:「それもそうだ。それで、『飴玉婆さん』は?」
 エレーナ:「キャシー先輩はイリーナ先生には伝えていたみたいだぜ?もっとも、イリーナ先生はあんまり関心は無かったみたいだけどな」
 鈴木:「随分のほほんとした先生らしいね?」
 エレーナ:「まあな。(というより、“魔の者”対策でキャシー先輩のことを気にする余裕が無かっただけだろうな……)」
 鈴木:「すると、あのレストランの店長さんのことは何の問題も無いわけだ」

 今キャサリンはワンスターホテルに併設されてる魔法料理のオーナーシェフをやっている。
 表向きは珍しいハーブ(という名の魔法薬)を使った西洋薬膳料理の店ということになっている。

 鈴木:「誰かが『無断営業』してるってわけだね?」
 エレーナ:「おい、鈴木。普通の人間が首を突っ込むのはやめた方がいいぜ?痛い目見るぞ?あとは私達に任せておけ」
 鈴木:「乗り掛かったバスだって言ったろ?最後まで付き合うよ」
 エレーナ:「乗り掛かった舟だって。だいたい……。!?」

 エレーナはフロントで仕事中である。
 ふとホテルの外を、ローブを着た魔女のような姿の者が通り過ぎたような気がした。

 鈴木:「どうしたの?」
 エレーナ:「いや……???」

 と、今度は救急車のサイレンが近づいてきた。
 ついでにパトカーのサイレンも近づいてきた。

 鈴木:「やかましいな」

 そして、それらのサイレンは近くで止まった。

 鈴木:「何だ?何かあったかな?見に行ってみよう」
 エレーナ:「アタシゃ仕事中だぜ?」
 鈴木:「それもそうか。ちょっと見て来る」
 エレーナ:「ああ」

 鈴木はホテルの外に出た。
 すると、たった数十メートル先にパトカーと救急車が止まっていた。
 鈴木だけではなく、近所の住民も見に来ている。
 森下地区はマンションも建ち並んだ住宅街である。
 但し、数階建て程度の低いもので、タワマンの類は1棟も無い。

 警察官A:「下がって下がって!」

 警察官が『立入禁止』の黄色いテープを貼って、規制線を作っている。

 警察官B:「……すると突然、大きな叫び声が聞こえたということですか?」
 近隣住民:「ええ、そうです。断末魔みたいな……」
 警察官B:「不審な人物とかは見ましたか?」
 近隣住民:「いいえ」

 しばらくして救急隊員がストレッチャーを持って、マンションから出て来た。
 鈴木もこの近くに住んでいるものだから、そのマンションが家族向けの分譲マンションであることは知っていた。
 ストレッチャーに乗せられているのはどうやら鈴木よりも若い男のようで、何故か両目を包帯でぐるぐる巻きにされていた。
 それは救急隊員が応急処置を施したものであろうが……。

 鈴木:(警察が来てるってことは、何らかの事件か……?)

 鈴木は救急車の近くにいた。
 だから、ストレッチャーに乗せられた男のうわ言が耳に入って来た。

 男:「ごめんなさい……ごめんなさい……飴玉婆さん……」
 鈴木:「な、何だってー!?」

 鈴木はストレッチャーに駆け寄った。

 鈴木:「おい、あんた!飴玉婆さんに会ったのか!?」
 救急隊員A:「ちょっと!危ないから近づかないで!」
 鈴木:「飴玉婆さんがマンションに現れたのか!?」
 救急隊員B:「あなたはこの方のお知り合いですか?」
 鈴木:「いや、違うけど……。何で飴玉婆さんがアンタん所に現れたんだ!?」
 男:「ごめんなさい……ごめんなさい……」
 警察官C:「ちょっとキミ!何か知ってるの?ちょっと話、聞かせてくれるかな?」

 ついでに警察官から事情聴取を受けるハメになった鈴木。

 リリアンヌ:「フヒヒヒ……。エレーナ先輩、どうやらシマ荒らし者発生は、ほぼ確定のようです……フフフ……」

 リリアンヌはその様子を少し離れた場所から見ていて、水晶球でエレーナと交信した。

 エレーナ:「よっし!さすがリリィ!マリアンナ達より先に捕まえて、ポーリン先生に褒められようぜ!」

 鈴木は単なる鉄砲玉扱いのようである。
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“大魔道師の弟子” 「初日の夜」

2019-03-28 19:11:44 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[3月13日18:00.天候:晴 埼玉県さいたま市中央区 稲生家]

 寿司屋:「毎度ー、報恩寿司です」
 稲生勇太:「はーい」

 勇太は出前の寿司を取りに行った。
 今日はマリアの歓迎会の為、寿司やオードブルを注文している。

 稲生宗一郎:「そうですか。今日は偉い先生が御来日で」
 マリア:「はい、そうです」
 宗一郎:「これはまた、日本語が上手くなりましたなぁ」
 マリア:「話すのは何とか上手くなりましたが、まだ文字の方が難しくて……」
 宗一郎:「日本語は漢字やら平仮名やら片仮名までありますからな、その気持ちは分かります」

 因みに顔文字もまた日本オリジナルらしく、アメリカのCIAが本気でスパイの暗号だと思って調査したらしい。

 勇太:「父さん!酒屋さんも来たよ!お金ちょうだい!」
 宗一郎:「ほら、財布ごと持ってけ」

 稲生は大きな寿司桶をテーブルの上に置いた。

 宗一郎:「確か生魚は苦手でしたね。オードブルも、もうすぐ届くと思うので、それで……」
 マリア:「いいえ。チャレンジしてみます」
 宗一郎:「無理しなくていいんですよ」
 マリア:「少しずつトラウマを解消して行きたいんです」
 宗一郎:「素晴らしい向上心だ。しかし、アレルギーの場合は別ですよ?」
 マリア:「大丈夫です。アレルギーではありませんので」
 宗一郎:「それならいいんですが……」

 また勇太が両手に酒瓶抱えてダイニングにやってくる。

 勇太:「はい、ワインとビール!あとは……」
 宗一郎:「ああ、適当に置いてくれ」

 ピンポーン♪

 勇太:「今度はオードブル来たーっ!」キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!(←これがCIAにはスパイの暗号に見えるらしい)
 宗一郎:「騒がしいヤツめ」
 稲生佳子:「一気に注文したものだから、一気に来ましたねー」
 宗一郎:「そりゃそうだろ。到着時間指定まで一緒にしたんだから」
 マリア:(やっぱり勇太のダディだわ……)

 今度は両手にオードルブルの載った大皿を持って来た稲生。

 勇太:「到着です!」
 宗一郎:「よし。じゃあ、早速食べよう」

 グラスにワインやビールを注ぐ。
 そして、皆で乾杯。

 勇太:「南無妙法蓮華経、南無妙法蓮華経、南無妙法蓮華経。頂きます」
 宗一郎:「相変わらず、信心深いヤツだな」
 勇太:「父さん達はいつ御受誡してくれるの?」
 宗一郎:「そうだなぁ……。今度は勇太がキリスト教でも始めて、今度こそ家庭不和にしそうになったら考えるよ」
 勇太:「“となりの沖田くん”のネタだね!あれは統一教会だったけど……。その手があったか!」
 宗一郎:「いや、本当に実行したら勘当モノだぞ?」
 マリア:「ついでにダンテ門流も破門になるぞ」

 魔女狩りを過去進行形・現在進行形不問で関わった宗教の信仰は厳禁とされている。
 その為、その証拠が無い仏教だけは例外的に認められている。
 だから稲生もダンテ一門に入門するに当たり、日蓮正宗の信仰を禁止されることは無かったのだが……。

 勇太:「それは困ります!僕の信仰は日蓮大聖人一筋ですって……」
 マリア:(どうしてブッダだけはOKなのかも疑問なんだが……)

 ダンテの姿は褐色肌のアジア系だという。
 つまり、仏教圏の国と深く関わっているからだと言われるが……。

 宗一郎:「マリアさん、イリーナ先生はこちらに寄られるの?」
 マリア:「あ、はい。そのつもりです。大師匠様がいつ日本を出発されるか分からないので、それを教えてもらうことになっています」
 宗一郎:「そうなのか」
 勇太:「あ、補足補足。出発予定日は聞いてるんだけど、どの飛行機に乗るかまでは聞いてないから、それを教えてもらおうかと思って」
 宗一郎:「そういうことか」
 勇太:「先生もこちらに寄られるよ。なに?また占いしてもらうの?株価?」
 宗一郎:「内緒だよ。それにしてもマリアさんは、会う度に日本語は上手くなっても、体は大きくならないねぇ……」
 佳子:「そういうこと言っちゃ失礼でしょ」
 マリア:「結構です。事実ですから」
 佳子:「でも、少しだけ背が伸びた気はするわ」
 宗一郎:「そうだねぇ……」
 佳子:「マリアさんはおいくつになったの?」
 マリア:「あ、えーと……それは……」
 宗一郎:「おいおい、欧米では女性に歳を聞くのは失礼なんだ。佳子も人のことは言えないぞ」
 佳子:「あら、ごめんなさい」
 稲生:(魔の者と北海道で戦った時、マリアさんは実年齢25歳になったはず。あれから、何年経ったんだ?)

 魔道師の肉体の成長並びに老化は極端に遅い。
 今の体を200年から300年くらい使うほどだという。
 これをダンテ一門では『耐用年数』と呼んでいる。
 まるで機械のようだ。

 稲生:(いずれは父さん達に、魔道師のからくりを話さないといけないな)

 多分、日蓮正宗の折伏より強い怨嫉が待っていることだろう。
 しかし、どうしようもない。

[同日20:00.天候:晴 稲生家]

 佳子:「あら?マリアさん、1階のお風呂に入ったの?」
 勇太:「そ、そうなんだ。たまには普通のお風呂に入りたいって」

 勇太は何故か動揺しながら答えた。
 マリアは2階のシャワールームを気に入って使っていた。
 それは勇太の部屋の、ほぼ真向いにある。
 元々はトイレの横に設置されていた洗面台があった場所だった。
 過去に妖狐の威吹が逗留している間、威吹と敵対する妖怪や勇太の霊力を狙う妖怪の脅威に晒された稲生家。
 その対策として洗面台をシャワールームに改装する必要に迫られる事態に陥ったことがあり、その名残である(その経緯については省略する。まあ、“ゲゲゲの鬼太郎”辺りで取り上げられてそうなネタだ)。
 母親にそう答えた勇太は、そそくさと2階に上がった。
 そして、シャワールームを開ける。
 そこは使った形跡があった。

 勇太:(危ない危ない。マリアと一緒に使ったのがバレるところだったよ……)

 意味は【お察しください】。
 と、そこへ勇太のスマホに着信が入る。

 勇太:「はい、もしもし?」

 電話に出ながら部屋に入った。

 鈴木:「稲生先輩、鈴木です」
 勇太:「あー、鈴木君、久しぶり。なに?4月から都内の電子専門学校に入るんだって?これで『職業:無職』から『職業:専門学校生』って書けそうだね」
 鈴木:「おかげさまで。エレーナと付き合うにも無職男じゃカッコ悪いんで、親に頼んで通わせてもらうことにしましたよ」
 勇太:「で、卒業後はSEかゲームクリエイターってところかい?」
 鈴木:「一応そのつもりです」
 勇太:「キミは元々パソコンのスキルがずば抜けて高いんだから、専門学校に通わなくても大丈夫だと思うけどね?」
 鈴木:「モラトリアム期間ですよ。ニートがいきなり就職して上手く行くはずがないと思って。猶予期間として、学生の期間を設けようと思ったんです」
 勇太:「なるほど。専門学校だと2年間?」
 鈴木:「そうです。先輩の大卒学歴には足元にも及びませんけど……」
 勇太:「いや、いいんだよ。魔道師の世界は、別に大卒の学歴なんて必要無いんだから」
 鈴木:「それで先輩、用件ですが……」
 勇太:「おー、そうだ。何の用だい?」
 鈴木:「先輩の通ってた東京中央学園上野高校に伝わっている『飴玉婆さん』について知っていることを教えてもらえませんか?」
 勇太:「何だって?」
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“魔女エレーナの日常” 「飴玉婆さん」

2019-03-28 10:08:26 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[3月13日13:00.天候:晴 東京都台東区上野]

 エレーナと鈴木は秋葉原から御徒町へ移動し、そこで昼食を取った。
 御徒町〜上野まで商店街があり(アメ横とは逆の東側)、そこで食べた。

 エレーナ:「まさかランチにステーキが食えるなんて、さすが鈴木だぜ。ごちそーさん!」
 鈴木:「稲生先輩から聞いたんだ。秋葉原にも姉妹店があるんだけど、こっちにもあるって。で、こっちの方がテーブル席もあるから、ゆっくり食えるだろうと思って」
 エレーナ:「なるほど。アキバだけではなかったか」
 鈴木:「もち」👍
 エレーナ:「御徒町には私も色々と魔法具の仕入れに行ったりもするけど、この店はノーマークだったな」
 鈴木:「魔法具売ってる店なんてあるの?」
 エレーナ:「内緒だぜ?あとは錦糸町にもある」
 鈴木:「へえ……。その人達も魔法使い?」
 エレーナ:「とは限らないぜ。単なる『協力者』ってなだけの場合が殆どだ」
 鈴木:「そうなんだ」
 エレーナ:「うちのホテルのオーナーだってそうだろ?」
 鈴木:「あのオーナー、魔法使いじゃないの?」
 エレーナ:「違う違う。どういう経緯だか知らんが、『協力者』なだけだ。“魔女の宅急便”でいうところの、パン屋さんみたいなものだな」
 鈴木:「なるほど。それは分かりやすい」
 エレーナ:「もっとも、キキみたいに行き当たりばったりで住み込んだわけじゃないんだが……」
 鈴木:「その魔法具屋っての、見てみたい」
 エレーナ:「ああ?フツーの人間が見たって、ただのガラクタだぜ?」
 鈴木:「いいよいいよ。エレーナがどんなのを欲しがるのか見てみたい」
 エレーナ:「うーん……。まあ、いいか。どうせ魔法使いのセンスなんて、ただの人間には分からないぜ」
 鈴木:「是非!」
 エレーナ:「分かったから、ここの支払いもよろしくだぜ」
 鈴木:「了解!」

 鈴木はエレーナの分のステーキ代もしっかり支払った。

 鈴木:「この近くなの?」
 エレーナ:「ああ。とんだ『灯台下暗し』だぜ」

 本当に徒歩数分の御近所さんであった。
 店の佇まいは、よくあるリサイクルショップである。
 昔は古道具屋とか古着屋とか言ったものだ。

 エレーナ:「ちぃーっス!」
 店長:「あら、エレーナちゃん。いつも御贔屓にね」
 エレーナ:「こいつが魔法具を見たいって言ってるもんで、フツーの人間でも分かるものでも見せてくれだぜ」
 店長:「あら?エレーナちゃんが男の子を連れて来るなんて、きっと明日は雪が降るわね」
 エレーナ:「うるせーよw」
 鈴木:「ど、どうも……」

 まるでエレーナを老婆にしたかのような、高齢の店長であった。
 この店長自身が、まるで魔法使いのお婆さん的な……。

 エレーナ:「せっかく来たんだ。何か掘り出し物でもあったら紹介してくれだぜ」
 店長:「『飴玉婆さんの飴の材料』とかどう?」
 エレーナ:「鈴木にはインパクト強過ぎだぜ。次!」
 鈴木:「え?なになに?」
 店長:「『逆さ女のぶら下がり健康器』とか」
 エレーナ:「マニアック過ぎだぜ」
 鈴木:「見た目はただのぶら下がり健康器だけどねぇ……」
 エレーナ:「水晶球とか、タロットとか無いのか?」
 店長:「『悪魔の二対のトランプ』が最近入ったわよ?」
 エレーナ:「ギャンブル好きの男子高校生には売るなよ?……でも、少し興味があるな」
 鈴木:「見た目はただのトランプ……うわっ!」

 鈴木がトランプを手に取って絵柄を見てみた。
 そこにあったのは、顔が半分ドクロになっている女の絵柄であった。
 もう一対のトランプを見ると、そちらは顔が半分ドクロになっている男の絵柄。
 物凄く不気味である。
 ただ、ドクロになっていない人間の顔を見ると、女の方はギャル系、男の方はギャル男といった感じだった。

 鈴木:(AVに出て来そうな男女の顔だなぁ……)
 エレーナ:「鈴木、悪いこと言わないから、オマエはどれにも手を付けない方がいいぜ。あくまで、見るだけだ」
 鈴木:「分かったよ」
 エレーナ:「でも私はこのトランプ、買いだぜ」
 店長:「毎度あり。どっちにする?」
 エレーナ:「そりゃ、魔女としては男の方だぜ」
 店長:「さすがエレーナちゃん、目が高いねぇ」
 鈴木:「あ、あの、支払いなら俺が……」
 エレーナ:「ああ、これはいいぜ。これはあくまでも、魔女の買い物だ。人間は引っ込んでくれだぜ」

 『悪魔のトランプ』だけはエレーナが自腹で購入した。

 エレーナ:「あれの『女の方』を手にしたヤツの地獄絵図が楽しみだぜ」
 鈴木:「一体、何なんだい?そのトランプは?」

 するとエレーナはズイッと顔を鈴木に近づけた。
 あと数センチでキスしそうな勢いだ。

 エレーナ:「死にたくなかったら、これ以上手を突っ込むのはやめておけ」
 鈴木:「う、うん……分かった……」

 エレーナの緑色の瞳に見据えられ、鈴木は頷かざるを得なかった。

 店長:「手じゃなくて首ね。あ、そうそう、エレーナちゃん。新情報を手に入れたんだけど聞く?」
 エレーナ:「何かあるのか?」
 店長:「さっき『飴玉婆さん』を出したでしょう?」
 エレーナ:「正体はうちの先輩のキャサリンだぜ。それがどうした?」
 店長:「また最近、東京中央学園に現れてるみたいよ?それで、うちも材料を仕入れてみたんだけどねぇ……」
 エレーナ:「ほお……?シマ荒らしか?」
 店長:「エレーナちゃんの知り合いで、『飴玉婆さん』を始めた人がいないのであれば、そうなるわね」
 エレーナ:「分かった。ちょっとだけ調査してみるぜ」

 2人はここから近い東京中央学園上野高校に行ってみることにした。

 鈴木:「ここは稲生先輩の母校じゃないか」
 エレーナ:「昔は怪奇現象のイオンモールみたいな学校だったんだぜ?」
 鈴木:「どんな学校だよ!よくそんな所に先輩通ったな!」
 エレーナ:「『飴玉婆さん』も、その怪奇現象の1つだ。もっとも、その正体は私の先輩だったんだがな」
 鈴木:「それって……?」
 エレーナ:「前に言わなかったか?私達は怪奇現象を『起こす側』だって。怖くなったら先に帰っていいぜ?」
 鈴木:「いや、乗り掛かったバスだ。最後まで行ってみるさ」
 エレーナ:「乗り掛かった舟だろ?まあ、いいや」
 鈴木:「で、どうするの?」
 エレーナ:「どうもこうもないさ。『婆さん』は学校の中には入らない。学校から出て来る生徒を狙って、飴玉を渡すんだ。そこを現行犯で捕えるしかない。……って、こりゃ時間掛かりそうだな」
 鈴木:「そう簡単に尻尾を出すような『婆さん』でも無いんだろ?まずはあの店長の情報が本当なのかどうか、調べてからでもいいんじゃないか?」
 エレーナ:「で、どうするんだ?私はもうホテルに戻らないといけない」
 鈴木:「だから、ホテルに戻るんだよ」
 エレーナ:「は?」
 鈴木:「ホテルに併設しているレストランの店長さんって、エレーナの先輩だろ?」
 エレーナ:「あっ、そういうことか!」

 エレーナはポンと手を叩いた。

 エレーナ:「そういうことなら、早いとこ戻ろうぜ」
 鈴木:「あ、何かもう一泊したくなってきた」
 エレーナ:「おあいにく様、今日は満室だぜ」
 鈴木:「ちっ。……儲かりまっか?」
 エレーナ:「ぼちぼちでんな。って、何だこのやり取りw」
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“魔女エレーナの日常” 「エレーナの気遣い」

2019-03-26 19:15:31 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[3月13日10:00.天候:晴 東京都江東区森下 ワンスターホテル]

 鈴木:「お世話になりました」
 オーナー:「鈴木さん、いつもありがとうございます」

 鈴木はチェックアウトの為、フロントに立ち寄った。
 部屋の鍵をオーナーに渡す。

 鈴木:「エレーナは部屋にいないんですか?」
 オーナー:「いますよ。鈴木さんが帰られたことは、ちゃんとお伝えしておきます」
 鈴木:「直接言いたかったのになぁ……」
 オーナー:「申し訳無いですね。……あ、これからどこかへお出かけですか?」
 鈴木:「稲生先輩が帰省されたみたいなんで、ちょっと遊びに行ってみようかなと。マリアさんもいらっしゃるみたいですしねぇ……」

 すると、フロントの電話が鳴り出した。

 オーナー:「あ、少々お待ちください。……はい、フロント。……ああ、鈴木さんならいらっしゃるよ」
 鈴木:「!」
 オーナー:「……そうか、分かった。だがキミ、今日は夜勤だぞ?……それならいいが。……ああ、分かった。伝えておく」

 オーナーは電話を切った。

 オーナー:「鈴木さん、エレーナがここで待つようにとのことです。お時間ございますか?」
 鈴木:「無職をナメちゃいけませんよ〜」

 宿泊者カードに記載する際、職業欄に堂々と『無職』と書く鈴木。

 鈴木:「但し、もう少しで無職じゃなくなりますけどね」
 オーナー:「それはつまり……」

 するとその時、エレベーターのドアが開いた。

 エレーナ:「鈴木っ!」
 鈴木:「エレーナ」
 エレーナ:「稲生氏の家に行っちゃダメ!」
 鈴木:「えっ、どうして?」
 エレーナ:「どうしても!」
 鈴木:「俺が同門の先輩の所へ行くのは勝手だろ?」
 エレーナ:「ダンテ一門では許されないこともあるの!」
 鈴木:「俺は日蓮正宗のことを言ってるんだよ」
 エレーナ:「アンタがヒマで稲生氏の家に行くというのなら、アタシが付き合うから」
 鈴木:「ほんと!?」
 エレーナ:「その代わり、デート費用は全部アンタ持ちな?」
 鈴木:「オケっ!」
 エレーナ:「オーナー、マルファ先生達は?」
 オーナー:「ああ。もうチェックアウトされたよ。ご要望があったので、タクシーを呼んで差し上げた」
 エレーナ:「分かりました」
 鈴木:「なになに?」
 エレーナ:「昨夜、シンシアがいただろ?」
 鈴木:「ああ、あの金髪ポニテのコ……。顔色すっごい悪かったけど、大丈夫か?」
 エレーナ:「顔色のいい魔女なんていないから」
 鈴木:「え、でもエレーナは顔色いいよ?」
 エレーナ:「アタシは魔女じゃなくて魔道師!」
 鈴木:「違いがよく分からん。同じ魔法使いだろう?」
 エレーナ:「そうなんだけど……。とにかく、稲生氏の家に今日は出入り禁止だ。どこへ行く?」
 鈴木:「やっぱアキバかなぁ……」
 エレーナ:「よし。一緒に行こう。じゃあ、行ってきます」
 オーナー:「ああ。気を付けて。時間までには戻って来るように」
 エレーナ:「了解です」

 エレーナと鈴木はホテルを出た。

 鈴木:「どういうことなんだよ?稲生先輩の家に行っちゃダメって……」
 エレーナ:「私とアンタがこうして一緒に出掛けようする時、稲生氏が来たらどう思う?」
 鈴木:「デートの邪魔……あ、そういうことか!」
 エレーナ:「帰省というのはプライベートなんだから、向こうも2人っきりにしてやろうぜ」
 鈴木:「了解了解、俺達はアキバに行こう。アキバで2人と会ったりしてな?」
 エレーナ:「どうだかねぇ……」

 エレーナは今朝、既に予知していた。

 エレーナ:(今頃奴らは、羽田空港からバスに乗って首都高の上だな。稲生氏の家の最寄り駅で降りて、そこから家に向かうと……)
 鈴木:「都営新宿線で岩本町駅まで行けば、アキバは近いぞ」
 エレーナ:「いつも通りだな」

 エレーナは頷いた。

 エレーナ:(今日は平日。稲生氏の両親は共働きで、平日は夕方まで誰も家にいない。ということは、だ。『女の味』を知った稲生氏と、『男の美味さ』を知ったマリアンナがそういう状況でやることと言ったら……)
 鈴木:「明日はホワイトデーだ。もし良かったら、今日前倒しでプレゼントしてもいいぞ?」
 エレーナ:「さすが鈴木!太っ腹だぜぇ〜!それじゃ、チャイニーズもビックリの爆買いをさせてもらおうかな?」
 鈴木:「あ、ゴメン。プレゼントする内容はもう決めてあるんだ。デザインとかはエレーナが決めて」
 エレーナ:「は?」
 鈴木:「これからアキバのランジェリーショップに行くから。是非一度、カップルとして入ってみたかったんだ
 エレーナ:「あるんかい!」
 鈴木:「コスプレ衣装の一環としてね」
 エレーナ:「その思考はキモいけど、ま、こっちは金出してもらうんだからな」
 鈴木:「そういうことだよ。じゃ、決まりだな。こんなカワイイ金髪ギャル魔女とデートできて功徳〜〜〜〜!!」
 エレーナ:「ちょっと待て。真ん中の『ギャル』は余計だぜ?ああ?」
 鈴木:「エレーナ、既に魔女のコスプレしてるから、コスプレショップにも堂々と入って行けるぞー」
 エレーナ:「コスプレじゃなくて、本物だっつの!」

 尚、さすがにとんがり帽子は某教会の魔女狩り軍団に見つけてもらうも同然なので、それはさすがに被っていない。
 代わりに中折れ帽子を被っている。

 エレーナ:「ああ、そうそう。私、今日は午後から仕事だから、昼飯食ったら帰らせてもらうよ」
 鈴木:「分かったよ。稲生先輩の家に行くのは、その後で」
 エレーナ:「オマエなぁ……」

 エレーナは呆れたが……。

 エレーナ:(ま、お楽しみは昼過ぎまでにしておくんだな。後で鈴木が向かうことくらい、サービスで稲生氏に教えてやるか)

 マリアに教える気は無いエレーナだった。

 鈴木:「魔女達も春休みとかあるの?」
 エレーナ:「無いけど、今日は偉い先生が来日されてるんだ。だから皆、日本に集まって来てるんだよ」
 鈴木:「そうなのか。それで東京に?」
 エレーナ:「いくら偉い先生っつっても、来日には飛行機で来られる。それが羽田空港に着くってんで、それで稲生氏達は出迎えの為に上京したってことさ」
 鈴木:「そうなのか」
 エレーナ:「まあ、その先生も日帰りってことはなくてだな、何日間か滞在されるから、稲生氏達にとってはいい帰省の口実だぜ」
 鈴木:「なるほどな。エレーナはいいのか?」
 エレーナ:「私は下っ端だから、そんな偉い先生の元に馳せ参じる権利すら無いぜ」

 本当は任意であるのだが、それは内緒である。

 エレーナ:「まあ、あんたの宗派で言えば、管長猊下様が来られるくらいの勢いだぜ」
 鈴木:「それは分かりやすい!」

 本当に分かりやすい。
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