[8月27日23:30.天候:晴 宮城県仙台市青葉区 東北工科大学・南里志郎記念館]
平賀:「……よし。今日のところは、これでいいだろう。あとはスキャンを夜通し掛けて行うだけだ。明日の朝には結果が出るだろう」
平賀は遅くまでエミリーの修理に当たっていた。
設計図通りに作ったはいいが、一部の部品や電装は現在の最新の物を使用している。
おかげで軽量化にも貢献しているわけだが、どうも相性の合わないものがあったらしく、それが原因だと思われた。
なので本来は、設計図通りに作る方が良いには良いのだが……。
中には部品が古過ぎて、調達できないものもあったりする為だ。
平賀:「じゃあな、エミリー。また明日」
平賀は台の上に仰向けで寝ているエミリーに向かって言った。
エミリーは目を閉じており、下は黒いビキニショーツを穿いているだけで、上半身は裸の状態だ。
但し、ちゃんと裸の胸には白い布が掛けられている。
脇腹やらふくらはぎやら、色々なケーブルが取り付けられたままになっていた。
電源が落ちている状態なので、平賀の言葉にエミリーは答えることができなかった。
平賀:「悔しいな。まだ自分、南里先生に追いつけていなかったのか……」
正直、エミリーの新しいボディを作れた時には、やっと師匠に追いつけたと思っていたのだが……。
平賀:「いいか?今、動けないエミリーを狙ってくる輩がいる。くれぐれも頼んだぞ?」
平賀は記念館を出る時、そこを守るセキュリティロボット達に固く命じた。
[同日23:45.天候:晴 同大学・研究棟]
警備員:「あ、平賀先生。お疲れさまです」
研究棟に戻ると、入口入ってすぐの所に警備室がある。
受付の窓から中を覗くと、奥にいた60代の警備員がやってきた。
平賀:「今日も泊まらせてもらいます。仮眠室、空いてますよね?」
警備員:「ええ。ただ今日は、先客がいらっしゃいますけど」
平賀:「先客?誰だろう?」
警備員:「助教の吉野先生と、講師の上田先生です」
平賀:「ふーん……?珍しいな。実質、同室者は1人か」
吉野助教は女性である為、仮眠室は別である為。
平賀は仮眠者名簿に名前を記載すると、エレベーターに乗って、仮眠室のある3階へ上がった。
女性用仮眠室はもう電気が消えていたが、男性用仮眠室は、ドアの小窓から明かりが漏れていた。
上田:「あっ、平賀先生。おばんです」
平賀:「上田君、どうしたんだい?今度のレポートの提出期限には、まだ間があるだろう?」
上田:「そうなんですけど、明日、朝イチの飛行機で北海道に行くんで、ここなら枕が変わるんで、却って起きやすいんスよ」
平賀:「こらこら。大学の仮眠室をホテル代わりに使うなって前にも言っただろう」
上田:「すいません。でも、北海道工業大学の白井先生と会うことになっているので、完全プライベートの旅行ってわけでもないんですよ」
平賀:「あー、分かった分かった。今回だけだぞ。次回からはちゃんと自宅に帰るか、ホテルに泊まるように。じゃ、自分もシャワー浴びて寝るから」
上田:「エミリーの方、大丈夫ですか?」
平賀:「ああ。原因ははっきりしそうだし、自分の予想通りなら、1日か2日もあれば直せる」
上田:「分かりました。じゃ、僕は先に寝かせてもらいますんで」
平賀:「分かったよ」
上田:「あ、そうだ。もしかしたらこの後、池原君が泊まりに来るかもしれないんです」
平賀:「うちのゼミ生の?何で?」
上田:「終電逃したらよろしくお願いしますってことです」
平賀:「だから!何でうちの大学は、仮眠室をホテル代わりにするんだって!」
[8月28日03:00.天候:晴 同大学研究棟・男性仮眠室]
コンコン!……コンコン!……コンコンコン!
平賀:「う……」
コンコンコン!……コンコン!
平賀:「うう……ん……。うるさいなぁ……」
平賀は仮眠室のドアがノックされる音で目が覚めた。
枕元に置いたスマホの時計を見ると、まだ3時くらいだった。
平賀:「誰だよ……」
平賀はベッドから起き上がると、ズボンをはいた。
その間もドアがノックされ続けている。
ふと他のベッドを見ると、上田しか寝ていないのに気づいた。
確か、ゼミ生・池原も泊まりに来るという話だったが……。
もしかして、今頃来たのか?
一応、鍵は開けていたのだが、もしかしたら警備員が巡回中に鍵を掛けたかもしれない。
それで入れなくて、ドアをノックしているのだろうか?
平賀はズボンをはくと、今度はサンダルをはいてドアに向かった。
ドアには外の様子を伺える覗き穴が付いている。
それで外を見ると、確かにドアの前には池原が佇んでいた。
平賀:(本当に今頃来たのか……)
平賀は不審に思いつつも、鍵を開けて、ドアも開けた。
だが!
平賀:「!!!」
池原の後ろには別の誰かがいた!
池原はその者に押されたのか、仮眠室内に倒れ込んできた。
そしてその際、首から上が胴体から離れる。
平賀:「うわあっ!?」
池原を押し込んだヤツは、平賀よりも小柄な体をしていた。
しかし、手には電動ノコギリを持っている。
これで、池原の首を刎ね飛ばしたのか?
…いや、違う。
首はそれで刎ね飛ばしたのかもしれないが、手に持っているのではない。
右手がそのまま、電動ノコギリになっていたのだった。
平賀:「お前、ジャニスかルディのどっちかか!?」
どっちかかと聞いたのは、顔にはドクロのマスクを被せてある為、素顔が見えなかったからだ。
答える代わりに、その電ノコロボットは平賀に襲い掛かってきた。
平賀:「くそっ!」
平賀はその攻撃を交わすと、仮眠室の外に飛び出した。
後ろから電ノコの音が響いて来る。
追い掛けてきたのだ!
平賀:(ジャニスかルディ!?いや、まさか!あいつら、あんな装備はしていなかったはずだ!)
平賀は階段を駆け下りると、2階に出た。
そして2階の男子トイレに飛び込むと、個室に入って鍵を掛けた。
もしも彼らがマルチタイプであるなら、すぐにスキャンされて見つかることだろう。
平賀:「!」
大型バイクのエンジン音のような電ノコの音が聞こえてくる。
まるで迷わずに、男子トイレに入って来た。
やはり、彼らはマルチタイプなのか?スキャンして、ここに平賀がいると分かって入って来たのだろうか?
だが、電ノコのそいつはトイレの中を徘徊した後、諦めたのかトイレの外に出て行った。
平賀:(助かった……のか?)
平賀はそっと個室を出た。
トイレ内には、もうあの電ノコはいない。
平賀を見つけられなかったということは、マルチタイプではないのか?
それともやはりマルチタイプで、自らの人工知能を狡賢く働かせ、トイレの外で待ち伏せしているのだろうか。
平賀:(そうだ!早いとこ、警察に通報しないと!)
明らかになっているのは、正体不明だが電ノコを振り回して棟内を徘徊する者がいるということ。
そして、池原がそいつに殺されたことだった。
平賀:(そうだ、警備室!)
もうこの時間は、警備員も仮眠に入っている。
あの電ノコがどこから侵入したのかは知らないが、警備室から警察に通報すれば良い。
平賀はそう思って、1階の警備室に向かった。
途中、電ノコと鉢合わせにならないよう、気をつけながら……。
平賀:「……よし。今日のところは、これでいいだろう。あとはスキャンを夜通し掛けて行うだけだ。明日の朝には結果が出るだろう」
平賀は遅くまでエミリーの修理に当たっていた。
設計図通りに作ったはいいが、一部の部品や電装は現在の最新の物を使用している。
おかげで軽量化にも貢献しているわけだが、どうも相性の合わないものがあったらしく、それが原因だと思われた。
なので本来は、設計図通りに作る方が良いには良いのだが……。
中には部品が古過ぎて、調達できないものもあったりする為だ。
平賀:「じゃあな、エミリー。また明日」
平賀は台の上に仰向けで寝ているエミリーに向かって言った。
エミリーは目を閉じており、下は黒いビキニショーツを穿いているだけで、上半身は裸の状態だ。
但し、ちゃんと裸の胸には白い布が掛けられている。
脇腹やらふくらはぎやら、色々なケーブルが取り付けられたままになっていた。
電源が落ちている状態なので、平賀の言葉にエミリーは答えることができなかった。
平賀:「悔しいな。まだ自分、南里先生に追いつけていなかったのか……」
正直、エミリーの新しいボディを作れた時には、やっと師匠に追いつけたと思っていたのだが……。
平賀:「いいか?今、動けないエミリーを狙ってくる輩がいる。くれぐれも頼んだぞ?」
平賀は記念館を出る時、そこを守るセキュリティロボット達に固く命じた。
[同日23:45.天候:晴 同大学・研究棟]
警備員:「あ、平賀先生。お疲れさまです」
研究棟に戻ると、入口入ってすぐの所に警備室がある。
受付の窓から中を覗くと、奥にいた60代の警備員がやってきた。
平賀:「今日も泊まらせてもらいます。仮眠室、空いてますよね?」
警備員:「ええ。ただ今日は、先客がいらっしゃいますけど」
平賀:「先客?誰だろう?」
警備員:「助教の吉野先生と、講師の上田先生です」
平賀:「ふーん……?珍しいな。実質、同室者は1人か」
吉野助教は女性である為、仮眠室は別である為。
平賀は仮眠者名簿に名前を記載すると、エレベーターに乗って、仮眠室のある3階へ上がった。
女性用仮眠室はもう電気が消えていたが、男性用仮眠室は、ドアの小窓から明かりが漏れていた。
上田:「あっ、平賀先生。おばんです」
平賀:「上田君、どうしたんだい?今度のレポートの提出期限には、まだ間があるだろう?」
上田:「そうなんですけど、明日、朝イチの飛行機で北海道に行くんで、ここなら枕が変わるんで、却って起きやすいんスよ」
平賀:「こらこら。大学の仮眠室をホテル代わりに使うなって前にも言っただろう」
上田:「すいません。でも、北海道工業大学の白井先生と会うことになっているので、完全プライベートの旅行ってわけでもないんですよ」
平賀:「あー、分かった分かった。今回だけだぞ。次回からはちゃんと自宅に帰るか、ホテルに泊まるように。じゃ、自分もシャワー浴びて寝るから」
上田:「エミリーの方、大丈夫ですか?」
平賀:「ああ。原因ははっきりしそうだし、自分の予想通りなら、1日か2日もあれば直せる」
上田:「分かりました。じゃ、僕は先に寝かせてもらいますんで」
平賀:「分かったよ」
上田:「あ、そうだ。もしかしたらこの後、池原君が泊まりに来るかもしれないんです」
平賀:「うちのゼミ生の?何で?」
上田:「終電逃したらよろしくお願いしますってことです」
平賀:「だから!何でうちの大学は、仮眠室をホテル代わりにするんだって!」
[8月28日03:00.天候:晴 同大学研究棟・男性仮眠室]
コンコン!……コンコン!……コンコンコン!
平賀:「う……」
コンコンコン!……コンコン!
平賀:「うう……ん……。うるさいなぁ……」
平賀は仮眠室のドアがノックされる音で目が覚めた。
枕元に置いたスマホの時計を見ると、まだ3時くらいだった。
平賀:「誰だよ……」
平賀はベッドから起き上がると、ズボンをはいた。
その間もドアがノックされ続けている。
ふと他のベッドを見ると、上田しか寝ていないのに気づいた。
確か、ゼミ生・池原も泊まりに来るという話だったが……。
もしかして、今頃来たのか?
一応、鍵は開けていたのだが、もしかしたら警備員が巡回中に鍵を掛けたかもしれない。
それで入れなくて、ドアをノックしているのだろうか?
平賀はズボンをはくと、今度はサンダルをはいてドアに向かった。
ドアには外の様子を伺える覗き穴が付いている。
それで外を見ると、確かにドアの前には池原が佇んでいた。
平賀:(本当に今頃来たのか……)
平賀は不審に思いつつも、鍵を開けて、ドアも開けた。
だが!
平賀:「!!!」
池原の後ろには別の誰かがいた!
池原はその者に押されたのか、仮眠室内に倒れ込んできた。
そしてその際、首から上が胴体から離れる。
平賀:「うわあっ!?」
池原を押し込んだヤツは、平賀よりも小柄な体をしていた。
しかし、手には電動ノコギリを持っている。
これで、池原の首を刎ね飛ばしたのか?
…いや、違う。
首はそれで刎ね飛ばしたのかもしれないが、手に持っているのではない。
右手がそのまま、電動ノコギリになっていたのだった。
平賀:「お前、ジャニスかルディのどっちかか!?」
どっちかかと聞いたのは、顔にはドクロのマスクを被せてある為、素顔が見えなかったからだ。
答える代わりに、その電ノコロボットは平賀に襲い掛かってきた。
平賀:「くそっ!」
平賀はその攻撃を交わすと、仮眠室の外に飛び出した。
後ろから電ノコの音が響いて来る。
追い掛けてきたのだ!
平賀:(ジャニスかルディ!?いや、まさか!あいつら、あんな装備はしていなかったはずだ!)
平賀は階段を駆け下りると、2階に出た。
そして2階の男子トイレに飛び込むと、個室に入って鍵を掛けた。
もしも彼らがマルチタイプであるなら、すぐにスキャンされて見つかることだろう。
平賀:「!」
大型バイクのエンジン音のような電ノコの音が聞こえてくる。
まるで迷わずに、男子トイレに入って来た。
やはり、彼らはマルチタイプなのか?スキャンして、ここに平賀がいると分かって入って来たのだろうか?
だが、電ノコのそいつはトイレの中を徘徊した後、諦めたのかトイレの外に出て行った。
平賀:(助かった……のか?)
平賀はそっと個室を出た。
トイレ内には、もうあの電ノコはいない。
平賀を見つけられなかったということは、マルチタイプではないのか?
それともやはりマルチタイプで、自らの人工知能を狡賢く働かせ、トイレの外で待ち伏せしているのだろうか。
平賀:(そうだ!早いとこ、警察に通報しないと!)
明らかになっているのは、正体不明だが電ノコを振り回して棟内を徘徊する者がいるということ。
そして、池原がそいつに殺されたことだった。
平賀:(そうだ、警備室!)
もうこの時間は、警備員も仮眠に入っている。
あの電ノコがどこから侵入したのかは知らないが、警備室から警察に通報すれば良い。
平賀はそう思って、1階の警備室に向かった。
途中、電ノコと鉢合わせにならないよう、気をつけながら……。