報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

更新頻度低下(になるかもしれない)お知らせ。

2023-10-29 20:15:10 | アンドロイドマスターシリーズ
 シンディ・サード「皆さん、こんばんは。お久しぶりでございます。“アンドロイドマスター”シリーズのガイノイド、マルチイプ3号機、シンディ・サードです!今日はこの場をお借りして、読者の皆様にお知らせがございます」
 エミリー・ファースト「当作の作者、雲羽百三は実弟の結婚式に参列する為、明日より沖縄へ高飛びすることになりました。従いまして、明日よりブログの更新頻度が落ちる恐れがございますことを、この場で告知させて頂きます」

 雲羽百三「カット!カット!何だよ、高飛びって!?これじゃまるで、俺が犯罪者みたいじゃねーかよ!普通に『旅行』でいいんだよ、『旅行』で!」

 エミリー「失礼しました」
 シンディ「似たようなもんじゃん。てか、このシリーズ、いつ再開するの!?」

 雲羽「こらこら!まだ告知は終わってないだろ!続きを喋れ!」

 エミリー「了解しました。『雲羽百三のオールナイトニッポン!』」

 https://www.youtube.com/watch?v=uhOMW_NOXDU

 雲羽「いや、違うだろ!俺、いつオールナイトニッポン出るよ!?」

 シンディ「えー、具体的な日付は明日10月30日から11月1日までです。明日の早朝には出発とのことで、今夜は荷物を纏めて高飛びの準備と早めの就寝を……」

 雲羽「だから、高飛びじゃねぇって言ってんじゃん!」

 エミリー「尚、現地で時間があり、PCが使える環境の際は、もしかしたら更新するかもしれないとのことです」
 シンディ「また、作者は『自称、正義感に取りつかれた通報趣味の暇人ニキ』の謀略により、Xを半永久的に凍結されている為、そこでのツイートはできません。よって、新しく引っ越ししたマストドン・ジャパンにて投稿する予定です」
 エミリー「尚、マストドンにおける作者のニックネームは『一代法華』です。現地では、『一代さん』と呼ばれているようです」
 シンディ「どうでもいい情報ですね」

 雲羽「うるせ」

 エミリー「11月1日の夜間に帰宅するので、もしかしたら、深夜にでも更新があるかもしれませんし、無いかもしれません」
 シンディ「このブログにどれだけの需要があるかは分かりませんが、皆様の御理解を宜しくお願い致します」

 雲羽「余計なお世話だ」

 シンディ「尚、行きは成田空港からジェットスターで。帰りは那覇空港からスカイマークで羽田空港です。明らかに、飛行機初心者のルートですね」

 雲羽「飛行機の予約、自分でするの初めてだったんだから、しょうがないだろう」

 シンディ「交通費予算不足でLCCにしたことがバレバレです」

 雲羽「ジェットスターはともかく、スカイマークは厳密的にはLCCじゃないぞ」

 エミリー「因みに埼玉~空港間の交通機関は、リムジンバスとのことです。陸上交通機関には、予算を掛けるんですね」

 雲羽「そうか?“成田エクスプレス”よりは安いと思うが……。おっと!はい、オッケー!ご苦労さんね」

 エミリー「ありがとうございました」
 シンディ「ところで、私達のシリーズの再開は?」

 雲羽「さてと、帰って出発の準備をしなきゃ!」
 シンディ「待たんか、コラ!」

 ジャキッ!(シンディ、右手をマシンガンに変形させる)

 シンディ「オラオラオラーッ!」

 ダダダダダダダダ!(マシンガン発砲)

 雲羽「わぁぁぁぁぁっ!!というわけで、読者の皆様、何卒1つ、御理解をーっ!!」

 稲生勇太「僕達のシリーズの再開は?」
 マリアンナ・ベルフェゴール・スカーレット「ねぇ?」
コメント (2)
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“アンドロイドマスターⅡ” 「台風19号通過後、更に経過」

2019-10-25 10:26:55 | アンドロイドマスターシリーズ
[10月13日06:30.天候:曇 東京都江東区豊洲 豊洲アルカディアビル18F・敷島エージェンシー]

 井辺が事務所のトイレで顔を洗っていると、敷島が入って来た。

 敷島:「グッモーニーン……」
 井辺:「あっ、社長。おはようございます」
 敷島:「停電、復旧したんだなー」
 井辺:「あ、社長は御存知だったんですね」
 敷島:「俺がトイレから出ようとしたら、バチッと切れやがったからさぁ……」
 井辺:「そうだったんですか。私は恥ずかしながら、爆睡してて気が付きませんでした」
 敷島:「いや、いいんだよ。その方がいい。知らぬが仏って言うからな」
 井辺:「はあ……」
 敷島:「チラッとさっきテレビを見たんだが、どうやら一夜明けても交通機関は復旧しないらしい。早くても、今日の昼頃だそうだ」
 井辺:「やはりですか……。下の被害はどうだったんでしょう?」
 敷島:「それはまだ分からん。だけど、まだしばらくこの事務所にいた方が良さそうだな」
 井辺:「はい」
 敷島:「ま、非常食も飲料水も備蓄してあるから心配すんな」
 井辺:「はい、それはもう……」
 敷島:「じゃ、取りあえず俺はエミリーの体洗って来てやるから。シャワー使う?」
 井辺:「いえ、私は昨夜使わせて頂いたので……」
 敷島:「あ、そう」
 井辺:「初音さんからぼんやり聞いたんですが、昨夜はエミリーさんとお楽しみだったそうで……」
 敷島:「ちっ、ミクにはバレてたか。エミリーのヤツ、凄いよ。タマが空になるまで搾り取られた……」
 井辺:「は、はあ……」
 敷島:「井辺君にも後で貸してあげるからね」
 井辺:「いえ、結構です。遠慮しておきます。レイチェルで懲りましたから」
 敷島:「あ〜、そうか。まあ、いいや。井辺君も昼くらいまで寝てていいよ」
 井辺:「いえ、取りあえず情報収集に当たります」

 井辺がそう言うと、敷島は頷いてエミリーをシャワー室に連れて行った。

 井辺:「あれだけマルチタイプを使いこなす人間は、やはり珍しいのかもしれない……」
 初音ミク:「わたしも、社長は凄い人だと思います」
 井辺:「ですね」
 ミク:「何せ兵器として開発されたわたしを、ボーカロイドとして再生してくれた人ですから」
 井辺:「最初にその機能を発見したのは、平賀教授だということですが……」
 ミク:「平賀博士はわたしの機能を発見して、社長に伝えただけです。博士も、わたしの機能を重視していませんでした」

 ミクの歌唱機能を最大限を発揮すると、人間の脳幹を停止させる大量虐殺兵器に変わる。
 そこを上手く調整したのが平賀と敷島のコンビだ。
 開発者の南里は危険過ぎると海洋投棄したのだが、弟子の平賀がそれを回収してしまった。
 結果的には平賀の判断は正しかったと言える。

 ミク:「エミリーはあの調子ですし、プロデューサーさんの朝ご飯はわたしが用意しますね」
 井辺:「ああ、初音さん。助かります」

 そして、シャワー室では……。

 エミリー:「気持ちいいです。社長、ありがとうございます」
 敷島:「大事な『お人形さん』をきれいにしてやるのも、持ち主の義務だからな」

 もちろんアンドロイドは自分で自分の体を洗うことができる。
 元はテロ用途として製造されたバージョン・シリーズでさえ、そうしようとするくらいだ。
 街角のガソリンスタンドの洗車機を無断使用したことが相次ぎ、大問題となったことがあるくらいだ。
 その度にエミリーとシンディが、どつき回したほどである。
 しょうがないので、洗車機を改造した洗浄機をアリスが開発し、それをバージョン達に使わせることで収束した。

 エミリー:「んっ……ん……!」

 エミリーが下半身に力を入れると、ゴボッと秘所から白濁したドロリとした液が出て来る。
 透かさずそれを洗い流してやる敷島。

 エミリー:「いっぱい出されましたね……。きっと、人間の女性なら妊娠してしまいます……」

 エミリーは恍惚とした顔で言った。
 敷島は後ろからエミリーを抱きしめた。

 敷島:「お前が人間だったらなぁ……。俺はお前と……」
 エミリー:「社長……」

 エミリーは恍惚とした顔で敷島の手を握った。
 が、その顔が一瞬、恍惚の表情からほくそ笑むものに変わった。
 それは人間に支配されるべきAIが、支配してやったという勝ち誇った顔のように見えた。

[同日07:00.天候:曇 敷島エージェンシー事務室・打合せコーナー]

 井辺はミクに用意された朝食を取っていた。
 といってもパック容器の白飯(つまり、サトーのごはん)を電子レンジで温め、おかずは缶詰や真空パックで保存されていたもの、味噌汁はフリーズドライのものを熱湯で戻しただけであった。

 井辺:「本当に非常食ですね。でもまあ、備蓄していて良かったですよ。いただきます」
 ミク:「どうぞどうぞ」

 打合せコーナーの椅子に座り、机の上に並べられた朝食に箸をつける。
 ラジオを点けてそれをBGMとするが、やはり流れて来るのは台風情報である。

〔「……首都圏の鉄道に関する情報です。まず、各新幹線ですが、東海道新幹線のみ始発から運転を再開しました。今後、概ね平常運行を行うとしています。……」〕

 井辺:(やはり在来線の運転再開は昼頃からか……。せめて首都高でも復旧してくれれば……)

 ラジオを聞いていると、それもどうやら昼頃のようである。

 敷島:「あ、井辺君。ここにいたのか」
 井辺:「社長。すいません、先に朝食頂いてました」
 敷島:「いや、いいよ。それで、交通機関の復旧はいつだって?」
 井辺:「やはり在来線も首都高も、昼頃になるようです」
 敷島:「そうか。やはりなぁ……。取りあえず、昼まではゆっくりしよう。復旧したらそれで帰ろう。今のところ、シンディからは何の連絡も無いが、何だか心配になってきた」
 井辺:「そうですね。私もそう思います」
 敷島:「井辺君の実家は岩槻だったか」
 井辺:「そうです。復旧したら車を出していいですか」
 敷島:「いいよ。それで一緒に帰ろう」
 井辺:「はい、分かりました」

 台風が通過した後とはいえ、まだ風の強い豊洲地区。
 ビルに目立った被害は無いようだが、とても今の状態では帰れそうになかった。

 エミリー:「いざとなったら、私がお2人を抱えて飛びますので」
 敷島:「それは頼もしい」
 井辺:「いずれ復旧しますから、それを御遠慮しますよ」

 敷島と井辺は、こうして台風を乗り切ったのである。
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“アンドロイドマスターⅡ” 「台風19号通過後」

2019-10-24 19:37:53 | アンドロイドマスターシリーズ
[10月13日02:00.天候:雨 東京都江東区豊洲 豊洲アルカディアビル18F・敷島エージェンシー]

 社長室内に設置したエアベッドで寝ている敷島。
 それが暴風雨が窓ガラスを叩く音で目が覚める。

 敷島:「ん……。ちょっとトイレ……」

 敷島は手を伸ばして、外したメガネを取ろうとした。
 すると、手に柔らかい物が当たる。

 エミリー:「ふぁ……」
 敷島:「うわっ、ととと!?」

 それは護衛と称して同衾するエミリーの巨乳だった。
 スリープ状態になると人間で言う寝息を立てず、体温も無くなるし、つまりは死体と一緒に寝るようなものだ。
 敷島が胸を掴んだことで、エミリーのスリープモードが解除される。

 エミリー:「どちらへ?」
 敷島:「トイレだ、トイレ」

 敷島はTシャツにハーフパンツをはいている。
 スリッパを履くと、社長室を出た。
 途中の仮眠室では井辺が寝ているから、静かに廊下を進む。
 真夜中にロケ先から到着したり、或いは始発電車が走り出す前からロケに出発したりということも多々ある為、事務所内には仮眠室がある。
 しかし、あえてそこに敷島は寝ようとはしなかった。
 仮眠室の隣にはボーカロイド達の部屋があり、エミリーが放つ電波で彼女らが警戒して充電不良を起こしたことがあったからだ。

 敷島:「マジかよ。ここまで雨音聞こえんぜ……」

 幸いまだ停電はしていない。
 眩しいトイレの明かりに目を細めながら用を足していると、換気ダクトから雨音が聞こえて来た。
 普通は聞こえないのだが、それほどまでに強い雨風なのだ。

 敷島:「全く……」

 用を足した後で手を洗っていると、バチンと照明が切れた。

 敷島:「!……かー、ついにやられたか……」
 エミリー:「社長」
 敷島:「おわっ、びっくりした!」

 エミリーがトイレの中に入って来た。
 片目をライトのように点灯させている。
 それ以外にも真っ暗な中にいるからか、もう片方の目も電源ランプの明かりが漏れて淡く光っている。
 鉄腕アトムなどば両目を光らせているが、現実はLEDの明るい光源がある為、片目を光らせるだけで十分である。
 もっとも、LEDに換装されるまでは彼女らも両目を光らせていた。
 尚、故障時の予備と警告ランプも兼ねて、実はもう片方の目にもLEDは搭載されている。
 つまり、彼女らが両目を光らせている時、その感情は昂っているものと思って良い。

 エミリー:「大丈夫ですか?ついに停電したようです」
 敷島:「そうみたいだな。さすがに想定通りか」
 エミリー:「早く戻りましょう。私が先導します」
 敷島:「ああ、頼む」

 もっとも、非常灯や非常口誘導灯、それに消火栓の赤ランプは点灯していたが、全部予備電源で点灯するものである。

 敷島:「お前もバッテリーを無駄にするなよ?」
 エミリー:「分かっています」

 エミリーはいつもの衣装を脱いで、ビキニスタイルになっていた。
 因みにこの上からアーマーを装着させると、よくRPGとかにいるビキニアーマーの女戦士の恰好をさせることができる。
 そのエミリーも、武器として電気鞭を持っていた。

 敷島:「それにしても参ったな。ここ18階だぜ?エレベーターも止まっただろうし、復旧まで帰れないだろうな」
 エミリー:「その時は私が抱えて緊急離脱します」
 敷島:「その時が来ないように願うよ」

 敷島は苦笑いをした。

 敷島:「ちょっと待て。今のうちに水を飲んでおこう」
 エミリー:「お水ですか?」
 敷島:「冷蔵庫が止まったということは、飲み物も温くなるだろう。今は停電したばっかりだから、まだ冷たいはずだ。冷たいうちに飲んでおきたい」
 エミリー:「かしこまりました。今のうちにお持ちします。社長は先に戻っていてください」
 敷島:「ああ。エミリーも飲んでいいぞ」
 エミリー:「冷却水はまだありますので、その必要はありません」
 敷島:「そうか」

 エミリーは給湯室の冷蔵庫からミネラルウォーターのペットボトルを出すと、それを湯のみに注いだ。
 そしてお盆に乗せて、社長室まで運んだ。

 敷島:「参ったな。非常灯が勝手に点いている」
 エミリー:「そうですね」

 天井に付いている豆電球の明かり。
 大元のスイッチは切っていても、勝手に点灯してしまっている。
 もちろんこれだけでは心許無い明かりではあるが、しかしちょうど敷島のベッドの真上で点灯しているので、さすがにこれは眩しいだろう。

 エミリー:「少々お待ちください。今、ベッドを移します」
 敷島:「いや、このままでいいよ。それよりエミリー、お前にも飲ませてやるぞ」
 エミリー:「冷却水はまだ……」
 敷島:「そう言うなって」

 敷島は自分の水を飲んだ後、再び水を含んでエミリーを抱き寄せ、唇を重ねて彼女の口の中に注ぎ込んだ。
 エミリーは目を閉じて、口移しされた水をこくんこくんと飲み干す。

 エミリー:「ありがとう、ございます」

 エミリーは恍惚な表情を浮かべて敷島を見つめた。

 敷島:「どうせしばらく眠れそうに無い。だったら、お前に相手してもらおうかな」
 エミリー:「光栄に存じます。『50億円のラブドール』、どうぞお楽しみください。……いえ」

 エミリーは着ていたチューブブラやビキニショーツを脱ぎ捨てると、訂正した。

 エミリー:「楽しませて差し上げます」

[同日06:00.天候:曇 敷島エージェンシー・仮眠室]

 井辺の枕元に置いたスマホがアラームを鳴らした。

 井辺:「う……ん……」

 井辺は手を伸ばしてアラームを止めた。

 井辺:「久しぶりに……仮眠室で寝たな……」

 仮眠室は2段ベッドが2つ並んだ4人部屋なのだが、今回は井辺の貸し切りだ。
 下段に寝ていた。
 枕元のスイッチに手を伸ばすと、仮眠室内の照明が点灯する。
 取りあえずワイシャツとスーツのズボンに着替えると、サンダル履きでトイレに向かった。

 初音ミク:「おはようございます。プロデューサーさん」
 井辺:「ああ、初音さん。おはようございます」
 ミク:「昨夜は停電して大変だったんですよ」
 井辺:「え?停電したんですか?気が付きませんでした……」
 ミク:「しょうがないですよ。停電したの、午前2時過ぎですから」
 井辺:「でも今は復電しているようですが?」
 ミク:「5時過ぎに直りました」
 井辺:「そうですか。非常予備電源とかじゃないですよね?」

 それにしては廊下の照明が全点灯しているので、そういうわけでもなさそうだった。

 井辺:「社長は寝ていらっしゃいますか?」
 エミリー:「昨夜はエミリーと『お楽しみ』だったみたいですから」
 井辺:「さすが社長。あんな大嵐の中でもそのような余裕を見せて下さるとは……」
 ミク:「プロデューサーさんもよく眠れたじゃないですか」
 井辺:「いや、さすがに疲れていたようです。ちょっと顔洗って来ますので」
 ミク:「はい」

 井辺はトイレの洗面所で顔を洗っていた。

 井辺:(『50億円のラブドール』とお楽しみか。そういえば俺も、昔はレイチェルに迫られたことがあったな……)

 あくまでも敷島の符丁であって、本当にそう思っているわけではない。
 マルチタイプということもあって、彼女らは何でもできる。
 その何でもできる特技の中に、『夜伽』が入っているだけに過ぎない。
 因みにその機能、ボーカロイドには搭載されていない。
 アイドルの枕営業に真っ向から切り込む為である。

 井辺:(ま、さすがに俺は社長の足元にも及ばない、と……)
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“アンドロイドマスターⅡ” 「台風19号通過中」

2019-10-24 10:12:56 | アンドロイドマスターシリーズ
[10月12日20:00.天候:雨 東京都江東区豊洲 豊洲アルカディアビル18F・敷島エージェンシー]

 敷島は巡音ルカのダンスを見ていた。
 手元にはルカの監視端末がある。

 ルカ:「……いかがだったでしょうか?」

 一通りダンスを終えて、ルカが敷島に聞いてきた。

 敷島:「照合率92.28%か。まずまずだとは思うがな」
 ルカ:「でもリンやレンは98%超えです。MEIKOやKAITOでも95%を超えています」
 敷島:「数%の誤差くらい、普通の人間は気付かないよ。それに、そういった誤差は調整だけでどうにかなるものじゃない。もちろん持ち前の性能の関係もあるし、整備状況も関係してくる。うちのアリスが言っていたが、『今の技術では90%を超えれば御の字』だそうだ」
 ルカ:「で、でもっ……!」
 敷島:「とはいえ、100%は無理だとしても、95%超えなら調整で何とかなるか」
 ルカ:「私は……ポンコツなのでしょうか?」
 敷島:「誰がそんなこと言った!お前はダンスに関しては多少性能が劣るだけで、歌唱性能はボカロ全機並べりゃトップなんだぞ?」
 ルカ:「しかし、人間は私達に対して完璧を求めていると聞きます」
 敷島:「それは否定しないさ。ただ、それは『ロボット』に対してであって、ロイドではないと思う」
 ルカ:「?」
 敷島:「ここ最近思うんだが、お前達は動きが完璧過ぎて……そこに新たな問題があるような気がしてならないんだ」
 ルカ:「???」
 敷島:「いや、それはお前は考えなくていい。そういうのは人間に任せてくれ。とにかく、かなりバッテリーを消耗しただろ?停電する前に早いとこ充電しておけ」
 ルカ:「分かりました。ありがとうございました」
 敷島:「じゃあな」

 敷島はレッスン室を出ると、事務室に向かった。

 敷島:(『動きが完璧過ぎてつまらない』とか、『ロボットのようだ』とか、そういう批判の声もあるんだよなぁ……。かといってあまりファジィ過ぎると、今度は『ロイドである必要が無い』とかなるし……。うーむ……)

 そして事務室に入る。

 井辺:「あっ、社長。レッスン室から音楽が聞こえてきましたが?」
 敷島:「ルカが自分のダンス性能を気にしてたんだよ」
 井辺:「歌唱性能を重視する余り、身体能力が劣ってしまったということですが……」
 敷島:「それでも照合率は90%超えだったよ。俺的にはそれで十分だと思うんだ。今の技術では、彼女らの体で100%は無理だし」
 井辺:「近づければ近づけるほど、『ロボットみたいだ』とか言われるんですよね」
 敷島:「まあ、『ロボットみたい』なんだけどな。俺的には95%前後がちょうどいいと思ってる」
 井辺:「ですよねぇ……」
 敷島:「それで、イベントの調整はどうなった?」
 井辺:「あ、はい。一応、ほとんどが11月に延期ですね。今月中だとまた台風が発生して接近して来る恐れがありますし、あと『即位の礼』とカブる恐れがありますので」
 敷島:「あ、そうか。もっとも、11月だって台風が来る時ゃ来るけどな」
 井辺:「しかし10月よりは確率は低いです」
 敷島:「まあな。1番いいのは12月だと思う」
 井辺:「12月はクリスマスイベントやら年末特番やらで稼ぎ時です」
 敷島:「ライブだってそうさ。さすがに12月ともなれば台風はまず発生しないし、それに……」
 井辺:「それに?」
 敷島:「地球温暖化のおかげで、まず12月に東京で大雪が降ることは無いから、それでイベント中止とかは無い」
 井辺:「仰る通りです。そもそも雪自体が降らないです」
 敷島:「だな!ドラマとかアニメとかじゃ、都合良く東京で12月24日や25日に雪が降って、『ホワイトクリスマスぅ〜w』とか言ってるが、実際は無ェぞ?」
 井辺:「だから撮影の時は人工の雪を降らせるんですよね」
 敷島:「札幌の雪ミクイベントを東京でやろうとした時は大変だったな」
 井辺:「またやります?」
 敷島:「……やるか?」
 井辺:「本社がまた嫌な顔するでしょうけど」
 敷島:「問題無い。そのイベントで大黒字(おおもうけ)できりゃ、叔父さん達のうるさい口を札束で封じることができるよ」
 井辺:「さすが社長。発想が違います」
 敷島:「だろォ?」

 その時、室内の照明がブレた。
 ブレたというのは明暗を繰り返したという意味だ。

 敷島:「な、何だ何だ?」
 井辺:「瞬低とか瞬電とかいうヤツですかね?どうやら、冗談抜きで停電フラグが立っているようです」
 敷島:「それはヤバいな。今のうちに停電対策グッズ用意しておこう」
 井辺:「あっ、社長。私がやりますよ。社長は休んでてください」
 敷島:「いや、いいよいいよ。井辺君こそ、そろそろシャワーとか使って寝る準備しておけよ。停電したらシャワーも使えなくなるぞ」
 井辺:「あ、はい」

 敷島はまた社長室に戻った。
 時折、窓ガラスを激しい暴風雨が叩き付けている。
 それが分かるくらい大きな音だ。

 エミリー:「社長、ベッドの用意ができました」
 敷島:「おっ、ありがとう」

 エミリーはエアで膨らませるタイプのベッドを用意していた。
 これだけで大きさはセミダブルくらいある。
 敷島的にはシングルサイズで良かったのだが、エミリーやシンディが反対した。
 同衾したいからである。
 そこはアリスも止めなかった。
 他の人間の女を同衾させるくらいなら、まだ自分の祖父の作品(シンディ)やその姉妹品(エミリー)を同衾させておいた方が良いという考えだ。
 その為、ダブルサイズも販売していたのだが、そこは何故か阻止され、折衷案としてセミダブルとなったという経緯がある。

 エミリー:「先ほど電気系統にトラブルが発生したようです。停電する前にお休みになられた方がいいと思います」
 敷島:「そうだな。井辺君が先に休んだら、俺もそうするよ」
 エミリー:「井辺プロデューサーは仮眠室を利用でしたね」
 敷島:「そう」
 エミリー:「それでは私は仮眠室で井辺プロデューサーのベッドを用意して参ります」
 敷島:「あ、それがいいな。頼むぞ」

 エミリーは社長室を出ていった。
 敷島は室内の応接セットのソファに座ると、またテレビを点けた。

 敷島:「何度見ても東京直撃は確定か。……俺も帰りゃ良かったかな?……まあいいや」
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“アンドロイドマスターⅡ” 「台風19号通過」

2019-10-23 18:50:56 | アンドロイドマスターシリーズ
[10月12日19:00.天候:雨 東京都江東区豊洲 豊洲アルカディアビルB2F・防災センター→1Fエントランスホール]

 警備員A:「はい、ご記入ありがとうございます。それでは18階の敷島エージェンシーさんは、敷島社長と井辺総合プロデューサーの2名様が残留ですね」
 エミリー:「はい、そうです」
 警備員A:「あなたは?」
 エミリー:「はい?」
 警備員A:「敷島エージェンシーさんの社員さんですよね?あなたは残留されないんですか?されるんでしたら、あなたもこちらにご記入を……」
 エミリー:「あ、いえ、私は……」
 鏡音レン:「いえ、ボク達は『備品』なので」

 エミリーと一緒についてきた鏡音レンは首を外した。
 出演したミュージカルの役回りの為に、レンだけは首が外れるようになっている。
 それを知らなかった前期型のシンディに襲われて、首と胴体を引きちぎられたことが昔あったが、このような特別仕様のおかげで助かった経緯があり、今でも元に戻されず、そのままになっている。

 警備員A:「うわっ!?」

 すると、防災センターの奥からベテランの警備員がやってくる。

 警備員B:「いや、この方達はいいから」
 警備員A:「あ、そうなんですか」
 警備員B:「すいません。こいつ、まだ先月入ったばかりの新人で……」
 エミリー:「いえ、いいんです。失礼します」
 レン:「失礼しまーす」

 レンは笑みを浮かべながら首を元に戻した。

 警備員A:「いや、ホントマジで見分けが付かないっスねー?」
 警備員B:「まあな」

 エミリーとレンは18階に戻る前に、1階のエントランスホールに立ち寄った。
 外の様子を見る為と、自販機コーナーで敷島や井辺の為の飲み物を買う為であった。

 レン:「警備員さん、驚いてたねw」
 エミリー:「あまりフザけるな。社長の耳に入ったら、私からオマエに注意しなくてはならなくなる。その意味、分かるな?」

 エミリーは眉を潜めて、腰のベルトを掴んだ。
 特徴的な装飾のベルトだが、実はこれ、電気鞭である。
 同じ服装をしているシンディもそうしているが、使用する時は腰から外し、あとは普通の鞭のように振るう。
 因みにこの電気鞭の下には、普通のベルトを巻いている。
 スリットの深い紺色のロングスカートをはいているので、エミリーが歩く度にスリットから白い生足が見え隠れする。

 レン:「はぁい……」

 レンは素直に首を縮こまらせた。
 しかし実際にエミリーが電気鞭を使ったのは、下位機種のロボット達に対してだけである。
 シンディと違って、エミリーはあまり電気鞭を使わない。
 妹機のシンディよりも肉弾戦が得意なので、近接戦の時は徒手空拳や組み付いて捻じ伏せるくらいのことは平気で行う。

 レン:「お〜、防潮板がせり上がってる」
 エミリー:「あれで凌げるといいが」

 最近のビルの防潮板は地面が電動でせり上がるタイプが多い。
 警備員達がレインコートでもずぶ濡れになって、各エントランスの防潮板を上げていた。

 エミリー:「社長とプロデューサーに飲み物を買って行くぞ」
 レン:「お茶とコーヒーくらいなら給湯室にもあるんじゃ?」
 エミリー:「停電したらどちらも作れなくなるだろう?あとは水だ」
 レン:「そうでした。僕達のバッテリーで動かせないかな?」
 エミリー:「動かせるだろうが、恐らく社長はそれを望まれないだろう」
 レン:「うん、そうだね」

 飲み物を持って来たビニール袋に詰めると、ガイノイドとボーカロイドはエレベーターに乗り込んだ。

[同日19:30.天候:雨 同ビル18F 敷島エージェンシー社長室]

 敷島:「……今度の台風は仙台にも直撃するらしいです。平賀先生も十分気をつけてください」

 敷島は社長室の椅子に座って、今度は平賀太一に電話をしていた。
 平賀は今、仙台の自宅にいるという。

 平賀:「もちろんです。我が家は一応、太白区の高台なんで、浸水の心配は無いとは思うんですけどね」
 敷島:「そしたら今度は土砂崩れとかあるわけですよ。多分、のぞみケ丘の旧研究所はそろそろヤバいんじゃないですかね」
 平賀:「あれについては殆ど放棄された物件ですから。自分達には思い出のある建物なんで、ちょっと残念ですけど」
 敷島:「そうですね。平賀先生は大学に残ったりしなかったんですね」
 平賀:「さすがに大学も休校になりましたから。今、七海が土嚢を用意してくれてますんで」
 敷島:「七海も優秀なメイドロイドになりましたなぁ」
 平賀:「学習能力が遅いので、自分も心配だったんですがね」

 エミリーとレンが戻って来る頃、敷島の電話も終わった。

 エミリー:「ただいま戻りました」
 敷島:「おっ、ご苦労さん。どうだった?」
 レン:「新人の警備員さんに、僕達も人間だと思われましたよ」
 敷島:「してやったりだな。それがアンドロイドというものだ」

 敷島はニヤッと笑って頷いた。

 敷島:「さっきからまた雨と風が強くなったっぽい。浸水はもちろんのこと、停電もいつ起きるか分からない。特にお前達は電気があってナンボの存在だ。予備バッテリーは全部充電してあるが、それも限りがある。今のうちに今使用しているバッテリーも充電しておけ」
 レン:「分かりました」
 エミリー:「そういうわけだから、レンは早く部屋に戻れ」
 レン:「エミリーは?」
 エミリー:「私達はバッテリーを3個搭載しているから心配要らない」

 ボーカロイドはバッテリーが1個だけ。
 これは少しでも軽量化させて、激しいダンスもできるようにする為だ。
 おかげでマルチタイプの体重が未だに3桁を超えるのに対し、ボーカロイドは人間並みの体重で済んでいる。
 マルタイプのバッテリーは正・副・予備の3つである。

 敷島:「ちょっと事務室行って来る。井辺君がどこまで調整したか聞いて来るよ。電話鳴ったら応対よろしく」
 エミリー:「はい、かしこまりました」

 敷島は社長室を出ると事務室に向かった。

 敷島:「……っと、ちょっとその前にトイレ」

 事務室を通り過ぎて、トイレに向かう。
 その後でまた事務室に行こうとすると、レッスン室から物音がした。
 ボーカロイドにレッスンが必要なのかと思われるが、歌に関しては問題無い。
 しかし、他に問題がある。
 それはダンスだ。
 ボーカロイドは歌に関してはちゃんと入力すれば、ボイトレなど必要無い。
 しかし、ダンスに関しては入力した後で、微調整を行う必要があった。

 敷島:「誰かいるのか?」

 敷島が覗いてみると、巡音ルカが今度のライブで披露するはずのダンスを自主トレしていた。
 歌唱能力を最大限に引き出したボーカロイド3号機であるが、引き換えに身体性能に劣化が見受けられる。
 なので持ち歌に関しては、ダンサブルなものは殆ど無い。
 しかしライブなどで他のボカロと出演するとなると、そうもいかない。
 ダンスがメチャクチャ得意な鏡音姉弟と比べると、ダンスに関しての調整は1番手間が掛かるボカロになっている。

 敷島:「ルカ」
 巡音ルカ:「あ、社長。お疲れ様です」

 敷島はルカが一通りダンスを終えるのを待ってから声を掛けた。
 人間なら汗をかいているだろうが、ボーカロイドは汗1つかいていない。
 但し、体を冷却する為のファンが動いているせいか、そこは人間のように息を切らせていた。

 敷島:「自己調整か。あんまり無理はするなよ」
 ルカ:「はい、ありがとうごさいます」
 敷島:「井辺君が調整しているが、延期したライブがいつ行われるのかまだ分からないからな」
 ルカ:「はい。あの……そこで見ていらしてたんですよね?」
 敷島:「まあ、途中からだけどな」
 ルカ:「申し訳ありませんが、もう一度最初から見て頂けないでしょうか?私だけ、まだ数値が他のコ達と比べて低いもので」
 敷島:「悪いなぁ。本当はお前に激しいダンスはやらせたくないんだが、どうしてもライブの流れ的にそうなっちゃって……。いいよ。その代わり一回だけだ。ヘタすると停電するかもしれないから、充電ができなくなる」

 ボーカロイドがライブに出ると、そのバッテリーの消耗は激しい。
 ましてや、ダンスとなると尚更だ。
 だからライブの時は、充電済みのバッテリーや充電器をいくつも持ち込むのである。

 ルカ:「ありがとうございます」

 敷島は折り畳まれていたパイプ椅子を持って来ると、それを出して座った。
 そして、ルカはもう一度音楽を掛け直すと、それに合わせてダンスを始めた。
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