報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「八王子で過ごす」 3

2024-10-05 20:22:20 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[5月14日10時00分 天候:晴 東京都八王子市旭町 京王プラザホテル八王子]

 時間ピッタリに、善場係長はホテルにやってきた。

 善場「あら?皆さん、ロビーでお待ちでしたか」
 愛原「レイチェルが、部屋で待つよりは、こういう人のいる所で待っていた方が良いということでしたので」

 善場係長は日曜日だというのに、スーツ姿であった。

 愛原「レイチェル、それはHQの指示ですか?」
 レイチェル「いいえ。私の判断です」
 善場「そうですか……。日本は平和な所ですね」
 愛原「は?」
 善場「何でもありません。それより、部屋に向かいましょうか」
 愛原「はい」

 私達はエレベーターホールに向かい、そこからエレベーターに乗って客室に向かった。

 愛原「あ、ちょっと待ってください」

 リサ達の部屋に行く前に、私は自分の部屋に入り、そこの冷蔵庫で冷やしていたお茶を持って来た。

 愛原「お待たせしました」

 それからリサ達の部屋に入る。

 愛原「こちらのソファでいいですか?」
 善場「はい、ありがとうございます」

 私は部屋から持って来たお茶を善場係長に差し出した。
 使っていないグラスもそこに置く。

 善場「お構いなく」

 善場係長は1人用の椅子に座り、私とリサは丸テーブルを挟んで向かいのソファに座った。
 レイチェルは窓のカーテンを閉める。

 レイチェル「今はサーモグラフィで位置を特定できるのですが、念の為です」
 善場「さすがBSAAは、その辺りの教育もしっかりしてますね」

 もちろんドアには鍵を掛け、ドアチェーンもしている。

 善場「それでは明日の事を話す前に、今日の注意事項からお話し申し上げます」

 善場係長の言は、予想通りの物だった。
 ホテルから出ないようにという注意事項だったが、部屋からもなるべく出ないのが望ましいという。

 愛原「私はいいですが、このコ達が大変そうですね」
 善場「それを承知で付いて来たのでしょう?」
 リサ「まあね。今日は部屋でテスト勉強でもしてるよ」
 レイチェル「来週には、中間テストです」
 愛原「その鞄には、それが入っていたというわけか。通りでね……」
 リサ「そうだよ。ま、今日我慢すれば、明日は体育があるし。そこで思いっ切り体を動かすよ」
 愛原「……まあ、程々にな」
 善場「今日の話はこれで終わりにするとしまして、明日以降の話をさせて頂きます。これは内密にして頂きたいのですが、高橋容疑者に関しては、明日、逮捕状が出る予定です。既に緊急逮捕という形を取っていますが、容疑者コロナ陽性につき、今は中野区の警察病院にて入院中です。もちろん、数名の警察官が24時間体制で見張っております」
 愛原「まだ私の頭をいじくったという証拠も出ていないのに、よく逮捕状が取れますね?」
 善場「他にも容疑があるようですよ。いわゆる、別件逮捕というヤツですね。バイオテロの場合、本人が直接関与していなくても、その組織に所属しているというだけで拘束して良いことになっていますから」
 愛原「まあ、テロ組織は存在だけで悪ですからね。ましてや、そのメンバーとあらば……。まさか、高橋が……」
 善場「その真相についても、まもなく分かると思いますよ。バイオハザード・リベレーションズです」
 愛原「ヴェルトロですか……」
 善場「ヴェルトロの残党の件は偽情報で、実際はコネクションですね」
 レイチェル「コネクション……」
 愛原「コネクション?コネクションとは?」
 善場「今現在、BSAAが最も警戒しているバイオテロ組織です。あのエブリンを造り出した組織ですよ」
 愛原「ええっ!?」
 リサ「そこだったんだ!」
 善場「ルーマニアの菌根からエブリンの材料を受け取り、それで造り出したと言われています」
 愛原「高橋はそこのメンバーだと?」
 善場「それはまだ不明ですが、何らかの繫がりはあるとの疑いがあります」
 愛原「それはどうして、そのような疑いが出たのでしょう?」
 善場「1つは霧生市内ですね」
 愛原「霧生市!?」
 善場「どうしました?」
 愛原「あ、いえ……。霧生市がどうかしたんですか?あそこはまだ、安全宣言が出ていないんですよね?」
 善場「そうです。ですが以前、1度そこを探索したことがありましたよね?」
 愛原「ええ。そこでリサ以外の日本版リサ・トレヴァー達を倒しましたが……」
 善場「そこで私はある物を発見しました。今ここではお見せできませんが、高橋助手が旧UBCSのメンバーだったという証拠です」
 愛原「UBCS?」
 レイチェル「……Umbrella Bio Hazard Countermeasure Service.」
 善場「その通りです。さすが、レイチェルですね」
 愛原「何でしたっけ、それ?」
 善場「記録では、愛原所長も霧生市のバイオハザードに巻き込まれた時、一時期共に行動されていますよ?」
 愛原「ええっ!?」
 善場「記録によりますと、霧生市郊外山中にある仏教寺院、大山寺にて、UBCSの隊員と行動したとありますが?」
 愛原「えーと……あっ!あったあった!結局は死んでしまったけど……。抗ウィルス剤の存在とか、彼のおかげで知ったんだ!」
 リサ「お兄ちゃんはその仲間だったってこと!?」
 善場「あくまでも、まだその『疑い』です」
 愛原「仲間だったにしては、あんまり高橋、そのUBCS隊員を知ってるようではなかったけど……」
 善場「顔見知りではなかったのでしょうね。所長も昔は大手の警備会社にお勤めだったそうですが、都内以外の事業所の社員の方を御存知ですか?」
 愛原「いや、あまり知りませんな。……ああ、まあ、そういうことですか」
 善場「はい。UBCSは非合法組織です。“青いアンブレラ”と同様に。高橋容疑者、やたら銃の扱いが上手いと思いませんでしたか?」
 愛原「確かに……」
 リサ「お兄ちゃん、しばらく帰って来れない?」
 善場「そうですね。もう何年も……」
 リサ「また、お別れか……」

 リサは寂しそうに呟いた。

 善場「新たな出会いもありますよ。レイチェルがそうでしょう?」
 リサ「でも、レイチェルも今年度までだけだし……」
 善場「大学に進学すれば、リサのことですから、友達もできると思いますよ」
 愛原「忘れがちですけど、斉藤早苗のことはどうなりました?」
 善場「鋭意捜索中です。沖縄の、それも本島から出た形跡が無いので、専らそこを捜索中です」
 愛原「そうですか……」
 善場「リサ達は明日、どうされますか?」
 愛原「あ、はい。JR八王子駅から出る特急に乗せて通学させる予定です。リサ達には、もうキップを買ってあります」
 善場「かしこまりました。それでは、ここまでの経費を精算しましょう。領収証はありますか?」
 愛原「あ、はい。全て取ってあります」
 善場「それでは、こちらの書類に記入をお願いします。その間、私はリサ達と話をしていますので」
 愛原「分かりました」

 私はレイチェルが座っていたライティングデスクの椅子を譲ってもらい、代わりに私が座っていたソファに座ってもらった。
 善場係長が2人に話していた内容は、何だか私に関する話よりも重要そうに聞こえた。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

“私立探偵 愛原学” 「八王子で過ごす」 2

2024-10-05 16:53:56 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[5月14日07時00分 天候:晴 東京都八王子市旭町 京王プラザホテル八王子]

 今朝は7時に起きた。
 昨夜はリサと話をした後、マッサージをしてもらった。
 リサの目的は私の血中老廃物を吸い取ることだろうが、これが今はリサに認められている『吸血』である。
 リサにとっては私の血や、老廃物とはいえ、私の体の一部を『捕食』できるということで、折に触れてマッサージしてくることがあった。
 最初は鬼型BOWに捕食されているようで怖かったが、終わった後はスッキリするので、今では重宝している。
 おかげで昨夜は、よく眠れたものだ。
 リサ曰く、これができるのは、自分だけであろうとのこと。
 起きた後はバスルームに行って顔を洗ったり、髭を剃ったり、歯を磨いたり……。
 着替えてから、隣の部屋に内線電話を掛けた。

 レイチェル「おはようござ……Oh!」
 リサ「先生、おはよ!」

 レイチェルが最初電話を取ったのだが、すぐにリサに変わった。

 愛原「あ、ああ、おはよう。その様子だと、2人とも起きたみたいだな」
 レイチェル「リサはさっきまで寝て……」
 リサ「わたしはちゃんと時間通りに起きたよ!?」

 レイチェルの言葉が、それが嘘だと否定する。
 『鬼はすぐウソをつく』と善場係長が言ってたな。
 いや、上野利恵だったかな?
 まあいいや。

 愛原「準備ができたら朝食会場に行こうと思うんだが……」
 リサ「そうだね!急いで準備するから、先生は部屋で待ってて!」
 愛原「分かった」

 準備が終わったら迎えに行くという意味かと思ったのだが、違ったようだ。

 リサ「先生がわたし達の部屋で待ってるんだよ?」
 愛原「ええっ!?」

 大丈夫かな?
 護衛の為かと思い、私はスマホや財布など、貴重品だけ持って隣の部屋に向かった。

 レイチェル「愛原センセイ、おはようございます」
 愛原「ああ、おはよう。レイチェルは準備できてるみたいだな」
 レイチェル「はい。私はいいのですが……」

 レイチェルはバスルームを見た。

 レイチェル「リサが準備中です」
 愛原「だろうと思った。あいつ、寝相大丈夫だった?」
 レイチェル「朝起きたら、ベッドから落ちてました」
 愛原「だろうな」

 レイチェルが寝ていたベッドは、さすが軍人の卵だ。
 キチンと整えられている。
 しかし、リサのベッドは掛布団が半分ほど床に落ちてしまっている。
 恐らく頭を下にして落ちたのだろう。

 愛原「今度、その時の寝相を写真に撮って報告書に載せてやれば?」
 レイチェル「Hum...それは良いレポートになりそうですね」
 リサ「ちょっと!勝手なことしないでよね!」

 リサがバスルームから顔を出した。
 白い下着姿のままだった。

 愛原「こらこら!ちゃんと服着ろ!」
 レイチェル「愛原センセイの前ですよ」
 リサ「先生が変なこと言うからぁ……」

 リサはブツクサ文句を言いながら、またバスルームに戻った。

 レイチェル「リサが白いインナーを着るのは珍しいかもです。いつもは黒のインナーなのに。何かありましたか?」
 愛原「そういえば昨夜、マッサージが終わった後に、『明日は白と黒、どっちがいい?』なんて聞いてきたんだ。俺が何の事か聞いたら、下着を2つ取り出して、どっちがいいかって」

 

 リサ「レイチェルじゃ、大人過ぎて、却って先生には刺さらないからね」

 リサは服を着て部屋から出て来た。
 昨日の服とは違って、白いTシャツと、下のショートパンツは変わらない。

 レイチェル「センセイは、あまり派手なインナーはお好きではないようですね」
 愛原「そうかもな」
 レイチェル「私のもナイキのインナーですが?」

 レイチェルはシャツの隙間から、黒いナイキのインナーを少しだけ見せてきた。

 愛原「レイチェルは、いつでも軍服に着替えられるように、ということだろ?」
 レイチェル「そんなところです。任務中ですからね」

 任務の内容によっては、BSAAの軍服を着用する。

 レイチェル「リサ、それだとショーツがセンセイに見えませんよ?」
 リサ「あっ、そうか!スカート持ってくれば良かったなぁ……。制服に着替えようか?」
 愛原「いや、いいよ。可愛い子は何着ても似合うってもんだ。それより、早いとこ朝食会場に行くぞ」
 リサ「おー!」

 リサは『可愛い』と言われて、少し嬉しかったようだ。
 レイチェルはシャツの上からパーカーを羽織った。
 そこに銃でも仕掛けているのだろう。

[同日08時00分 天候:晴 同ホテル2階・レストラン『ル・クレール』]

 朝食会場に着いた私達は、そこでバイキングを楽しんだ。
 基本的にこのレストランは、朝食も昼食も夕食もバイキング形式であるらしい。
 当然リサは、皿に山盛りに料理を載せていた。

 リサ「レストランのバイキング最高!」
 愛原「それは良かった……」

 私はというと、普通に好きな物を皿に載せている。

 愛原「10時に善場係長が来るから、それまでに部屋に戻っておかないとな」
 リサ「分かった!」
 レイチェル「そのことなんですが、センセイ」
 愛原「何だ?」
 レイチェル「ロビーで待っていて、そこで合流して、一緒に部屋までというわけには行かないのでしょうか?」
 愛原「それはアリかもな。15分くらい前になったら、ロビーで待っていよう」
 レイチェル「部屋で不審者の訪問に警戒するよりは、ロビーで待っていた方が良いかもです」
 愛原「確かにな」
 リサ「ねぇ、先生。このレストランって、昼も夜もバイキングなんだよね?」
 愛原「らしいな」
 リサ「善場さんは、今日1日このホテルから出るなって言ってるんだよね?」
 愛原「ああ、そうだが……」
 リサ「むふー!」

 リサは鼻息を荒くした。

 愛原「昼食は別の店で食べような」
 リサ「えー……」
 愛原「ルームサービスでもあれば、部屋から出ずに済むのだが……」
 レイチェル「それはそれで危険ですよ。ルームサーバーに扮したテロリストが訪問してくるかもしれません」
 愛原「あ、そうか……。まあ、とにかく、善場係長の話が終わってからだ。いいな?」
 リサ「はーい……」

 これだけ食べても、リサは太らないどころか、日本の高校生女子3年生の平均にようやく届くか否かの体型とは……。
 余分なエネルギーは、全てGウィルスが吸収してしまうそうだ。
 そしてそれで満腹中枢の働きが鈍るので、リサはあまり満腹感を感じないとのこと。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

“私立探偵 愛原学” 「八王子で過ごす」

2024-10-03 21:31:26 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[5月13日21時00分 天候:晴 東京都八王子市旭町 京王プラザホテル八王子・愛原の部屋]

 部屋に戻ると、私は先に風呂に入ることにした。
 もちろん、買って来た飲み物を先に室内の冷蔵庫に入れておくことは忘れない。
 シティホテルの部屋ではあるが、バスルームの構造はトイレと洗面所、バスタブやシャワーが1つの空間にあるタイプである。
 もちろん安いビジネスホテルのそれよりは広いが、洗い場付きの広いバスルームは、もっと高い部屋でないと無いらしい。
 バスタブは広い物であったが。
 風呂から上がり、テレビを点けてニュースを見る。
 この時間にニュースをやっているのは、NHKくらいか?
 それでも、高橋のことについては、何も報道していなかった。
 報道規制でも敷いているのだろうか?
 そんな時、パールから電話が掛かって来た。

 愛原「おー、パール!お疲れ様!大丈夫だった!?」
 パール「マサは……逮捕されたんですね」
 愛原「ああ……。まあ、俺の頭をいじくった罪でな……。お前も色々疑われて大変だったな?」
 パール「いえ……。私は前科者ですから。疑われて当然です」
 愛原「こうして電話を掛けて来たってことは、無事に釈放されたってことだな?」
 パール「ええ。もっとも、警察には居場所はハッキリさせておくようにと言われましたけど」
 愛原「そうか……」

 未だに重要参考人としての立場は消えていないというわけだ。

 愛原「今、家にいるのか?」
 パール「はい」
 愛原「スマンが、俺は明後日、頭の手術がある。大掛かりな物になるだろうから、しばらくは帰れない。家の留守の方、よろしく頼むな?」
 パール「はい」
 愛原「リサは月曜日から学校だ。俺の護衛の為に明日までは一緒のホテルにいるけど、月曜日、学校が終わったら帰って来ると思う。仲良くしててくれな?」
 パール「リサさんと私は、あまり接点がありませんから……」
 愛原「そうか……」
 パール「先生。マサのことは、私も詳しくは知りません。ただ、あいつは手先が器用なヤツです」
 愛原「それは知ってる。車やバイクの改造も、それで上手くやってたんだろう。霧生市の時だって、あいつ、改造パーツを見つけては、銃を改造していたからな」
 パール「……そのマサが言っていたことなんですが……」
 愛原「何だ?」
 パール「その霧生市には……『魔王が棲んでいる』と言っていました」
 愛原「はあ?どういう意味だ?」
 パール「分かりません。あいつ、冗談っぽく言ってましたから……」

 リサのことだろうか?
 リサは学校の友達からは、『魔王』と呼ばれてるし……。
 でも、その『魔王』は今、ここにいる。
 また、生き残っていた日本版リサ・トレヴァー達はとっくの昔に掃討した。
 最後まで生き残っていた『1番』も、今はこの世にいない。

 愛原「警察には話したのか?」
 パール「話しましたよ。でも、『ふざけるな!こっち真剣に聞いてるんだ!』と、机をバンバン叩いてキレられましたよ」
 愛原「そうか……」

 霧生市は未だに住民は戻っておらず、廃墟の町のままだと聞いている。
 日本版リサ・トレヴァー達は掃討し、さすがにもう生き残っているゾンビとかもいないだろうに、どうして政府は『安全宣言』を出さないのだろうと思っている。

 愛原「まあ、とにかく、明後日にはリサが帰るし、俺も1週間くらいで連絡ができるだろうから、しばらく待っていてくれ」
 パール「かしこまりました」

 私は電話を切った。
 その時、今度は部屋の電話が鳴った。

 愛原「うん?」

 電話を取る。

 愛原「はい、もしもし?」
 リサ「あ、先生?そっちの部屋に行っていい?」
 愛原「んん?何か用か?」
 リサ「うーん……色々話しがしたい」
 愛原「まあ、いいや。こっち来な。……ああ、ダクトを通って来るなよ?」
 リサ「分かってるよ」

 電話を切ると、すぐに部屋のインターホンが鳴った。

 愛原「はいはい」

 私はドアスコープから外を覗いた。
 そこには口角を上げて、こちらを真っ直ぐに見つけるリサの姿があった。

 愛原「あいよ」

 私がドアを開けると、リサがサッと入って来た。
 そして、すぐにドアを閉める。

 リサ「不審者が入って来たらダメだもんね」
 愛原「あ、ああ、そうだな。廊下には誰かいたか?」
 リサ「今のところは……」
 愛原「ちゃんと、カードキー持って来たか?」
 リサ「うん!」

 リサの部屋はカードキーが2枚発行されている。
 リサ用とレイチェル用だ。

 リサ「ジュースも持って来たよー」
 愛原「レイチェルはどうした?」
 リサ「部屋で報告書書いてる。レイチェルはレイチェルで、ゴツいパソコン持って来てるんだね」
 愛原「あー……軍隊で使うヤツか?強い衝撃を受けても壊れないヤツ。あんなの持って来てたんだ」
 リサ「そうみたい。その後、お風呂入るみたいだから……あ、先生も入ったんだね」
 愛原「今日は何だか疲れたからな。病院に行くだけで疲れた」
 リサ「あー……そうか。わたし、邪魔?」
 愛原「まあ、いいや。善場係長が来るのは10時だから、そんなに早起きすることもないだろう。朝食の時間は朝7時からだし。7時から10時か」
 リサ「やっぱり、バイキングだよね?」
 愛原「ああ。2階のレストランは、基本的に昼食も夕食もバイキングらしいな」
 リサ「そうなんだ」
 愛原「それで、話ってのは?」

 リサは持って来たジュースのペットボトルの蓋を開けながら言った。

 リサ「ミキからのLINEのこと」
 愛原「太平山美樹か。秋田の」
 リサ「東京中央学園にする?って聞いたら、そこがいいって。ただ、ミキはあんまり頭良くないから、推薦入試はムリかもって言ってた。
 愛原「一般入試だと年明けの冬とかだな。リサは大丈夫なのか?」
 リサ「わたしは付属の高校からの進学だからね。普段の成績さえ確保できていれば、推薦入試で行ける」
 愛原「それでも、無試験ではないわけだな」

 それでも、他校からの推薦入試とはまた別枠且つ、試験内容も異なるのだろう。

 リサ「まあね」
 愛原「オマエは成績がいいから、そんな心配しなくてもいいんだろうがな、それでも油断しちゃダメだぞ」
 リサ「分かってるよ。それでね、わたしが聞きたいことが1つあって……」
 愛原「ん?」
 リサ「霧生市って、今どうなってるの?」
 愛原「どうなってるって……。未だに政府からの安全宣言が出されないもんだから、町全体が廃墟と化しているって聞いてるが、それがどうした?」
 リサ「なーんかね、ミキが変なこと言ってたんだよ」
 愛原「変なこと?」
 リサ「『鬼の王』がいるって」
 愛原「『鬼の王』!?」

 今度は『鬼の王』か!?
 霧生市って、今ホントにどうなってるんだ???
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

“私立探偵 愛原学” 「八王子で過ごす」

2024-10-03 13:50:34 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[5月13日20時00分 天候:晴 東京都八王子市東町 鳥貴族京王八王子店→同市旭町 セブンイレブン八王子旭町店]

 夕食は京王八王子駅近くの鳥貴族で取った。
 ここならレイチェルの大好きな焼き鳥が安く食べれるし、リサもリサで肉を食えることになるので、体内のGウィルスも鎮めることができる、と……。
 他のリサ・トレヴァーなどが有していたGウィルスは、人間の血肉『しか』受け付けなかったのに対し、ここにいるリサのは人間の血肉が『優先』であって、別に他の獣肉で代替できるという所が違う。
 その違いを上層部は解析したいらしいが、いかんせん前者のサンプルが殆ど無い為に難しいらしい。

 愛原「じゃあ、そろそろ戻ろか」
 リサ「先生も食欲が戻ったようで何よりだよ」
 愛原「昼間は色々あって、殆ど食えなかったからな……」

 因みにリサとレイチェルは、制服から私服に着替えている。
 レイチェルがそれでもジャンパーを羽織っているのは、その下に武器を隠しているからだろう。
 リサはというと、肩が出るTシャツを着ている。
 スポプラの肩紐は剥き出し。
 下はデニムのショートパンツに穿き替えている。

 愛原「そろそろ行こうか」
 リサ「ゴチっす~!」

 私はレジの方に行き、そこで支払いをした。

 愛原「カードでお願いします」
 店員「かしこまりました」
 愛原「あと、領収証ください」
 店員「はい、領収証ですね」

 今は手書きじゃなく、レジから自動で印刷される。
 こういう飲食代も、デイライトで持ってくれるとは……。
 店をあとにし、ホテルに戻る。

 リサ「ねーねー!セブン寄っていい?」
 愛原「いいよ」

 おやつか何かを買うのだろう。
 多分、ホテルの最寄りのコンビニと言ったら、ここか駅のNewDaysのどちらかだろう。
 私も飲み物とかを買って行くことにした。
 水とか、風呂上がりのビールとかは必要だろう。
 それをここで買って行くことにした。
 部屋に冷蔵庫はあるから、それに入れて冷やしておいて……と。

[同日20時15分 天候:晴 同市旭町 京王プラザホテル八王子]

 ホテルに戻ると私のスマホに着信があった。
 画面を見ると、善場係長からだった。

 愛原「はい、もしもし。愛原です」
 善場「愛原所長、お疲れ様です。……危険な状況の中、御夕食をお楽しみ頂いたようですね?」
 愛原「え……えっと……何か、問題が……?」
 善場「今、所長は少し危険な状況に置かれています。たまたま今回は何も無かったようですが、明日はホテルから出ないでくださいね。できれば、部屋からも出ない方が好ましいのですが」
 愛原「も、申し訳ありません!護衛もいるから大丈夫かなと思ったのですが……」

 私はチラッと2人の女子高生を見た。

 善場「御無事だったようなので、今回は良しとしましょう。それに、食事などで部屋からは出ないといけないようですしね」
 愛原「ホテルのレストランは高いですよ」
 善場「構いませんよ。立替払いが厳しいようでしたら、カード払いでも結構ですから」
 愛原「す、すいません……」

 実は先ほどセブンイレブンに寄ったのは、セブン銀行のATMでお金を下ろすという理由もあったのだ。

 善場「私も帰京しました。明日、明後日以降の予定について打ち合わせをさせて頂きたいのですが、宜しいでしょうか?」
 愛原「日曜日なのに大変ですね……」
 善場「今は重大な時ですから」

 善場係長の、見た目に反してタフな体力は、Gウィルスによるものだろうか。

 善場「明日の10時にお伺いします。それで宜しいでしょうか?」
 愛原「分かりました。どちらの部屋でお話ししましょうか?」
 善場「リサ達の部屋の方が広いので、そちらにしましょう」
 愛原「分かりました。リサ達にも伝えておきます」
 善場「部屋を訪問させて頂く前に、必ず御連絡差し上げます。くれぐれも、不審者には気をつけてください」
 愛原「了解しました」

 私は電話を切った。

 リサ「今の電話は?」
 愛原「善場係長からだよ。何か、本当はホテルに着いたら、外出しちゃいけなかったらしい。何か、かなり危険な状態らしくて……」
 リサ「その割には、電車で移動させてたけどね」
 レイチェル「そうですね……」

 レイチェルは少し考え込んだ。

 レイチェル「実は、この町の方が危険だということでは?」
 愛原「え?」
 レイチェル「東京駅周辺は安全で、実はこの町の方が危険だということでは?」
 リサ「治安が悪い?」
 愛原「八王子の治安問題は聞いた事が無いな……。いや、待て……」

 高橋のヤツ、甲州街道を爆走していたことがあったと言っていたな……。
 高橋の仲間がいるということか?

 愛原「とにかく、キミ達も注意して欲しい。明日、善場係長がこっちに来るってさ」
 リサ「善場さんが?日曜日なのに?」
 愛原「今、忙しいんだろうな。で、キミ達の部屋で話をすることになったから、あまり部屋を散らかさないように」
 レイチェル「分かりました」
 リサ「えー……わたしはきれいに使うよ?」
 愛原「早速ベッドに飛び込んで、メチャクチャにしてないだろうな?」
 リサ「ギクッ!」
 愛原「俺の部屋より、そっちの部屋の方が広いだろ?」
 レイチェル「ソファとテーブルがありますね」
 愛原「そういうことか。じゃあ、そういうことだよ。お茶のルームサービスとかも頼んだ方がいいか」
 レイチェル「それなんですけど、このホテル、ルームサービスは無いみたいです」
 愛原「えっ、そうなの!?」

 シティホテルでも無い所があるのか……。

 リサ「部屋にインスタントのお茶とかはあったよ?」
 愛原「うーん……それか。さっき、コンビニに寄った時、買っておけば良かったなぁ……」
 リサ「今から買って来る?」
 愛原「いや、善場係長からは外出禁止を言われたし……。しょうがない。自販機で何か買っておくか」
 リサ「自販機があるの?」
 愛原「3階にコインランドリーの他、自販機コーナーがあるって話だ」
 リサ「この辺はビジネスホテルみたいだね」
 愛原「いや、案外それがシティホテルの設備なんじゃないか?沖縄のシェラトンとかにもあっただろ?」
 リサ「そういえば……」
 愛原「ビジネスホテルの方が、シティホテルに近づいたのかもしれない」
 リサ「なるほど……」

 善場係長は、『お構いなく』と言いそうだが、こちらも礼儀を見せないとな。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

“私立探偵 愛原学” 「八王子に到着」

2024-10-03 11:36:31 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[5月13日18時19分 天候:晴 東京都八王子市旭町 JR中央快速線1793T電車2号車内→八王子駅]

〔まもなく八王子、八王子。お出口は、右側です。横浜線と、八高線はお乗り換えです〕

 東京駅から凡そ50分ほどで八王子に到着する。
 特快に乗ると速い。
 立川から先は各駅停車になるが、それでも駅間距離が長くなる為か、スピード感は落ちない。

 

〔はちおうじ~、八王子~。ご乗車、ありがとうございます。次は、西八王子に、停車します〕

 私達はここで電車を降りた。
 発車メロディで、『夕焼け小焼け』が流れる。
 これは作詞者の中村雨紅が八王子市出身であることに因んだもの。
 私達はエレベーターでコンコースに上がった。
 女子高生2人の荷物は手持ちのボストンバッグだからまた良いが、私の荷物がキャリーケースである為。
 東京都西部で最も大きな町の中心駅ということもあり、多くの利用者で賑わっている。
 ここ以外にも京王八王子駅があって、これでも分散されている方なのだろう。

 リサ「先生、トイレ行ってきていい?」
 愛原「いいよ。俺も行こう」
 リサ「先生、捕まるよ?」
 愛原「誰が女子トイレまで行くっつった!?」
 リサ「ここなら一緒に入れるよ?」

 リサは多目的トイレを指さした。

 愛原「そこもお前と入ったら通報されるだろうがな」

 トイレを済ませた後は、改札口を出る。
 本当ならこのまま宿泊先のホテルに向かうところだが、私は1つ寄り道をすることにした。
 寄り道と言っても、別の駅の外に出て明後日の方向に向かうわけではない。
 それは指定席券売機。

 リサ「何をしてるの?もしかして、わたしと愛の逃避行の準備?BSAA振り切って!」
 レイチェル「それは無理ですよ。BSAAは地球のどこまででも、BOWを掃討します」
 愛原「違うって」

 私が購入したのは、特急券と乗車券を合計4枚。

 愛原「はい。月曜日の通学用」
 リサ「ん?」
 愛原「八王子6時48分発、特急“はちおうじ”4号、東京行き。東京駅には7時42分に着くが、そこから乗り換えて上野に行っても学校には間に合うだろう?」
 リサ「まあ、それなら間に合うね」
 愛原「上野東京ラインに乗り換えれば、乗り換え無しで上野に行ける」
 リサ「それはいいね。6時48分かぁ……。ホテルで朝食は……無理だよね?」
 愛原「駅弁でも買ったら?」

 私はNewDaysを指さした。
 かつては専門の駅弁屋が存在していたそうだが、今は撤退し、駅弁はNewDaysで扱っているとのこと。

 愛原「さっきの中央特快の通勤電車と違って、特急だから、車内で弁当食えるよ」
 リサ「それならいい!」
 愛原「キップは無くさないように……」

 私は乗車券と特急券を2枚ずつ、2人に渡した。
 近距離である為、乗車券も『八王子→東京都区内』とか『八王子→東京山手線内』ではなく、ピンポイントで『八王子→上野』である。

 愛原「中央線は早朝から混むからな。俺からのサービスだよ」
 レイチェル「ありがとうございます」
 愛原「東京から上野方面は空いてると思うけど……」
 リサ「うん、多分空いてる。アキバから乗り換えるけど、やっぱ東京駅に行く方が混んでる」
 愛原「だろうな。よし、下準備はここまで。ホテルに行くぞ」
 リサ「はーい」
 レイチェル「Yes,sir!」

[同日18時45分 天候:晴 同市内同地区 京王プラザホテル八王子]

 駅前のホテルに到着する。
 JR八王子駅前にあるので、今回はJRを利用したのもこれが理由。
 名前の通り、京王グループのホテルなのに、最寄りは京王八王子駅ではなく、JR八王子駅という不思議。
 用地取得の関係だろうか。

 リサ「だいぶ前、このホテルに泊まったことあるねー」
 レイチェル「本当ですか」
 リサ「まあ、色々とあったけどね」
 レイチェル「セキュリティのしっかりしているホテルを選ぼうとすると、これくらいの規模でないとダメということでしょう」
 リサ「まあ、BOWに侵入されたら意味無いけどね」
 レイチェル「だから、私がいるのです」
 リサ「あ、はい」

 私はフロントに行って、チェックインした。
 部屋割りは当然の如く、私がシングル、リサとレイチェルがツインである。
 カードキーを受け取り、エレベーターに向かう。

 リサ「え、先生。一緒に泊まろうよ?」
 愛原「さすがにそれは倫理上、できない」
 レイチェル「セキュリティ上は、リサの言う通りなんですけどね」
 リサ「でしょ!?でしょ!?」
 愛原「しかしだなぁ……」
 レイチェル「あの人……高橋サンが裏切り者だと分かった以上、センセイもけして安全とは言えないかもしれませン」
 愛原「もうこの部屋割りになってるんだから、しょうがないだろ」

 エレベーターに乗り込んで、客室フロアに向かう。
 因みに部屋はデイライトが取ってくれたので、どういうプランで予約され、どのランクの部屋が予約されたのかは分からない。
 少なくとも、結婚式を執り行ったりすることもできるシティホテルなので、それなりに高い値段のホテルであることは間違いないはずだ。
 ただ、ランクの高い部屋だと最上階とか、その付近の部屋になるはずだが、そうではなかったので、そこまで高いランクの部屋ではないもよう。
 そしてエレベーターを降り、客室へ向かう。
 リサとレイチェルの部屋は角部屋で、私はその隣……。
 角部屋のツイン……コーナーツインというわけか。
 あれ?ということは、そこそこ高いランクなのでは?

 愛原「じゃあ、準備ができたら夕食食べに行こう」
 リサ「はーい」

 私はカードキーでドアを解錠し、部屋に入った。

 愛原「ほう……」

 案の定、ベッドはダブルサイズだった。
 デスクも窓側にあって広い。
 これなら明日、ここで事務作業ができるかもな。
 私はキャリーケースからノートPCを取り出して、デスクの上に設置した。
 スマホでWiFiの接続状況をチェックしたが、それも完璧。
 リサも大喜びだろう。
 私はスマホで、近くの焼き鳥屋を検索した。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする