報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“愛原リサの日常” 「女の戦い」

2025-02-17 20:17:34 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[7月6日01時57分 天候:曇 東京都墨田区菊川2丁目 愛原学探偵事務所2階]

 1階の玄関扉が外から解錠される。
 この建物の1階玄関は、防弾ガラス扉になっている。
 それに、外から見られないように、スモークフィルムが貼られたものとなっている。
 この建物は元々、暴力団の組事務所だったという噂もあり、それが肯定される理由の1つになっている。
 解錠も普通の鍵ではなく、セキュリティーカードによる電子ロックとなっている。
 それが解施錠される時、ウィィンとモーターの音がする。
 高野芽衣子は、その音を聞き逃さなかった。
 彼女は今、事務所横の倉庫で寝ている。
 倉庫だから色々と物は置かれているが、特徴的なのは、前の事務所で使用されていた折り畳みベッドが使用されていること。
 高橋が、ここを仮眠室として利用できると提言したのが始まりだ。
 愛原としては他にも寝る場所はあるし、わざわざ仮眠室にする必要は無いと消極的だった。
 しかし、今は高野が同じ主張をして、ここで寝ている。
 倉庫といっても、そんなに物が置かれているわけではない。
 1階のガレージにも倉庫はあるし、3階や4階にも収納スペースはある上、屋上にはプレハブの物置まであるからである。

 高野「フム……」

 高野は起き上がった。
 こんなこともあろうかと、服は上着を脱いだだけで、あとはそのままで眠っていた。
 文字通りの仮眠である。
 そして、コンバットナイフと銃を身に付けた。
 玄関から入って来た人物はガレージを通ってエレベーターには乗らず、ヒタヒタと階段を昇って来る。
 そのまま3階から上に行くだろうかと思っていたが、件の人物は2階のドアを開けた。
 階段側からアクセスしようとすると、ドアを開けると廊下がある。
 入ると、右手沿いに扉が2つ並んでいる。
 左手側にはエレベーターの扉がある。
 手前の扉が事務所入口、奥が倉庫入口になっている。
 その人物はそっと階段室の扉を閉めると、事務所のドアを開けようとした。
 営業時間以外は、事務所の扉には鍵が掛かっている。
 こちらはカードキーではなく、普通の鍵だ。
 そっと鍵を差して回したつもりだろうが、シリンダー錠の哀しさで、解施錠の際には、『カチッ!』と、それなりの音がする。
 そして、その人物が事務所に侵入する。
 一旦扉が閉まってから、高野はそっと扉を開けた。
 玄関の扉はオートロックだが、事務所のそれは違う。
 普通は扉を閉めた後、敵に侵入されないよう、内鍵を閉めるものだが、その人物はそれをしなかった。
 よほど自信があるのか、それとも、それを忘れるほど焦っているのか。
 それとも、ただのうっかりか。
 その人物は、愛原の机の引き出しを開けた。
 そこから何かの鍵を取り出した。
 それは金庫の鍵。
 それを持って、愛原の机の斜め後ろにある金庫の扉を鍵を差し込んだ。

 高野「そこまでだ。動くな」
 ???「!!!」

 高野は金庫破りをしようとしていた人物の頭に、拳銃を突き付けた。
 そして、空いている左手で頭に付けたヘッドランプを点灯させる。
 そこに映ったのは……。

 パール「チッ!」
 高野「まあ、だろうね。多分、読者もそうだと思っていたでしょうよ」
 パール「……何で私だと分かった?」
 高野「コネクションと違って、正義側のテラセイブが愛原先生を裏切るはずがないもの。いずれは戻って来るものだと思っていた。まあ、さすがにこんな夜中は非常識だと思うけど」
 パール「……見逃してくれない?」
 高野「条件が複数ある。1つは、『どうしていきなり愛原先生の前から逃げたか?』『どうしてこの時間に、それも、この金庫を勝手に開けようとしているのか?』この質問に答えてくれたらね?もちろん、正直に」
 パール「最初の質問の回答。テラセイブに、作戦失敗の報告をいち早くしないといけなかった為。2つ目の質問は、作戦失敗の尻拭いを命じられた為」
 高野「曖昧過ぎるね。不合格」

 高野は拳銃の引き金を引いた。
 建物中に、大きな発砲音が響いた。

[同日02時17分 天候:曇 同地区内 愛原家4階・リサの部屋→2階事務所]

 リサ「わあっ!?」

 変な夢を見ていた為に、鬼形態に戻っていたリサ。
 長く尖った耳は、人間形態よりも聴力が鋭くなっている。
 だから、発砲音が聞こえた時にはいち早く目が覚めた。

 リサ「な、なに!?」

 リサはベッドから飛び起きた。
 丸首や半袖に紺色の縁取りがされた体操服に、紺色のブルマを穿いている。
 BSAAに追い詰められてロケットランチャーの直撃を受けるという夢を見ていたので、少し汗をかいていた。
 部屋の外に飛び出すが、そこは何も無い。

 愛原「何だ、今の音は!?」
 リサ「先生も聞こえた!?」
 愛原「銃の発砲音がしたぞ!?どうなってる!?」
 リサ「どこから聞こえた?」
 愛原「分からん。だが、高野君が下の階で寝てるはずだ。行ってみよう」
 リサ「うん!」

 リサは愛原について、4階からエレベーターに乗り込んだ。
 そして、高野が寝ている2階に向かう。
 エレベーターを降りると、事務所の照明が点いていた。

 愛原「高野君!?」
 高野「あ、先生。お騒がせして申し訳ありません」
 愛原「さっき、銃の音がしたが……」

 愛原は、倒れているパールの姿を見つけた。

 愛原「パール!?何でここに!?」
 高野「ご安心ください」
 愛原「まさか、死んで……」
 高野「違いますよ。ちょっと脅かして、眠らせているだけです」

 高野の話では、銃声の正体は空砲。
 それでパールが怯んだ隙に、麻酔注射を打ち込んで眠らせたとのこと。

 高野「そこの金庫を勝手に開けようとしたのです。何か心当たりはありませんか?」
 愛原「金庫だって?札束と金塊くらいしか入れてないが……。あ、いや、待てよ……」

 愛原は金庫を開けると、札束や金塊を入れている棚ではなく、1番下の引き出しを開けた。
 その中には、ボイスレコーダーが入っている。
 これは群馬に行った際、斉藤秀樹とのやり取りを録音したものだ。
 原本はデイライトに渡したが、コピーを保存して金庫に保管していた。

 愛原「これを狙っていたのかな?」
 高野「そうかもしれませんね」

 だが、高野は別の物を注目していた。
 それが札束だったのか、金塊だったのかは不明である。

 高野「私は一旦、ここで消えます。今のテラセイブは敵対したところで大したことはありませんが、そのメンバーが不審な動きをしていると、“青いアンブレラ”に報告しないといけませんので」
 愛原「そうか。キミのことは、デイライトさんには内緒にしておくよ」
 高野「ありがとうございます。それでは、屋上から失礼致します」
 愛原「ああ」

 屋上からエイダ・ウォンよろしく、フックショットを使って近隣のマンションを伝って移動するのだろう。
 フックショットを使う描写があるのかは不明だが、まるでキャッツアイだ。

 リサ「パールさん、どうするの?」
 愛原「取りあえず、部屋に連れて行って寝かせとけ」
 リサ「う、うん」

 

 リサは前屈みになって、パールを抱え起こした。
 さすがは鬼形態。
 女性とはいえ、大の大人を軽々と抱えた。

 愛原「俺は屋上のドアを確認してくる。高野君が去ったら、あとは内側から鍵を掛けるだけだからな」
 リサ「分かった」

 リサ達はエレベーターに乗り込み、リサはパールの寝室がある3階へ。
 愛原は屋上への階段がある4階へ向かった。
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“私立探偵 愛原学” 「青いアンブレラと夕食」

2025-02-17 11:46:30 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[7月5日18時00分 天候:雨 東京都墨田区菊川2丁目 愛原家3階ダイニング]

 

 夕食の鍋はすき焼きだった。

 リサ「いただきまーす!」
 愛原「これで前のマンションだったら、昔に戻ったみたいだな」
 高野「先生、私が指名手配されている理由って何でしょう?」
 愛原「まあ、日本では非合法扱いされている“青いアンブレラ”に所属して勝手にドンパチした罪とか、それで逮捕されたのに脱獄しやがってこの野郎罪とか、その辺りだろ?」
 高野「表向きはそうですね。本当の理由は、いくつかあります。まず、今の日本政府にとって“青いアンブレラ”の存在は非常に不都合であるということ。テラセイブは潰れ掛かっていますが、日本で再興したいと思っているようです」
 愛原「困るな。外国の組織が、勝手に日本で再興されちゃ」
 高野「日本もバイオハザードの被害を受けているわけですから、本当は日本人達でそのような組織を作らないといけないんですよ」
 愛原「しかし、アンブレラ関係者達は逮捕されているだろう?」
 高野「白井は違うでしょう?」
 愛原「おっと!」
 高野「日本の話ではありませんが、アンブレラの生き残りで贖罪意識の無い者達が『コネクション』を作って活動しているのも実情です。その日本人メンバーもいますしね」
 愛原「高橋は、いつからメンバーだったんだ?」
 高野「もちろん、先生と接触してきた時点で既に、ですよ。先生、マサが先生の所に住み込みをお願いした時、『部屋代払います』と言って現金1000万円を置きましたよね?」
 愛原「ああ」

 大赤字で廃業寸前の零細探偵事務所には、大助かりの資金であった。

 高野「あれ、『コネクション』から出ているお金ですよ」
 愛原「……らしいな」
 高野「先生は知らず知らずのうちに、テロ組織から資金提供を受けたのです」
 愛原「し、しかし……」
 高野「いいタイミングだと思いませんか?その後で、デイライトの善場が接触して来たでしょう?」
 愛原「そ、それは確かに……」
 高野「当然、デイライトは『コネクション』の存在を知っています。そして、早くからマサに目を付けていたのでしょう」
 愛原「高野君はその時、どう思った?」
 高野「最初は私の事を疑って来たのかと思いました。私もその時既に、“青いアンブレラ”のメンバーでしたからね」
 愛原「そうか……」
 高野「でもあの女、本当に隠し事が得意ですからね。本当に私の事を疑って来たのかと首を傾げました。そうしているうちに、リサちゃんを預けて来ましたね?」
 愛原「そうだな!」

 高野君はすき焼きの肉を頬張るリサを見ながら言った。

 高野「あの女は、『本人の強い希望だから』という理由でリサちゃんを先生に預けましたが、外国では絶対にあり得ないことです。ぶっちゃけ、殺処分または一生研究所で飼い殺しが普通ですよ」
 愛原「じゃあ、どうしてだ?」
 高野「罠を仕掛けたんでしょう。リサちゃんみたいな、『制御できているBOW』は、バイオテロ組織としては、喉から手が出るほど欲しい存在ですから」

 しかし、高橋は直接リサを攫うようなことはしなかった。
 この時はまだ、ただの連絡員だったからだそうだ。
 『コネクション』は決まった拠点を持たない流動型のテロ組織である。
 リサの動向を逐一組織に報告するだけの簡単なお仕事だったようである。
 高橋もまたスマホをよく弄っていたが、特に仕事に支障を来たしていない場合は禁止していなかったので。

 愛原「『コネクション』って、リサを攫いに来たことがあったか?」

 栃木の栗原家に攫われたことはある。

 高野「無いですね。ただ、別の組織に攫われたことはあったでしょう?」
 愛原「栃木の栗原家だな。日光の奥地だ」
 高野「あれで『コネクション』が騒いだみたいです。何しろ、ノーマークの組織に攫われたみたいですからね」
 愛原「それでキミ達が出動したわけか?」
 高野「はい。私達は当初、マサが組織をけしかけて、ついに『コネクション』が動いたのかと思いましたが」
 愛原「うーむ……」
 高野「何しろあの大混乱ですからね、よく先生達は逃げられたものです」
 愛原「最後の最後で、高橋の仲間達が迎えに来てくれたからだな。やあ、いい所に来てくれたもんだ。……って、実はあれも『コネクション』のメンバーでしたってんじゃないだろうな!?」
 高野「多分、違うと思います。もしそうなら、先生方はここにいらっしゃらないはずです。あれは本当にマサの友人、或いはマサが雇ったただの闇バイターです」
 愛原「何だ、そうか……」
 高野「ただ、報告では『コネクション』のメンバーが、本当にピックアップするつもりだったようで、先生方に逃げられたと悔しがっていたのだとか」
 愛原「マジで?」

 じゃあ、高橋の仲間達が先に来なかったら、私達は『コネクション』に攫われていたということか。

 愛原「高橋以外にも、俺の周りに『コネクション』のメンバーはいるのか?」
 高野「今のところ確認できているのは、マサだけですね。もちろん私も他人ですし、先生のお知り合い全員を知っているわけではありませんが」
 愛原「それもそうか。でも、高野君が確認できている俺の知り合いにあっては、メンバーはいないということだな?」
 高野「そうです」
 愛原「分かったよ。これで、高橋ともパールともお別れとなってしまった……」
 高野「テラセイブの方は分かりませんよ?後でまた戻って来るかもしれません」
 愛原「一体、何が起こったんだろうな?」
 高野「多分、テラセイブ側とコネクション側で、同時にマサに手紙を送っていたのでしょう。そして、テラセイブ側が後から届くことで、マサに何か指示が伝わるようになっていたのかもしれません」
 愛原「そこで俺が余計なことして、テラセイブから手紙を速達で送ったばっかりに……?」
 高野「その後でコネクションの手紙が来て、マサはコネクションの指示に従ったのかもしれませんね。恐らくテラセイブ側では、かなり正確にコネクションのマサ奪還作戦を把握していたんでしょうね。マサが作戦に反対して、コネクションの車に乗らなければ、ただ単にコネクションが暴走しただけということにできますから」
 愛原「うぁちゃー……!ヤベェことしちゃった……!」
 高野「まあまあ。先生は悪くありません。テラセイブの女も、私みたいにさっさと正体を明かすべきだったんです。そして、先生に正式に協力を求める。それをしなかったテラセイブの責任です」
 愛原「そ、そうかな……」
 リサ「じゃあ、どうしてパールさんはそうしなかったの?」
 高野「理由はいくつか考えられますが、1番大きな理由は、組織にそうしろと言われていたんでしょうね。指示があるまでは、正体を明かさないようにって」
 リサ「じゃあ尚更テラセイブが悪いね」
 高野「ええ。そんなだから組織内にスパイを抱え込んでしまったり、BSAAに先を越されたりしてしまうのですよ。先生、いかがです?“青いアンブレラ”と契約しませんか?デイライトよりも高い報酬をお約束致しますよ?」
 愛原「興味はあるが、それで今度は俺が公安に追われる身になるのは嫌だなぁ……」

 私は苦笑した。
 結局パールが今日中に帰って来ることはなかった。
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“愛原リサの日常” 「高野芽衣子」

2025-02-16 20:47:54 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[7月5日15時00分 天候:雨 東京都墨田区菊川2丁目 愛原学探偵事務所2階]

 リサは傘を差しながら事務所に帰って来た。
 雨が1日中降っていて、いわゆる梅雨寒の状態。
 気温はいつもより低いはずだが、体温の高いリサにはあまり関係無かった。
 むしろ、これから梅雨が終わって、また暑い暑い夏が来る事が憂鬱だ。
 鬼形態でいると、服など邪魔で仕方なく、裸になりたい衝動に駆られる。
 さすがにそれは大好きな愛原に怒られるから堪えているが。

 リサ「ん?」

 ガレージのシャッターが開いていて、来客用の駐車場にはシルバーのミニバンが止まっていた。
 リサは直感で、それが警察関係の車だと思った。
 ナンバーこそ違うが、東京中央学園に来た刑事達も、同じ車種の車で来たからである。

 リサ「……お兄ちゃんの関係かなぁ?」

 リサの所にも、高橋脱走の話は来ていた。
 昼休みの後で、職員室に呼ばれた。
 そこでは警察が待っていて、高橋の事を聞かされ、どこか逃走先を知らないかと聞かれたものだ。
 当然リサが知る由も無く、学校側も5時間目の授業が始まっているからと、警察の食い下がりを制止した。
 最後には名刺を渡され、高橋の居場所が分かったら、ここに連絡をと言われて解放された。
 5時間目は体育だったので、リサは無理やり復活させたブルマを穿いていた。
 刑事は、『東京中央学園さんは、ブルマを復活させたの?』なんて質問をしてきた。
 学校関係者は、『あくまでも、生徒の自主性を重んじる教育方針なので』と誤魔化していた。

 リサ「ただいまァ……」

 リサはエレベーターではなく、階段を昇って事務所を覗いてみた。
 事務所の中には誰もいないようだが……。

 愛原「リサ!」

 すると、3階から愛原が下りて来た。
 下りて来たのは愛原だけではない。
 2人のスーツ姿の男達も一緒だった。
 リサはすぐに刑事だと分かった。
 東京中央学園に来た刑事とは違うが。

 リサ「先生、ただいま」
 刑事A「このコは?」
 愛原「NPO法人デイライト様よりお預かりしているコですよ」
 刑事A「このコが……」

 さすがにリサのことは、お役所関係には隠し切れないようである。
 もっとも、デイライトだって、公安調査庁の隠れ蓑の1つに過ぎないのだから、似たような仕事をしている公安警察には隠せないか。

 リサ「どうしたの?」
 愛原「高橋が脱走したという話は聞いただろう?当然、逮捕前にここで住み込みで働いていてたうちが疑われるわけだ。それで、中を見せて欲しいってさ」
 リサ「ふーん……。パールさんは?」
 愛原「出てった」
 リサ「ファ?」
 愛原「警察で追ってるって」
 刑事A「何か疚しいことがあって逃走したかもしれませんからね。しかもこの雨の中、傘も差さずに、でしょ?」
 リサ「傘を差さずに!?」
 刑事B「本当に、行先に心当たりは無いのですね?」
 愛原「先ほども言いましたように、彼女の交友関係からして、アキバのメイドカフェか、閉鎖中の埼玉の斉藤秀樹容疑者の家しか無いですね」
 刑事A「アキバの方は、彼女が現れたという連絡は無い」
 刑事B「斉藤容疑者の行き先については?」
 愛原「残念ながら、それについては公安調査庁の方から口止めをされていますので」
 刑事A「チッ……」

 公安調査庁と公安警察は、このように縄張りが重なることがあり、そこで軋轢が発生することもあるとのこと。
 その為、公安警察が公安調査庁の協力者をマスコミにリークして、公安調査庁の捜査を妨害したこともあった。
 愛原が正にその立場。
 隠れ蓑たるNPO法人を介してとはいえ、実質的に公安調査庁から委託を受けている立場なので、愛原としては警察よりもそちらが優先なのだろう。
 但し、逮捕権があるのは警察の方。
 そして、当然ながら捜査令状を持って来られたからには、たちまち優先順位は警察側に転位することとなる。

 刑事A「ありがとうございました。また何か分かりましたら、こちらに御連絡を……」
 愛原「どうもお疲れさまでした」

 愛原は刑事達と共にエレベーターに乗って1階に下り、刑事達の見送りに行った。
 そしてしばらくするとエンジン音が聞こえて来て、刑事達の乗った車は、降りしきる雨の中、事務所のガレージから出て行った。

 高野「警察はもう帰ったかしら」
 リサ「! わっ、ビックリした!」

 天井の点検口をパカッと開けて、そこから高野芽衣子が出て来た。
 さしものリサもビックリしたほどだ。
 ショックで角が生えたくらいだ。

 高野「久しぶりね、リサちゃん?」
 リサ「た、高野さん……」
 高野「愛原先生とは、進展があったのかしら?」
 リサ「お、おかげさまで……」
 高野「さすがに指名手配犯の私がここにいたら、先生に迷惑が掛かるからね。警察が帰るまで、隠れてたの」
 リサ「そ、そう……」

 そして、愛原がエレベーターで戻ってくる。

 愛原「警察は帰ったぞ。高野君はいつまでいるんだい?」
 高野「あら?私、まだ全てを話しておりませんことよ?」
 愛原「しかし、さっきから表現が曖昧じゃないか」
 高野「実は“青いアンブレラ”内でも、情報が錯綜しておりましてね、どれが真実で、どれがウソなのか、トンチを働かせている最中なんですよ」
 愛原「いいのか、それ!」
 高野「それより、もう警察は来ないでしょうし、デイライトの善場も、テラセイブのパールも今日は戻って来ないでしょうから、今日は私がここでボランティアしますよ」
 愛原「いいのかよ……」
 リサ「何か、昔に戻ったみたいだね。これでお兄ちゃんがいれば……」
 高野「マサはホント残念だったわね。正規メンバーの誘いを受けたのが、運の尽きだったってわけ」
 愛原「何であのタイミングで脱走したりしたんだ?」
 高野「恐らく、テラセイブ側の作戦失敗でしょうね」

 因みにテラセイブとは、1998年に起こったアメリカのラクーン市壊滅をきっかけに立ち上げられたNGO団体である。
 主な活動内容は、『バイオテロ・薬害事件を秘匿・隠蔽する企業や組織を糾弾・告発すること』『バイオテロ・薬害事件に遭った被害者や犠牲者を支援・救済すること』としている。
 BSAAが国連機関の1つであり、どちらかというと、バイオテロ組織の掃討や壊滅、そのメンバーの拘束を主な活動内容としているのとは違い、その後方支援活動を主にしていることが分かる。
 その為、基本的にはBSAA側であり、“青いアンブレラ”側でもあるのだが、何回か起こった不祥事により信用が低下し、今はBSAAや“青いアンブレラ”ほど目立った活動はしていないと言われている。
 ただ、霧生市のバイオハザードをきっかけに日本支部が作られたという噂はあったが、実際にそのメンバーが現れることは無かったので、ただの噂だったのだろうと思われていた。
 ところが……。

 愛原「パールって、テラセイブの人間だったんだ」
 高野「ええ。日本人名の霧崎真珠は、恐らく通名。本名は恐らく横文字です」
 愛原「でも顔は日本人だで?」
 高野「日系人もそりゃいるでしょうからね。霧生市で、私達の前に現れたジョージ伍長みたいに」
 愛原「そうか……」
 高野「と、いうわけで、今夜の夕食はパールに代わり、私が作ります。何がいいですか?」
 リサ「肉!」
 愛原「そうだな……。今日は雨のせいか、少し寒い。梅雨が明けたら、もう食べる気無くすだろうから、今のうちに鍋にでもするか」
 高野「了解しました。それじゃ早速、買い出しに行って参ります」
 愛原「ああ。それじゃ、カード渡すよ。本当にいいのかい?指名手配……」
 高野「この辺りには交番もありませんし、警察に見つかる心配はほぼゼロです。今はマサや“コネクション”のメンバーを追うのに忙しいでしょうからね。……あ、ビニール傘借ります」
 愛原「いいよ。リサも連れて行かせるか?」
 リサ「むふー!」
 高野「いいですよ。リサちゃんは、テスト勉強してて」
 リサ「テスト明日まで……」
 愛原「あー、だったら勉強しておきな」
 リサ「はーい……」

 リサは渋々、階段で自分の部屋がある4階に向かった。
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“私立探偵 愛原学” 「高橋正義の脱走」 2

2025-02-16 16:12:21 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[7月5日12時00分 天候:雨 東京都墨田区菊川2丁目 愛原学探偵事務所2階]

 

 昼食にはパールがホットドッグを作ってくれた。
 高橋が、かつてここで作っていた物と同じ物である。
 私は事務所のテレビを点けた。
 だいたい平日のこの時間は、どこも情報番組をやっている。

〔「はい、こちら警視庁本所警察署前です。こちらで今朝9時頃、銃撃事件がありました。犯人達は未だ逃走中であり、護送車を狙った犯行との見方が強まっています。と言いますのは、こちらの警察署で再逮捕されていた高橋正義容疑者が、その銃撃犯の車で共に逃走した為であり、警察は緊急配備を敷いたものの、未だ犯行に使われた車が見つかっておりません」〕

 銃撃犯の1人は世界的なテロ組織『コネクション』のメンバーだということが分かっている。
 何故なら、その場にいた警察官が咄嗟に手持ちの拳銃を発砲し、それが銃撃犯の頭に命中。
 病院に運ばれたものの、死亡が確認されている。
 身元を証明する物は持っていなかったが、前科者のリストの中に犯人らしき者があった。
 旧アンブレラ・コーポレーション・インターナショナルの非合法軍事組織UBCSに所属していた者だという。
 アンブレラには2つの軍事組織があり、表向きの組織としては、直営警備会社のUSSと、そこでも処理しきれない事態を収拾させる為の裏の軍事組織UBCSである。
 前者は日本アンブレラでも、直営の警備会社として、アンブレラの本社や研究所の警備に当たっていた。
 ちゃんと日本の警備業法の適用を受けていたという。

〔「……ここで速報が入って来ました。逃走に使われたと思われる車が、埼玉県川口市の荒川の河川敷で見つかったとの情報が入りました。繰り返し、お伝えします。……」〕

 愛原「これで、とうとう高橋は遠くに行ってしまったか……」
 パール「あの……先生」
 愛原「何だ?」
 パール「まさかとは思いますが、以前私がマサに出す手紙をお願いしたことがありましたよね?」
 愛原「ああ。ちゃんと出したぞ。あの中に大事な事が書いてあったのか?」
 パール「……ええ、まあ」
 愛原「そうだろうと思って、速達で出しておいたよ。ああ、料金は心配ない!俺が出すから!」

 すると、パールの顔色がサッと変わったような気がした。
 そして、バッと立ち上がる。

 愛原「!?」

 私がどうしたのかと聞こうとしたら、パールが事務所から飛び出してしまった。

 愛原「お、おい!待てよ!」

 と、同時に玄関のインターホンが鳴る。
 こんな時に何だ、もう!

 愛原「はい!愛原学探偵事務所です!」
 高野芽衣子「こんにちはー!高野で……ギャッ!」
 愛原「ああっ!?」

 インターホンのカメラ越しに、パールがいきなり玄関のドアを開けたものだから、それに高野君が思いっ切りぶつかるというハプニング映像が映った。
 何やってんだ、もう!
 私も事務所を出て、1階への階段を駆け下りた。

 愛原「高野君、大丈夫か!?」
 高野「あ、愛原先生、お久しぶりですぅ……」
 愛原「一体何の用だ!?」
 高野「近くまで来たものだから、寄ってみただけですぅ」
 愛原「ウソつけぇ!」
 高野「あの女がどうして逃げたのか、教えてあげますよ。それより、ポストの中に何かありませんか?」
 愛原「ポストぉ?」

 私は郵便受けの中を開けた。
 すると、普通郵便が何通が入っている。
 その中には、高橋からの手紙が入っていた。

 愛原「高橋からの手紙だ」
 高野「ちょっと確認してみませんか?」
 愛原「お前、いいのか?お前も追われてる身だろう?」

 すると高野君は笑みを浮かべて言った。

 高野「デイライトの女は、非常事態の対応で忙しいですよ。愛原先生が通報しない限り、ここに来ることはありません」
 愛原「よく知ってるなぁ……」
 高野「何年、先生の事務員やってたと思うんですか」
 愛原「……だな」

 私は高野君を事務所に招き入れた。

 高野「昼食中だったのですよね?申し訳無いですね」
 愛原「まあな……」
 高野「お詫びにコーヒー淹れて差し上げますよ」
 愛原「それはパールの仕事……って、あいつどこに行ったんだ!?」
 高野「『組織』に戻ったんじゃないですか?」
 愛原「組織ぃ?!」
 高野「そこで、その手紙です。開けてみてください」
 愛原「んん?」

 私はホットドッグを頬張りながら、封筒を開けた。
 警察署からならガッツリ検閲されて、ヘタなことは書けないはずだが……。

 愛原「これは……?」

 その中には、こう書かれていた。
 『真珠は霧が生まれる街の生き残り』

 愛原「パールは霧生市の生き残り!?」
 高野「そう書いてありました?」
 愛原「パールもまた新潟辺りの出身じゃ?」
 高野「本当にそうですか?」
 愛原「えっ、えっとぉ……そりゃ……」

 パールを事務員として雇い入れる時に本籍地や現住所を書いてもらった。
 あの時点では住所が埼玉の斉藤家になっていたものだが、本籍地は……。

 高野「もしかしたら、出身そのものは新潟県なのかもしれませんね。ですが、マサの書いた通り、霧生市のバイオハザード事件の時は、霧生市にいたのでしょう」
 愛原「そ、そうなのか……。でも、それが何だというんだ?彼女は感染者じゃないだろう?」

 もしもTウィルスに感染していたのなら、とっくのとうにゾンビ化しているはずだ。
 霧生市のバイオハザードでは、市民の8割、9割は感染してゾンビ化したり、そんな感染者に殺されたりしたが、私達を含めて1割や2割の市民は脱出に成功している。
 表向きは、ここにいるリサも、その生き残りということになっている。

 高野「霧生市が元々は山奥の小さな村だったのに、それがどうして人口10万人くらいの町になれたのかは御存知ですよね?」
 愛原「日本アンブレラが巨大な研究所や工場などを建設したからだろう?それで企業城下町となったんだ」

 日本アンブレラの出資で建設された霧生電鉄も、アンブレラ専用電車が運転されていたくらいだ。
 表向きは職員輸送用や、物資輸送用ということだが、頑丈なコンテナに入れられつつも、実験動物やBOWも運搬されていたことが分かっている。
 特に後者は、リサの証言から。

 高野「ということは、アンブレラの関係者やその家族が多く住んでいたということですよね?」

 高野君はネスカフェバリスタでコーヒーを淹れてくれた。
 勝手知ったる自分の家みたいだ。
 パールがいなくなったのなら、代わりに高野君に戻って来てもらいたいくらいだ。

 愛原「パールがそうだというのか?」
 高野「はい。それも、UBCS側です」
 愛原「待てよ!UBCSはアメリカ本社でも、非合法私兵組織として運用されていたんだぞ?ましてや日本で存在できるわけが……」
 高野「先生はお忘れですか?霧生市郊外の山寺に、UBCSが現れたことを」

 確かに霧生市郊外の山寺、大山寺の境内の駐車場にUBCSのトラックが止まっていたのを確認している。
 そして、ジョージと名乗る軍人が私達の前に現れたのだ。
 当初は、霧生市の救助活動にやってきた在日米軍の兵士だと言っていたが、後にUBCSの兵士だと判明している。
 日系人とはいえ、アメリカ国籍の軍人だったのだから、アメリカのアンブレラから来た者だと思っていたが……。

 愛原「それは覚えている」
 高野「あれ、日本の組織ですよ。普段はUSSの隊員として活動しているだけの」
 愛原「おいおい!また俺の知らない情報が出て来たな!」
 高野「どうせデイライトは今日1日、先生のお相手はできないでしょうから、もうしばらくここでお仕事のお手伝いしながら、知っている情報をお伝えしますよ」

 私の思考回路、付いていけるだろうか?
 しかし、ここは素直に情報伝達を受けることにした。
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“私立探偵 愛原学” 「高橋正義の脱走」

2025-02-13 20:46:30 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[7月5日06時30分 天候:雨 東京都墨田区菊川2丁目 愛原家3階・ダイニング]

 

 梅雨空の朝。
 私とリサとパールは朝食を食べる。
 今朝はハムエッグだった。

 リサ「調理実習でハムエッグやらベーコンエッグとか作ったから、わたしも作れる」

 但し、今朝の朝食はパールが作っている。

 愛原「そうなのか。それじゃ、今度の週末はリサにお願いしてみようかな」
 パール「それはいいですね」
 愛原「高橋がいなくなって、家事の当番が大変になったもんなぁ……」
 パール「私は構いません。この家に置いて下さる為でしたら……」
 愛原「それは構わないよ」

 パールにはうちの事務所の住み込み事務員として、ここにいてもらっている。
 家の同居も寮代わりだ。
 高橋とも結婚したことだし、いっそのこと近くのアパートでも借りて、そこから通勤してみてはと提案したことがある。
 家賃は福利厚生で、何割かの住宅手当を支給しようかと思っていた。
 しかし、この2人は断っている。
 そこで寮費を無料にする代わりに、家の家事全般をお願いしていた。
 それは高橋と2人合わせてを想定していた物なので、今のパール1人ではキツいのでは思っている。
 事務所の掃除くらいは、私もヒマな時にしているのだが……。
 高校2年生くらいまでの時は、リサやリサの友達が事務所清掃のアルバイトに来てくれたこともあった。
 さすがに高3の今となっては、受験勉強で忙しいので、そのバイトも頼めなくなっている。
 私に対する傷害罪だけで逮捕されている高橋なら、私自身が被害届を出していないこともあり、すぐに釈放されるのかと思ったが、余罪がバレてしまい、再逮捕された為に、またしばらくは戻って来れなくなってしまった。
 しかも再逮捕の理由が、世界的なバイオテロ組織『コネクション』のメンバーとして、テロ実行犯の手伝いをした疑いである。
 弁護士の秤田先生によると、高橋は警察の取り調べに対し、黙秘を貫いているとのこと。
 ヘタに供述すると、組織に消されることを恐れてのことだろう。
 ということは、闇バイトの実行犯的な、その犯罪組織ではいてもいなくてもいいような存在ではないということだ。
 闇バイトの実行犯が警察に逮捕され、自分が知っていることを警察に話すというくらいは闇バイト運営側も想定しており、実行犯が逮捕されたくらいでは、自分達の所に捜査が及ぶようなことはないよう、予防線を張っている。
 そうではなく、高橋が供述することで、組織の幹部に捜査の手が及ぶ恐れがあるというのなら、高橋の立場は……実行犯ではなく、指示役か?
 表向きは実行犯の手伝いということになっているが、実は実行犯に対する指示役だったのかもしれない。
 指示役なら、更に上の幹部から、計画の詳しい内容を聞かされているだろうから、それが供述されると……。

 愛原「俺は俺で、千葉刑務所に行く計画が進んでるからね」
 リサ「長野の屋敷で、先生を殴ったヤツ……!」
 愛原「あの映像ではな」

 デイライトさんに送ったビデオーテープやDVDは無事に届いたらしく、解析が今も行われている。
 もちろん善場係長には、私の記憶と実際の映像の内容に食い違いがある旨も報告済みだ。
 昔の監視カメラの映像ということもあり、画像が荒く、それらを編集してきれいにしてからでないとよく分からないらしい。
 ましてや、DVDよりも劣化しやすいVHSテープに保存されていたというのもある。

 パール「面会はできそうなのですか?」
 愛原「ああ。『私の贖罪は、私がこれまでしてきたこと、見知って来たことを包み隠さず話すことです。群馬の兄にもそう言われました。もしも愛原様がそれを望まれるのでしたら、私はいつでもお待ち申し上げております』という手紙が届いた」
 パール「そうですか。では、今から……」
 愛原「いや。刑務所側の都合で面会ができないこともあるから、一応その確認の手紙を送ってからにするよ。まあ、来週ってところかな」
 パール「そうですか」
 愛原「高橋の方はどうなんだ?」
 パール「今日、東京拘置所に移送される予定です。黙秘のまま、起訴されることになりました」

 黙秘していても、確たる証拠があるということか。
 警察署における拘束期間が過ぎて尚、検察庁に身柄を送れない場合は釈放するしか無くなる。
 『コネクション』のメンバーと信じてやまない警察としては、どうしても高橋を釈放したくないのだろう。
 確たる証拠があるのなら、それを持って検察庁には送れる。

[同日09時00分 天候:雨 同区菊川3丁目 墨田菊川郵便局]

 リサは学校に行った。
 私は雨の中、傘を差して、郵便局に手紙を出しに行った。
 千葉刑務所側からは普通郵便しか出せないようだが、こちら側からは速達郵便が出せる。
 なるべく早く沖野献受刑者と面会に漕ぎ付ける為、私が送る時は速達で送ることにした。
 そして、郵便局が開く9時に向かった。
 パールがお使いを申し出たのだが、これは私が個人的にやっていることだ。
 パールには事務所で留守番しててもらうことにした。
 五十日ということもあってか、朝一に行っても、やや窓口は賑わっていた。
 もっとも、1番賑わっていたのは金融関係の方。
 貯金窓口やATMの方だ。
 郵便窓口の方は、2~3人の先客がいただけだった。
 局内の椅子に座って、自分の順番が来るのを待つ。
 そして、私の順番が来た。

 愛原「これを速達でお願いします」
 局員「かしこまりました」

 料金を払い、お釣りと領収書、控えを受け取って、郵便局をあとにした。

 愛原「ん?」

 新大橋通りに出ると、何だか空が騒がしい。
 悪天候だというのに、何機もの大型ヘリが飛行しているようだ。
 しかも、通りをサイレン鳴らしたパトカーが何台も通過していった。
 何か大きな事故でもあったのだろうか?

[同日09時15分 天候:雨 同区菊川2丁目 愛原学探偵事務所2階]

 愛原「ただいまァ」

 濡れた傘を持っているので、ガレージ側からエレベーターではなく、正面玄関から階段で2階に上がった。

 パール「せ、先生!大変です!」

 パールが青い顔をして私を出迎えた。

 愛原「どうした?」

 パールは自分のスマホを見せた。
 そこにはニュース速報が出ている。

 パール「ま、マサが……マサが脱走しました!!」
 愛原「はぁーっ!?」

 スマホの画面には、『都内の警察署で銃乱射事件。容疑者1名、逃走!』というタイトルが大きく出ていた。

 愛原「これだけで、どうして高橋が脱走したって分かるんだ?」
 パール「……これだけの手際で、警察署から容疑者を奪還できる組織は数えるほどしかありません。BSAAがそんなことするわけないですし、“青いアンブレラ”も違いますよね?そうなると……」
 愛原「『コネクション』かぁ!?」
 パール「きっと、『コネクション』がマサを奪還しに……」

 ちょっと待て!
 すると、高橋はそれだけの立場のメンバーだったってことなのか!?
 だとしたら、何故今さら!?
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