報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“大魔道師の弟子” 「多宝富士大日蓮華山」 3

2022-08-31 20:38:20 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[7月19日14:15.天候:晴 静岡県富士宮市上条 日蓮正宗大石寺・奉安堂]

 御法主日如上人猊下:「遠ごん各地よりジンシンのトウザン、願い出により、本門戒壇之大御本尊御開扉奉り、無始以来、謗法・罪障消滅……【中略】……懇ろに申し上げました」

 カタカナはどういう漢字を書くのか不明。
 多分、ジンシンは『深信』または『深心』、トウザンは『当参』と書くのではないかと思われる。
 御開扉は内拝、つまり秘密の儀式に当たる為、文言が明文化されていないようである。
 もちろん、御法主上人猊下は基本的に最初の文言以外は一字一句変えることはない。
 もしも海外信徒が多い場合は、『海外を始め』という文言が加わり、支部総登山での参加者がいると、『支部総登山を始め』という文言が加わる。
 両方とも多い場合は、『海外並びに支部総登山を始め、遠ごん各地よりジンシンのトウザン』となる。
 ここから推測できるのは、御法主上人猊下は、予めその日の信徒の顔ぶれを大方知らされているということだ。
 まあ、当然か。
 信徒以外の者は入れないのだから、どういった信徒が来ているのかは添書の内容で一目瞭然だろう。

〔「南無妙法蓮華経、南無妙法蓮華経、南無妙法蓮華経……」〕

 御法主上人猊下の御説法が終わると、すぐに唱題に入る。
 今度は、本門戒壇之大御本尊が御安置されている御厨子を閉め、厳重かつ頑丈な鎧戸を閉めるのである。
 厨子の閉扉は僧侶が行い、鎧戸の閉扉は自動で行われる。

 勇太:(そういえば、あの御厨子の扉は電動じゃないな……)

 閂が付いているタイプの、手動式観音扉。
 多分、あえてそうしているのだろう。
 日本のタクシーのドアは自動開閉なのに、それより高級なハイヤーのドアが手動なのと同じ理由なのかもしれない。
 鎧戸まで閉まり切ると、ここで唱題は一旦終了。
 御法主上人猊下が離席される。
 この時、猊下は信徒席に向かって必ず一礼して下さるので、信徒側もそれに対して答礼する。
 この際、信徒は席に座ったままで良い。
 席に座ったままで良いのだが、答礼の際は必ず合掌をしたままである。
 立ち上がったり、顕正会員のように伏せ拝をする必要は無い。
 信徒が猊下に伏せ拝をするのは、大坊での御目通りの時くらいか?
 猊下や他の御僧侶が退場される際、再び唱題が行われる。
 退場が終わると、そこでようやく『御開扉』は終了となる。

〔「退場に際し、注意事項を申し上げますので、席を立たずに、そのままでお待ちください。……」〕

 人数が多い場合は、各ブロックごとに分割して退場の指示が出るのだが、空いている場合は一気に退場の指示が出る。

〔「それでは、席をお立ち下さい」〕

 藤谷:「よし。それじゃ、帰るとするか」
 勇太:「マリアを迎えに行きませんと」
 藤谷:「それもそうだな。電車の時間は何時だ?」
 勇太:「16時26分発です」
 藤谷:「そうなのか。まだ、2時間くらいあるな。どれ、お土産でも買って行くか?」
 勇太:「そうですね」

 奉安堂を出てから、勇太と藤谷は仲見世売店に向かった。

[同日14:30.天候:晴 大石寺売店“藤のや”]

 大石寺の裏門を出た所の前に、仲見世商店街がある。
 そこの一画に、“藤のや”という喫茶店がある。
 マリアはそこで待機していた。

 勇太:「お待たせ」
 マリア:「おっ、勇太、お疲れ。藤谷さんは?」
 勇太:「タバコ吸いに行った。その間、僕もコーヒー飲んでてってさ」
 マリア:「そう」

 勇太はマリアの向かいに座った。

 勇太:「すいません、アイスコーヒー1つください」
 女将:「はい、アイスコーヒーですね」

 因みにマリア、勇太達が戻ってくるまで、紅茶を2杯しばいていた。
 さすがにケーキは1つだけだったが。

 マリア:「ケーキはいいの?」
 勇太:「班長がタバコから戻って来るまでの間だから」

 少しして、アイスコーヒーが運ばれてくる。

 勇太:「んー!これだ!」

 読経と唱題で喉が渇いた勇太には、素晴らしい清涼剤だっただろう。

 勇太:「電車の時間まで少しあるから、お土産でも買って行こうと思うんだ」
 マリア:「それはいいね。私もルーシーに送ってあげようと思う」
 勇太:「ルーシーかぁ……。エレーナにはいいの?」
 マリア:「どうせスズキが買ってるだろ?だからいいよ。ルーシーと師匠にだけ買えば」
 勇太:「そ、そうか」

[同日14:45.天候:晴 大石寺売店“藤巻商店”]

 女将:「シイタケ茶をどうぞ」
 勇太:「あ、ありがとうございます」

 あの後、藤谷が戻ってきて、会計は藤谷がしてくれた。
 さすがに財布の中から現れたのは、1000円札である。
 2000円札は、本当に御開扉御供養料だったのだろう。
 退出してから、同じ並びの土産物店に入ってみた。
 すると、お茶の接待をしてくれたのだが……。

 マリア:「こ、これは不思議な味!」
 勇太:「シイタケ茶だって」
 マリア:「See……?」
 勇太:「Shiitake mushroom.これを粉末にしたお茶だよ」
 マリア:「なるほど。キノコのお茶なのか。キノコと言えば……」
 藤谷:「スーパーマリオ?」
 勇太:「リリィだ!」
 マリア:「リリィだね。よし。これは、リリィへのお土産にしよう」
 勇太:「ワンスターホテルに送るの?」
 マリア:「いつ、リリィが魔界から戻って来るか分からない。どうせうちの屋敷にエレーナが来るだろうから、その時、エレーナに渡せばいいと思うよ」
 勇太:「エレーナに頼んだら、『配達料もらうぜ』ってならないかな?」
 マリア:「……すいません。これ、『普通の』宅急便でお願いします」
 女将:「はい、ありがとうございます」
 勇太:「エレーナの配達料、バイク便やメッセンジャー並みの値段なんで」
 藤谷:「そりゃ高いな。だが、それだけ急いで送るのにはいいんだろうな」
 勇太:「それはまあ、確かに」

 尚、イリーナには酒もいいだろうと思ったマリアだったが、恐らく大石寺売店で土産用の酒は置いていないと思う。

 勇太:「電車で甲府を通るから、甲府駅の売店でワインとか買えるかもね」

 山梨県は国産ワインも多く作られている。
 身延線の北の終点は甲府だから、乗り換えの時に買えるのではないかと勇太は思った。

[同日15:00.天候:晴 大石寺売店“大日蓮出版”]

 マリア:「難しい……。魔導書並みに難しい……。まだ、聖書の方が簡単かもしれない……」

 マリアは御書を見ながら、眉を潜めた。

 勇太:「そりゃ、聖書は現代語訳されて出版されてるからね。御書は違うんだよ」

 現代語訳版があっても良いだろうと作者は思うのだが、そうしてしまうと、本当に顕正会の言う通り、『正しく拝せない』のかもしれない。
 もちろん、御講の際に、お題の御金言を現代語に訳して解説してくれるのだが。

 勇太:「ラテン語で書かれている、大師匠様の魔導書よりはマシだと思う」
 マリア:「勇太にとっては、まだこっちの方が日本語だもんね」

 お土産や出版物を買い求めた勇太達は、これにて下山することにした。
 尚、後日、シイタケ茶を受け取ったリリィは大喜びだったが、実際にそれをお湯に溶いて飲用したわけではなく、魔法薬の材料にしたという。
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“大魔道師の弟子” 「多宝富士大日蓮華山」 2

2022-08-30 20:14:52 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[7月19日12:00.天候:晴 静岡県富士宮市上条 日蓮正宗大石寺・“なかみせ”]

 BGM:https://www.youtube.com/watch?v=SJujngB8vAo(東方Projectより、“蓬莱伝説”)大石寺境内のテーマ。動画内のイラストは大石寺のどこか?参詣している2人は?

 藤谷:「えっ、鬼怒川のケンショーサティアンぶっ潰したの、キミ達だったの!?」
 勇太:「いや、僕達というか、ケンショーグレー(T田)の自爆です」

 昼食を食べながら、近況について報告する勇太。

 藤谷:「あのスケベ理事、最近見ねーと思ってたら、あんな所にいたのかよ」
 勇太:「何で鬼怒川なんですかね?」
 藤谷:「そりゃ、あれだろ。鬼怒川も不景気で、潰れたホテルや旅館がそのままになってるから、新興宗教は乗っ取りやすいし、昔はあそこで夏合宿やったこともあるから、『夢よ、もう一度』みたいな所があるんだろ」
 勇太:「夏合宿ですか。慰安旅行じゃなくて?」
 藤谷:「まーだ慰安旅行の方が良かっただろうよ。まあ、何でも支部総登山の真似事だったんだと」
 勇太:「そうなんですか」
 藤谷:「だったら他の宗教団体みたいに、専用の合宿所でも作って、『支部総登山』モドキでもやりゃあいいんだよ」
 勇太:「確かに顕正会は、会館はあっても、研修施設みたいなものはないですね。学会なら……あるのかな?」
 藤谷:「分かんね。まあ、日蓮正宗も、別に無いからな」

 日蓮正宗は総本山があるので、あえて信徒用の研修施設は必要無いのだろう。
 逆にそういう所に行くのなら、1日でも多く登山しろということだ。

 藤谷:「地方に会館作る金があるなら、それこそ潰れたホテルや旅館安く買い取って、研修施設とか保養施設でも造ってやれば、会員も定着すると思うぜ」
 勇太:「で、そこに突撃しに行く妙観講」
 藤谷:「その通り!」
 勇太:「……って、あー、ゴメン、マリア。こんな話、つまんないよね?」
 マリア:「ここでは私は部外者なんだから、しょうがない。それにしても、横田には参った」

 さすがに勇太、藤谷にはマリアのスパッツとショーツを横田に取られたことは話していない。

 藤谷:「どれ、食べ終わったことだし、ちょっくら売店内を散策するかな」
 勇太:「それはいいですね」

 3人は席を立った。
 食器などは下膳口に戻す。

 藤谷:「ごっそさんね!」
 女将:「はい、ありがとうございましたー」
 勇太:「御馳走さまでした」
 マリア:「Thank you for meal.」

 料金は前払いなので、食器を片付けたらそのまま出て良い。
 因みに……。

 
(マリアが食べたカレー。野菜の煮物はオマケである)

 
(勇太と藤谷が食べたチャーシュー麺)

 勇太:「どこへ行きます?」
 藤谷:「お土産とか買って行くか?」
 勇太:「あー、そうですね。でも、それだったら帰りの方がいいんじゃ?」
 藤谷:「それもそうだな。まあ、ちょっと俺はタバコ吸ってくるよ」
 勇太:「分かりました」

[同日13:00.天候:晴 大石寺・“藤のや”]

 因みに大石寺境内にある仲見世のことを、通称『売店』と呼ぶ。
 どこの宗派でも、大寺院にはこういった仲見世商店街があるのが通例だ。
 勇太達は三門より北側にある仲見世売店を訪れたが、実は南側にも存在する。
 また、古くから営業している店の中には、『法華講員の店』という札を掲げている所も存在する。
 今の日蓮正宗からすれば当たり前なのだが、創価学会が破門される前はもちろんのこと、破門されてからもしばらくは境内に学会員の店が営業していた時期がある。
 作者が東日本大震災前に参詣した時点においても、まだその店舗が確認できたほどだった。
 尚、2022年現在においては確認できていない。
 かつて学会員の店があった場所は撤退後、建物は取り壊されて更地になっている。
 『法華講員の店』という札が掲げられていた理由は、偏に学会員の店と区別する為であった。
 ほぼ100%法華講員の仲見世と化した現在において、その札は有名無実化していると言って良い。
 当然、勇太達が訪れた“なかみせ”や、マリアが時間潰しに利用している“藤のや”も『法華講員の店』である。

〔「安倍元総理を射殺した山上容疑者について、容疑者は旧統一教会の……」〕

 この店内にはテレビがある。
 マリアは紅茶とケーキをしばきながら、時間を潰していた。
 この店は喫茶店である。
 尚、この店でカレーを注文すると……。

 

 こういうのが出て来る。
 “なかみせ”と比べて、前者は食堂のカレー、後者は正に喫茶店のカレーと言えよう。
 どちらが良いかは、その人の好み次第である。

 マリア:「おっ?」

 勇太から借りているタブレットが光る。
 水晶玉では通信関係において、通話しかできない為、メールのやり取りができるよう、勇太からタブレットを借りていた。
 そのタブレットでのやり取りの相手は、イギリスにいるルーシー。
 魔界の女王とは名前が同じだが、名字が違う。
 もちろん、関係性は無い。
 エレーナとはケンカ仲間だが、ルーシーとは良い友人関係である。
 マリアは現況をルーシーに伝えた。
 帰りはまた、鉄道での移動となるとルーシーに伝えると、とても羨ましがっていた。

 ルーシー:「早く私も日本に行きたい」

 と、イギリスのロンドンにいるルーシーからの反応だった。
 あとは本当に、魔女というよりは普通の女子の会話。
 『彼氏(勇太)とは上手くいってる?』とか、『エレーナは元気?』とか、そんなやり取りだった。
 
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“大魔道師の弟子” 「多宝富士大日蓮華山」 1

2022-08-30 15:45:50 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[7月19日10:45.天候:晴 静岡県富士宮市上条 日蓮正宗大石寺・登山事務所]

 勇太達を乗せた車は、国道139号線から西富士道路を経由して大石寺へと向かった。
 ルート的には、先日の勇太とマリアを乗せた下山バスの逆である。

 
(御登山する度、いつも雨か曇に見舞われ、富士山など殆ど拝めない作者が奇跡的に撮れた1枚。何年か前に撮影したもの。つまり、それ以降、現在に至るまで、晴天の御登山はできていないということである。前回は台風直撃だったし!)

 藤谷:「よーし、着いたぞ」

 車は登山事務所の南側にある駐車場に止まった。
 登山道(参道)を北上し、総門東交差点を左折した所にある。

 勇太:「ありがとうございます」
 藤谷:「それじゃ、早速行こう。マリアさんはどうする?」
 マリア:「私はここで待ってます。……あ、いや、トイレはありますか?」
 藤谷:「あるよ。途中まで、一緒に行こう」

 3人は車から降りた。
 登山事務所の建物に向かう。
 事務所の建物に、外トイレが付いている(ホームセンターのトイレ同様、建物の中からではなく、外から出入りするタイプ)。

 マリア:「ああ、ありがとう」
 藤谷:「じゃあ、俺達は事務所に行くか」
 勇太:「はい」

 2人の信徒は登山事務所の中へ。

 藤谷:「マリアさん、本当に日本語上手くなったよな?」
 勇太:「そうですね。今ではもう、あまり自動通訳魔法具を使わなくても良くなりました」
 藤谷:「それは素晴らしい」

 窓口に行って、藤谷は添書を差し出した。

 藤谷:「東京の正証寺です。2人分、お願いします」
 所化僧:「それではお2人合わせて、4000円の御開扉御供養をお願い致します」
 藤谷:「はい」

 藤谷はもはや沖縄県限定の通貨と化している2000円札を2枚差し出した。
 しかも、全くシワの無いピン札である。
 一瞬、所化僧も目を丸くしたが、すぐに2000円札だと気付いた。

 所化僧:「4000円ちょうど、お預かりします」
 勇太:「あんなもの、わざわざ用意して……」
 藤谷:「びっくりしたね。今や、東京の銀行でも取り扱ってる所、少ないんだね。5軒は回ったよ」
 勇太:「ご、ごけん……も」
 藤谷:「『銀行に訪問折伏に行って来る』という名目で、会社を抜け出すのが大変だった」
 勇太:「当たり前じゃないですか!」

 父親の藤谷秋彦から、『そんなことしてるヒマがあったら、唱題でもしろ!』と、怒られた藤谷春人の姿を勇太は想像した。
 所化僧は内拝券にナンバリングをし、2枚綴りの状態でそれを藤谷に渡した。

 所化僧:「それでは、お気をつけて」
 藤谷:「ありがとうございます」

 2枚綴りの内拝券は1枚に切って、勇太はその1枚を受け取った。
 半券の部分に教区番号と寺院番号、寺院名を記載する欄がある。
 そこは信徒が自分で記入する。
 教区番号と寺院番号については、記帳台にファイルが置いてあり、その中に一覧表があるので、それで確認する。

 藤谷:「東京第3布教区だけ正証寺1つしか無いから、凄く分かりやすいな」
 勇太:「いつになったら、第1布教区に戻れるんですかね?」
 藤谷:「マリアさんを御受戒できたらじゃないか?」

 そんなことを話しながら、事務所の外に出ると……。

 マリア:「パペ、サタン、パペ、サタン、アレッペ……!」
 藤谷:「わーっ!冗談です!御受戒は計画的に!」
 勇太:「そりゃ一緒に信仰できたら嬉しいけど!」
 マリア:「火系魔法、爆撃魔法、雷撃魔法、どれがいい?」
 勇太:「ごめん、ウソです!」

 この後、車に戻り、駐車場を移動した。
 尚、登山事務所の窓口業務は主に所化僧が行っていることが多いが、行事の時などは例外もある。
 因みに夏期講習会の折、登山した作者達がそこへ行ってみると、所属の報恩坊の御住職が係を務めておられたという例外もあった。

[同日11:00.天候:晴 大石寺新町駐車場→“なかみせ”]

 登山事務所の駐車場から、少し移動する。
 大石寺裏門のすぐ近くにある新町駐車場という所である。
 同じ大石寺の信徒用駐車場であるのだが、何しろ日蓮正宗総本山たる大石寺の境内は広い。
 車で登山した信徒の場合、境内の移動に車を使うこともザラである。

 勇太:「昔は布教講演の会場が、どこの坊なのか探すのに苦労したりもしましたが、今は配信形式なんですね」
 藤谷:「まあ、楽にはなったよな。こうして、車の中で聴けるんだから」
 マリア:(師匠の話より、よく分からん……)

 車の中でオンライン法話を聴いた後は……。

 藤谷:「少し早いが、昼食にしよう。少し早い方が空いていていい」
 勇太:「まあ、そうですね。マリアもいい?」
 マリア:「私は、ついて来てるだけだから」

 そう言って、マリアも車から降りた。

 勇太:「それにしても、暑いですね」
 藤谷:「これでも山の上だから、市街地の地表よりは涼しいはずなんだがな」

 そういう藤谷が、1番暑そうな服装をしている。
 ワイシャツは開襟状態であるものの、黒いジャケットを羽織っているからだ。
 御丁寧にも金色のバッジを着け、金色のネックレスを着けている所はどう見てもヤの付く自由業の人である。
 さすがにサングラスは外しているが。
 強面であるが、あくまでも本業は土建業である。

 藤谷:「こちゃーす!」
 女将:「はい、いらっしゃいませ」
 藤谷:「おっ、確かに空いている。向こうのテーブル席にするか」
 勇太:「はい」
 藤谷:「遠慮しないで、好きなモン頼んでくれ」
 勇太:「それじゃ僕は、チャーシュー麺で」
 藤谷:「向こうの御屋敷では食えないヤツか?」
 勇太:「そうですね」
 藤谷:「俺もチャーシュー麺にするか。マリアさんは?」
 マリア:「私はカレーライスで」

 同調圧力に屈しないイギリス人。

 勇太:「今日は、中等部講習会の後のせいか、随分と静かですね」
 藤谷:「ああ。平日は基本、空いているものなんだが、コロナ前はここぞとばかりに、外国人信徒が多く詰めかけてたな。まるで、日本じゃなかったみたいだよ」

 事実である。
 今では信じられないのだが、特に平日は、日本人信徒よりも外国人信徒の方が多かったという事が多々あったのだ。
 正直、異常だったと思う。
 世界広布としての観点から見れば、その成果であると言えるのだが、その後のコロナ禍の結果を見れば、あれは本当に大聖人様が望まれた光景だったのだろうかと作者は個人的に思う。
 そして、現在の状態が望ましいとも思うのである。
コメント (1)
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“大魔道師の弟子” 「東京と富士、それぞれの朝」

2022-08-28 21:14:46 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[7月19日07:00.天候:晴 静岡県富士市 東横イン新富士駅南口7Fマリアの部屋]

 室内の電話が鳴る。

 マリア:「ううーん……」

 昨晩、モーニングコールを設定したのだった。
 起き上がって電話を取ると、受話器の向こうから自動音声の声が聞こえて来た。
 これがイリーナの声で、『もう朝よ。起きなさい』とでも聞こえてくれば一気に目が覚めるところだが、そんなことはない。
 むしろ、マリアが起こす側なのだから。

 マリア:「ふわ……」

 電話を切ると、マリアは大きな欠伸をした。

 マリア:「勇太もちゃんと起きただろうな……」

 マリアはもう一度欠伸をして、バスルームに向かった。

[同日07:45.天候:晴 同ホテル1Fロビー]

 ホテルのロビーは、朝は朝食会場となる。
 マリアは勇太と一緒に、朝食会場に向かった。

 勇太:「ここでは食べ放題みたいだね」
 マリア:「そんなに食べれないよ」

 ビュッフェスタイルとなっており、和食が中心である。

 勇太:「昨夜、いい運動したせいか、程よくお腹空いてるんだよ」
 マリア:「なるほど……」
 勇太:「あ、ゴメン!マリアの部屋に、ゴム忘れて来ちゃったよ。後で取りに行くから」
 マリア:「分かってるよ」

 テレビの近くの席に座る。

 勇太:「屋敷に帰ったら、しばらく和食が食べれなくなるから今のうちだ」
 マリア:「まあ、そうだね。でも、ダニエラが、夜食におにぎり作ってくれるて話じゃない?」
 勇太:「うん、そうなんだ。たまに食べると美味しいよね」
 マリア:「うん……」

 何か2人とも、会話がぎこちない。
 何故なら2人とも……。

 勇太:「急いで食べて、部屋に戻ろうか」
 マリア:「う、うん」

 マリアも耳が赤い。

 勇太:「もう1度、マリアの部屋に行っていいかな?」
 マリア:「いい……よ。で、でも、帰る準備してからの方が……」
 勇太:「マリアは我慢できるの?」
 マリア:「それは……」
 勇太:「よし、急いで食べて」
 マリア:「うん……」

[同日09:00.天候:晴 東京都江東区森下 ワンスターホテル1Fフロント]

 エレーナ:「ご利用ありがとうございました。またのお越しをお待ち申し上げます」

 朝のフロントは、チェックアウトする客で忙しい。
 もっとも、休日から平日の日は客も少ない傾向があるので、いつもよりは忙しくない。
 忙しいのは普段の平日と、週末である。

 エレーナ:「おいおい、あの2人、朝っぱらから始めちゃったぜぇ!」

 勇太とマリアが朝からムラムラして、チェックアウト前にもう1回戦やることに気づいたエレーナだった。

 エレーナ:「早いとこ結婚しちまえよ!」
 鈴木:「何が?」
 エレーナ:「おっと!な、なに!?チェックアウトか?」
 鈴木:「チェックアウトなんだけど、ここで10時まで待たせてもらう」
 エレーナ:「誰かと待ち合わせか?」
 鈴木:「ううん。エレーナの仕事ぶりを見てるの」
 エレーナ:「はあ!?見世物じゃねーぞ!?」
 鈴木:「ウクライナ美女の仕事ぶりなんて、テレビでしか見れないからね」
 エレーナ:「おい、金取るぞ!?」
 鈴木:「いいじゃんいいじゃん。常連の特権ってことで」
 エレーナ:「勝手に決めんなっ!」
 鈴木:「ほら、お客さん」
 トチロ~:「どうもー」
 エレーナ:「おはようございます。ご利用ありがとうございます」

 鈴木はロビーのソファに座り、エレーナの仕事ぶりを見学した。

[同日09:30.天候:晴 東横イン新富士駅南口7Fマリアの部屋]

 勇太:「も……もう出ない……っ!」
 マリア:「あ、アタシも……ムリ……!」

 2人は全裸で仰向けにベッドに転がっていた。

 勇太:「そ、そろそろ時間だ。早いとこ準備しないと……」

 勇太は精液の溜まったコンドームを、自分のナニから引き抜いて言った。

 マリア:「だから早くイってって言ったじゃない。ちょっと、汗かいたからシャワー……」
 勇太:「僕も入る」
 マリア:「こら!勇太は自分の部屋のを使え!」
 勇太:「一緒に洗った方が早いよ」
 マリア:「Huh!?」

[同日09:30.天候:晴 ワンスターホテル1Fロビー]

 鈴木:「ハァ、ハァ……」

 鈴木、ホテル内の自販機コーナーで買った棒アイスを頬張りながら、荒い息をしていた。

 宿泊客:「あの人、大丈夫ですか?」
 エレーナ:「だ、大丈夫です。ご利用ありがとうございました」

 宿泊客が退館すると……。

 エレーナ:「鈴木、人の仕事ぶり見ながらハァハァ言うのやめてくれる?フツーにキモいんですけど?あと、他のお客様から不審がられてる!」
 鈴木:「ご、ゴメン。エレーナの仕事ぶりが何だかエロ可愛くて……」
 エレーナ:「どこが!?」

[同日10:00.天候:晴 JR新富士駅富士山口]

 ホテルをチェックアウトし、まずは新富士駅に向かう。
 新富士駅は改札口を通らずに往来できる、南北自由通路が存在する。
 そこを通って、富士山口に出た。
 要は北口である。
 富士駅方面のバスや、大石寺方面の登山バスなどはここから出ているのだが、他にもタクシーや一般車乗降場も存在する。
 そこの駐車場に、藤谷のベンツGクラスが停車していた。

 勇太:「藤谷班長、おはようございまーす!」
 藤谷:「おっ、稲生君とマリアさん、おはよう」

 藤谷は運転席でタバコを吸っていたが、それを消した。

 マリア:「オハヨウゴザイマス」
 藤谷:「よしよし。2人とも、乗ってくれ。稲生君は助手席な?」
 勇太:「はい」

 勇太は助手席に座り、マリアはリアシートに座った。
 このGクラス、1回買い替えている。
 最初は左ハンドル車だったのだが、今は右ハンドル車になっているからだ。
 Gクラスにしたのは、かつて真冬の大石寺に他の車で登山中に雪にはまってしまい、立ち往生した為である。
 それ以来、雪道でも難無く走れる車を選んだらこれだったという。

 藤谷:「何だかスッキリしつもも、少し疲れた顔してるな?ランニングでもしたのか?」
 勇太:「ギクッ!……ちょ、ちょっと運動を……はい」
 藤谷:「まあ、確かに稲生君は文科系だからな。少しは運動して、体力を付けた方がいい」

 藤谷は車を走らせると、富士見大通りへと進路を向けた。
 この大通りは県道だが、道なりに走ると国道139号線に入り、西富士道路へと入ることができる。

 勇太:「は、はあ……そうですね」

 勇太は頷いて、チラッと後ろのマリアを見た。

 マリア:(余計なこと言うなよ?)

 マリアは目で勇太にそう言った。
 今日は天気が良いで、日差しが強い。
 夏だというのに、白い開襟シャツでありながら黒いジャケットを羽織り、サングラスを掛ける藤谷は強面そのものだった。
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“大魔道師の弟子” 「東京と富士、それぞれの過ごし方」

2022-08-28 16:37:24 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[7月18日21:00.天候:晴 東京都江東区森下 ワンスターホテル]

 鈴木弘明:「こんばんはーっ!」
 エレーナ:「おお、鈴木か」
 鈴木:「大石寺の任務、無事に終了しました!」
 エレーナ:「で、帰って来て早々、うちのホテルってか。まーいど」
 鈴木:「どうもどうも」
 エレーナ:「女子中高生相手の仕事だったんだろ?」
 鈴木:「あの中にリリィがいたら最高なんだけどなぁ……」
 エレーナ:「魔女に宗教は不要だぜ?あぁ?」
 鈴木:「それは残念だ。もしかしたら、稲生先輩みたいに、物凄い魔力が身に付くかもしれないよ?功徳で」
 エレーナ:「稲生氏の場合は生まれつきだ。それに、霊力が加わっただけに過ぎないだけだぜ」

 鈴木は宿泊者カードに、ペンを走らせた。

 エレーナ:「はいよ。今日は5階だぜ」
 鈴木:「最上階、最高!」
 エレーナ:(本当はなるべく、私やリリィと離れた所を指定しているだけなんだけどな)

 エレーナは地下室で寝泊まりしている。
 時々、リリィも泊まりに来る。
 で、鈴木は最上階の5階に宿泊させるのがセオリーだった。

 鈴木:「リリィは!?」
 エレーナ:「もう魔界に帰ったぜ。学校があるからな」
 鈴木:「それは残念」
 エレーナ:「あー、因みに稲生氏やマリアンナもここに来てたぜ」
 鈴木:「えっ、そうなの!?今はいない?」
 エレーナ:「大石寺に行ったって聞いたぜ?」
 鈴木:「大石寺ィ!?あれ?でも、今日は……あ、前泊か?明日は普通の御開扉だもんな……」
 エレーナ:「今夜は近くのホテルに泊まるらしいから、そうじゃねーのか」
 鈴木:「何だ、明日添書登山なんだ。だったら俺も、向こうに泊まってくれば良かったかなぁ?」
 エレーナ:「マリアンナにボコられるだけだから、やめといた方がいいぜ」
 鈴木:「それもそうだな」

 鈴木、過去に欲情してマリアを押し倒したことがある。
 この時は未遂に終わったが、今よりも罪障が深かった為に、頭がおかしくなったのだろう。
 こういった錯乱現象は、特に顕正会や創価学会から移って来た信徒にままある現象である。
 関係者は『罪障消滅中の事だから仕方がない』と口を揃えて言うが、やられた方はたまったもんじゃないだろう。
 もっとも、作者とて禁断症状が出ることがあるから、今となっては他人の事は言えないのだが……。

 鈴木:「それじゃ、よろしく」
 エレーナ:「ごゆっくり」

 エレベーターに乗り込んで行った鈴木を見送り、エレーナは再び水晶玉に手を翳した。
 そこにはマリアの部屋に入った勇太が、よろしくヤっているシーンが映し出されていた。

 エレーナ:「屋敷に帰ったら、しばらくヤれないから、今のうちってか」

[7月18日23:30.天候:晴 静岡県富士市 東横イン新富士駅南口7Fマリアの部屋]

 勇太との熱い行為が終わった後、マリアはバスルームに入ってシャワーを浴びていた。
 勇太は先ほど、自分の部屋に帰って行った。

 マリア:(うーん……激しくされたから、少しイタイ……)

 もっとも、魔道士になる前、普通の人間だった頃に輪姦された時よりはマシであるが。
 魔道士になってからもしばらくは、体に暴行の痕が残っていた。
 これは、『魔女のスティグマ』という。
 今現在、その痕は全く無い。

 ミカエラ:「お召し換えでございます」
 マリア:「ありがとう」

 バスルームから出てバスタオルだけを巻いていると、ミカエラがホテルのナイトウェアと下着を持ってきた。
 下着は普通のショーツであり、上はタンクトップである。

 マリア:「あ……」

 その時、マリアは机の上にコンドームの箱が置かれているのが分かった。
 勇太が持って来て、そのまま忘れて行ったのだろう。
 中を見ると、あと2個入っていた。

 マリア:「『この旅で、全部使い切ってやる』とか言ってたな……ふふ……」

[同日同時刻 東京都江東区森下 ワンスターホテル1Fフロント]

 夜中のフロントは暇である。
 その為、個人営業のホテルや、一部のチェーンホテル(スーパーホテルなど)では夜中のフロント営業を停止している場合もある。
 因みにエレーナは、フロントの机の上でトランプタワーを作るのが暇潰しだった。

 エレーナ:「……っと?」

 その時、フロントの電話が鳴った。
 着信音からして、客室からの内線のようである。
 番号を見ると、鈴木の部屋だった。

 エレーナ:「何だよ……。はい、フロントです」

 一応、マニュアル通りの対応を行う。

 鈴木:「あ、エレーナ。ちょっとモノは相談なんだけど……」
 エレーナ:「何だよ?」
 鈴木:「使い終わったTENGA、ゴミ箱に捨てといていい?」

 

 エレーナ:「アホか!自分で持って帰れ!!」
 鈴木:「ていうかエレーナ、TENGA、知ってるんだぁ?どうして?ねぇ、どうして?」
 エレーナ:「いい加減にしろーっ!」

 と、その時、エントラスのドアが開いた。

 トチロ~:「すいません、遅くなりました。今日、予約していた者ですが……」
 エレーナ:「おわっと!?」

 エレーナ、ガチャンと電話を切る。

 エレーナ:「い、いらっしゃいませ~。お待ちしておりました~。どうぞ、こちらに~」
 トチロ~:「すいません。折伏が立て込んだせいで、こんな時間になってしまいまして……」
 エレーナ:「い、いいえ。お疲れ様です。(アンタも日蓮正宗かい!)」

 エレーナは鍵を用意した。

 エレーナ:「お支払いはゴールドカードですね?ありがとうございます。それでは、こちらが鍵でございます。あちらのエレベーターで、3階へどうぞ」
 トチロ~:「あ、どうもよろしくお願いします」

 接客が終わると、待ち構えたようにまた電話が鳴る

 鈴木:「使用済みゴムもゴミ箱に捨てといていいんだっけ?」
 エレーナ:「1人でどうやって使ったぁ!?」

 尚、TENGAを使用する際、基本的にコンドームは使わないので、念の為。
コメント (1)
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