[8月29日21:00.天候:雨 仙台市青葉区・ホテル法華クラブ仙台 井辺翔太、結月ゆかり、Lily、未夢]
井辺はMEGAbyteが泊まっている部屋にいた。
ツインルームにエキストラベッドを設置した3人部屋である。
別に変な意味ではない。
今日の反省会と明日以降のことを確認する為である。
「改めまして、今日はお疲れさまでした」
「お疲れさまでした!」
ゆかりを中心に元気よく井辺に返す。
「地方のミニライブでしたが、皆さんよく頑張りました。明日以降も、この調子で頑張りましょう」
「はい!」
しかし、Lilyが複雑そうな顔をした。
「でも、グッズの売れ行きが良くなかったそうですね。やっぱり、私達じゃ……」
「あ、いえ。まだ、これからです。あくまでも今回のイベントは、皆さん、ガイノイドのことをもっと世間の人達に知って頂くのが目的です。メインがマルチタイプなのは、今、世間ではロボットを使用したテロに対して物凄い警戒感があります。まずは、その原因の一端となってしまったマルチタイプのエミリーさんとシンディさんには責任を取って頂くという形で参加してもらったのと、ボーカロイドはマルチタイプとは違うということを知って頂くのが目的ですので、皆さんは気になさらなくて大丈夫です」
「ミク先輩のようになれたら……」
「もちろんですよ。私も努力します。一緒に頑張りましょう」
[同日同時刻 同ホテル別室 敷島孝夫、1号機のエミリー、3号機のシンディ、8号機のアルエット]
敷島は敷島で、エミリー達の部屋にいた。
「えー、今日はお疲れさん。充電を十分にして、また明日に備えてくれ」
「はい。ありがとう・ございます」
「かつてのテロ・ロボットが、今では展示物だなんて、昔は信じられなかったなぁ……」
「わたしは楽しかったよ」
「そりゃあ、良かった」
アルエットの言葉に、敷島も目を細める。
エミリーとシンディは衣装を着替えることは殆ど無かったが、アルエットだけはMEGAbyteの3人と同様、バドガールの衣装を着ていた。
但し、デザインはMEGAbyteとは違う。
「お姉ちゃん達も着れば良かったのにー」
「まあ、アタシはこれが普段着の戦闘服だからね」
シンディは従妹の頭に手を置きながら答えた。
「その・通り」
エミリーも同調するように頷いた。
「明日もこの調子で頑張って欲しいけども、KR団の襲撃に対しては十分に警戒してほしい」
「かしこまりました」
エミリーが頷いた。
「バージョン連中が飛び込んできたところで、アタシ達で蜂の巣にしてやるわよ」
「美味しい蜂蜜が取れそうだね!」
アルエットの天然ぶりに、
「あ、いや、そうじゃなくてね……」
シンディは苦笑い。
(パッション系アイドルとして売れそうだが、デイライトさんとの折り合いがなぁ……)
敷島はアルエットを見ながら思った。
アリスが主任研究員を務めるデイライト・コーポレーションからは、アルエットを専属マスコット(は表向きで、本音は研究物)として長期契約したいとの話が来ている。
本来ならデイライト社で所有したかったらしいが、敷島の黒い手により紆余曲折を経て、正式に敷島エージェンシーのタレントとなった。
敷島エージェンシー初の『歌わないロイド』の誕生である。
「バージョン・シリーズの場合は、既に県内の地下工場が摘発されたから、多分もう襲撃してくることはないんじゃないかな。KR団のことだから、バージョンよりもっと強いテロ・ロボットなんか送り込んでくる恐れはある。その時はちゃっちゃっと応戦してくれ」
「りょーかい」
「かしこまりました」
「はーい!」
光線銃がどのようにして取り付けられているのか、どうやって出力調整されているかは謎のままであるアルエット。
十条伝助が保有しているキール・ブルーも同じものを搭載していることから、十条兄弟がオリジナルで開発したものと思われる。
兄弟で共同開発したのか、或いは仲違い後に別々に開発したかは不明。
「じゃあ、俺は疲れたから部屋に戻るぞ」
そう言って、敷島は自分が宿泊しているシングルの部屋に戻った。
「シンディ」
「ん?」
「敷島・社長は・お疲れだ。きっと・井辺・プロデューサーも・お疲れ・のはず」
そう言ってエミリーは、両手をニギニギした。
「? ……ああ、なるほど!」
「なに?なーに?」
[同日22:00.同ホテル・敷島の部屋 敷島孝夫&シンディ]
風呂上りにシンディからマッサージを受ける敷島。
「ちょうどいい時に来てくれたな」
「そう?それとも、エミリーの方が良かった?……アルエットなんて言わないよね?」
「まさか。ちょうどお前に話があったんだ。お前で良かったよ」
「話?」
「エミリーもそうだが、アルエットもマルチタイプなんだから、『セクサロイド機能』があるのかな?」
「アルエットを指名したりしたら、『変態ロリ社長』と呼ばせてもらうよ?」
「……てことは、あるのか。いやいや、指名しないって。ま、人間のアイドルでは知らんがな」
「アイドルの枕営業なんて、もう公然の秘密じゃないの?」
「まあな。でも、ボカロはそれができない。人間じゃないから。だからこそ、ミク達には固定客が付いている。『絶対に枕営業が無いアイドル』ってことでね」
「話ってそれ?」
「いや、そうじゃない。明日は普通にKR団への警戒でいいんだが、最終日にはちょっと動いてもらいたいことがある」
「最終日?」
「そしてこれは、エミリーとアルエットには内緒にしておいて欲しい。特に、エミリーには」
「エミリーには?」
敷島は自分が考えた作戦をシンディに伝えた。
「うわ……マジで?それ、ヘタすりゃ姉さん怒るじゃん?」
「だが、当のエミリーに頼んでもできないし、アルエットにやらせるわけにもいかないだろ?」
「まあ、確かに……」
「しかもお前はスナイパーとしての能力もある。この作戦には打ってつけだ」
「分かったわ。姉さんがキレた時の対応だけよろしく」
「平賀先生に頼んで、緊急にシャットダウンしてもらうさ」
「そう。レイチェルも壊れて、またどっちかが壊れるなんて嫌だもんね。1番泣くのはアルエットだと思うわ」
「そうだな」
井辺はMEGAbyteが泊まっている部屋にいた。
ツインルームにエキストラベッドを設置した3人部屋である。
別に変な意味ではない。
今日の反省会と明日以降のことを確認する為である。
「改めまして、今日はお疲れさまでした」
「お疲れさまでした!」
ゆかりを中心に元気よく井辺に返す。
「地方のミニライブでしたが、皆さんよく頑張りました。明日以降も、この調子で頑張りましょう」
「はい!」
しかし、Lilyが複雑そうな顔をした。
「でも、グッズの売れ行きが良くなかったそうですね。やっぱり、私達じゃ……」
「あ、いえ。まだ、これからです。あくまでも今回のイベントは、皆さん、ガイノイドのことをもっと世間の人達に知って頂くのが目的です。メインがマルチタイプなのは、今、世間ではロボットを使用したテロに対して物凄い警戒感があります。まずは、その原因の一端となってしまったマルチタイプのエミリーさんとシンディさんには責任を取って頂くという形で参加してもらったのと、ボーカロイドはマルチタイプとは違うということを知って頂くのが目的ですので、皆さんは気になさらなくて大丈夫です」
「ミク先輩のようになれたら……」
「もちろんですよ。私も努力します。一緒に頑張りましょう」
[同日同時刻 同ホテル別室 敷島孝夫、1号機のエミリー、3号機のシンディ、8号機のアルエット]
敷島は敷島で、エミリー達の部屋にいた。
「えー、今日はお疲れさん。充電を十分にして、また明日に備えてくれ」
「はい。ありがとう・ございます」
「かつてのテロ・ロボットが、今では展示物だなんて、昔は信じられなかったなぁ……」
「わたしは楽しかったよ」
「そりゃあ、良かった」
アルエットの言葉に、敷島も目を細める。
エミリーとシンディは衣装を着替えることは殆ど無かったが、アルエットだけはMEGAbyteの3人と同様、バドガールの衣装を着ていた。
但し、デザインはMEGAbyteとは違う。
「お姉ちゃん達も着れば良かったのにー」
「まあ、アタシはこれが普段着の戦闘服だからね」
シンディは従妹の頭に手を置きながら答えた。
「その・通り」
エミリーも同調するように頷いた。
「明日もこの調子で頑張って欲しいけども、KR団の襲撃に対しては十分に警戒してほしい」
「かしこまりました」
エミリーが頷いた。
「バージョン連中が飛び込んできたところで、アタシ達で蜂の巣にしてやるわよ」
「美味しい蜂蜜が取れそうだね!」
アルエットの天然ぶりに、
「あ、いや、そうじゃなくてね……」
シンディは苦笑い。
(パッション系アイドルとして売れそうだが、デイライトさんとの折り合いがなぁ……)
敷島はアルエットを見ながら思った。
アリスが主任研究員を務めるデイライト・コーポレーションからは、アルエットを専属マスコット(は表向きで、本音は研究物)として長期契約したいとの話が来ている。
本来ならデイライト社で所有したかったらしいが、
敷島エージェンシー初の『歌わないロイド』の誕生である。
「バージョン・シリーズの場合は、既に県内の地下工場が摘発されたから、多分もう襲撃してくることはないんじゃないかな。KR団のことだから、バージョンよりもっと強いテロ・ロボットなんか送り込んでくる恐れはある。その時はちゃっちゃっと応戦してくれ」
「りょーかい」
「かしこまりました」
「はーい!」
光線銃がどのようにして取り付けられているのか、どうやって出力調整されているかは謎のままであるアルエット。
十条伝助が保有しているキール・ブルーも同じものを搭載していることから、十条兄弟がオリジナルで開発したものと思われる。
兄弟で共同開発したのか、或いは仲違い後に別々に開発したかは不明。
「じゃあ、俺は疲れたから部屋に戻るぞ」
そう言って、敷島は自分が宿泊しているシングルの部屋に戻った。
「シンディ」
「ん?」
「敷島・社長は・お疲れだ。きっと・井辺・プロデューサーも・お疲れ・のはず」
そう言ってエミリーは、両手をニギニギした。
「? ……ああ、なるほど!」
「なに?なーに?」
[同日22:00.同ホテル・敷島の部屋 敷島孝夫&シンディ]
風呂上りにシンディからマッサージを受ける敷島。
「ちょうどいい時に来てくれたな」
「そう?それとも、エミリーの方が良かった?……アルエットなんて言わないよね?」
「まさか。ちょうどお前に話があったんだ。お前で良かったよ」
「話?」
「エミリーもそうだが、アルエットもマルチタイプなんだから、『セクサロイド機能』があるのかな?」
「アルエットを指名したりしたら、『変態ロリ社長』と呼ばせてもらうよ?」
「……てことは、あるのか。いやいや、指名しないって。ま、人間のアイドルでは知らんがな」
「アイドルの枕営業なんて、もう公然の秘密じゃないの?」
「まあな。でも、ボカロはそれができない。人間じゃないから。だからこそ、ミク達には固定客が付いている。『絶対に枕営業が無いアイドル』ってことでね」
「話ってそれ?」
「いや、そうじゃない。明日は普通にKR団への警戒でいいんだが、最終日にはちょっと動いてもらいたいことがある」
「最終日?」
「そしてこれは、エミリーとアルエットには内緒にしておいて欲しい。特に、エミリーには」
「エミリーには?」
敷島は自分が考えた作戦をシンディに伝えた。
「うわ……マジで?それ、ヘタすりゃ姉さん怒るじゃん?」
「だが、当のエミリーに頼んでもできないし、アルエットにやらせるわけにもいかないだろ?」
「まあ、確かに……」
「しかもお前はスナイパーとしての能力もある。この作戦には打ってつけだ」
「分かったわ。姉さんがキレた時の対応だけよろしく」
「平賀先生に頼んで、緊急にシャットダウンしてもらうさ」
「そう。レイチェルも壊れて、またどっちかが壊れるなんて嫌だもんね。1番泣くのはアルエットだと思うわ」
「そうだな」