[5月19日20:00.天候:晴 宮城県仙台市青葉区 市街地内のとある居酒屋]
稲生がここで思い知らされたのは、如何に自分が酒が弱いかということ。
それもあるのだが、やはり人種が違うと体の内部構造も違うのではないかと疑わざるを得ない現象を目の当たりにしたのだ。
マリア:「飲み放題プランにしたのは正解だったと思う」
稲生:「想定はしていたんですが、先生方の飲みっぷりはそれ以上ですね」
マリア:「あー、ついていけない。勇太、膝枕して〜」
稲生:「し、幸せです!」
勇太がするのではなく、される側。
ご想像の通り、稲生達は座敷の席にいる。
一応、個室っぽい造りになっているのだが……。
ルーシー:「勇太、私も〜」
マリア:「ルーシーはダメ!」
イリーナ:「あらあら。勇太君モテモテねぇ」
ベイカー:「うんうん。『仲良き事は美しき哉』、ちゃんと一門の綱領が守れているじゃないの」
生魚が全体的にダメなマリアに対し、ルーシーは平気でパクパク食べている。
もっとも、マリアの場合は人間時代に受けた迫害によるトラウマの1つである。
店員:「お待たせしました。こちら、締めの御飯になります」
稲生:「はい」
稲生は白飯を受け取ると、それを鍋の中に入れた。
因みに刺身の盛り合わせとかもセットで付いた宴会プランで、メインは鍋である。
稲生:「締めは雑炊です。すいません、僕が『締めは雑炊派』なもので……」
雲羽:「そして、私の趣向でもある」
多摩:「オマエの趣向か!」
イリーナ:「いいんだよ。これも美味しそうねぇ。あ、ワインお代わりしていいかい?」
ベイカー:「私ももう一杯」
ルーシー:「先生、飲み過ぎですよぉ」
それでも殆ど顔が赤くならない師匠2人であった。
弟子3人のうち2人が酔い潰れかかっているというのに。
[同日21:23.天候:晴 宮城県仙台市青葉区中央 JRあおば通駅]
仙台駅と同じ地区内にある、あおば通駅。
JR仙石(せんせき)線専用の駅であり、仙台市地下鉄との乗換駅でもある。
1面2線のホームに停車している電車に乗り込んだ。
日曜日夜の電車なので、車内は空いている。
〔「21時23分発、仙石線下り、各駅停車の東塩釜行きです。終点の東塩釜まで各駅に停車致します。お待たせ致しました。まもなく発車致します」〕
あおば通駅から陸前原ノ町駅までは地下区間を進む仙石線。
このトンネルの名前を仙台トンネルという。
仙台市地下鉄も含めれば、地下を走る鉄道線は3つあることになる。
〔まもなく1番線から、電車が発車致します。ご注意ください〕
シンプルな自動放送の後でオリジナルの発車メロディが流れる。
昔から仙台駅で使用されていたものだが、今ではこのあおば通駅でしか使用されていない。
自動放送がシンプルになったのは、仙石東北ラインが開通してから。
快速が廃止になり、各駅停車しか運転されなくなったことから、誤乗防止の為の放送は必要無いと判断されたか。
〔「ドアが閉まります。ご注意ください」〕
最後尾の車両に乗っている為に、車掌の笛の音がよく聞こえて来る。
首都圏ではもう車掌が笛を吹くことはなくなったが、仙台支社管内ではまだよく使われている。
半自動ドアなので、最初から開いているドア、閉まっているドアとバラバラだ。
上野駅みたいに停車中は半自動ドアであっても、発車1分前には自動ドアに戻し、全扉開ということはしない。
ドアチャイムは、首都圏のJR電車内で時折聞こえて来る運行情報のチャイムとほぼ同じ。
205系ならではのエアの音がして、景気よくドアが閉まる。
これもいずれはインドネシアのジャカルタに売られる運命なのだろうか。
〔「お待たせ致しました。本日もJR東日本をご利用頂きまして、ありがとうございます。21時23分発、仙石線下り、各駅停車の東塩釜行きです。まもなく仙台、仙台です。お出口は、右側です」〕
発車するとポイントを渡る関係でそんなに加速はしない。
だが、同じ地区内にあるだけに、駅間距離はとても短い。
その距離、たったの500メートル。
これはJR山手線(京浜東北線)の日暮里〜西日暮里に相当する。
上野〜御徒町の600メートルよりも短い。
西日暮里駅も東京メトロ千代田線との乗り換えの為に造られた駅だそうだが、あおば通駅もまた地下鉄との乗り換えの為に造られた駅なのである。
仙台駅で停車すると、さすがにここからはドカドカと一気に乗客が増える。
で、壮大な発車メロディはあおば通に譲っていることもあり、仙台駅の仙石線ホームだけはシンプルな発車ベルである。
〔10番線から、電車が発車します。ドアが閉まります。ご注意ください〕
ここでも車掌の笛の音が地下ホームによく響く。
さすがにここでは全車両のドアが開いたらしく、ここだけ首都圏の駅のようだ。
というより、車内の内装が山手線(または埼京線)時代とそんなに変わらない(吊り革がおにぎり型になったくらい。103系の廃車発生品の流用)。
だからまるで、埼京線かりんかい線を走っているかのような錯覚に陥るのだ。
〔「本日も仙石線をご利用頂きまして、ありがとうございます。各駅停車の東塩釜行きです。次は榴ヶ岡、榴ヶ岡です。……」〕
マリア:「飲み過ぎた……。絶対二日酔いになる……」
稲生:「こんなこともあろうかと、またソルマック買っときましたから」
マリア:「さすがは勇太。……ちょっとルーシー」
ルーシー:「なに?」
マリア:「あんまり勇太に寄り掛からないでっ。勇太が二日酔いの薬、用意してくれたみたいだから」
ルーシー:「さすがはマリアンナの後輩」
イリーナ:(両手に花)
ベイカー:(両手に花)
因みにあおば通駅発車の21時23分は、東京発新大阪行きの“のぞみ”号、最終列車の時間でもある。
[同日21:40.天候:晴 仙台市宮城野区福室 JR陸前高砂駅]
〔「まもなく陸前高砂、陸前高砂です。お出口は、左側です」〕
稲生:「ここで降りますよ」
電車は郊外に向かう度に空いていった。
平日はどうかは不明だが、日曜日の今日はもう車内はガラガラである。
稲生:「ほら、マリアさん、頑張って」
稲生はマリアの手を取って席を立たせた。
ルーシー:「先生達は往々にしてお酒が強いから、無理について行くと痛い目に遭うって分かるわよ」
稲生:「僕はビールと低アルコールのカクテルがせいぜいです」
陸前高砂駅は2面2線の相対式ホーム。
駅舎が上り線側にある為、跨線橋を渡らなければならない(顕正会本部の最寄り駅、大宮公園駅と同じ構造だと思って頂ければ良い)。
イリーナ:「おや?今日は月がとてもきれいね」
ベイカー:「昔を思い出すねぇ……」
イリーナ:「ベイカーさんの昔は、私でも分かりません」
ベイカー:「若いコはいいねぇ……」
稲生:(先生で若いの!?)
マリア:(ベイカー先生は師匠の何百歳年上なんだろう?)
驚きを隠しつつ、自動改札口を出る。
ベイカー:「おや?ルーシーも買ったのね?」
ルーシー:「はい。あの2人を見ていて、私も欲しくなりました」
ベイカー:「イギリスじゃ使えないのよ?」
ルーシー:「記念品としてでも、です」
ベイカー:「なるほどね」
稲生:「それじゃタクシーに乗り換えます。人数が5人なので、2台に分乗して行きます。僕が行き先を伝えておくので、イリーナ組とベイカー組で分けて乗るという形でいいですか?」
イリーナ:「それが自然だろうね」
ベイカー:「私達は後から行くから、先導よろしく」
稲生:「分かりました」
幸い同じタクシー会社が2台、タクシー乗り場に止まっていたので、稲生は後ろのタクシーに行き先を伝えるだけで良かった。
イリーナとマリアはリアシートに座り、稲生は助手席に座った。
稲生:「それじゃ、お願いします」
運転手:「はい。後ろの車の方と同じですね?」
稲生:「そうです」
運転手:「分かりました」
タクシーは駅前ロータリーを出た。
稲生がここで思い知らされたのは、如何に自分が酒が弱いかということ。
それもあるのだが、やはり人種が違うと体の内部構造も違うのではないかと疑わざるを得ない現象を目の当たりにしたのだ。
マリア:「飲み放題プランにしたのは正解だったと思う」
稲生:「想定はしていたんですが、先生方の飲みっぷりはそれ以上ですね」
マリア:「あー、ついていけない。勇太、膝枕して〜」
稲生:「し、幸せです!」
勇太がするのではなく、される側。
ご想像の通り、稲生達は座敷の席にいる。
一応、個室っぽい造りになっているのだが……。
ルーシー:「勇太、私も〜」
マリア:「ルーシーはダメ!」
イリーナ:「あらあら。勇太君モテモテねぇ」
ベイカー:「うんうん。『仲良き事は美しき哉』、ちゃんと一門の綱領が守れているじゃないの」
生魚が全体的にダメなマリアに対し、ルーシーは平気でパクパク食べている。
もっとも、マリアの場合は人間時代に受けた迫害によるトラウマの1つである。
店員:「お待たせしました。こちら、締めの御飯になります」
稲生:「はい」
稲生は白飯を受け取ると、それを鍋の中に入れた。
因みに刺身の盛り合わせとかもセットで付いた宴会プランで、メインは鍋である。
稲生:「締めは雑炊です。すいません、僕が『締めは雑炊派』なもので……」
雲羽:「そして、私の趣向でもある」
多摩:「オマエの趣向か!」
イリーナ:「いいんだよ。これも美味しそうねぇ。あ、ワインお代わりしていいかい?」
ベイカー:「私ももう一杯」
ルーシー:「先生、飲み過ぎですよぉ」
それでも殆ど顔が赤くならない師匠2人であった。
弟子3人のうち2人が酔い潰れかかっているというのに。
[同日21:23.天候:晴 宮城県仙台市青葉区中央 JRあおば通駅]
仙台駅と同じ地区内にある、あおば通駅。
JR仙石(せんせき)線専用の駅であり、仙台市地下鉄との乗換駅でもある。
1面2線のホームに停車している電車に乗り込んだ。
日曜日夜の電車なので、車内は空いている。
〔「21時23分発、仙石線下り、各駅停車の東塩釜行きです。終点の東塩釜まで各駅に停車致します。お待たせ致しました。まもなく発車致します」〕
あおば通駅から陸前原ノ町駅までは地下区間を進む仙石線。
このトンネルの名前を仙台トンネルという。
仙台市地下鉄も含めれば、地下を走る鉄道線は3つあることになる。
〔まもなく1番線から、電車が発車致します。ご注意ください〕
シンプルな自動放送の後でオリジナルの発車メロディが流れる。
昔から仙台駅で使用されていたものだが、今ではこのあおば通駅でしか使用されていない。
自動放送がシンプルになったのは、仙石東北ラインが開通してから。
快速が廃止になり、各駅停車しか運転されなくなったことから、誤乗防止の為の放送は必要無いと判断されたか。
〔「ドアが閉まります。ご注意ください」〕
最後尾の車両に乗っている為に、車掌の笛の音がよく聞こえて来る。
首都圏ではもう車掌が笛を吹くことはなくなったが、仙台支社管内ではまだよく使われている。
半自動ドアなので、最初から開いているドア、閉まっているドアとバラバラだ。
上野駅みたいに停車中は半自動ドアであっても、発車1分前には自動ドアに戻し、全扉開ということはしない。
ドアチャイムは、首都圏のJR電車内で時折聞こえて来る運行情報のチャイムとほぼ同じ。
205系ならではのエアの音がして、景気よくドアが閉まる。
これもいずれはインドネシアのジャカルタに売られる運命なのだろうか。
〔「お待たせ致しました。本日もJR東日本をご利用頂きまして、ありがとうございます。21時23分発、仙石線下り、各駅停車の東塩釜行きです。まもなく仙台、仙台です。お出口は、右側です」〕
発車するとポイントを渡る関係でそんなに加速はしない。
だが、同じ地区内にあるだけに、駅間距離はとても短い。
その距離、たったの500メートル。
これはJR山手線(京浜東北線)の日暮里〜西日暮里に相当する。
上野〜御徒町の600メートルよりも短い。
西日暮里駅も東京メトロ千代田線との乗り換えの為に造られた駅だそうだが、あおば通駅もまた地下鉄との乗り換えの為に造られた駅なのである。
仙台駅で停車すると、さすがにここからはドカドカと一気に乗客が増える。
で、壮大な発車メロディはあおば通に譲っていることもあり、仙台駅の仙石線ホームだけはシンプルな発車ベルである。
〔10番線から、電車が発車します。ドアが閉まります。ご注意ください〕
ここでも車掌の笛の音が地下ホームによく響く。
さすがにここでは全車両のドアが開いたらしく、ここだけ首都圏の駅のようだ。
というより、車内の内装が山手線(または埼京線)時代とそんなに変わらない(吊り革がおにぎり型になったくらい。103系の廃車発生品の流用)。
だからまるで、埼京線かりんかい線を走っているかのような錯覚に陥るのだ。
〔「本日も仙石線をご利用頂きまして、ありがとうございます。各駅停車の東塩釜行きです。次は榴ヶ岡、榴ヶ岡です。……」〕
マリア:「飲み過ぎた……。絶対二日酔いになる……」
稲生:「こんなこともあろうかと、またソルマック買っときましたから」
マリア:「さすがは勇太。……ちょっとルーシー」
ルーシー:「なに?」
マリア:「あんまり勇太に寄り掛からないでっ。勇太が二日酔いの薬、用意してくれたみたいだから」
ルーシー:「さすがはマリアンナの後輩」
イリーナ:(両手に花)
ベイカー:(両手に花)
因みにあおば通駅発車の21時23分は、東京発新大阪行きの“のぞみ”号、最終列車の時間でもある。
[同日21:40.天候:晴 仙台市宮城野区福室 JR陸前高砂駅]
〔「まもなく陸前高砂、陸前高砂です。お出口は、左側です」〕
稲生:「ここで降りますよ」
電車は郊外に向かう度に空いていった。
平日はどうかは不明だが、日曜日の今日はもう車内はガラガラである。
稲生:「ほら、マリアさん、頑張って」
稲生はマリアの手を取って席を立たせた。
ルーシー:「先生達は往々にしてお酒が強いから、無理について行くと痛い目に遭うって分かるわよ」
稲生:「僕はビールと低アルコールのカクテルがせいぜいです」
陸前高砂駅は2面2線の相対式ホーム。
駅舎が上り線側にある為、跨線橋を渡らなければならない(顕正会本部の最寄り駅、大宮公園駅と同じ構造だと思って頂ければ良い)。
イリーナ:「おや?今日は月がとてもきれいね」
ベイカー:「昔を思い出すねぇ……」
イリーナ:「ベイカーさんの昔は、私でも分かりません」
ベイカー:「若いコはいいねぇ……」
稲生:(先生で若いの!?)
マリア:(ベイカー先生は師匠の何百歳年上なんだろう?)
驚きを隠しつつ、自動改札口を出る。
ベイカー:「おや?ルーシーも買ったのね?」
ルーシー:「はい。あの2人を見ていて、私も欲しくなりました」
ベイカー:「イギリスじゃ使えないのよ?」
ルーシー:「記念品としてでも、です」
ベイカー:「なるほどね」
稲生:「それじゃタクシーに乗り換えます。人数が5人なので、2台に分乗して行きます。僕が行き先を伝えておくので、イリーナ組とベイカー組で分けて乗るという形でいいですか?」
イリーナ:「それが自然だろうね」
ベイカー:「私達は後から行くから、先導よろしく」
稲生:「分かりました」
幸い同じタクシー会社が2台、タクシー乗り場に止まっていたので、稲生は後ろのタクシーに行き先を伝えるだけで良かった。
イリーナとマリアはリアシートに座り、稲生は助手席に座った。
稲生:「それじゃ、お願いします」
運転手:「はい。後ろの車の方と同じですね?」
稲生:「そうです」
運転手:「分かりました」
タクシーは駅前ロータリーを出た。