報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「帰省初夜」 3

2024-01-31 20:26:14 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[2月24日23時00分 天候:曇 宮城県仙台市若林区某所 愛原家2階・愛原学の自室]

 愛原「さーて、明日も早いからそろそろ寝るか……」

 私の部屋にはベッドが1つと、布団が1組敷かれている。
 その布団は、リサが寝る為に敷かれているものだ。

 リサ「エヘヘ……先生と一緒の部屋~
 愛原「いいのか?フローリングの床だから、そこに直接布団は冷たいだろう?」
 リサ「マットレスの上に敷いてあるからそんなに気にならないし、それにわたし、寒さに強いって知ってるでしょ?」
 愛原「ま、まあな……」

 リサは学校のジャージに着替えている。
 まるで修学旅行だ。
 その下には半袖の丸首タイプの体操服と、緑色のブルマを穿いているはずである。
 さすがに両親の前で、今そんな恰好をするわけにはいかないので、学校のジャージを着てもらっている。
 母親はパジャマじゃないのかと聞いてきたが、リサは透かさず、『いつもジャージで寝ている』と答えた。
 実際は違うのだが。
 パジャマを着ない理由も、セーラー服を着たがらない理由と同じだ。
 アンブレラの研究所では、パジャマを支給されていたため。
 病院の入院患者が着るようなアレではない。

 愛原「こ、こんなオッサンと同じ部屋だぞ?本当にいいのか?」
 リサ「もう!先生だからいいの!わたし達は夫婦なんだから!」
 愛原「だからまだ入籍してないし、そもそも俺OKしてないし……」
 リサ「『まだ』?」
 愛原「んっ!?」

 するとリサ、パッと顔を明るくした。

 リサ「『まだ』ということは、いずれはOKということだね!?嬉しい!」

 リサ、私に抱き着いてくる。

 愛原「『いずれ』だぞ!?『いずれ』!お前が人間に戻ったら、考えてやる!」

 確かにリサは可愛い。
 リサの実の母親と思われる斉藤玲子は清楚系ビッチであったという。
 リサの実の父親と思われる上野医師の手記では、斉藤玲子は当時14歳の女子中学生でありながら、『お椀のような乳房』を持ち、『どこにでもいる普通の少女』でありながら、『しかし絶対に忘れることのない美しさを持つ』容貌であったそうだ。
 ここにいるリサなど、そうなのだろう。

 リサ「鬼のままでもいいでしょお?わたしのお母さん、中学生でお父さんとパコパコしてたって言うしぃ……」
 愛原「どこで覚えた、そんな言葉!?」
 リサ「学校とお兄ちゃん」
 愛原「その結果、不幸な目に遭ったことを考えると、娘のお前は自重しろ」
 リサ「えー……」

 もっとも、上野医師の手記には、斉藤玲子と出会い、一緒に旅をしたことに対する後悔の綴りは一切無く、むしろ言葉の端々に幸福であることが伺える表現が散りばめられているという。

 愛原「とにかく、もう寝るぞ。俺は『監視役』として、一緒の部屋で寝るだけだ」
 リサ「はいはい。そういうことにしておきましょうね。明日は泊まり掛けで温泉に行くんでしょう?」
 愛原「市内のな。これは親孝行だぞ」
 リサ「うん。わたしも手伝うね」
 愛原「それは宜しく」

 私は部屋の照明を消した。

 愛原「じゃあ、おやすみ」
 リサ「おやすみなさーい」

 暗闇の中で、リサの金色の瞳がボウッと光る。
 赤い瞳の時もあれば、金色の瞳の時もある。
 これの違いはよく分からない。
 いずれにせよ、今回は金色だ。
 結局のところ、暗闇で光ることから、不気味であることに変わりはない。
 私達はもう慣れたが、学校ではホラーだろう。
 特にこの冬の時期、下校時刻前はもうだいぶ暗くなっている。
 そんな時に照明が点灯していないか、点灯してても暗い場合、リサの瞳がボウッと鈍く光るので、それが『暗闇に怪しく光る2つの目』というタイトルの学校の七不思議の1つになっている。
 もちろん、犯人はリサである。
 その瞳に吸い込まれた者は、吸血鬼に襲われて……という話が続いているが……。

 愛原「あ、そうだ、リサ」
 リサ「なに?一緒の布団で寝ようって?ハイ、喜んでー!」
 愛原「違う違う!」
 リサ「えー?」
 愛原「お前、今眠いか?」
 リサ「そんなことは無いね。先生と一緒の部屋ってことで、緊張して眠れそうに無いよ~」

 とても緊張しているようには見えない。

 愛原「だったらさ、足ツボマッサージしてもらえるかな?」
 リサ「おっ、いきなりだねぇ。でもいいよ。先生の老廃物、吸えるのかぁ……でへへへへ……」
 愛原「そういうことだ」

 私は起き上がると、再び部屋の照明を点けた。
 暗闇に怪しく光っていたリサの瞳も、明るい所では普通の黒い瞳になる。

 愛原「このままでもいいか?」
 リサ「いいよ。それじゃ、うつ伏せになってー」

 私は言われた通り、ベッドの上にうつ伏せになった。

 リサ「わぁい!先生のベッド~!」
 愛原「オッサン臭くてゴメンな」
 リサ「せーんぜん!先生の匂い、大好き!」

 リサはポキポキと自分の指の骨を鳴らした。

 リサ「それじゃ、行くよー!」
 愛原「よろしく」

 リサは私の足のツボを押し始めた。
 見た目には指で押しているように見えるが、この時、リサの指からは髪の毛よりも細い触手が無数に生えていて、私のツボの中に突き刺さっている。
 しかし、髪の毛よりも細いせいで痛みは殆ど感じない。
 足ツボマッサージをされる時に感じる、『痛気持ちいい』感覚にかき消されてしまうのである。

 リサ「えへへへ……。先生の血液、老廃物がいっぱーい!」
 愛原「やっぱりな。ちょっと足が疲れてたんだ」

 血中老廃物を吸い取るのがリサの目的だが、その際にどうしても血液も一緒に啜ることになる。
 これも、目的の1つである。
 厳密に言えばリサの捕食行為は禁止されているのだが、こういうことに関しては黙認されていた。
 あまり禁止し過ぎるのも良くないと判断されたのかもしれない。

 愛原「どうだ?お腹一杯になったか?」
 リサ「うん。先生の血液もサラサラになったね!」

 しばらくして、足ツボマッサージが終わる。
 リサの体的には、これで一応、『人間を捕食した』という履歴が残るはずだ。
 しばらくはこれで、食人衝動は抑えられるだろう。
 足ツボから触手が引き抜かれるが、そこから出血するということはない。
 蚊に刺されたようなものだ。
 蚊に刺されても、出血するわけではないのと同じ。
 しかも、痒くもならない。

 リサ「ハイ、先生。次はハンドマッサージだよ~」
 愛原「え?」
 リサ「ぎゅっぎゅっ……と!指の先までマッサージしましょうね~」
 愛原「え?え?」
 リサ「マッサージの後は耳かきするよ~。わたしの膝の上に頭を置いて~」
 愛原「う、うん……」

 リサのマッサージは気持ち良く、そして耳かきで蕩かされてしまった。
 ……あ……そういえば……。
 薄れ行く意識の中、私はふとあることを思い出した。
 それはリサの遠い親戚で、那須塩原で温泉ホテルをやっている上野利恵のこと。
 鬼の女は、こういう事で人間の男を蕩かせるのだと。
 蕩かせた後で食うのだと。
 そんな事を言っていたような気がする……。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

“私立探偵 愛原学” 「帰省初夜」 2

2024-01-30 20:38:19 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[2月24日21時00分 天候:曇 宮城県仙台市若林区某所 愛原家地下1階・愛原公一の隠れ家]

 私とリサは公一伯父さんの夕食を下げに向かった。

 愛原公一「おー、来たか。節子さんの料理は美味かったと伝えておいてくれ」

 節子とは私の母親の名前である。

 愛原学「あ、うん。水とかはどうしてるの?」
 公一「ペットボトルの水を差し入れしてもらっとるよ。あとはそれで茶とかコーヒーとか、適当に作って飲んでおる」
 学「そうなんだ」
 公一「それより、お前が連れて来た2人の若者達じゃが……」
 学「うん?」
 公一「本当に、お前の事務所の従業員で間違い無いのじゃな?」
 学「そうだけど、どうして?」
 公一「本当に何も知らんのか?」
 学「な、何だよ?」
 公一「『知らぬが仏』というしな」
 学「そりゃあ2人とも、服役の経験があるけどさ……」
 公一「フム……」
 学「日野博士のことを知らないんじゃ、しょうがないよ」
 公一「アンブレラの研究所にいたのでは、ロクでもない研究者じゃっただろうがな」
 リサ「それはそうですね」

 リサは手に持っていたノートを取り出した。

 リサ「これ、学校の新聞部から借りて来たノートです。昔の新聞部の先輩、日野さんが書いた日記と思われるものです」
 公一「日記とな?」
 リサ「『恨みのノート』なんですけど、後半辺りからヤバいことが書いてあったので……」
 学「よくこんなのあったな?」
 リサ「部長代行の先輩のノートだったから、捨てるに捨てれなかったみたいだよ」
 学「そうなのか」

 パラパラとノートの中を見ていた公一伯父さんだったが、リサの言う後半辺りでその速度が落ちた。

 公一「ふーむ……」
 学「何か、マズいことでも書いてあった?」
 公一「そうじゃな。日本アンブレラは、色々な薬を開発しておった」
 学「そりゃ製薬会社だからね」
 公一「この日野とやらは、父親もまた日本アンブレラの研究員じゃったと」
 学「らしいね」
 公一「その研究員は、精神病関係の薬を開発するチームにおったようじゃ」
 学「精神病?向精神薬とか?」
 公一「そうじゃな。じゃが、そこはあのアンブレラ。ただの薬だけを開発するわけがない」
 学「うんうん」
 公一「どうもこの日野という男、父親から試薬を受け取って被験者となっていたらしい」
 学「ええっ!?」
 公一「普段は『いい人』じゃったらしいが、その『いい人』を演じられたのも、薬によるものじゃったようじゃ」
 学「そうだったのか……」
 公一「そして、事態はマズい方向へと向かう」
 学「なに?」
 公一「薬でも抑えられないほどの殺したい相手を薬殺すると、足が付いてしまう。さあ、どうしよう?みたいなことが書いてある」
 学「どうしようたって、どうしようもないだろう」
 公一「自制心を壊す薬がアンブレラにはある。それを飲めば、たちどころに自制心が無くなり、人を殺すことにも何の躊躇いも無くなるという」
 学「ま、まさか、日野という男はそれを……」
 公一「手に入れようとしたのじゃが、さすがに情報が無い。そこで当時、学校の科学講師をやっておった白井伝三郎に何としてでも話を聞こうということで……それで日記は終わっとる」
 学「まんまと白井の罠に嵌まったってことか。それにしても、色んな薬があったんだね」
 公一「あるじゃろうな。アメリカのアンブレラ本体はウィルス研究に特化しておったが、日本アンブレラはウィルス研究はサブで、メインは製薬じゃ。そのおかげで学、お前がバイオハザードに巻き込まれた霧生市でも、薬が豊富にあったじゃろう?」
 学「そういえば……」

 ハーブも沢山あった。

 リサ「これがヒントになりませんかね?」
 公一「どこの部門にいたのか分かれば、そこから辿れば行き着くじゃろうな。じゃが、ワシも逃亡の身。少し時間を頂こう」
 愛原「頼むよ。栗原蓮華を鬼型BOWにした薬の開発者だ。そのレシピが分かれば、逆に鬼化を解く薬ができるかもしれないってことだよ」
 公一「果たして、そう上手く行くかね?」
 愛原「な、何だよ?」
 公一「いや、恐らくワシの薬は役に立たんじゃろうなと思っただけじゃ」
 リサ「お祖父さんの化学肥料で、人間をBOWにできるなんて凄いですね」
 公一「おいおい。前にも言ったが、ワシの薬だけでそんなことはできんからな?アンブレラが、わしの薬を勝手に材料にしただけに過ぎんよ。ワシは味噌を作っただけ。そこから醤油を作ったのは、あいつらじゃ」
 学「あ、なるほど。そういう例えか」

 たまり醤油は味噌から造る。
 日本における起源は、鎌倉時代の僧侶が中国で修行した際に覚えた製法で味噌を造ったところ、間違えて醤油ができてしまったことによるものだという。
 醬油メーカーのヤマサはそのように説明している。

 学「分かったよ。ありがとう。それじゃ、おやすみ」
 公一「鬼型BOWを製造する方法は、行き詰ったバイオテロ組織から注目されつつある。リサを浚ったのは栗原家じゃったが、本物のテロ組織に狙われんようにしろよ?」
 学「気をつけるよ」
 公一「まあ、BSAAやら日本政府やら、他の諜報組織やらがこのコに注目しているうちは大丈夫じゃと思うがな」

 この時、私は伯父さんの言う『他の諜報組織』とは、“青いアンブレラ”のことだと思っていた。

〔上に参ります。ドアが閉まります〕

 私とリサはホームエレベーターに乗り込んで、伯父さんの隠れ家をあとにした。

[同日22時00分 天候:雪 愛原家1階ダイニング・リビング]

 高橋「先生、また雪が降ってきましたよ」
 愛原学「そうなのか。降ったり止んだりだな」
 高橋「この辺は雪が積もるんですか?」
 愛原「いや、平地だからそんなに積もらないな。積もっても5cmがいいところだろう。特に今夜は降ったり止んだりみたいだから、積もっても数cmってところじゃないか」
 高橋「山の方はもうメートルで積もるみたいですね」
 愛原「そうだ。何しろ、スキー場まであるくらいだから」
 高橋「なるほど、そうですか」
 愛原「それより、明日と明後日は俺の両親サービスデーだ。付き合いの方、頼むぞ」
 高橋「もちろんです。これも先生の為です。お任せください」
 母親「お風呂空いたわよ。そろそろ入りなさい」
 愛原「はーい!」

 私は一旦2階の自室に行くと、着替えを取りに向かった。
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

“私立探偵 愛原学” 「帰省初夜」

2024-01-27 20:23:16 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[2月24日18時30分 天候:雪 宮城県仙台市若林区某所 愛原家1階ダイニング]

 帰省最初の夕食は、予想通りすき焼き鍋が出て来た。

 母親「公一伯父さんが『学達の為に』って、仙台牛を融通してくれたのよ」
 愛原「そ、そうなの」
 リサ「わー!美味しそうなお肉!」
 父親「仙台牛といっても、最高等級までは行けなかった仙台黒毛和牛のことだろう。いくら兄さんが農学の研究者で、自ら農薬や化学肥料を造れるほどだとはいえ、農家さんがそんな高い肉をタダで融通してくれるわけがないよ」
 愛原「いきなり現実的……」
 母親「でも、2種類のお肉を用意してくれたみたいよ?」
 父親「そっちは赤身が多いな。やっぱり、等級が低くて、売ると却って赤字になるような安肉を融通されたんだろう」
 リサ「赤身がある方が噛み応えがあって美味しいですよ」

 と、リサ。

 高橋「リサには赤身の肉食わせとけばいいっス!」
 リサ「血の滴る赤い肉……」
 愛原「それはいいとして、伯父さんは一緒に食べないの?」
 父親「なーんかね、『隠遁の身が、堂々と一緒に食事はできん』と言ってるんだ。学達が帰ってこないと、どうせ夫婦2人だけの夕食になるから、別にいいって言ったんだけどね」

 指名手配されているという自覚はあるのだろうな。
 その割には、交番とかには貼られていないが。
 伯父さんは、この家の地下にできている空洞をいつの間にか改築し、そこを隠れ家兼研究室として使っているとのこと。
 もちろん寝泊まりする為のスぺースはあるから、私とリサはそこで寝れば?という話だった。
 研究室みたいな場所に寝るのは嫌だと、リサは拒絶したが。

 愛原「伯父さん、食事はどうしてるの?」
 母親「仕方が無いから、後で持って行ってあげるのよ。学、後で持って行ってくれる?」
 愛原「ああ、分かった」

 両親達は、伯父さんが指名手配食らっていることを知らないのだろうか?

 愛原「伯父さんが、どうしてここの地下に住んでいるのか聞いてるの?」
 父親「何か、『悪い奴らに追われてる』って言ってたな。伯父さんが造った農薬だか肥料だかは、そんなに怖い物なのか?」
 愛原「う、うん。まあ、バイオテロ組織が、何故か喉から手が出るほど欲しがってる」
 母親「世の中、何が売れるか分かんないわねぇ……」
 愛原「い、いや、そういう問題じゃないと思うけど……」

 私は苦笑した。

[同日19時30分 天候:曇 愛原家1階ダイニング→地下1階・公一の隠れ家]

 公一伯父さんの夕食は、私達が食べてからでいいらしい。

 母親「『どうせ居候の身だから、残り物でいい』なんて言ってたけど、さすがにねぇ……」

 すき焼きの食材ではあるが、1人鍋に盛られていた。
 パールが洗い物を手伝っている。
 本当は高橋やリサも手伝おうとしたのだが、公一伯父さんに早く夕食を持って行くよう言われた。
 なので、地下には私とリサが行くことになった。
 私はお盆にすき焼きの入った1人鍋と御飯や漬物、お茶の入ったポットを乗せたワゴンを押した。
 地下までどうやって運ぶのだろうと思ったが……。

 父親「ここから行くんだ」
 愛原「あれ?!ここって、掃除用具入れじゃなかった!?」

 それがホームエレベーターになっていた。

 父親「公一伯父さんが、いつの間にか設置したんだよ。これならワゴンも乗るだろう」
 愛原「そういうことか……」

 エレベーターを呼び戻し、それに乗り込む。
 家庭用なので、サイズは小さい。
 業務用で最も小さいサイズの物が設置されている私の事務所だが、それでも定員は4人である。
 それに対して、このエレベーターの定員は3名であった。
 荷物であるワゴンの大きさ的に、私とリサがギリギリ乗れるほど。
 それで伯父さんが住んでいる地下階へと向かう。

 リサ「富士宮の民宿みたいに、ハンターとかいたりしてね」
 愛原「実際、ただの空洞だった頃はハンターが潜んでたんだよな」
 リサ「まあ、その時は私がブッ殺すから」

 ハンターとは、アンブレラが製造した生物兵器のことである。
 多くが2底歩行の爬虫類型だが、中には両生類型もある。
 爬虫類型は鋭い爪を持って、獲物に飛び掛かってはその爪で切り裂いたり、一気に首を刎ねたりする『首狩り』攻撃を行う。
 両生類型はカエルのような大きな口を持ち、獲物を丸呑みしてしまうのである。
 但し、両生類型は欠陥だらけでアンブレラ本体からも見捨てられた。
 口を大きく開けた際、口の中に向かって銃弾を放てば簡単に倒せる上、真横にピッタリ付くと振り向けないという性質があるからである。

 愛原学「着いた」

 ホームエレベーターには、ドアに小窓が付いている。
 それで、外の様子が分かる。

 愛原公一「おー、来たか。腹が減ったぞ」

 地下室は、殺風景なコンクリートの壁が剥き出しになっていた。
 かつては地下鉄東西線のトンネルにまで続いていた空洞だったが、今は壁で塞がれてしまっている。
 研究室の広さは10帖くらいだろうか。

 学「伯父さん。はい、夕食」
 公一「うむうむ。やっぱりすき焼きにしたか。どうじゃった?ワシの差し入れの肉は美味かったか?」
 学「ま、まあね」
 リサ「美味しかったです!」
 公一「そうか。そりゃあ良かった」

 伯父さんは電子レンジで鍋や御飯を温め始めた。
 尚、お茶の入っているポットは魔法瓶になっているので、温め直す心配は無い。

 学「伯父さん、一体どういうことなの?指名手配食らってるって自覚はあるよね?」
 公一「ワシが何のどういった容疑で指名手配を食らっているのかね?」
 学「栗原蓮華を鬼型BOWにする為、栗原重蔵氏に伯父さんの『発明品』を売ったとか」
 公一「確かにワシは、栗原重蔵とやらに大金を積まれ、それで発明品を売却した。じゃが、それが何の問題があるのかね?ライセンスはあくまで、開発者のワシにあるのじゃぞ?」
 学「だから、それで栗原蓮華が鬼に……」
 公一「じゃから、重蔵からはそんな話は聞いとらん。ワシの発明品『だけ』では、そんなことはできんのじゃぞ?お前もとっくに知ってるように、あれは化学肥料じゃ。それを重蔵が、何か変な細工をして、変な事態を招いただけに過ぎん」
 学「しかし現に、デイライトが伯父さんを追って……」
 公一「デイライトはただのNPO法人であって、警察機関ではない。つまり、組織的にはワシを拘束する権限は無いのじゃ」
 学「だったら、コソコソ隠れてないで、堂々とデイライトに説明すればいいじゃないか」
 公一「お前は日本政府のことを分かっておらん。政府の意に叶わん者は、何が何でも葬ろうとするのが政府という所じゃ。かつて一国の総理大臣であったはずの安倍晋三ですら、な」
 学「んん?」
 公一「政府はワシを悪者にして、事態の収束を図ろうとしている。さすがに、栗原家が『鬼を生み出してしまった』という事実は政府にとってもマズい状況らしい」
 学「伯父さんは何を言ってるの?」
 公一「カビというのは、農作物にも悪い影響を与える。それを取り除く発明品もあるのじゃが、どうもそれ、特異菌をも一気に殺す代物らしくてな。それをお前を融通しよう。それで、鬼を退治するが良い」
 学「リサには効く?」
 公一「ある程度は効くじゃろうが、このコはGウィルスの方がむしろメインなのじゃろう?特異菌だけ殺したところで、人間には戻れんじゃろうな」
 学「くっそ……」

 世の中、そんなに甘くないか。

 学「あ、そうだ。伯父さん。日野博士って知ってる?」
 公一「日野博士?」
 学「何か、日本アンブレラにいた研究者らしいんだけど……」
 公一「日本アンブレラに、そんなに知り合いがいたわけじゃないからな。その日野博士とやらが、どうかしたのか?」
 学「伯父さんの発明品を重蔵氏から受け取って、それにプラス、自分の発明品を調合して、それで蓮華を鬼にしたらしいんだ」
 公一「そうなのか。まあ、そやつがアンブレラの人間だったというのであれば、特段驚くべきことではないかな。むしろ、責任があるのは、ワシよりそっちだと思うがな」
 学「どこにいるかは分かんないよね?」
 公一「ワシが知るわけないじゃろう」
 学「だよね」

 話は振り出しに戻るというわけだ。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

“私立探偵 愛原学” 「実家に到着。そして、意外な人物と再会」

2024-01-24 20:28:42 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[2月24日17時51分 天候:曇→雪 宮城県仙台市若林区白萩町 仙台市地下鉄薬師堂駅→愛原家]

 

〔薬師堂、薬師堂。聖和学園前。出入口付近の方は、開くドアにご注意ください〕

 JR仙台駅で新幹線を降りた私達。
 喫煙所で高橋とパールが一服した後、地下鉄の駅に移動した。
 さすがに昔、騒ぎとなった地下空洞と地下鉄のトンネルの穴は埋められたようで、電車の窓からその跡を見る事すら困難だった。

 愛原「着いた着いた」

 この駅は対向電車と同時到着、発車する駅である。
 もちろん、早朝や深夜、平日の朝夕ラッシュ時は除くが。

〔1番線、2番線の電車が発車します〕

 両側の電車は短い停車時分を過ぎると、すぐに発車していった。
 ホーム階から改札階へは、そんなにエスカレーターも長くない。
 普通の建物のワンフロア上に向かうといった感じだ。
 普段は静かな駅だが、両方向の4両編成の電車が同時到着、同時発車するものだから、実に8両編成分の乗客を捌くことになる。

 愛原「ここが最後の駅だ。あとは家まで直行するぞ」
 リサ「うん……」

 地上までの長いエスカレーターに乗って、ようやく地上に出る。
 新しい地下鉄の良い所は、地上までエスカレーターで上がれることだ。
 もちろん、エレベーターも完備されている。
 地上に出ると、寒風が私達を襲った。

 高橋「先生、タバコ買って行っていいですか?」

 駅前には酒屋兼業のタバコ屋があり、店の前にはジュースの自販機とタバコの自販機が置かれていた。

 愛原「いいよ。お前、吸い過ぎなんだよ」
 高橋「サーセン」

 私の指摘に、パールも迷彩柄のマスク越しに苦笑しているのが分かった。

 リサ「わたしもジュース買って行こう」
 愛原「これから夕食だし、ジュースくらい家にあるぞ?」
 リサ「うーん……。すぐ御馳走になるのは悪いしィ……」
 高橋「おう、その通りだな」
 愛原「気にしなくていいんだよ」

 しかしリサは、自販機にペットボトル入りのコーラを買い求めた。
 まあ、私も結局、水くらいは買うことにしたのだが。

 高橋「地方でも水道水は飲めませんか?」
 愛原「気にし過ぎなのかもしれないけど、そのまま飲むのはちょっとな。実家にも浄水器は付いたって」
 高橋「なるほど、そうっスか」

 尚、店の前には吸い殻入れもあり、駅には喫煙所が無いことから、ここが喫煙スポットになりそうだ。

 リサ「うちと同じ4階建てだね」
 愛原「1階が店舗。2階から上が住宅なところは、ちょっと違うかな」

 うちの事務所兼住宅は土地が狭いので、駐車スペースを確保しようとすると、どうしても1階部分が犠牲になる。

 リサ「あ、雪だ……」

 実家までの道すがら、雪がちらついてきた。

 愛原「どうも寒いと思ってたら、雪が降ってきやがった。積もるかなぁ……」
 高橋「もし積もったら、雪掻き手伝いますよ」
 愛原「それはありがとう」

[同日18時15分 天候:雪 同区内某所 愛原家]

 愛原「んん?」
 高橋「どうしました?」
 愛原「気のせいかな?何か、前と家の様子が変わっているような……」
 高橋「気のせいじゃないっスか」
 愛原「そうかな???」

 私は首を傾げた。
 別に外観が変わっているというわけではないのだが……。

 愛原「ただいまー」
 母親「お帰りなさい」
 愛原「話ししていた通り、うちの事務所の皆も一緒に来たよ」
 パール「霧崎です。お世話になります」
 高橋「お久しぶりです!先生の不肖の弟子、高橋っス!」
 リサ「先生の妻、愛原リサです!」
 高橋「おい!!」
 母親「相変わらず、個性的なスタッフさん達ねぇ……」
 父親「上手くやっているようで安心した。寒かったでしょう。どうぞ、中に」
 パール「失礼します」
 高橋「お邪魔します!」
 リサ「邪魔するなら帰ってー」
 高橋「はーい。……って、何でやねん!」
 リサ「ニャハハ!」
 愛原「吉本新喜劇か!……えーと、客間に3人寝てもらえばいいんだな」
 母親「そうね。物置代わりだったけど、片付けておいたから」
 愛原「悪いね。じゃあ、お前達はそっちの客間で」
 高橋「あざっス」
 母親「エアコンの暖房が入るようにはなってるけど、寒いようならファンヒーター使っていいからね」
 高橋「あざっス」
 父親「学は2階の部屋でいいな?」
 愛原「元々、俺の部屋だし」
 リサ「わたしもそこで寝ていいですか!?」
 愛原「いや、それはダメだよ」
 リサ「何で!メイドさんとお兄ちゃんは、一緒の部屋なのに!」
 愛原「いや、2人は実質的に結婚しているようなものだから……」

 いわゆる、内縁というヤツである。

 父親「なに?いつ、結婚した?」
 愛原「いや、まだだよ。婚姻届の保証人、2人必要じゃない?俺1人と、もう1人いたんだけど、国外逃亡しちゃって。カルロス・ゴーンみたいに」
 父親「ふむぅ……。そうなのか」
 リサ「なので、わたし達の婚姻届の保証人に、お父様方のサインください!」
 高橋「アホか!」
 母親「って、あなたまだ高校生でしょう?」
 父親「学。いくら何でも、バイトの女の子にこんなことしたらマズいぞ?」
 愛原「違うんだって!」
 母親「せめて、高校は卒業してからにしなさい」
 リサ「はい!」
 愛原&父親「高校卒業したらいいの!?」
 リサ「というわけで、部屋は先生の部屋でいいですね?」
 愛原「し、しかし……」
 母親「そうは言ってもねぇ……」
 父親「間違いがあっては困るし……」
 リサ「わたしは構いません!」
 母親「いや、そういう問題じゃなくって……」
 愛原公一「それなら、ワシの住処に泊まるか?」
 愛原学「いや、伯父さんとこって言ってもねぇ……。って!?」

 私達は公一伯父さんの声がした方を振り向いた。
 すると、いつの間にか背後には公一伯父さんが立っていた。

 公一「よー来たのー」
 愛原「伯父さん!?何で!?」

 意外な人物との再会だった。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

“私立探偵 愛原学” 「旅行1日目」

2024-01-23 20:43:25 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[2月24日15時50分 天候:曇 東京都台東区上野 JR東北新幹線6033B列車1号車内]

〔♪♪(車内チャイム)♪♪。まもなく、上野です。上野を出ますと、次は、大宮に止まります〕

 私の名前は愛原学。
 都内で小さな探偵事務所を経営している。
 今日はこれから2泊3日の予定で、仙台に帰省する予定だ。
 今は私と助手の高橋、そして住み込み事務員のパールと一緒に新幹線に乗っている。
 実質的に、帰省にかこつけた慰安旅行だな。
 今、リサはこの列車には乗っていない。
 彼女は学校が終わってからすぐ乗るようにする為、上野駅でこの列車を待っているはずである。
 何事も無ければ良いのだが。

〔「まもなく上野、上野です。お出口は、左側です。上野を出ますと、次は大宮に止まります。上野駅からご乗車のお客様がいらっしゃいます。空いている座席には、お荷物など置かぬようお願い致します」〕

 列車が地下深くのホームに停車する。
 新幹線の駅で、地下ホームにあるというのは珍しいだろう。
 私は上野駅以外に、あまり思い当たらない。

 高橋「先生、リサが乗って来ます」
 愛原「そうか。ちゃんと間に合ったようだな」

 全車両指定席の“はやぶさ”号では、上野駅で下車する乗客もいまい。
 ドアが開くと、リサはすぐに乗って来た。

 リサ「先生!」

 リサは制服姿に、何やら食べ物や飲み物の入ったビニール袋を持っていた。

 愛原「ちゃんと乗れたな。よしよし」

 すぐに発車時間になる為、ホームから発車ベルの音が聞こえて来る。
 私は一瞬席を立つと、リサを窓側に座らせた。
 その隣に私が座る。
 高橋とパールは、その後ろに座っていた。
 リサは自分の荷物をヒョイと持ち上げて、網棚に乗せた。
 小柄な体なので、持ち上げる時にピョッと背伸びをするところが可愛い。
 荷物を乗せると、列車はドアを閉めて発車した。
 リサは座席からテーブルを出して、おやつと飲み物を置いた。

 愛原「しっかり買い食いか」
 リサ「学校帰りはお腹が空くんだよ。……あ」
 愛原「何だ?」

 リサは着替えなどの入っているキャリーバッグではなく、網棚には置かなかった通学鞄の中を開けた。
 そこから、充電器を取り出す。

 リサ「スマホ充電する」
 愛原「窓の下にあるよ、コンセント」

 窓の下にあるので、実質的に窓側席専用のようなものか。
 リサは前屈みになると、充電コンセントを挿した。

 リサ「あとはWiFiに接続」
 愛原「あー、新幹線にはWiFiがあるな……」

〔♪♪(車内チャイム)♪♪。本日も東北新幹線をご利用くださいまして、ありがとうございます。この列車は、“はやぶさ”号、仙台行きです。次は、大宮に止まります。お客様にお願い致します。車内はデッキ、トイレも含めまして全車両禁煙です。……〕

 リサ「『新幹線なう』と」

 リサはデッキに出るドアの上にあるLED表示板を撮影して、それをLINEにアップした。
 そのLINEとは、『魔王軍』のグループLINEである。

 リサ「ヨドバシとコジマとレイチェルにお土産頼まれた」
 愛原「何だ?」
 リサ「萩の月」
 愛原「萩の月か」
 リサ「甘くて美味しいんだって」
 愛原「そうだな。もう、仙台定番の土産だぞ。ほら」

 私は進行方向右側を指さした。
 列車はトンネルから出て、高架線を走行している。
 在来線で言えば、田端~上中里間くらいだろうか。
 その辺りの進行方向右側には、萩の月の大きな看板が掲げられているのだ。

 リサ「おー!あれがコジマの言ってた看板か」
 愛原「そうか。小島さん、王子だったか東十条だかに住んでるんだっけか」
 リサ「そうそう。朝は東十条始発の各駅停車で座って行くんだって」
 愛原「始発駅、いいなぁ」

 但し、東十条始発の電車は、朝方は6時56分発で無くなるので、それに乗って来たとしても、上野にはかなり早く着く。
 その為、小島さんは予習の時間に当てているのだとか。
 日直の仕事も、元々早く来てるので苦にならないと。
 『魔王軍』の中では、優等生なのだ。

 リサ「ヨドバシも北千住だから、地下鉄で始発駅だよね」
 愛原「あー、確かにな」

 たまにJRで帰ることもあるという。
 日比谷線が止まった時とか、今回みたいにリサの見送りついでとか。
 JRはJRで上野始発の電車があるので、こちらも座って帰れるわけだ。

 愛原「何だな……。お前の為に、始発駅の近くに引っ越しても良かったなぁ」
 リサ「わたしは別にどっちでもいいけどね」

 リサはそう言うと、おやつに買ったビーフジャーキーに噛み付いた。

[同日17時17分 天候:曇 宮城県仙台市青葉区中央 JR東北新幹線6033B列車1号車内→JR仙台駅]

 “はやぶさ”号の最高時速は320キロ。
 大宮以北でその真価が発揮される。
 ドアの上の表示板にも、『只今、時速320kmで走行中です』と表示されたりする。
 普通鉄道では最高速度の京成スカイライナーはその半分だが、特にそういった表示がされた記憶は無い。
 今は徐々に速度を落としている。
 ATCによる自動ブレーキで減速しているといった感じだ。

〔♪♪(車内チャイム)♪♪。まもなく終点、仙台です。仙石線、仙山線、常磐線、仙石東北ライン、仙台空港アクセス線、仙台市地下鉄南北線と東西線はお乗り換えです。お忘れ物の無いよう、お支度ください。本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございました〕

 リサ「だいぶ、外が暗くなってきた」

 リサは自分の顔を窓ガラスに押し付ける勢いで、窓の外を見た。
 それまで何にも無かった車窓に、少しずつ街の明かりが見えてくるようになる。

 愛原「少しずつ日は長くなっているんだろうが、今日は曇りだからかな」
 リサ「なるほど。雪、降るのかな?」
 愛原「仙台の平野部は雪が少ないからな。まあ、天気が悪くなったら雪が少し降るって感じかな」
 リサ「ふーん……」

〔「……11番線に入ります。お出口は、右側です。ホーム進入の際、ポイント通過の為、電車が大きく揺れる場合がございます。お立ちのお客様は、ご注意ください。本日もJR東日本をご利用頂きまして、ありがとうございました」〕

 電車が更に速度を落とし、在来線電車とそんなに変わらないスピードて走る頃、車窓はもう市街地の風景になる。

 愛原「荷物下ろすか」

 私は席を立って、まずは自分の荷物を下ろし、座席の上に置いた。
 それから、リサの荷物。

 愛原「はいよ」
 リサ「ありがとう!」
 高橋「外は寒そうっスね」
 愛原「そりゃ東北だからな。東京よりは寒いよ」

 列車は仙台駅・新幹線下り副線ホームに入線した。

〔ドアが開きます〕

 東海道新幹線のドアチャイムと違い、東北新幹線では自動放送で持ってドアが開閉する。

〔「ご乗車ありがとうございました。仙台、仙台、終点です。お忘れ物、落とし物の無いよう、ご注意ください。階段、エスカレーターご利用のお客様は……」〕

 ホームに降りると、確かに気温は東京駅より低いように思われた。
 ホームでアナウンスする駅員、東京駅では着ていなかったのに、仙台駅ではコートを着ている。

〔「……11番線に到着の電車は、車庫に向かう回送列車です。ご乗車にはなれませんので、ご注意ください」〕

 ここで言う車庫とは、新利府駅前にある車両基地のことだろう。
 確かに在来線でも行けるが、博多南線のように営業運転すれば、利府方面の需要が……無いか。
 博多南線の場合、それまで在来線すら無かったから需要があるのだ。

 愛原「あー、確かにちょっと冷えるな」

 私はコートのボタンを一番上まで止めた。
 風は少し吹いていて、それが東京より冷たい。
 こんな時でもリサはブレザーの上には、何も羽織っていない。
 せいぜいマフラーを締めているだけ。
 ブレザーの下には、ニットのベストを着用しているだけである。

 高橋「先生、ここからどうするんスか?」
 愛原「地下鉄に乗り換えるよ。ついて来てくれ」

 私達はエスカレーターに乗り、まずは改札口に向かった。
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする