[2月24日23時00分 天候:曇 宮城県仙台市若林区某所 愛原家2階・愛原学の自室]
愛原「さーて、明日も早いからそろそろ寝るか……」
私の部屋にはベッドが1つと、布団が1組敷かれている。
その布団は、リサが寝る為に敷かれているものだ。
リサ「エヘヘ……先生と一緒の部屋~」
愛原「いいのか?フローリングの床だから、そこに直接布団は冷たいだろう?」
リサ「マットレスの上に敷いてあるからそんなに気にならないし、それにわたし、寒さに強いって知ってるでしょ?」
愛原「ま、まあな……」
リサは学校のジャージに着替えている。
まるで修学旅行だ。
その下には半袖の丸首タイプの体操服と、緑色のブルマを穿いているはずである。
さすがに両親の前で、今そんな恰好をするわけにはいかないので、学校のジャージを着てもらっている。
母親はパジャマじゃないのかと聞いてきたが、リサは透かさず、『いつもジャージで寝ている』と答えた。
実際は違うのだが。
パジャマを着ない理由も、セーラー服を着たがらない理由と同じだ。
アンブレラの研究所では、パジャマを支給されていたため。
病院の入院患者が着るようなアレではない。
愛原「こ、こんなオッサンと同じ部屋だぞ?本当にいいのか?」
リサ「もう!先生だからいいの!わたし達は夫婦なんだから!」
愛原「だからまだ入籍してないし、そもそも俺OKしてないし……」
リサ「『まだ』?」
愛原「んっ!?」
するとリサ、パッと顔を明るくした。
リサ「『まだ』ということは、いずれはOKということだね!?嬉しい!」
リサ、私に抱き着いてくる。
愛原「『いずれ』だぞ!?『いずれ』!お前が人間に戻ったら、考えてやる!」
確かにリサは可愛い。
リサの実の母親と思われる斉藤玲子は清楚系ビッチであったという。
リサの実の父親と思われる上野医師の手記では、斉藤玲子は当時14歳の女子中学生でありながら、『お椀のような乳房』を持ち、『どこにでもいる普通の少女』でありながら、『しかし絶対に忘れることのない美しさを持つ』容貌であったそうだ。
ここにいるリサなど、そうなのだろう。
リサ「鬼のままでもいいでしょお?わたしのお母さん、中学生でお父さんとパコパコしてたって言うしぃ……」
愛原「どこで覚えた、そんな言葉!?」
リサ「学校とお兄ちゃん」
愛原「その結果、不幸な目に遭ったことを考えると、娘のお前は自重しろ」
リサ「えー……」
もっとも、上野医師の手記には、斉藤玲子と出会い、一緒に旅をしたことに対する後悔の綴りは一切無く、むしろ言葉の端々に幸福であることが伺える表現が散りばめられているという。
愛原「とにかく、もう寝るぞ。俺は『監視役』として、一緒の部屋で寝るだけだ」
リサ「はいはい。そういうことにしておきましょうね。明日は泊まり掛けで温泉に行くんでしょう?」
愛原「市内のな。これは親孝行だぞ」
リサ「うん。わたしも手伝うね」
愛原「それは宜しく」
私は部屋の照明を消した。
愛原「じゃあ、おやすみ」
リサ「おやすみなさーい」
暗闇の中で、リサの金色の瞳がボウッと光る。
赤い瞳の時もあれば、金色の瞳の時もある。
これの違いはよく分からない。
いずれにせよ、今回は金色だ。
結局のところ、暗闇で光ることから、不気味であることに変わりはない。
私達はもう慣れたが、学校ではホラーだろう。
特にこの冬の時期、下校時刻前はもうだいぶ暗くなっている。
そんな時に照明が点灯していないか、点灯してても暗い場合、リサの瞳がボウッと鈍く光るので、それが『暗闇に怪しく光る2つの目』というタイトルの学校の七不思議の1つになっている。
もちろん、犯人はリサである。
その瞳に吸い込まれた者は、吸血鬼に襲われて……という話が続いているが……。
愛原「あ、そうだ、リサ」
リサ「なに?一緒の布団で寝ようって?ハイ、喜んでー!」
愛原「違う違う!」
リサ「えー?」
愛原「お前、今眠いか?」
リサ「そんなことは無いね。先生と一緒の部屋ってことで、緊張して眠れそうに無いよ~」
とても緊張しているようには見えない。
愛原「だったらさ、足ツボマッサージしてもらえるかな?」
リサ「おっ、いきなりだねぇ。でもいいよ。先生の老廃物、吸えるのかぁ……でへへへへ……」
愛原「そういうことだ」
私は起き上がると、再び部屋の照明を点けた。
暗闇に怪しく光っていたリサの瞳も、明るい所では普通の黒い瞳になる。
愛原「このままでもいいか?」
リサ「いいよ。それじゃ、うつ伏せになってー」
私は言われた通り、ベッドの上にうつ伏せになった。
リサ「わぁい!先生のベッド~!」
愛原「オッサン臭くてゴメンな」
リサ「せーんぜん!先生の匂い、大好き!」
リサはポキポキと自分の指の骨を鳴らした。
リサ「それじゃ、行くよー!」
愛原「よろしく」
リサは私の足のツボを押し始めた。
見た目には指で押しているように見えるが、この時、リサの指からは髪の毛よりも細い触手が無数に生えていて、私のツボの中に突き刺さっている。
しかし、髪の毛よりも細いせいで痛みは殆ど感じない。
足ツボマッサージをされる時に感じる、『痛気持ちいい』感覚にかき消されてしまうのである。
リサ「えへへへ……。先生の血液、老廃物がいっぱーい!」
愛原「やっぱりな。ちょっと足が疲れてたんだ」
血中老廃物を吸い取るのがリサの目的だが、その際にどうしても血液も一緒に啜ることになる。
これも、目的の1つである。
厳密に言えばリサの捕食行為は禁止されているのだが、こういうことに関しては黙認されていた。
あまり禁止し過ぎるのも良くないと判断されたのかもしれない。
愛原「どうだ?お腹一杯になったか?」
リサ「うん。先生の血液もサラサラになったね!」
しばらくして、足ツボマッサージが終わる。
リサの体的には、これで一応、『人間を捕食した』という履歴が残るはずだ。
しばらくはこれで、食人衝動は抑えられるだろう。
足ツボから触手が引き抜かれるが、そこから出血するということはない。
蚊に刺されたようなものだ。
蚊に刺されても、出血するわけではないのと同じ。
しかも、痒くもならない。
リサ「ハイ、先生。次はハンドマッサージだよ~」
愛原「え?」
リサ「ぎゅっぎゅっ……と!指の先までマッサージしましょうね~」
愛原「え?え?」
リサ「マッサージの後は耳かきするよ~。わたしの膝の上に頭を置いて~」
愛原「う、うん……」
リサのマッサージは気持ち良く、そして耳かきで蕩かされてしまった。
……あ……そういえば……。
薄れ行く意識の中、私はふとあることを思い出した。
それはリサの遠い親戚で、那須塩原で温泉ホテルをやっている上野利恵のこと。
鬼の女は、こういう事で人間の男を蕩かせるのだと。
蕩かせた後で食うのだと。
そんな事を言っていたような気がする……。
愛原「さーて、明日も早いからそろそろ寝るか……」
私の部屋にはベッドが1つと、布団が1組敷かれている。
その布団は、リサが寝る為に敷かれているものだ。
リサ「エヘヘ……先生と一緒の部屋~」
愛原「いいのか?フローリングの床だから、そこに直接布団は冷たいだろう?」
リサ「マットレスの上に敷いてあるからそんなに気にならないし、それにわたし、寒さに強いって知ってるでしょ?」
愛原「ま、まあな……」
リサは学校のジャージに着替えている。
まるで修学旅行だ。
その下には半袖の丸首タイプの体操服と、緑色のブルマを穿いているはずである。
さすがに両親の前で、今そんな恰好をするわけにはいかないので、学校のジャージを着てもらっている。
母親はパジャマじゃないのかと聞いてきたが、リサは透かさず、『いつもジャージで寝ている』と答えた。
実際は違うのだが。
パジャマを着ない理由も、セーラー服を着たがらない理由と同じだ。
アンブレラの研究所では、パジャマを支給されていたため。
病院の入院患者が着るようなアレではない。
愛原「こ、こんなオッサンと同じ部屋だぞ?本当にいいのか?」
リサ「もう!先生だからいいの!わたし達は夫婦なんだから!」
愛原「だからまだ入籍してないし、そもそも俺OKしてないし……」
リサ「『まだ』?」
愛原「んっ!?」
するとリサ、パッと顔を明るくした。
リサ「『まだ』ということは、いずれはOKということだね!?嬉しい!」
リサ、私に抱き着いてくる。
愛原「『いずれ』だぞ!?『いずれ』!お前が人間に戻ったら、考えてやる!」
確かにリサは可愛い。
リサの実の母親と思われる斉藤玲子は清楚系ビッチであったという。
リサの実の父親と思われる上野医師の手記では、斉藤玲子は当時14歳の女子中学生でありながら、『お椀のような乳房』を持ち、『どこにでもいる普通の少女』でありながら、『しかし絶対に忘れることのない美しさを持つ』容貌であったそうだ。
ここにいるリサなど、そうなのだろう。
リサ「鬼のままでもいいでしょお?わたしのお母さん、中学生でお父さんとパコパコしてたって言うしぃ……」
愛原「どこで覚えた、そんな言葉!?」
リサ「学校とお兄ちゃん」
愛原「その結果、不幸な目に遭ったことを考えると、娘のお前は自重しろ」
リサ「えー……」
もっとも、上野医師の手記には、斉藤玲子と出会い、一緒に旅をしたことに対する後悔の綴りは一切無く、むしろ言葉の端々に幸福であることが伺える表現が散りばめられているという。
愛原「とにかく、もう寝るぞ。俺は『監視役』として、一緒の部屋で寝るだけだ」
リサ「はいはい。そういうことにしておきましょうね。明日は泊まり掛けで温泉に行くんでしょう?」
愛原「市内のな。これは親孝行だぞ」
リサ「うん。わたしも手伝うね」
愛原「それは宜しく」
私は部屋の照明を消した。
愛原「じゃあ、おやすみ」
リサ「おやすみなさーい」
暗闇の中で、リサの金色の瞳がボウッと光る。
赤い瞳の時もあれば、金色の瞳の時もある。
これの違いはよく分からない。
いずれにせよ、今回は金色だ。
結局のところ、暗闇で光ることから、不気味であることに変わりはない。
私達はもう慣れたが、学校ではホラーだろう。
特にこの冬の時期、下校時刻前はもうだいぶ暗くなっている。
そんな時に照明が点灯していないか、点灯してても暗い場合、リサの瞳がボウッと鈍く光るので、それが『暗闇に怪しく光る2つの目』というタイトルの学校の七不思議の1つになっている。
もちろん、犯人はリサである。
その瞳に吸い込まれた者は、吸血鬼に襲われて……という話が続いているが……。
愛原「あ、そうだ、リサ」
リサ「なに?一緒の布団で寝ようって?ハイ、喜んでー!」
愛原「違う違う!」
リサ「えー?」
愛原「お前、今眠いか?」
リサ「そんなことは無いね。先生と一緒の部屋ってことで、緊張して眠れそうに無いよ~」
とても緊張しているようには見えない。
愛原「だったらさ、足ツボマッサージしてもらえるかな?」
リサ「おっ、いきなりだねぇ。でもいいよ。先生の老廃物、吸えるのかぁ……でへへへへ……」
愛原「そういうことだ」
私は起き上がると、再び部屋の照明を点けた。
暗闇に怪しく光っていたリサの瞳も、明るい所では普通の黒い瞳になる。
愛原「このままでもいいか?」
リサ「いいよ。それじゃ、うつ伏せになってー」
私は言われた通り、ベッドの上にうつ伏せになった。
リサ「わぁい!先生のベッド~!」
愛原「オッサン臭くてゴメンな」
リサ「せーんぜん!先生の匂い、大好き!」
リサはポキポキと自分の指の骨を鳴らした。
リサ「それじゃ、行くよー!」
愛原「よろしく」
リサは私の足のツボを押し始めた。
見た目には指で押しているように見えるが、この時、リサの指からは髪の毛よりも細い触手が無数に生えていて、私のツボの中に突き刺さっている。
しかし、髪の毛よりも細いせいで痛みは殆ど感じない。
足ツボマッサージをされる時に感じる、『痛気持ちいい』感覚にかき消されてしまうのである。
リサ「えへへへ……。先生の血液、老廃物がいっぱーい!」
愛原「やっぱりな。ちょっと足が疲れてたんだ」
血中老廃物を吸い取るのがリサの目的だが、その際にどうしても血液も一緒に啜ることになる。
これも、目的の1つである。
厳密に言えばリサの捕食行為は禁止されているのだが、こういうことに関しては黙認されていた。
あまり禁止し過ぎるのも良くないと判断されたのかもしれない。
愛原「どうだ?お腹一杯になったか?」
リサ「うん。先生の血液もサラサラになったね!」
しばらくして、足ツボマッサージが終わる。
リサの体的には、これで一応、『人間を捕食した』という履歴が残るはずだ。
しばらくはこれで、食人衝動は抑えられるだろう。
足ツボから触手が引き抜かれるが、そこから出血するということはない。
蚊に刺されたようなものだ。
蚊に刺されても、出血するわけではないのと同じ。
しかも、痒くもならない。
リサ「ハイ、先生。次はハンドマッサージだよ~」
愛原「え?」
リサ「ぎゅっぎゅっ……と!指の先までマッサージしましょうね~」
愛原「え?え?」
リサ「マッサージの後は耳かきするよ~。わたしの膝の上に頭を置いて~」
愛原「う、うん……」
リサのマッサージは気持ち良く、そして耳かきで蕩かされてしまった。
……あ……そういえば……。
薄れ行く意識の中、私はふとあることを思い出した。
それはリサの遠い親戚で、那須塩原で温泉ホテルをやっている上野利恵のこと。
鬼の女は、こういう事で人間の男を蕩かせるのだと。
蕩かせた後で食うのだと。
そんな事を言っていたような気がする……。