[12月28日16:10.天候:晴 千葉県成田市 新東京国際空港(成田空港)第1ターミナル]
稲生達を乗せたバスが成田空港に到着した。
鉄道の場合は空港第二ビル、成田空港の順だが、バスの場合は第二ターミナル、第一ターミナル、第三ターミナルの順だからややこしい。
稲生:「えーと、ここですね。先生、もうそろそろ降りますよ」
イリーナ:「おー、そうかね。よく寝たわ……」
稲生:「それはそれは……」
マリアはローブを着込んだ。
マリア:「ここも寒そうだな」
稲生:「そうですね。まあ、冬だから霧は出ないと思いますけど……」
マリア:「霧?」
稲生:「成田空港は“霧の空港”と呼ばれるほど、霧の影響を受けやすいんだそうですよ」
マリア:「魔界のアルカディアシティが“霧の都”と呼ばれるみたいだな」
稲生:「濃霧の影響で航空ダイヤが乱れるとか、よくあるみたいです」
マリア:「なるほど」
バスが停車し、大きなエアーの音がする。
ここで降りる乗客達がドアの方に向かう。
稲生達もそれに続いた。
羽田空港もそうだが、成田空港でもバスターミナルには係員がいて、乗客の荷物の降ろしを行っている。
稲生:「これがマリアさんので、これが僕のですね」
マリア:「うん」
ゴロゴロとケースを引っ張る。
ローブを着込んでいなければ、とても魔道師には見えない。
稲生:「着陸は濃霧では難しいわけですが、離陸は意外と行けるらしいですよ」
マリア:「ほお……」
稲生:「霧は成田周辺だけで、それが海外にまで続いているわけじゃありませんから」
マリア:「どちらかというと、商売の方が絡んでる?」
稲生:「商魂もあるでしょうね」
マリア:「だろうな。……師匠、大師匠様のお着きになる便はどれですか?」
イリーナ:「えーと……ANA……」
稲生:「ANAですね。この第一ターミナルで大丈夫です」
イリーナ:「ANA5便、16時25分着だわ」
稲生:「なるほど。それでは、もうすぐですね。急ぎましょう」
稲生達、到着ロビーへ向かう。
稲生:「アメリカのロサンゼルスからの航空便のようですが、大師匠様、どうしてそこへ?」
イリーナ:「ダンテ先生の動きは、直弟子の私にもねぇ……」
イリーナは首を傾げた。
マリア:「ま、気持ちは分かります」
マリアもまた、直属の師匠たるイリーナの動きを把握し切れない時が多々あるからだ。
到着ロビーで待っていると、どうやら5便が到着したらしい。
そこからぞろぞろと乗客達がやってくる。
稲生:「……因みに、ダンテ先生はどのような御姿で?」
イリーナ:「パイロットの恰好してたりして」
稲生:「はあ?」
マリア:「またまた……」
と、そこへ……。
ダンテ:「やあ、出迎えご苦労さん」
グレーのダブルのスーツ上下に黒いハットを被った黒人男性がやってきた。
ローブの隙間から覗く肌が浅黒いものだから、稲生はダンテが黒人ではないかと予想していた。
今回の場合、ダンテはローブを羽織っていない。
まるで、アメリカのロサンゼルスからやってきた黒人マフィアのボスといった感じだ。
イリーナ:「まるで、暗黒街のボスのような出で立ちですわね?」
ダンテ:「飛行機の中では、いかにも魔法使いみたいな恰好はできんよ」
葉巻を咥えればよく似合う見てくれだが、これが本当の姿なのかどうかは分からない。
これさえ、世を忍ぶ仮の姿かもしれないのだ。
そんなダンテが稲生とマリアを見て、ニッコリ微笑んだ。
ダンテ:「キミ達のことは聞いている。常に進歩しているようだね?」
稲生:「あ、ありがとうございます!」
そしてマリアにあっては、ダンテは軽々とヒョイと持ち上げる。
ダンテ:「よくぞ前に進んだ!はっはっは!」
マリア:「きゃっ!」
イリーナ:「先生。長旅でお疲れでしょう?ホテルを取ってありますので、まずはそちらで一泊……」
ダンテ:「おお、そうかね」
稲生:「ご、ご案内します。こちらです」
稲生が先頭に立った。
その横にマリアが着く。
稲生:「大丈夫でしたか、マリアさん?」
マリア:「う、うん」
ダンテの方が体格も大きく、見た目にはまるで親と子ほどの差がある。
[同日17:00.天候:晴 成田空港第一ターミナル、ホテルバス乗り場→両総グランドサービス車内]
イリーナ:「……ユウタ君、世界を股に掛ける総師範のダンテ先生にはハイヤーでお願い」
稲生:「え?ダメですか?」
ダンテ:「いや、いいからいいから」
マリア:(きっと、ハイヤーの注文の仕方が分からないんだろうなぁ……)
やってきたバスは路線バスタイプではなく、観光バスタイプ。
地元のバス会社に運行を委託している。
ホテルのステッカーを貼っている。
確かにこのタイプなら荷物室があるので、そこに荷物は置けるだろう。
車内は至って普通の4列シート。
当然、トイレなどはない。
稲生:「もうすっかり暗くなりましたね」
マリア:「そうだな」
2人席に座る。
師匠2人は弟子達の前。
イリーナ:「先生も、よく寝てらしていらっしゃいますのね」
ダンテ:「最近のファーストクラスは寝心地がいいからね。でも、キミほどは寝てないつもりだが?」
イリーナ:「あら、いやですわ、もう……」
バスはホテルに向かって出発した。
[同日17:15.天候:晴 成田エクセルホテル東急]
バスが到着した。
稲生:「それでは今夜、こちらに御一泊を」
ダンテ:「うむ。立派なホテルだ。一泊だけなのが勿体無い」
稲生:(僕達だけだったら、東横インでも良かったんだけど……。ホテルバスだけで文句言われるくらいだから、ビジネスホテルにしちゃったら、しばらく謹慎処分食らうんだろうなぁ……)
ダンテはそんなこと気にしないタイプのようだが、イリーナの顔に泥を塗る形となり、イリーナから処分を食らうものと思われる。
稲生:「ちょっと受付して来ますので、少々お待ちください」
ダンテ:「うむ」
マリア:「(ハイヤーの用意の仕方は分からないのに、ホテルの取り方とチェックインはちゃんと知ってるんだな)ユウタ、私も行く。師匠のカード、忘れてる」
稲生:「おっと!」
部屋のカードキーをもらい、エレベーターで客室フロアに向かう。
稲生:「本当によろしいのですか?確かにスイートは取れませんでしたが……」
ダンテ:「いいよいいよ。私はイリーナと同じ部屋で寝る。キミ達も、別に一緒の部屋でも良かったんだよ?『仲良き事は美しき哉』だ」
マリア:「なっ……?いや、その……」
エレベーターが宿泊する部屋のフロアに到着する。
稲生:「あ、こちらですよ」
稲生とマリアは別々にシングルを取っており、イリーナとダンテはツインである。
ダンテ:「少し落ち着いたら、晩餐を共にしよう。このホテルの中のレストランでいいかね?」
イリーナ:「もちろんですわ。ご相伴に預かります」
ダンテ:「キミ達も一緒に来なさい」
稲生:「は、はい!」
マリア:「ありがとうございます!」
師匠2人はツインルームに入って行った。
マリアはそれで思い出した。
朝の出発前、イリーナがガーターベルトの付いたセクシーランジェリーを着けていたことを。
マリア:(そういうことか)
稲生:「マリアさん、夕食はいつくらいにした方がいいでしょうか?」
マリア:「いつもと同じでいいんじゃない?19時くらい」
稲生:「分かりました。いや、予約を入れて行った方がいいのかと思いまして」
マリア:「そうだな。その方がいいだろう」
稲生:「了解です。じゃ、また後で」
マリア:「うん」
稲生とマリアは隣同士であった。
稲生達を乗せたバスが成田空港に到着した。
鉄道の場合は空港第二ビル、成田空港の順だが、バスの場合は第二ターミナル、第一ターミナル、第三ターミナルの順だからややこしい。
稲生:「えーと、ここですね。先生、もうそろそろ降りますよ」
イリーナ:「おー、そうかね。よく寝たわ……」
稲生:「それはそれは……」
マリアはローブを着込んだ。
マリア:「ここも寒そうだな」
稲生:「そうですね。まあ、冬だから霧は出ないと思いますけど……」
マリア:「霧?」
稲生:「成田空港は“霧の空港”と呼ばれるほど、霧の影響を受けやすいんだそうですよ」
マリア:「魔界のアルカディアシティが“霧の都”と呼ばれるみたいだな」
稲生:「濃霧の影響で航空ダイヤが乱れるとか、よくあるみたいです」
マリア:「なるほど」
バスが停車し、大きなエアーの音がする。
ここで降りる乗客達がドアの方に向かう。
稲生達もそれに続いた。
羽田空港もそうだが、成田空港でもバスターミナルには係員がいて、乗客の荷物の降ろしを行っている。
稲生:「これがマリアさんので、これが僕のですね」
マリア:「うん」
ゴロゴロとケースを引っ張る。
ローブを着込んでいなければ、とても魔道師には見えない。
稲生:「着陸は濃霧では難しいわけですが、離陸は意外と行けるらしいですよ」
マリア:「ほお……」
稲生:「霧は成田周辺だけで、それが海外にまで続いているわけじゃありませんから」
マリア:「どちらかというと、商売の方が絡んでる?」
稲生:「商魂もあるでしょうね」
マリア:「だろうな。……師匠、大師匠様のお着きになる便はどれですか?」
イリーナ:「えーと……ANA……」
稲生:「ANAですね。この第一ターミナルで大丈夫です」
イリーナ:「ANA5便、16時25分着だわ」
稲生:「なるほど。それでは、もうすぐですね。急ぎましょう」
稲生達、到着ロビーへ向かう。
稲生:「アメリカのロサンゼルスからの航空便のようですが、大師匠様、どうしてそこへ?」
イリーナ:「ダンテ先生の動きは、直弟子の私にもねぇ……」
イリーナは首を傾げた。
マリア:「ま、気持ちは分かります」
マリアもまた、直属の師匠たるイリーナの動きを把握し切れない時が多々あるからだ。
到着ロビーで待っていると、どうやら5便が到着したらしい。
そこからぞろぞろと乗客達がやってくる。
稲生:「……因みに、ダンテ先生はどのような御姿で?」
イリーナ:「パイロットの恰好してたりして」
稲生:「はあ?」
マリア:「またまた……」
と、そこへ……。
ダンテ:「やあ、出迎えご苦労さん」
グレーのダブルのスーツ上下に黒いハットを被った黒人男性がやってきた。
ローブの隙間から覗く肌が浅黒いものだから、稲生はダンテが黒人ではないかと予想していた。
今回の場合、ダンテはローブを羽織っていない。
まるで、アメリカのロサンゼルスからやってきた黒人マフィアのボスといった感じだ。
イリーナ:「まるで、暗黒街のボスのような出で立ちですわね?」
ダンテ:「飛行機の中では、いかにも魔法使いみたいな恰好はできんよ」
葉巻を咥えればよく似合う見てくれだが、これが本当の姿なのかどうかは分からない。
これさえ、世を忍ぶ仮の姿かもしれないのだ。
そんなダンテが稲生とマリアを見て、ニッコリ微笑んだ。
ダンテ:「キミ達のことは聞いている。常に進歩しているようだね?」
稲生:「あ、ありがとうございます!」
そしてマリアにあっては、ダンテは軽々とヒョイと持ち上げる。
ダンテ:「よくぞ前に進んだ!はっはっは!」
マリア:「きゃっ!」
イリーナ:「先生。長旅でお疲れでしょう?ホテルを取ってありますので、まずはそちらで一泊……」
ダンテ:「おお、そうかね」
稲生:「ご、ご案内します。こちらです」
稲生が先頭に立った。
その横にマリアが着く。
稲生:「大丈夫でしたか、マリアさん?」
マリア:「う、うん」
ダンテの方が体格も大きく、見た目にはまるで親と子ほどの差がある。
[同日17:00.天候:晴 成田空港第一ターミナル、ホテルバス乗り場→両総グランドサービス車内]
イリーナ:「……ユウタ君、世界を股に掛ける総師範のダンテ先生にはハイヤーでお願い」
稲生:「え?ダメですか?」
ダンテ:「いや、いいからいいから」
マリア:(きっと、ハイヤーの注文の仕方が分からないんだろうなぁ……)
やってきたバスは路線バスタイプではなく、観光バスタイプ。
地元のバス会社に運行を委託している。
ホテルのステッカーを貼っている。
確かにこのタイプなら荷物室があるので、そこに荷物は置けるだろう。
車内は至って普通の4列シート。
当然、トイレなどはない。
稲生:「もうすっかり暗くなりましたね」
マリア:「そうだな」
2人席に座る。
師匠2人は弟子達の前。
イリーナ:「先生も、よく寝てらしていらっしゃいますのね」
ダンテ:「最近のファーストクラスは寝心地がいいからね。でも、キミほどは寝てないつもりだが?」
イリーナ:「あら、いやですわ、もう……」
バスはホテルに向かって出発した。
[同日17:15.天候:晴 成田エクセルホテル東急]
バスが到着した。
稲生:「それでは今夜、こちらに御一泊を」
ダンテ:「うむ。立派なホテルだ。一泊だけなのが勿体無い」
稲生:(僕達だけだったら、東横インでも良かったんだけど……。ホテルバスだけで文句言われるくらいだから、ビジネスホテルにしちゃったら、しばらく謹慎処分食らうんだろうなぁ……)
ダンテはそんなこと気にしないタイプのようだが、イリーナの顔に泥を塗る形となり、イリーナから処分を食らうものと思われる。
稲生:「ちょっと受付して来ますので、少々お待ちください」
ダンテ:「うむ」
マリア:「(ハイヤーの用意の仕方は分からないのに、ホテルの取り方とチェックインはちゃんと知ってるんだな)ユウタ、私も行く。師匠のカード、忘れてる」
稲生:「おっと!」
部屋のカードキーをもらい、エレベーターで客室フロアに向かう。
稲生:「本当によろしいのですか?確かにスイートは取れませんでしたが……」
ダンテ:「いいよいいよ。私はイリーナと同じ部屋で寝る。キミ達も、別に一緒の部屋でも良かったんだよ?『仲良き事は美しき哉』だ」
マリア:「なっ……?いや、その……」
エレベーターが宿泊する部屋のフロアに到着する。
稲生:「あ、こちらですよ」
稲生とマリアは別々にシングルを取っており、イリーナとダンテはツインである。
ダンテ:「少し落ち着いたら、晩餐を共にしよう。このホテルの中のレストランでいいかね?」
イリーナ:「もちろんですわ。ご相伴に預かります」
ダンテ:「キミ達も一緒に来なさい」
稲生:「は、はい!」
マリア:「ありがとうございます!」
師匠2人はツインルームに入って行った。
マリアはそれで思い出した。
朝の出発前、イリーナがガーターベルトの付いたセクシーランジェリーを着けていたことを。
マリア:(そういうことか)
稲生:「マリアさん、夕食はいつくらいにした方がいいでしょうか?」
マリア:「いつもと同じでいいんじゃない?19時くらい」
稲生:「分かりました。いや、予約を入れて行った方がいいのかと思いまして」
マリア:「そうだな。その方がいいだろう」
稲生:「了解です。じゃ、また後で」
マリア:「うん」
稲生とマリアは隣同士であった。