報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

物語の途中ですが、ここで今年1年の御礼を申し上げます。

2022-12-31 21:11:20 | その他
 いつもお読み頂き、ありがとうございます。
 管理人の雲羽百三です。
 今年も色々ありました。
 中でも衝撃的だったのは、今月初めに事故に巻き込まれたことです。
 幸いにして入院することもなく、一応完治というところまでは行きました。
 事故の相手方の保険会社より、ケガの治療代、通院に関わる交通費・診断書代、事故当時に着用していた服や鞄などの弁償もされ、あとは慰謝料関係のみとなりました。
 詳しいことは、それら全てが終わった時にでも、お話しできればと思います。

 さて、作品の方ですが、“ユタと愉快な仲間たち”シリーズより、“大魔道師の弟子”は稲生勇太とマリアンナ・ベルフェゴール・スカーレットの結婚で一旦終了となる予定です。
 何しろ作者が結婚してないものだから、主人公達が結婚してしまうと、途端にネタが無くなるのですよw
 “アンドロイドマスター”シリーズなんかそうでしたね。
 “私立探偵 愛原学”シリーズは、もう少し続きます。
 多分、リサが大人になるまで続くんじゃないかと思っていたり。
 で、今の善場優菜のように、同じく自我を持ちながら強い異能(特異菌かGウィルス)を持つ少女の監視・指導を行うとか……。
 あるいは、結局人間には戻れず、そのままBOWとして永遠の時を生きることを決心するのか。
 因みに“私立探偵 愛原学”でのリサと、“愛原リサの日常”では、リサの性格が少し異なっていますね。
 前者は愛原から見たリサであり、リサも愛原の前では猫を被っているので。
 しかし、“愛原リサの日常”ではリサ自身が主人公なので、BOW(生物兵器)ならではの嗜虐性・残忍性を醸し出しています。

 婚活の方ですが、相変わらずの鳴かず飛ばずでした。
 色々と原因はあるのでしょうが、ネックなのは、『宗教に入っていること』のようです。
 タイミングが悪い事に、統一教会が問題を起こしてくれているせいで、余計にイメージが悪くなってしまった感はあります。
 来年はこの辺り、どう対策できるかが問題なのではないかと思います。

 厄年を体験した1年でしたが、今年もありがとうございました。
 来年もまた宜しくお願い致します。

 尚、1月1日から5日までは仙台の実家に帰省する予定です。
 今回は往復、東北新幹線です。
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“私立探偵 愛原学” 「色々な話」

2022-12-30 20:34:07 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[9月15日10:00.天候:晴 東京都港区新橋 NPO法人デイライト東京事務所]

 私の名前は愛原学。
 都内で小さな探偵事務所を経営している。
 今日は善場主任と打ち合わせに、新橋のデイライト事務所に来ている。
 高橋は助手として留守番してもらっている。

 善場:「東京中央学園は、大変なことになったようですね」
 愛原:「ええ。今度は生徒会長が、屋上から飛び下りて亡くなりました」
 善場:「もっとも、リサの寄生虫のせいで、死体の処理が大変ですけどね。御遺族に遺体をお渡しすることもできず、それもまた痛ましい限りです」
 愛原:「リサには、もう少し寄生虫を使うのを自重しろと言っておきます」
 善場:「ええ。そうしてください」
 愛原:「リサには、何か処分は無いのですか?」
 善場:「今のところ、寄生虫の事に関しては、BSAAからも何も言って来ないので、こちらとしても禁止のしようが無いのです。一応、リサの制御が利いているようですし、そのリサも暴走していませんし……」

 それでいいのだろうか?

 善場:「それに、少しはどこかで『力』を使うのを黙認してやらないと、却って暴走の危険がありますので」
 愛原:「うーむ……。そういうものですか」
 善場:「そういうものです。そもそも、今回の事件は、リサの寄生虫のせいだという証拠がありませんので」

 生徒会長がGウィルスとTウィルスに感染していたことは分かったが、その原因はハッキリしていない。
 ただ、リサが認めた為、その2つのウィルスに感染していた寄生虫に寄生されたのが原因だとされている。
 しかし、それが直接の死亡原因ではない為、リサには何のお咎め無いのだ(リサの寄生虫使用が原因だと後に判明するのだが、この時はまだ私達は知る由も無かった)。

 善場:「何しろ遺書が見つかっていないので、原因が分からないのです。きっかけとしては、大勢の生徒・教職員が見ている前で便失禁したことを気に病んでのことだと見られていますが……」

 宿主が死んだので、寄生虫も死滅している。
 その為、その寄生虫が原因なのかは不明である。
 生徒会長は1週間便秘に悩んでいて、強い下剤を何度も飲んでいたというから、それが原因で失禁してしまったのだとされている。

 愛原:「どうしても、リサの影がちらつくのですが?」
 善場:「そうですね。しかし、確固たる証拠がありません。本当はあったのに、それを全てあのコが消したのだとしたら、恐ろしい完全犯罪者ですよ。恐らく、BSAAに認知・登録されているBOWの中では、一番の知能犯かもしれません」
 愛原:「うへー……」
 善場:「それでもリサは、愛原所長を慕っています。そうしているうちは、暴走の危険がありません」
 愛原:「まあ、確かに……」
 善場:「それより、どうして日本に特異菌が持ち込まれたのかの理由が分かって来ましたので、お知らせします」
 愛原:「おおっ!」
 善場:「東京中央学園の怪奇現象が多発したのは、1990年代です。その頃に、特異菌が白井伝三郎によって持ち込まれたものと推察されます」
 愛原:「外国からですよね?」
 善場:「もちろんです。どうやら、ルーマニアから直接仕入れたのではなく、アメリカのアンブレラ本社から仕入れたものだと分かりました」
 愛原:「それはどうして分かったんですか?」
 善場:「日本アンブレラの社長、五十嵐皓貴の息子で副社長だった被告がついに自供したのです」
 愛原:「おおっ!」
 善場:「アメリカのラクーンシティには、アンブレラの研究施設がありました」
 愛原:「有名ですね!」
 善場:「白井伝三郎がそこにいたという記録をようやく得たのです」
 愛原:「何ですと!?あの、ゾンビパラダイスだったラクーンシティからどうやって?」
 善場:「バイオハザードが起きる前に、しれっと脱出していたようですね。都合、2回です」
 愛原:「2回!?」
 善場:「1994年に1回と、バイオハザードの起きる1998年に1回行っています」
 愛原:「あそこは空港とかがありましたっけ?」
 善場:「無いです。あそこはハイウェイが1本とヘリポートしかありません」
 愛原:「霧生市みたいですね」
 善場:「そのハイウェイをグレイハウンドバスが運行していたので、一般の旅行客に扮して、それで町を出入りしていたとのことです」
 愛原:「へえ……!」

 
(町がゾンビで溢れる直前、ニューヨークに向かってラクーンシティを出発するグレイハウンドバス。このバスに、白井が乗っていたという)

 善場:「そして2回目は、ついに町がゾンビだらけになり、町が封鎖される直前に出発したグレイハウンドバスがいたのですが、それに乗っていたとのことです」
 愛原:「荷物として、特異菌を持っていた?」
 善場:「そうですね」
 愛原:「いっつも危ない運び方をする製薬会社だ」

 よくバスの中でバイオハザードが起きなかったものだ。

 善場:「そうしてまんまと日本に特異菌を持ち込むことに成功した白井は、新校舎の科学室ではなく、旧校舎を利用したようです」
 愛原:「なるほどなぁ……。善場主任、やはりリサを東京中央学園に入れたのは……」
 善場:「ええ。リサを学内に潜入させて、白井のことを調査する足掛かりを作る為です。そういった意味では、愛原所長もリサもよくやってくれたと思います。なのでリサが証拠を出さない限りは、リサのことを追及するつもりはありません」
 愛原:「警察が何か掴むかもしれませんよ?」
 善場:「その時はその時です。警察は自殺か他殺かを調べているわけですし、自殺と分かったら、今度はその原因について捜査するだけです」
 愛原:「なるほど……」

[同日11:09.天候:晴 同地区 東京メトロ銀座駅→銀座線1015電車1号車内]

〔まもなく2番線に、浅草行きが到着します。黄色い点字ブロックの内側まで、お下がりください〕

 善場主任との話が終わった私は、リサの学校に顔を出してみることにした。
 上野に行くのに、JRではなく、地下鉄を利用してみた。
 先ほどの話の中にラクーンシティが出て来ており、そこには地下鉄も走っていたからというのが理由である。
 まあ、しょうもない理由だ。
 開業当時の銀座線の電車をモチーフにしたという、黄色の電車がやってくる。

〔足元に、ご注意ください。新橋、新橋。浅草行きです〕

 新橋駅にはまだホームドアが無い。
 私は電車に乗り込むと、空いている座席に腰かけた。
 すぐに発車メロディが鳴り響く。

〔2番線は、発車致します。閉まるドアに、ご注意ください。駆け込み乗車は、おやめください〕

 ピンポンピンポンとドアチャイムが鳴り、電車のドアが閉まる。
 最後尾に乗っているので、車掌の発車合図のブザーが聞こえてくると、電車が走り出した。
 銀座線ではツーマン運転だが、ラクーンシティの地下鉄(市営ではなく、カイトブロス鉄道という私鉄)はATO運転のワンマン、霧生市の霧生電鉄は非ATOのワンマンであった(2両編成運転時のみ)。

〔東京メトロ銀座線をご利用頂きまして、ありがとうございます。この電車は、神田、上野方面、浅草行きです。次は銀座、銀座です。乗り換えのご案内です。丸ノ内線、日比谷線はお乗り換えください〕

 私は高橋に、事務所に戻らず、リサの学校に行って様子を見て来る旨のLINEを送った。
 高橋からはすぐに既読が付いて、『了解しました』という返信が来た。
 リサには言っておいたが、本当に死者に鞭打つ言動などをしていないかどうか、確認してこようと思った。
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“愛原リサの日常” 「勝利の代償」 2

2022-12-30 15:42:47 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[9月14日09:00.天候:晴 東京都墨田区菊川 愛原学探偵事務所]

 この日は臨時の休校日となった。
 飛び降り自殺者が出たということで、学校側が対応に追われているからである。
 愛原もまたPTA会長代行ということで、学校に行っており、事務所には高橋が残された。
 学校が休みになったことで、リサも事務所にいるが、他にも桜谷が画材道具を持って訪ねて来た。

 桜谷:「しばらく絵の続きが描けなかったので、何とか今日もお願いします」
 リサ:「分かってる。愛原先生には許可を取った」
 桜谷:「ありがとうございます!」
 高橋:「ったくよー。ここはアトリエじゃねぇってんだ」
 リサ:「愛原先生には許可を取ってある。今日は来客の予定は無いから、そっちの応接室を使っていいって」
 高橋:「……ちっ、先生の御命令ならしょうがねぇ」
 リサ:「そういうこと」
 桜谷:「リサ様、早速準備をお願いします」
 リサ:「分かった。衣装は持って来ている」
 桜谷:「私も着替えます」
 高橋:「来客の予定は無いが、善場のねーちゃんがひょっこり来るかもしれねーぞ?」
 リサ:「その時はすぐ退ける」

 リサと桜谷は、応接室に入って行った。

 リサ:「ちょっと、ソファとテーブルを退かそうか」
 桜谷:「はい」
 リサ:「よいしょっと」

 リサ、カウチソファをひょいと持ち上げた。

 桜谷:「さ、さすがは魔王様……」
 リサ:「これくらい、軽い軽い。オリジナルの大先輩なんか、手枷付きの状態で、石像を叩き壊すくらいだから」
 桜谷:「さ、さすがです……」

 制作スペースを確保した後、2人は体操服とブルマに着替える。
 桜谷は学校指定の緑ブルマであるが、リサは紺色のブルマであった。
 リサの愛読マンガ“ドキュンサーガ”の魔王の衣装をモチーフにしているものだが、魔王らしくするということで、リサの場合は上に黒マントを羽織り、右手にはゴツい意匠の付いた杖を持っている。
 桜谷は体操服の上から、エプロンを着用した。

 リサ:「だいぶ描けてるんじゃない?」
 桜谷:「そうですね。おかげさまで、今月中には描き終われそうです」
 リサ:「わたしの血入り絵具と、寄生虫をすり潰して抽出した体液を混ぜた絵具を使えば、最優秀賞間違いナシだよ」
 桜谷:「さ、さすがは魔王様……。け、血気術か何かですか?」
 リサ:「そうとも言う!……あんまり力を使い過ぎると、鬼斬りセンパイに斬られるから程々にしておこう」
 桜谷:「あの栗原先輩、そんなに凄い方なんですか。確かに、左足が義足ながら、女子剣道部の中では1番強いという噂ですが……」
 リサ:「西日本の方では、わたしの同族をぶった斬ったって話だよ」
 桜谷:「そんなに!?」
 リサ:「まあ、わたしに言わせれば、そいつらが弱かっただけだと思うけどね」
 桜谷:「その、魔王様と同族の話なのですが……」
 リサ:「ん?」
 桜谷:「聖クラリス学院のことは御存知ですよね?」
 リサ:「ああ、あの女子校。あそこも、わたしの同族が支配しようとしたらしいんだけど、失敗したね。ざまぁみろ」
 桜谷:「そのやり方なんですが……」
 リサ:「ん?」
 桜谷:「生徒会長ではないですが、魔王様の同族の不興を買ったコが、うん○をお漏らしさせられたそうです」
 リサ:「ほお……?寄生虫を使役できるのは、わたしだけのはずだけど?」
 桜谷:「どうやったのかは知りませんが、相当のイジメっ子だったようです」
 リサ:「ん、だろうね。わたしに限らず、日本版リサ・トレヴァー全員がSだから」

 嗜虐性に富んだ生物兵器同士、仲良くできるのは上辺だけ。
 ちょっとでもそのバランスが崩れようものなら、流血の惨を見る事、必至である。

 リサ:「……準備できた。同じポーズでいい?」
 桜谷:「もちろんです。よろしくお願いします」
 リサ:「可愛く描いてくれてる?」
 桜谷:「魔王様らしく、凛々しく描かせて頂いております」
 リサ:「凛々しく……。まあ、“ドキュンサーガ”の魔王様のように描いてくれればいいや」
 桜谷:「お任せください」

[同日15:00.天候:雷雨 同事務所]

 愛原:「ふぅーっ!参った参った!まさか、このタイミングでゲリラ豪雨とは……」

 愛原が事務所に帰所してくる。

 高橋:「お帰りなさい、先生。まさか、駅からずっと走って?言ってくれれば俺、迎えに行きましたのに……」
 愛原:「いや、秋葉原駅からタクシーに乗ったから、それはいいよ。秋葉原駅から岩本町駅に行こうとした時、さすがに降りそうだったから、タクシーにした。事務所の前で降りたから、そんなに濡れてない」
 高橋:「そうでしたか」
 愛原:「リサはどうした?」
 高橋:「そっちで絵のモデルやってます」
 愛原:「そうか……」

 愛原は応接室のドアをノックした。

 リサ:「はーい!」
 愛原:「俺だ。ちょっと今、いいか?」
 リサ:「先生!……今行く!」

 リサはすぐに応接室から出た。
 さすがに黒マントは脱いで、杖も室内に置いている。

 愛原:「制作の邪魔だったかな?」
 桜谷:「いいえ。ちょうど、休憩を挟もうとしていたところでしたので」
 愛原:「そうか。話があるから、ちょっと来てくれないかな」
 リサ:「分かった」
 桜谷:「分かりました」

 体操服にブルマ姿の少女2人は、応接室から出た。
 そして、応接室とは別の打ち合わせコーナーに向かった。

 愛原:「まず、明日は普通に学校が始まる」
 桜谷:「そうですか」
 愛原:「当然ながら、臨時の全体朝礼が行われることになっていて、そこで校長先生などから説明がある。その後で、黙祷などを捧げることになるだろう」

 そう言って、愛原はリサをチラッと見た。

 愛原:「日本版リサ・トレヴァーの習性で、『“武士の情け”などクソ食らえ』『敵と見做した者は、例え死者となっても鞭をガッツリ打て』という日本人の美学に反した物を持っているのは知っている。恐らくリサ、オマエもそうなんだろう?」
 リサ:「そうだね。『敵には容赦無く』『完膚なきまでに叩き潰す』『武士の情け”なんて必要ない』『敵が死んだら鞭打つどころか、墓石を蹴り倒しても構わない』くらいの勢いだけど?」

 万が一、死者が怨霊として化けて出て来て祟られた時のことなど全く考えない“鬼”そのものであった。

 愛原:「そ、そうか」

 その為、リサは霧生市で初めて愛原と会った時、最初から敵とは見做していなかったのではないかと思われる。
 そしてそんな愛原も、リサを化け物だとは思わなかった。
 それが引いては、今のような関係に発展したわけである。

 愛原:「一度敵と見做した者に黙祷とは苦痛だと思うけど、これも日本の学校だ。そこに通っている以上は、オマエも一緒に黙祷しなければならない。いいか?」
 リサ:「……愛原先生の命令なら従う」
 愛原:「そうだ。俺の命令だ」
 高橋:「リサ。先生の御命令は絶対だぞ?」
 リサ:「分かってるよ」
 桜谷:「それで、その……。会長の告別式とかは、どうなるんですか?」

 桜谷が遠慮がちに挙手しながら質問した。

 愛原:「まだ、警察の司法解剖の最中だから。それが終わってからだな。ただ……リサ、その会長に、だいぶGウィルスを送り込みやがったか?」
 リサ:「えっ?えっと……それは……」

 すると高橋、手持ちのライトニング・ホークをリサのこめかみに突き付けた。
 悲鳴を上げる桜谷。

 高橋:「やったのかよ?先生の尋問に答えなきゃ、引き金を引くぞ?」
 リサ:「ただの脅し。わたしはそんなもので死なない。……まあ、さすがに痛いけど」
 高橋:「だったら答えろや!!」
 愛原:「まあまあ、高橋。リサはともかく、桜谷さんが怖がってるだろうが」
 高橋:「は、はあ……」
 愛原:「銃を下ろせ」
 高橋:「は、はい」
 愛原:「それで、どうなんだ?」
 リサ:「わたしの寄生虫を送り込んだ。先生も知ってると思うけど、わたしの寄生虫はGウィルスとTウィルスに感染している」
 愛原:「やっぱりなぁ……」
 高橋:「やっぱりって何なんスか?」
 愛原:「リサの寄生虫は宿主が死ぬと、自動的に死滅するようにはなっているんだけど、GウィルスやTウィルスまでは消えない」
 高橋:「それってつまり……」
 愛原:「死んだ会長は、その2つのウィルスに感染しているということだよ。今、BSAAが解剖先の病院に向かって、遺体を回収しに行くところだ」
 高橋:「大ごとっスねぇ。どっかの誰かさんのせいで?」

 高橋はわざとらしく、リサをチラ見した。

 愛原:「あれでは告別式どころの騒ぎじゃないだろう?」
 桜谷:「あの、結局どういうことなんですか?告別式とかは……」
 愛原:「桜谷さんは、コロナ禍第1波辺りの騒ぎは覚えてるだろう?」
 桜谷:「え、ええ。マスクが思いっ切り不足したり、トイレットペーパーが不足したりしましたね」
 愛原:「まあ、そうなんだが、今はそこじゃない。あの時期に亡くなった、志村けんのことは知ってるだろう?」
 桜谷:「そうですね」
 愛原:「志村けんはコロナに感染して死んだことになってる。だが、遺族は遺体と対面できなかったそうだ」
 高橋:「有名な話ですね」
 愛原:「コロナ感染死に限らず、伝染病などで死んだ人間は、遺体と会わせられないそうだ。もちろん、伝染病の内容にもよるだろうが」
 桜谷:「今回の場合は……」
 愛原:「BSAAとWHOの見解では、生物兵器ウィルスに感染して死んだ人間は、速やかに火葬することが望ましいとしている。当然、日本政府もそうしている。霧生市でゾンビ化した市民に対し、遺族は2度と対面できなかったそうだ。そういうことだよ」
 桜谷:「すると告別式は無し……」
 愛原:「お別れ会はするだろうな」

 それだけ恐ろしいウィルスを、リサは保有しているのである。
 リサ自身が生物兵器(BOW)と呼ばれる所以である。
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“愛原リサの日常” 「勝利の代償」

2022-12-28 20:18:10 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[9月13日15:30.天候:曇 東京都台東区上野 東京中央学園上野高校]

 校庭から叫び声が聞こえる。
 そして、風に乗って血の匂いも。

 リサ:「うウ……!」

 リサは血の匂いを辿って、現場に走った。

 リサ:「ウあっ!?」

 現場に着くと、そこには血だまりができていた。
 そして、その中央にはうつ伏せになっている女子生徒が……。
 体をあらぬ方向に捻じ曲げて、ピクピクと動いている。
 うつ伏せになっているので顔は分からないが、匂いからして、リサには心当たりがあった。

 リサ:「会長……!」

 リサには、生徒会長の城ヶ崎だと分かった。
 それでも、血などの匂いがリサのBOW(生物兵器)、人食い鬼としての本能を誘う。

 リサ:「ウウウ……!」
 栗原蓮華:「おい!」

 だが、そんなリサの肩を後ろから掴む者がいた。

 蓮華:「それ以上、近づくな。もしアンタが、あの血肉にむしゃぶりついた時点で、私はアンタを人食い鬼として斬らなくちゃいけなくなる」
 リサ:「う……!」

 リサは無言で何度も頷くと、すぐにその場から離れた。

 教師A:「離れろ!全員、散れ!教室に戻れ!」
 教師B:「救急車、誰か呼んだ!?」

 リサは人混みの外に出た。
 すると、そこには数人、恐らく瞬間を目撃したであろう、女子生徒が座り込んでいた。
 そして、その中に1人、『魔王軍』のメンバーがいた。

 リサ:「おい、ちょっと。何があった?」
 メンバー:「ま、魔王様……。と、突然、屋上から、人が飛び下りて来て……」
 リサ:「屋上から飛び降り!?」
 メンバー:「き、きっと自殺です……」
 リサ:「自殺……屋上……飛び下り……!」

 その3つのワードから、リサはある物を連想した。
 そして、目にも留らぬ速さで、その場から消えた。
 さすがは大ボスクラスの特級BOW。

 蓮華:「! あいつ、どこ行った!?」

 義足が人混みに引っ掛かってしまい、抜け出すのに苦労して、後からやってきた蓮華は、リサを見失ってしまった。

 リサ:(遺書だ!あいつ、遺書なんか残してやがったら……!)

 リサは校舎の反対側に回ると、両手から触手を出して、それで一気に外壁を昇った。
 生体フックショットとでも言うのか。
 幸い屋上には、まだ誰も来ていなかった。
 そして、城ヶ崎が飛び下りたと思われる場所には靴が揃えて置かれており、その上に遺書が置かれていた。
 リサはすぐにそれを拾い上げて、中身を読んだ。

 リサ:「あのクソ女……!!」

 遺書にはリサが一番怪しいこと、あんな恥をかかされたからにはもう生きて行けぬこと、そして、自分の命と引き換えに、ブルマ禁止を校則に盛り込んでほしいことが書かれていた。

 リサ:「フザけるな!」

 リサは遺書をグシャグシャに丸めると、それを口の中に放り込んだ。

 教師C:「早く鍵を開けてください!」
 警備員:「ちょっと待ってください。向こう側から、何かに押さえつけられています!」

 リサがドアを見ると、外側からつっかえ棒がされていた。
 どうやら城ヶ崎が、自殺を邪魔されるのを防止する為にそうしたらしい。

 リサ:「さようなら」

 リサは丸めた遺書を飲み込むと、屋上から人けの無い裏庭に飛び下りた。
 因みに、高さは4階建て校舎の屋上。
 オリジナルのリサ・トレヴァーが、もっと高所から飛び下りても死ななかったのだ。
 そのGウィルスを受け継ぐ日本版リサ・トレヴァーが、この程度で死ぬはずがなかった。
 物の見事に、地面に着地する。

 リサ:(先生の為に、あそこまでやったんだ!ここで邪魔されてなるものか!)

 リサは急いで校舎の中に入り、自分の教室に戻った。

 坂上:「愛原、遅いぞ!どこへ行ってた!?」

 臨時のホームルームが行われており、リサは遅刻である。

 リサ:「こ、ゴメンナサイ!トイレに行ってて……」
 坂上:「そういう時は、誰かに言ってから行け!」
 リサ:「すいません……」
 坂上:「分かったら早く席に座れ」
 リサ:「はい」

 リサが席に着くと、担任の坂上が話し始めた。

 坂上:「……というわけで、皆も知っての通り、先ほど事故が発生しました。今、救急車や警察のパトカーが来ていますが、皆は変な野次馬根性出さずに、真っ直ぐ帰ってください」
 リサ:(今のところは事故扱いか……)

 遺書はリサが隠蔽した。
 さすがに靴までは隠せなかったし、そもそも隠す必要があるのかも分からなかったので、そのままにしておいた。
 遺書は隠蔽したが、揃えられた靴の状態からして、警察は自殺と判断するだろう。
 当然、学校関係者にも聞き込みを開始するだろう。

 リサ:(あー……わたしの所にも来るかな?)

 だが、証拠は無い。
 リサの寄生虫は、体の外に出た時点で死滅する。
 リサの正体について知る者は、この学園ではごく一部の者だけ。
 それも、リサの寄生虫について更に知る者はもっと限られている。
 生徒会には知られていないので、リサの所に捜査の手が来ることは考えられない。

 新聞部員:「あー、すいません。新聞部の者ですが、ちょっとお話よろしいですか?」

 帰り際、リサの所に新聞部員が来た。

 リサ:「なに?」
 新聞部員:「『ブルマ復活賛成派』の代表として、『ブルマ復活反対派』の代表である会長が亡くなりました。それについて、何か一言お願いできますか?」
 リサ:「気の毒だと思うけど、死んだらそこで負け。もしも本当にわたしの計画を阻止したければ、生きてわたしに立ち向かって来て欲しかったね」
 新聞部員:「なるほど。さすがは、霧生市のバイオハザードを生き延びられただけのことはあります」

 リサは表向き、霧生市のバイオハザードに巻き込まれ、そこで家族を失い、愛原の所に引き取られたということになっている。

 新聞部員:「愛原さんは、会長の自殺の原因は何だと思われますか?」
 リサ:「さあ……。遺書が……おっと!」
 新聞部員:「ん?遺書が何ですか?」
 リサ:「わたしにはよく分からないけど、自殺だったとしたら、遺書か何かあれば、そこに書いてあるかもね」
 新聞部員:「なるほど」
 リサ:(思いっ切り遺書に書いてあった。わたしのせいだって)

 リサはリサで冷や汗をかいてきた。

 リサ:(まさか、ここで死ぬとは……!)

 リサは完全に立入禁止になっている教育資料館(旧校舎)を見て思った。

 リサ:(“トイレの花子さん”がまだいたら、怒られそうだな……。でもまあ、しょうがない)

 当然こんな状況になっては、美術部で絵のモデルができるわけもなく、リサはこのまま帰るしかなかったのである。
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“愛原リサの日常” 「『魔王軍』の勝利」

2022-12-28 15:13:12 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[9月12日11:00.天候:晴 東京都台東区上野 東京中央学園上野高校・保健室]

 午前中の授業が続く学園。
 そこに、1人の女子生徒が白いリネンに包まっていた。
 養護教諭は所用があって退室しており、室内にはその女子生徒1人しかいない。
 その女子生徒とは、生徒会長の城ヶ崎であった。

 リサ:「こんにちは。会長」

 リサは体育の授業を抜け出して来ていた。
 その為、今は体操服にブルマを穿いている。

 リサ:「体の具合ばとう?1週間分の糞便を垂れ流したからスッキリしたでしょ?」
 城ヶ崎:「…………」
 リサ:「わたし達の計画を邪魔しようとした罰が当たったんだよ。こんないい物を禁止しようだなんて、バカなことをしたねぇ!」

 リサはくるっと回った。
 体操服の裾はブルマの中に入れていないので、回った時に緑色のブルマが完全に露わになる。

 リサ:「オマエはこれから教室で、廊下で、体育館で、『総会中に脱糞した女』って呼ばれるんだ!」
 城ヶ崎:「もう嫌ですぅぅぅ!お願い……!許して……!許して……!!」

 城ヶ崎は布団を頭から被って泣き出した。

 リサ:「総会は私達主導でやらせてもらうよ?幸い、男子役員は乗り気だからね」

 
(東京中央学園の女子体操服のイメージ。男子は反対しないだろう。男子は)

 城ヶ崎:「グスッ……グスン……!」
 リサ:「決まったら、アンタにも着てもらうことになる。……まあ、それは後の話になると思うけど」

 リサは手に持っていた、SDカードメモリーを城ヶ崎の枕元に置いた。

 リサ:「これは渡しておく。アンタがお漏らしを始めてから終わるまでの動画。1分以上はブリブリ漏らしてたねぇ?……よく自分で見直しておくといいよ。それじゃ」

 リサは保健室を出た。
 そして授業に戻る。

 淀橋:「SDカードは渡したの?」
 リサ:「うん」
 小島:「そのまま持ってて、交渉の材料とかにも使えるのに……」
 リサ:「いや、しばらく生徒会の女子役員は登校できないはず。その間に、副会長以下男子役員を篭絡させて、強行採決だ」
 淀橋:「さすがは魔王様」
 リサ:「全ては、愛原先生の為……!」

 尚、リサは自分で撮影したSDカードを渡しはしたが、他の生徒達も実は撮影していて、それに関しては全くのノータッチとした。
 男子生徒としては秘蔵動画にするのかもしれないし、エロ動画専門の動画サイトにアップする者もいるかもしれない。
 また、生徒会総会は新聞部も取材し、学校新聞に載せる為、カメラを構えている者もいた。
 その辺からシャッター音がしたり、フラッシュの光が発生したことから、新聞部も城ヶ崎の脱糞シーンを撮影していただろう。

 リサ:「邪魔者は全て排除する」
 小島:「そ、それは頼もしい……」

[9月13日15:00.天候:晴 東京都台東区上野 東京中央学園上野高校]

 昨日の生徒会総会が中止になった為、急きょ改めて最後の授業時間に臨時の生徒会総会が行われた。
 副会長が代行となり、採決員の殆どが男子役員となっていた。
 お世辞にも公平と言えない採決であったが、『事実上の廃止』から『事実上の復活』と相成った。
 さすがに公平性に欠けるからか、リサの望む『ブルマに統一』は却下された。
 校則における女子体操着に関する文言の中に、『ブルマ』が再び盛り込まれることで採決された。
 『体育の授業において、女子生徒は学校指定の【中略】下はジャージ(長ズボン、クォーターパンツ)などまたはブルマとする』と。
 太字が今回、盛り込まれることとなった文言。
 横線で削除されている部分が、それまでの文言。
 それまでも、『など』という形でブルマを禁止したわけではなかったのだが、今回新たに文言を復活させたことで、より存在感が増した。
 ただ、全体的に見ると、内容自体はそんなに変わっていない。
 ブルマを穿きたくない者は、それまで通りジャージや短パンで良いのだ。
 リサとしては『ジャージ(長ズボン、クォーターパンツ)または』を削除して、『必ず』という文言を入れたかったらしいのだが、あまりにも急進的過ぎるし、何度も述べるように、公平性の欠いた採択で、賛成と反対が男女で別れるという結果になった為である。
 『ジャージ(長ズボン、クォーターパンツ)』という文言はそのまま残すことで、何とか終了した。

 リサ:「ちっ……!」
 淀橋:「まあ、こんなもんでしょう。魔王様の理想通りに進め過ぎると、生徒会総会では決定したとしても、職員会やPTA総会で却下される恐れもあるし……」
 リサ:「PTAの方は大丈夫だと思うけどね。愛原先生が会長代行だし」
 小島:「いや、そういう問題じゃないってw 何だかんだ言って、PTAはお父さんよりお母さんの方が強いから」

 もう1つ、リサ達が勝利していることがある。
 それは、高等部の結果が中等部にも波及することだ。
 中等部でも元々ブルマは使用されており、しかも廃止の時期が高等部より数歩遅れて『事実上の廃止』となっている為、購買部の倉庫に在庫が残っていたりする(明確に禁止または廃止が謳われたわけではないので、新品状態の物を処分できなかった)。
 中等部の校則は高等部の物を参考にしているので、高等部のこの校則の変化が、中等部にも波及する可能性は高い。

 淀橋:「それより、魔王様の目論見通り、生徒会長来てないね?」
 リサ:「来れるわけがない」

 『ブルマの完全復活』とまでは行かなかったものの、『事実上の復活』にまで持って行けたことで、一応はリサ達の勝利で終わったと言えるだろう。

 小島:「校則に盛り込まれるということは、購買でもブルマが売り出されるようになるかもね。今、短パンとかは売ってるでしょ?」
 リサ:「それだ」

 臨時の生徒会総会が終わり、そのまま放課後となる学園。

 桜谷:「リサ様、また絵のモデル、お願いします」
 リサ:「分かった」
 新聞部員:「愛原さん!『ブルマの復活』が校則で決まりましたが、何か一言お願いします!」
 リサ:「事実上の勝利。この勝利を愛原先生に捧げる」

 会場となった体育館をあとにするリサ達。
 だが、校庭の方から何か叫び声が聞こえた。
 先に引き上げていった女子生徒達の金切り声であった。
 そして、リサの耳には聞こえた。
 その叫び声が上がる直前、鈍い音がしたことを……。
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