Cape Fear、in JAPAN

ひとの襟首つかんで「読め!」という、映画偏愛家のサイト。

『Cape Fear』…恐怖の岬、の意。

初体験 リッジモント・ハイ(102)

2014-11-16 03:29:38 | コラム
専門学校に通いながら新聞奨学生をやっていた自分の担当区域は、調布駅の南口だった。

高層マンションや企業が集中していて、深夜でもそこそこに賑やかなところ。
だから早朝の3~5時に配達するといっても、自転車のライトを点けていなかったと記憶する。その必要がないくらい、明るかったのである。

開店前のマクドナルド―その店内を清掃する、20歳くらいの小柄な女子が居た。
自分は彼女にほのかな恋心を抱いていて、「おはようございます、朝刊です!!」と元気に新聞を手渡すのが毎日の楽しみだった。

「ごくろうさまです~」

とはいっても、経験が足りない。
現在のように気の利いたことばを投げかけることも出来ず、ただふつうに挨拶をする日々が続いた。

そんな、ある日の出来事である。
いつものようにマクドナルド前に自転車を止め、彼女に新聞を手渡す。

「おはようございます、朝刊です!!」
「ごくろうさまです~」

会話をしているうちに入らないが、それでもハッピーだった。
都合よく解釈し過ぎかもしれない、しかし彼女の表情は、なんとなく自分に好意を抱いている・・・ように見えた。

(照れるので)軽くダッシュをする感じでマクドナルドを出て、自転車まで戻る―そのとき、通行人のひとりと身体がぶつかった。

「あ、すいません!」

相手の顔も見ずに、そのまま通り過ぎようとした。

・・・ら、

「おい、あんちゃん!」

と、呼び止められた。

男2人女1人、20代なかばくらいの3人組。
呼び止めたのは、少し前のことばでいうと「とっぽい」感じの男で、たぶんいちばん酔っていた。

「はい?」
「ぶつかっておいて、すいませんだけで済ますんかい!?」
「・・・」
「お前、どこの新聞屋だ?」
「朝日、、、ですけど」
「これから店に乗り込んでもいいんだぜ!?」

いまの自分だったら、コイツやけに凄むなぁ、「イキって」るなぁ、面倒だなぁ、あぁ女子が居るからか・・・みたいな感じで頭のなかでいろいろ計算出来るが、
当時はまだ18歳だったからね、オトナ? に絡まれることが恐怖で恐怖でしかたなかった。

「すいません、以後、気をつけます」
「以後って、たぶん、もう会わねぇじゃねーかよ!」

・・・・・。

なんなんだよコイツ、じゃあ、どうすればいいんだよ。
金でも出せばいいのか?

すると男は、荷台に沢山の新聞が積んである愛車を、思いっきり蹴飛ばしたのである。


がらがらがっしゃっーーーーーーーーーーーん!!!


大袈裟でなく、トップ画像の3倍くらいの高さまで積んであった。

ぶつかったくらいで、酔っているからって、ここまでするかねぇ・・・とは、当時思わなかった。
繰り返すが、ただただ怖かったんだ。

だから倒されても動揺するだけで、どうしたらいいのか分からない。

男はさらに倒れている自転車を蹴ろうとしたが、女に「もうよそうよ」と諭され、「気をつけろよ!」と捨て台詞を吐いてどこかに消えていった―。


マクドナルドの入り口に目をやると、ホウキを持った彼女がこちらを見ている。

心配だけど、なんて声をかけてあげればいいのか分からない・・・そんな表情だった。


自転車を起こす。
散らばった新聞、チラシをかき集める。
砂などを払い、積み直す。

そのあいだ、彼女はずっと自分を見ていたのである。


なにも出来なかった自分への苛立ちと、その一部始終を好いている女子に見られたという恥ずかしさ―よほど堪えたか、その翌日に、自分は警察署が開く柔道教室に通い始めた。
中学の部活では茶帯になるのが「やっと」だったのに、すぐに上達して黒帯に。
さらに2年後、吉田道場に所属して総合格闘技を学び始めるようになった。

これが、自分がきちんと柔道と向き合うきっかけとなったエピソード。


とはいっても・・・
その翌日に「強くなった自分」を見せられるわけもないので、しばらくのあいだは、彼女と顔をあわせるのが苦痛だったなぁ。。。

そのころ飽きずに聴いていたのが、レディオヘッドの『クリープ』。

トム・ヨークが ♪ 俺はうじ虫 ♪ と叫ぶ歌詞は自分とリンクし、こころを打たれたものである。

だからこの曲は、自分のなかでの生涯の1曲であり続けているのであった。




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本館『「はったり」で、いこうぜ!!』

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明日のコラムは・・・

『さぁ、ペダルを漕ごう』

コメント (3)
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