※トップ画像は、前日に言及した映画『クラッシュ』の原作小説。
表紙も直接的というか、えげつないねぇ。
…………………………………………
「大丈夫ですか!?」
「…え、まぁ、大丈夫、、、だと思います、たぶん」
「自転車のほうは?」
「見てみないと、なんとも」
「…ですよね」
「そちらこそ、怪我とかは?」
「ボクのことは、いいんです!」
「いや、そういうわけには。自転車のほうも確認してください」
「それも気にしないでください。ボクのはオンボロのママチャリですけど、あなたのは高そうじゃありませんか!」
「…」
今年2月の積雪量には負けるが、「大雪」が降った95年の2月、その早朝―。
雪の怖さを知らないから、割と多くのひとが「通常の装い」で通勤・通学しようとする。
自分もそのひとりで、だから自転車に乗って(当時働いていた)パン工場に向かおうとした。
外に出てびっくり。
積雪量にではなく、やはり自転車で向かおうとする「バカチンな同志」が、あまりにも多かったから。
しかし数メートルも進むと、チェーンやタイヤスポークに雪が溜まり、思うように運転出来なくなる。
だからその度に自転車を降りては雪をのける―この繰り返しで、たぶん徒歩のほうが速かったように思う。
そこそこ急な坂を、自転車を押して上る。
ふだんなら「ちょっとした立ち漕ぎ」ですぐに上り切るが、きょうはそうもいかない。
ひぃひぃひぃひぃいいながら、ゆっくり上る。
ひぃひぃひぃひぃ、ひぃひぃひぃひぃ、ひぃひぃひぃひぃ、ひぃひぃひぃひぃ、ひぃひぃひぃひぃ。
すると前方―というより上方から、男の「野太い悲鳴」が聞こえてきた。
自転車に乗ったその男が、こっちに突進してくるではないか!!
そう認識したときには、すでに彼と自分は衝突していたのだった。
がっしゃーん!! という派手な音ではなく、どすっ! という鈍い音。
しばらくの、静寂。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
痛みは、ない。
ないが、押していたはずの自転車が「向こうのほう」に飛ばされていた。
雪が重しになってくれていたはずなのに、よほどの衝撃だったか。
相手も見た感じは、怪我はしていない。彼のママチャリも無事なようである。
問題は、自分の「買って間もない」自転車だった。
「ブレーキ、効かなかったんですか」
「いや、ブレーキは効いたんですけど、タイヤがいうこときいてくれなくて」
「お互い、バカチンですかね。こんな日に自転車通勤なんて」
「(苦笑)弁償しますよ」
「えっ」
「だって、もう立たせなくても分かりますよ。ハンドルが曲がっているじゃないですか」
あ、ほんとうだ。
「それに、ほら、落ちてるこれ、そちらの部品でしょう」
「…あ、そうですね」
「それは、おいくらだったんですか? 格好いいチャリだからなぁ・・・40万くらい?」
「いえいえ、そんな!」
イエスといったら、40万出してくれたのだろうか。
自分より2つか3つほど上に見えるその青年は、そこそこ質のいいスーツを着て、これまた質のよさそうなコートを羽織っていた。
でもオンボロのママチャリだしね~、金を持っているのかどうなのか、よく分からんヤツだったのだ。
「先月買ったばかりです。16万3千円でしたね」
「ちょっと待っててもらえますか。すぐそこにATMあったでしょ。降ろしてきますから」
「あ、はい」
・・・・・。
待つこと10分。
彼は自分の手を取り、25万円を握らせた。
「これで示談ってことで、いいですかね」
「え!?」
「悪い話じゃないと思うんですけどね。ボクにとっても、それで済むのであれば助かります。いろいろ通すと、面倒じゃないですか」
「(苦笑)たしかにそうですね。でも、こんなにいいんですか」
「これで済ませてもらえるんだったら、ぜんぜん痛い話ではないです」
「…」
「いいですか?」
「はい、了解しました」
「じゃあボクは、仕事がありますんで。お先に!!」
彼は足を引きずりながら自転車を押し、坂を下っていった。
・・・・・。
怪我しているんじゃないかなぁ、痛いんじゃないかなぁ。
・・・・・。
おぉっといけない、自分も遅刻しちゃうがな。
ほんとうはチャリ同士でも警察呼ぶべきで、互いに怪我がなかったとしても、この場合、物損事故としての扱いは可能だった。
しかし。
書類へのサインなし、たった10分で25万を手に入れちゃった自分は、当時「しめしめ!」としか思わず、その日は遅刻したもののゴキゲンに過ごしたのである。
その金で、すぐに「さらに質のいい」チャリを買ったのはいうまでもない。
思えば事故るたびに、それで得た? 金で(壊れていなくとも)新車を買うよなぁ自分は。
ある種の当たり屋か?
―以上が、自分が初めて経験した交通事故だが、示談に関しては、皆さんあまり参考にしないでね!!
おわり。
※映画のなかにおける「衝撃的な交通事故」といえば、これかな。
加害者によって仕掛けられた事故、、、ではあるけれども。
…………………………………………
本館『「はったり」で、いこうぜ!!』
前ブログのコラムを完全保存『macky’s hole』
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明日のコラムは・・・
『乾杯! は、ゼッタイに飽きない』
表紙も直接的というか、えげつないねぇ。
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「大丈夫ですか!?」
「…え、まぁ、大丈夫、、、だと思います、たぶん」
「自転車のほうは?」
「見てみないと、なんとも」
「…ですよね」
「そちらこそ、怪我とかは?」
「ボクのことは、いいんです!」
「いや、そういうわけには。自転車のほうも確認してください」
「それも気にしないでください。ボクのはオンボロのママチャリですけど、あなたのは高そうじゃありませんか!」
「…」
今年2月の積雪量には負けるが、「大雪」が降った95年の2月、その早朝―。
雪の怖さを知らないから、割と多くのひとが「通常の装い」で通勤・通学しようとする。
自分もそのひとりで、だから自転車に乗って(当時働いていた)パン工場に向かおうとした。
外に出てびっくり。
積雪量にではなく、やはり自転車で向かおうとする「バカチンな同志」が、あまりにも多かったから。
しかし数メートルも進むと、チェーンやタイヤスポークに雪が溜まり、思うように運転出来なくなる。
だからその度に自転車を降りては雪をのける―この繰り返しで、たぶん徒歩のほうが速かったように思う。
そこそこ急な坂を、自転車を押して上る。
ふだんなら「ちょっとした立ち漕ぎ」ですぐに上り切るが、きょうはそうもいかない。
ひぃひぃひぃひぃいいながら、ゆっくり上る。
ひぃひぃひぃひぃ、ひぃひぃひぃひぃ、ひぃひぃひぃひぃ、ひぃひぃひぃひぃ、ひぃひぃひぃひぃ。
すると前方―というより上方から、男の「野太い悲鳴」が聞こえてきた。
自転車に乗ったその男が、こっちに突進してくるではないか!!
そう認識したときには、すでに彼と自分は衝突していたのだった。
がっしゃーん!! という派手な音ではなく、どすっ! という鈍い音。
しばらくの、静寂。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
痛みは、ない。
ないが、押していたはずの自転車が「向こうのほう」に飛ばされていた。
雪が重しになってくれていたはずなのに、よほどの衝撃だったか。
相手も見た感じは、怪我はしていない。彼のママチャリも無事なようである。
問題は、自分の「買って間もない」自転車だった。
「ブレーキ、効かなかったんですか」
「いや、ブレーキは効いたんですけど、タイヤがいうこときいてくれなくて」
「お互い、バカチンですかね。こんな日に自転車通勤なんて」
「(苦笑)弁償しますよ」
「えっ」
「だって、もう立たせなくても分かりますよ。ハンドルが曲がっているじゃないですか」
あ、ほんとうだ。
「それに、ほら、落ちてるこれ、そちらの部品でしょう」
「…あ、そうですね」
「それは、おいくらだったんですか? 格好いいチャリだからなぁ・・・40万くらい?」
「いえいえ、そんな!」
イエスといったら、40万出してくれたのだろうか。
自分より2つか3つほど上に見えるその青年は、そこそこ質のいいスーツを着て、これまた質のよさそうなコートを羽織っていた。
でもオンボロのママチャリだしね~、金を持っているのかどうなのか、よく分からんヤツだったのだ。
「先月買ったばかりです。16万3千円でしたね」
「ちょっと待っててもらえますか。すぐそこにATMあったでしょ。降ろしてきますから」
「あ、はい」
・・・・・。
待つこと10分。
彼は自分の手を取り、25万円を握らせた。
「これで示談ってことで、いいですかね」
「え!?」
「悪い話じゃないと思うんですけどね。ボクにとっても、それで済むのであれば助かります。いろいろ通すと、面倒じゃないですか」
「(苦笑)たしかにそうですね。でも、こんなにいいんですか」
「これで済ませてもらえるんだったら、ぜんぜん痛い話ではないです」
「…」
「いいですか?」
「はい、了解しました」
「じゃあボクは、仕事がありますんで。お先に!!」
彼は足を引きずりながら自転車を押し、坂を下っていった。
・・・・・。
怪我しているんじゃないかなぁ、痛いんじゃないかなぁ。
・・・・・。
おぉっといけない、自分も遅刻しちゃうがな。
ほんとうはチャリ同士でも警察呼ぶべきで、互いに怪我がなかったとしても、この場合、物損事故としての扱いは可能だった。
しかし。
書類へのサインなし、たった10分で25万を手に入れちゃった自分は、当時「しめしめ!」としか思わず、その日は遅刻したもののゴキゲンに過ごしたのである。
その金で、すぐに「さらに質のいい」チャリを買ったのはいうまでもない。
思えば事故るたびに、それで得た? 金で(壊れていなくとも)新車を買うよなぁ自分は。
ある種の当たり屋か?
―以上が、自分が初めて経験した交通事故だが、示談に関しては、皆さんあまり参考にしないでね!!
おわり。
※映画のなかにおける「衝撃的な交通事故」といえば、これかな。
加害者によって仕掛けられた事故、、、ではあるけれども。
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明日のコラムは・・・
『乾杯! は、ゼッタイに飽きない』