Cape Fear、in JAPAN

ひとの襟首つかんで「読め!」という、映画偏愛家のサイト。

『Cape Fear』…恐怖の岬、の意。

風呂は正方形

2016-02-14 00:10:00 | コラム
そこそこの熱湯風呂に入るのが好きだ。

強調、「そこそこ」ね。

夏であれば45度、冬であれば46~47度くらい。

乾燥肌タイプに熱湯は適さないのだけれども。

それでも我慢して我慢して我慢して、熱湯風呂に入る。

なぜって、ビールを美味く呑みたいから。

ただそれだけ。

冷凍庫で冷やしたジョッキに、いちばん好きなスーパードライを注いでググッとね。

これに勝る快楽は、射精と脱糞くらいじゃないだろうか。

※「光永、生涯現役」と記されたジョッキ




気に入りの入浴剤は、おっさんっぽいがバブ。
実際におっさんだから、それでいいじゃないか。

ただ不満は、風呂釜が小さいこと。
正方形であること。

団地特有の、、、分かり易くいえば、『家族ゲーム』(83)で伊丹十三が豆乳飲みながら入る、あの小さな風呂みたいな感じ。



これじゃあねぇ、足が伸ばせないし。
エッチ出来ないし・・・というのは、ないか。『皆月』(99)の奥田瑛二と荻野目慶子みたいに、狭ければ狭いほど密着度が高まるからね。

※みんな、月でした





地元の群馬には、伊香保や草津といった有名な温泉が沢山ある。
自分が住んでいた館林からは「えれー」遠いのだが、ガキのころはべつに興味なかったのに、あぁもっと行っておけばよかったなぁと。

理想をいえばね。
昔の文豪や小津監督のように、旅館に連泊して温泉に浸かって脳味噌まで柔らかくして、アアデモナイコウデモナイと頭のなかで格闘を繰り返しながらモノを書くような生活がしたい。

柄じゃないし、資格もないだろうけれども。


だからきょうも、正方形の熱湯風呂に浸かり、ビールをがぶ呑みしながら、ちんちんシコシコしつつキーボードをカタカタさせているわけです。

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明日のコラムは・・・

『にっぽん男優列伝(313)松田翔太』
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初体験 リッジモント・ハイ(161)

2016-02-13 00:10:00 | コラム
いかつい刑事たちが犯人の泊まる部屋に突入する準備を始めた―というエピソードの、つづき。

深夜の3時だが、無関係な7組のカップルに危険が及んではいけない・・・ということで、彼ら彼女らを帰すことになった。
各部屋にフロントのおばさんが連絡を入れてくれたが、1組を除いて応答なし。

そりゃそうだ、深夜なんだもの。
ここは眠らない街とはちがう、「ド」田舎の町田市だから。

ドアベルを鳴らす。

・・・・・・・・・・。

応答なし。

再び、鳴らす。

・・・・・・・・・・。

応答なし。

ヤケクソになって、しかし遠慮がちに連打する。

やっと出てきたと思ったら「なにそれ? 犯罪者が泊まってる? それはそっちの都合でしょ。こんな時間に客出すの?」と突っかかってくる。

いや、このひとは悪くない。
実際、自分がその立場だったとしても理解など示さず、不機嫌になると思うもの。

「宿泊費やお食事代などは、返金しますので―」
「当然でしょ、というか、それに色つけてもらわないと」
「色?」
「迷惑料」
「・・・・・」

こんなやりとりが、7回もつづく。

以前、フロントから「ひとりで泣いている女の客が居る。彼氏が約束の時間になっても来ないんだって。ねぇ牧野くん、相手してあげて」と頼まれたことがあった。

相手?

ナニを、ナニするわけ?

「ちがうわよ! 話を聞いてあげるだけ」

それで3時間くらい部屋に入って酒を呑んだ―あのときもシンドイものがあったが、今回はその比ではない。


早朝5時―。

ナントカカントカして、7組のカップルを退出させた。

「2度と来ねぇよ!」と、その場でメンバーズカードを折り曲げた常連さんも居た。
犯人は捕まったとして、責任取ってくれるのだろうか。

5時20分―。

刑事たち、突入。

男は熟睡していたため、暴れることなく捕捉された。
女は優しい感じの若い刑事に支えられながらパトカーに乗ったが、その頬には涙がつたっていた。


「危ないから」と、刑事は突入現場に近づくことを許さなかった。

だから、なかがどういう状態だったのかを知らない。

しかし、とりあえずは一件落着である。
こんな現場を「体感」出来ることなど滅多にないであろうから、気持ちが高ぶっていた。


10分後―。

男と女と刑事たちが去った302号室に入る。

ベッドが乱れていた。
テーブルには食べ残した寿司と、注射器。
ジョッキに残された、ビール。

女のその後を思うと「ちょっとだけ」切なくもなるが、自分はなぜか苦笑しながら、掃除を始めた。

ゴミをかたし、シーツを取り替え、ベッドメイキング。
風呂を洗っていたときに、4~5人の男たちが部屋に入ってきた。

彼らを見て、ハッとした。

「ハッ」ではないな、「あぁ!!」か。

これほどまでに映画が好きで、そういうシーンを何度も観てきたにも関わらず、、、である。

そう、男たちは鑑識のチームだった。

ゴミをかたしてはいけない。
指紋が取れなくなるので、雑巾がけもしてはいけない。

これじゃあ、自分の指紋ばっかり検出されちゃうじゃないか!!!


呆れるように自分を見る鑑識チーム。

どうもすいません!! としかいえないバカチンなのだった―。


おわり。





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明日のコラムは・・・

『風呂は正方形』
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初体験 リッジモント・ハイ(160)

2016-02-12 00:10:00 | コラム
きのうラブホテルのアルバイトの話をしたので、ついでというか、この仕事の初体験エピソードを記してみたい。

というか、この仕事では初体験づくし。
裏の裏の裏の裏の裏の裏の世界を知りたいひとには、体験アルバイトでもいいから「強く」薦めたい。

自分が経験したズンドコ・エピソードを記す前に、もう少しラブホテルそのものについて語ろう。

仏国の鬼才ギャスパー・ノエが現代日本を捉えた、『エンター・ザ・ボイド』(2009)。

ラブホテル街を上空から捉えるシーンがあり、ある識者がこれを「ザーメンのタンク場」と評した。

いい得て妙、というか、こんな形容を自分が出来なかったことが悔しかった。

そう、ラブホテルは端的にいってザーメンのタンク場である。
卑下の上に卑下を足していえば、清掃員は他人のザーメンを片していることになる。

24歳のころの自分は、当時の支配人にストレートにこういって怒られた。
そりゃ当然だ、当然だが、と同時に、自分がいっていることだって真実なんだと思った。

自虐だが、嫌な仕事というわけでもなかった。
自分でザーメン出したほうが楽しいに決まっている、しかし、部屋がキレイだとアンケート用紙に書いてもらうとうれしいし、その晩のメイクラブをセッティングしたのが自分だと思うと、それはそれで悪い気はしないのであった。


※当時働いていたホテルの、現在…名前も変わってしまった



さて。
いつものようにルーム清掃をしていると、フロントのおばさんから下りてくるよう入電があった。

フロントには、いかつい男が8人も立っていた。

神奈川県警の刑事たち。
ある男の確保と、ある女の救出が目的だという。

302号室に宿泊した、30代の男と20代の女。

男は銃刀法違反・傷害で前科あり。
彼が駐車場に停めている車は盗難車であることが判明、さらに薬物所持の疑いもある。

その男が、ウチの娘を連れ回している―20代女の母親の通報により、刑事が動いたというわけ。

フロントは防犯上の理由もあって、対面式とはいえない「超」小窓のタイプ。
自分は302号室に食事を届けており、自分「だけが」室内の様子と女の顔を見ている。

突入(!)する前に最終確認したいからと、刑事は自分に女の写真を見せてきた。

・・・・・。

写真は、化粧ばっちり。
しかし自分が見た女は、風呂上りだったのである。

似ている。

と、いえば似ている。

似ていない。

と、いえば似ていない。

生涯で何度か「面通し、のようなもの」を経験しているが、自分、これが大の苦手。
苦手でないひとも珍しいと思うが、もし間違っていたらどうしよう、このひとが犯人でなかったらどうしよう、、、と思うと、自信を持って指を差したり頷いたり出来なくなってしまうのだ。

自分が「いつになく」モジモジ? していると、リーダーらしい刑事が本部かどこかに電話をかけ、「いま係のかたが確認しました。突入の準備を始めます」と報告しやがっている!!

確認した!?

「―それからおにいさん、悪いけどね、突入の際、何が起こるか分からない。宿泊は8組でしょう。連中を除いて7組。その7組をね、帰してほしいんだ」
「え、いま、深夜の3時ですよ」
「そう、3時。緊急事態だから、何が起こるか分からないんだ」
「・・・・・」

フロントのおばさんを見ると、我関せずみたいな顔をしている。

えー、自分が??


というわけで。
寝ているかもしれない、メイクラブしているかもしれない7部屋のドアを叩くことになったのであった。


つづく。


※めまい必至、『エンター・ザ・ボイド』のオープニング・クレジット




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『初体験 リッジモント・ハイ(161)』
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どこでだって、スイカは割れる

2016-02-11 00:10:00 | コラム
少し前のコラムで、自分はほとんどラブホテルは使わない、自宅派だ―と記した。

ただ、ユーザー? の半分くらいは「好きで行っているわけではない、事情があって」そうしている、、、のだと思う。

実家暮らしの若者だとか。
不倫であるとか。

どちらにせよ、ラブホテルは隙間産業みたいなものであり、なんとなく「後ろ暗い」ひとたちによって支えられている。

だからであろうか、とくに昭和の時代だが、ラブホテルと犯罪はワンセットにして語られることが多かった。

心中とか。
実際にラブホテルで射殺されたAV女優も居た。

まず、駐車場の「あの、びらびら」がそのイメージを増幅させていた。



地方では健在のようだが、平成に入ってから「びらびら」は減少している。
もう少し健全な、ちょっといい過ぎかもしれないけれど、スパ的な環境作りに励んでいるように見える。


「ほぼ使わない」といった自分だが、清掃員として4箇所のラブホテルでアルバイトを経験してきた。
きょうは、そのときのエピソードのひとつを記したい。

最初に働いたのが、24歳の夏。
町田市のラブホテルだったが、この年の秋ごろに、立川市でとんでもない事故が発生している。

強烈な出来事だったので、覚えているひとも居るのではないかしら。

出来たばかりの洒落たラブホテル、ここで一晩に3人の男が「別々に」首を吊ったのである。

3人は同級生。
そして、成功者だった。
しかし、それぞれの事業はバブル崩壊後に立ち行かなくなり、自死を選んだ。

3人はそれぞれの部屋にチェックインし、30分後、リーダーの泊まる部屋に集合する。
350mlの缶ビールとつまみで乾杯し、60分後に解散。

その数時間後、全員が息を引き取ったと。

3人も気の毒だが、最も悲惨なのはその日の清掃員である。

連絡が取れないからと合鍵を使って部屋に入ると、首を吊っている。
ひとりで充分にショッキングなのに、これが3度もつづく。

日給がソープ嬢以上だったとしても、やっていられないだろう。
(実際は、時給930円くらいだし!!)

連絡が取れない。
だとか、
清掃に入ったら、布団が盛り上がっている。
だとか。
そういうときのドキドキ感といったら、ない。

『スタンド・バイ・ミー』(86)の彼らは死体を見るために旅に出たが、死体なんか見ないほうがいいに決まっている。

とくに、刺されたりして苦しんだ死体なんて!!


さて。
そんなアレヤコレヤをインプットしている自分のようなヤツだからこそ、余計にビビッたというエピソードを。

自分の担当は、主に深夜。
深夜はフロントひとり、ルーム清掃ひとりで展開されている。

205号室のお客さんが退室したので、掃除道具を持って部屋に入る。

玄関を開けると・・・

そこには、生首が転がっていた。
大理石の床には、鮮血が飛び散っている。

ほんとうに、そう見えたのである。

あぁ、やっちまった。

いや、べつに自分は、なんにもやっちまってはいないが。

ジョン・マクレーンより不運なヤツだと嘆く。

とうとう死体を見てしまった、きょうで退職かな・・・と、いろいろ考えながら、一息ついて室内に入っていく。


もうタイトルでオチを明かしているので、察しはついたろう。

生首に見えたのはスイカだった。

どんなヤツかは分からないが、あいつらは室内でスイカ割りに興じたのである。

鮮血に見えたのは、飛び散ったスイカの実ね。


部屋の清掃は、基本、ひとりでも30分程度で終わる。
キレイに使ってくれた部屋であれば、風呂を洗ってベッドメイキングして、20分程度。

しかしこの部屋は、90分くらいを要した。

当たり前だ、バカヤロウ。

スイカは出窓まで飛び散っていたのだから。

まぁどれだけ汚くても鮮血でなかったのが、救いといえば救いなのだけれども。。。


※この業界の経験者であれば、嘘を描いていないことは分かる映画でした




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『初体験 リッジモント・ハイ(160)』
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シネマしりとり「薀蓄篇」(154)

2016-02-10 00:10:00 | コラム
ぐるー「ぷ」→「ぷ」ろぐらむ

昔から映画ファンをやっているひとにとっては、プログラム。
90年代くらいから映画ファンを始めたひとにとっては、パンフレット。

しかし現在では元のとおり、プログラムというようになった。

簡単にいえば「質のいい紙で」作られた冊子。

キャスト・スタッフ紹介、プロダクションノート、批評などの文章と、名場面を大きく載せた写真で構成されている。

80年代までは400円、高くても500円だったものが、現在では700~800円が「ふつう」になった。

基本、買いますよ。
思い出とかではなく、データ収集のため。

ただ、メジャーな作品ほど「知っていることしか載ってない」ケースが多く、買ってガッカリしてしまう。

個性的なのは(衰退の傾向にある)ミニシアター産のもの。

以下は、自分の気に入りプログラム。


『ロリータ』(97)、『17歳のカルテ』(99)の、モノスゴ小さいプログラム



『クレイドル・ウィル・ロック』(99)、新聞紙風



『パンチドランク・ラブ』(2002)、まるでホットケーキ・ミックス




あれま!
すべて、「前」恵比寿ガーデンシネマで上映されたものだった!!

ということは、ガーデンシネマがそれだけプログラムに力を注いでいたということなのでしょう。


気に入りと記したけれど、困るのは規格「外」ということ。
これらをキレイに並べたい「願望」のある自分は、とっても困っちゃう。

棚に整列させられないのだもの!!


プログラムが展開されるというのは、日本独自の文化らしい。

映画大国の米国では「チラシ1枚」がふつうであり、「いちいちそんなもの、創っていられない」ということだろうか。
販売促進が過熱したディズニー産の『フォースの覚醒』でさえ、プログラムはなし。

商売的にいうと、「いま始めても」うまみがない、、、のかもしれない。
日本の場合は、歴史があるから。
もっといえば、「だから」やめられない。

プログラムを発行する金さえない・・・はずのインディーズ作品だって、「ほとんど意地で」プログラムを創ってみせる。

結果、赤字になってもね。


映画小僧からしてみると、たとえB級映画でもプログラムピクチャーでもレイトショー限定公開でも、プログラムを創ってみようとする日本のほうが「愛があって好き」なのだが、
たいした内容のものが構成出来ないのであれば、それはムダガミになってしまう。


映画としてはクソがつくほどつまらなかった、仏産の『ドーベルマン』(97)。

この映画に、野グソの処理として権威的雑誌を紙にする痛快なシーンが出てきた。

尻を拭くに相応しい? くだらんプログラムも多いから、どの国がいいか悪いかというのは、なかなかに判断しづらいというのが本音なのである。


※『17歳のカルテ』で、いちばん好きなシーン。
ノニーとアンジーが、『ダウンタウン』を歌う。





次回のしりとりは・・・
ぷろぐら「む」→「む」かしばなし。

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明日のコラムは・・・

『どこでだって、スイカは割れる』
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