画家であり、児童文学作家でもある陣崎草子さんが歌集を上梓されました。マルチな方です。でもどのお仕事にも、陣崎さんらしい透明感があり、ステキです。歌集は歌人であり小説家でもある東直子さんのプロデュースによるもの。歌壇のことはよくわかりませんが、陣崎さん、おそらくかなり有望な新人なのだと思います。
お陰様で、久しぶりに短歌をまとめて読みました。ああ、やっぱり俳句より小説に近いなというのが、第一印象。陣崎さん、いずれ大人向けの小説も書くのではという予感がします。好きな句に付箋を貼りながら読んでいき、最後に東さんの解説を読むと、私が好きだったのをほとんどもれなく取り上げてらっしゃり、そこも嬉しかったです。
どうやって生きてゆこうか八月のソフトクリームの垂れざまを見る
スニーカーの親指のとこやぶれてて親指さわればおもしろい夏
ひどく白いホテルラウンジきみの手は赤いストローくにゃりと曲げる
ぼくはややおかしいけれどまっとうで 離島で黄色い自転車飛ばす
旗をふる人にまぎれて旗をふるだれも応援しませんの旗
好きな順に5首というのではなく、付箋を貼っていた中からランダムに5首、書かせていただきました。
陣崎さんは、挿絵を描かれた『あまやどり』(市川宣子作)では、今年ひろすけ童話賞も受賞、すごい勢いで活躍されています。
表紙の絵もいいですね。もちろん陣崎さんご自身によるものです。
ついつい刺激されて、何十年ぶりかで短歌作ってみました。
歌いたくなるよ抱きしめたくなるよ『春戦争』の淡き桃色
カプセルの薬が喉を通りすぎ胃で解けてゆくほどの憂鬱
台風の過ぎて本郷六丁目古き旅館の地下ローマ風呂
冒頭とラストがあってその中を縫うように蟻自由に歩け
パソコンのファイルを削除したあとの机の上に赤きクリップ あぶみ
このまえ歌仙を巻いたときもそうだったけど、指を折って数えて……。