「童子」の句友の句集です。
もう何年も前から、句集を出すお話を聞いていたので、ついに! という思いです。
ああ、上品な本だなあ。いいなあ。
星月夜というのは、月が出ているかのような満天の星空の夜のこと。おさえた色合いのカバーを脱がすと、そこには月のような色合いの表紙が出てきます。
風凛さんとは、厚木カルチャーで出会いました。当時カルチャー講師をされていた三上冬華さんが入院され、その代講で私が行ったのですが、すぐに(こんな上手な方がいらっしゃるなら、私が来ることもなかったのでは)と思ったし、そう言った覚えもあります。
その頃風凛さんは、とてもきれいな句を作る方でした。でもきれいなだけではなく、風凛さんならではの視点のある句。普通ならそこで満足してもおかしくないレベルだったのです。
それがある日、
新緑や水こぼしつつ鶏小屋へ という句が出て、
風凛さん、変わった。と思いました。それから、もうめきめきと、きれいでそこはかとない句だけではなく、桃子先生が帯文に書かれている「どの句も線が太くくっきりと場面が目に浮かぶ写生」になったのです。
毎月、先生がいらっしゃる童子句会と、吟行の神奈川句会に出て、そして厚木と最低3回は句会に出て、この句集になりました。頭が下がります。
瓢箪の深きくびれのほてりかな ほてりに気づいた手柄
忘年や藁にこもれる火の立ちて 目に浮かびます。
卒業や鶏小屋に餌たつぷりと 鶏小屋の句がここにも
青梅やつり銭の皺伸ばしくれ ズームインの効果
きんつばの角の固きや名古屋場所 地名が効いている
出してみる預金通帳曼珠沙華 余計なことを言っていないところがいい。
早苗田の水ひたひたと家に寄せ ぞくりとする。
正面にはだかる富士や憂国忌 そうか。富士は立ちはだかるときもあるのだ。
枯菊を束ねしあとの夕焼かな 寂寞感と現実感
母訪ね母置き変える冬夕焼 この句、しみじみします。
また読み返すと、違った句に目がいくことでしょう。
毎月の研鑽の結果ですね。
私はもう足元にも及びません。
風凛さん、これからもご活躍を。
句集にまとめるのって、いいなあ。