fromイーハトーヴ ーー児童文学(筆名おおぎやなぎちか)&俳句(俳号北柳あぶみ)

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描写力~後藤竜二を再読して

2020年05月24日 | 日記
 最近、改めて後藤竜二の作品を読んでるのですが、描写力がすごいな。
 後藤さんの作品は、とにかく主人公の力強さ、意志の強さがピカイチで、歴史ものでも現代ものでも、人生を自分の力で切り開いていく姿に圧倒されます。なので、後藤竜二論的なもので、描写力に言及する人はあまりいないように思います。
 でもね、これ、私はすごいと思っていて。
 たとえば、ぱっと開いて。

174ページ
  そま人(そま は、漢字。変換できない)の頭が、バチどめの丸太をはずした。バチはキシキシと雪を鳴らしてしずかにすべりだし、しだいに速度をあげていく。はげしく雪煙がまいあがり、森がつぎつぎとふたつにさけて、左右に飛び去っていく。風圧とゆれにはねとばされそうになりながら、アビは速度をあげすぎないように樫の棒のてこをひき、またゆるめ、たくみにカジをとって、いっきにふもとまでかけおりる。

  後藤さんは北海道の人だから、雪山のことを知っているのかもしれないけど、これ、想像だけじゃあ、描けないでしょ。緊張感があり、無駄のないこの文章。こういう文章が、あちこちにある。
  別の本の冒頭では、十二歳の少年の心理を、見事に情景描写で描いていて、舌を巻いたことがある。これだって、すっと読み流されているに違いない。だって、ほかの部分。主人公や周辺の人物の「意志」が、あまりにも見事だから。

 当たり前だけど、児童文学は、文学だ。そこを忘れないようにしたい。