岩手在住児童文学作家田沢五月さんの新刊です。
田老は、岩手県北部沿岸の町。10年前の東日本大震災には大防浪堤を越える津波に町は甚大な被害を受けました。田老が津波に襲われたのは、昭和8年、そしてそれ以前にもありました。
この作品では、サヨ(本名はヨシ)が、その2度の津波を体験しています。
貧しく子だくさんの家に生まれたサヨは、他の兄妹同様幼い頃から一家を支えて働きます。働いて働いて、でも必死に学び、そして働いて生きていきます。
2011年の東日本大震災のときは、93歳。そのおサヨさんの一生です。その間には太平洋戦争もあり、夫を失い、それでも手に職をつけ、商売をしながら生き抜きました。何度も「じょうぱり」という言葉が出てきます。
青森の知り合いが「じょっぱり」とよく言います。そうか田老は青森に近いんだなあと思いました。
田沢さんにとっては、田老は故郷。きっと震災のときはいてもたってもいられなかったことでしょう。
その後何度も足を運び、サヨさんからお話を伺って、この一冊ができあがりました。
サヨさん視点の物語になっていますが、おそらくほとんどが実際にあったことなのだと思います。
「津波常襲の地に生きた一人の女性から我がふるさとがみえました。」と、宮古市長山本正徳氏が帯文を寄せていらっしゃいます。
津波常襲の地・・。一度だけ田老を訪れたことがありますが、あの巨大な防浪堤に呆然としました。
田沢さんは、こうした歴史の生き証人から話を聴き、本に残すという意義のある仕事を見事にされました。
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