加古川市在住、「童子」の大先輩、田代早苗さんの第3句集であり、孫のもえちゃんとの合同句集でもあり、歌集でもあります。早苗さんは、波田野爽波(虚子の最後の弟子)さんのお弟子さんでもあった方、爽波先生が亡くなられたあと、辻桃子先生の元にこられたわけで、長い俳歴の集大成でもある句集です。
百舌叫ぶ生きてゐるうち今のうち 早苗
なにより、この一句にすべてがこめられています。百舌鳴くではなく、叫ぶ。
私はいただいた句集を読むときは、好きな句に付箋を貼りながら読むのですが、早苗さんの句は、読み始めてすぐにその必要がないとわかりました。全ていいから! 上手だとか、すごいとか、もうそんなことを言うまでもない、そんな境地はとっくに超えてしまっています。
句に命かけてどうする麦の秋
辞世の句山ほど出来て年の暮
短夜や混みあつてゐる美人の湯
ひざ触れて酒のこぼるる裕明忌
春の夜のつぎつぎ人の死ぬドラマ 早苗
ここに揚げるため、パラパラとめくって目についた句です。他も全てすきなので、そういう選び方をしました。この5句を読んだだけでうかがえるように、早苗さんはもうご自身の命の終わりと向き合ってらっしゃいます。そんな早苗さんが、最近作っているのが、短歌。(入所されているホームのお友達と句会、歌会をやっているらしい)
死ぬことの予行練習した筈が段取りだうり行きさうもなし 早苗
私も以前短歌をやっていたからわかるのですが、どうしても短歌だと、感情を表に出しすぎ、言い過ぎになってしまいがち。この短歌は、俳句的だなあと思いました。ズンと胸に迫ってきました。
そして早苗さんの俳人としての力は、孫のもえちゃんにすでに受け継がれています。3~4歳のまだ575になっていない頃からの言葉をこうして掬い取って、残してるってすばらしい。
じてんしゃといっしょにおちたはるのどぶ
ブランコにとうめいにんげんのっている 7~8才
そうどすとまいこごっこのお正月
せんこうのにおいしみてるこのリンゴ 8~9才
田植道おつちゃん五人大げんか 11~12才 もえ
こんど中学生になるんだねえ。感想の手紙を出したら、もえちゃんからもお返事をいただいて、その文字のきれいさに、感心しまくりました。おばさん、字が下手でお恥ずかしい。
少しまえ「ランドセル俳人」という句集を読みました。作者はいじめにあって不登校になっている小学生。商業ベースに乗って本を売るには、そういう背景が必要なのかなと、少し寂しい気持ちになったのですが、(句はいいのがたくさんあったのですよ)もえちゃんのは、ふつうの小学生たちが、うんうんと思える句。それでいて、大人でもこうは作れないよなという面もあります。早苗さんとの二人句会、もっともっとしてください。