たそがれオヤジのクタクタ山ある記

主に北関東の山を方向音痴で歩いています。山行計画の参考にされても責任は負いかねます。深慮せず軽く読み流してください。

松木川~国境平

2007年08月26日 | 足尾の山
◎2007年8月25日(土)―1人

 ほぼ一か月ぶりの山遊び。皇海山に行こうかと、4時半に家を出る。今日も暑そうだ。この時期の山歩きは好まない。東北生まれの故か暑さにはめっぽう弱い。皇海山まで行ける確率は相当に低いのを承知の上で出かける。そもそもこの暑い盛りに、6時くらいに歩き始め、日帰りするのは到底無理なのである。自身、体力はともかく、精神的な強さも備わってはいない。だからと言って、安蘇山塊あたりの近くの山で茶を濁すのも避けたいところ。とりあえず国境平までくらいなら行けるだろう。

 皇海山には2度行った。庚申山経由と不動沢。後者は木といっしょだったが、歩く時間よりも車に乗っている時間が多い「楽して登る百名山」の典型コース。自分も歩いたのだから、敢えて批判はしないが、楽々コースを歩くと、皇海山がなんで百名山?といった疑問がつい出てきてしまう。ところが庚申山を経由すると、それなりの風格を感じて納得がいくところがあっておもしろいものである。まっ、どうでもいいことではあるが、好きな足尾の奥地、松木川から入ってみるのもおもしろいだろうな、といった単純な発想が今回の選択の理由。

 松木川遡行は3年前に木と探索したルート。あの時はただ松木川を歩いてみようかということだけで、ニゴリ沢の分岐付近でUターン。果たして、そこまで行ったものかどうかも確証はない。当時の写真を見ても、分岐周辺を撮ったものがない。あの時は銅親水公園から片道4時間以上かかった。木はゴム長で渡渉し、オレは普通の地下足袋にワラジ。木のゴム長には大量の水が入り込んでいた。さて、6時に銅親水公園を出発。皇海山往復に、こんな時間に出るのは遅すぎる。しかし仕方がない。仕事の疲れがまだ残り、暑さの寝苦しさで睡眠不足も続いている。隣の車の男性が山支度をして、マウンテンバイクに乗って颯爽と先行して出て行った。そうか、この手が使えたか。少なくとも30分は違うだろう。頭がいいよ。単調な林道歩き。出がけは20℃だった気温も、じりじりと上がっている。足尾の緑地化対策も遅々として進んでいるようには見えない。すくなくとも、3年前の5月の方が効果を奏しているかのように思えた。対策が風化、崩壊に追いつかないのか。落石もかなり目立つ。

 林道ゲート着6時33分。ここから先は林道崩壊地。ジャンダルムだか、足尾のグランドキャニオンが見えてくる。道路端にシカの白骨が転がっている。まだ腐臭があり、白骨化して間もないようだ。大方、滑落死だろう。河原には生きたシカが一頭。前に来た時には、カモシカとテンを見かけたが、今回出会ったのはこのシカとサル。幸いにも熊には遭遇しなかった。乗り捨てた自転車が目に留まる。さっきの隣人の物だろうが、まだまだ行けるだろうに、どうしてこんな半端なところに?と思って進むと、林道が寸断されている。ダイナマイトで破壊したかのような、巨大な落石箇所が続いていた。これじゃ、いくらマウンテンバイクでもダメだなぁ。大雨でも降ったら、さらに落石は続くだろう。緑化政策との矛盾。ハイキングで行ける所までは緑を覆い、物好きしか入らないところはほったらかしということか。

 そろそろ渡渉が始まる。地下足袋に履き替え、靴はザックの中に入れる。ズボンは半ズボンで来たから、そのまま。今回の地下足袋はクッション性のもので、ワラジは敢えて付けない。ワラジも使い捨てになるから、もったいない。渡渉も子供の水遊びみたいなもので、最初のうちは出来る限り避けるが、一旦、水に入ってしまえば楽しいもので、不必要な所でも渡渉をするようになる。残念ながら水はぬるい。もう気温は26℃になっている。一瞬の涼を水に求めるといった風流は期待できない。流しソーメンもこのぬるさではまずいだろうな。松木川6号ダム7時45分。V字型の谷間に皇海山が見えてくる。変な表現だが、静かな神々しいものがある。

 釣り師に出会う。これが例の車の隣人の正体。向こうは後ろから声をかけられてびっくりしていた。こんな山奥で人に出会い、声をかけないで素通りするのもおかしなものである。釣果は今のところゼロのようだ。この先は、だれも歩いていないようだ。

 このルート情報をネットで調べると、松木川に注ぐ沢として、大ナギ沢、ウメコバ沢、大ナラキ沢、三沢、……といった沢の名前が出てくるが、自分には、一つ一つの沢の名前が分からない。地形図にも名前は出ていないし、現場でも表示があるわけでもない。みんな、どうやって調べるのだろうか。随分と熱心なものだと感心する。むしろ、そうでないと、いけないのだろうが。ニゴリ沢分岐8時48分着。ここで初めて「ニゴリ沢⇒」の表示板を目にする。銅親水公園から3時間弱。結構、早いペースだと思う。河原歩きはクッション性の地下足袋でも、やはり足裏に負担がかかる。足裏が痛い。そして、脇の布部分にはガードがないので、石にぶつけるたびに強烈に痛い思いをした。そして足指の股の部分にも、枝葉をはさんでしまう。そろそろ地下足袋も脱ぎたかったが、用心のため、もう少し我慢する。沢の左岸の木には、黄赤のトタンプレートを目にするようになった。ニゴリ沢の水はやはり白濁している。ニゴリ沢の由縁か。飲んでみると、本流よりもさらにぬるくてマズイ。

 もみじ尾根取付き9時15分。荷造りテープの目印。地下足袋を脱いで、登山靴に履き替える。ズボンも交換しようかと思ったが、面倒なので、そのまま半ズボンスタイルで進む。地下足袋は石の上に置いて、干すことにする。気温も日なたでは30℃になっている。出発してから3時間15分。公園からここまで500m程の標高差。せめて、この時間に国境平にいたかった。皇海山を往復して、明るいうちに公園に戻るには、もう限界を過ぎている。大汗をかき、川水もしこたま飲んだ。しばらく休んでもみじ尾根に取り付く。これがいきなりの急登。ネットでは斜度が直角と表現しているレポもあったが、45度以上はあるだろう。ジグザグの踏み跡を辿る。黄赤プレートも頻繁にある。休みがちになる。かなりきつい。

 40分程悪戦苦闘して、ようやくなだらかな笹ヤブに入った。西南の展望が開け、皇海山が大きく鎮座している。やはり百名山だなと思う。再び樹林の中に入る。獣道が交差し、踏跡が分からなくなる。黄赤プレートも気まぐれになり、上りで目についても、木の中央部に打ち付けているため、振り返ると見えない。下りで迷うかもしれないなと心配してしまう。笹の背は低い。笹の間にあるらしい踏み跡を追う。トラロープを目にする。尾根は広くなっているのに、何のためのロープか、50m程、カーブしながら取り付けられている。取りあえずロープに沿って進むも、途中で切れている。視界が空になり、尾根歩きがようやく終わる。「皇海山―三俣山」の表示、「皇海山⇒」のプレートがかなりある。ちょっとした草原。ここが国境平。10時25分着。

 心地よい風、笹のサラサラした音。確かにテント泊にはいい所だろう。木陰でしばらく休んだ。ここの標高は1,600mくらいだから、もみじ尾根の取り付きから400mくらいだろうか。さて、ここからどうするか計算がはじまる。ここまで来れば、皇海山にも未練がある。ましてや、正面に堂々と聳えている。体力の消耗は無いわけではないが、致命的なものではない。皇海山まではさらに500m。片道2時間半は見るべきだろう。往復で少なくとも4時間は加わる。となると、公園に辿り着くのは夜の7時は回るだろう。途中、もみじ尾根での迷い時間も考慮すると、8時になってしまう。今のところ体調に問題は無いが、これからさらに暑くなる。国境平で26℃。気温30℃の山歩きはかなり応えるだろう。やはりヤメだな。結局、楽な方を選んで下山することにした。まったく、どう考えても精神的な虚弱だね。でも、出発が2時間、せめて1時間早かったら、迷うこともなかったろうに。もっと涼しい判断もしていたろう。最初から、テント泊で計画を立てるべきだった。後悔してもはじまらない。

 下山にかかる。いきなりルートを踏み外す。何も考えず、踏み跡を行ったら、どうもおかしい。群馬県側の水場方面に向かっていた。これはすぐに軌道修正できたので問題ではない。コンパスを合わせてニゴリ沢を目指す。北東方面に見える日向山、1,736m、1,828m峰、歩いてみる機会もあるだろうか。下りのもみじ尾根ではやはり迷った。まず、上りで見つけたトラロープの場所を通らなかった。これは何とか切り抜けて、黄赤プレートを見つけた。問題はそこから先。変だなと思いながら、同じところを戻ったのが3回。尾根が広がっているから迷ってしまう。気まぐれに打ち付けられたプレートなら、無い方がまだいい。つい頼ってしまい、見つけようともがく。何ということはない。コンパスに合わせて進んだコースが正しいものだった。うっすらと踏み跡が続いている。そして、急降下取付き部分でも1回ミス。もみじ尾根取付きまでえらく時間がかかってしまった。上りで1時間かけたところを1時間もかけて下った始末。

 もう本日の目標もなくなったから、ここで大休止。といきたいが、アブがどんどん飛んで来てまとわりつく。5回くらい刺されてしまった。汗をかいた身体は、アブには絶好の獲物だろう。生乾きの地下足袋に履き替えて下る。やはり疲れているのだろう。ところどころでつまずいては、足脇の痛打を繰り返す。釣り師がまだいた。ビクに結構、入っていた。「もう、登って来たのかい?」と声をかけられ、「途中でUターンですよ」と偽り無く答える。帰りはすこぶる長く感じた。後半は、ほとんどほっつき歩いているといったスタイル。河原で休むと、谷間を通して流れてくる風が気持ちよい。公園先のゲートからこれまで見かけた人は、釣り師以外に動物の生態でも研究している人だろうか、望遠鏡で山の上を見ていた。車で入りこんでいたから、公の方だろう。この2人だけ。公園に着いたのは3時20分だった。今日は9時間以上、歩いたことになる。無性に冷たいビールを飲みたくなる。足の裏は翌日になってから痛くなった。

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4 コメント

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川の流れのように (Yossy)
2007-08-26 17:47:53
今回はどこに皇海山があるのかを調べてから、読みました。ちょっとは想像が近づけるかなと思って。山の岩だらけの川を歩くとは涼しそうだけど痛そうだし、水に濡れると疲れが増しませんか。時間の短縮にはなるのでしょうね。山の中でも暑いとは、避暑地なんて言えませんね。でも、近くの登山口でなく裏道からのルートはmasterの様子が伺われます。
アブにも足の痛みにも負けず、次回は無事に復活してください。
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いやはや (masterです。)
2007-08-26 18:39:08
恐縮です。近くの登山口がこんなところしかないからそこから入るだけですよ。また「裏道」でもありませんよ。正攻法というか。好きで川を歩くわけでもなく、それしかないのです。しかしながら、やっていることは物好きなことですよ。アブは蚊よりもタチが悪く、私の場合、すぐに化膿してしまいます。両足ともに痒くて、腫れています。半ズボンの失敗です。
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祝 国境平 (俺だ)
2007-08-26 19:17:44
まずは、国境平まで行けて良かったな。日帰りではかなりきついらしいな。次回は俺が付き合うから、初日に皇海山を往復して、不動沢のコルかにごり沢出会いで、下山祝いのテン泊だな。または森山でも誘って、奴に宴会のつまみのに使うきのこでも採ってもらう、というのも面白そうだ。
ところで
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070821-00000138-mailo-l10
こんな遭難があったが、捜索打ち切りになったとのこと。なんか心当たりはなかったか?
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「俺だ」さんへ (mailaddress-1234)
2007-08-26 21:25:04
遭難の女性、心配ですね。不動沢のコルを通り過ぎて、鋸山の直下付近で東西に入りこんだ可能性がありますね。沢に入ってしまったら、あそこらはかなりやばいと思いますよ。さて、森山さんという方はキノコ採りの名手なのでしょうか?そろそろ、旬の時期になりますよね。ご相伴あやかりたいところです。キノコラーメンにキノコソバ、テント泊でやりましょうよ。
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