私は、子供の頃から好き嫌いが激しいのです。
おはようございます。
「食えぬもの」
豚、牛、鶏、貝、魚
「調理法によっては食せるもの」
鶏ささみ、魚類の数種、甲殻類の数種、卵、乳製品
「主食」
植物
ある日職場で、〇谷さんという社員に、「渡り蟹を買わないかい?」と声を掛けられた。
なぜ、トラックのドライバーが、蟹の在庫を60匹も抱えているのかは不明だが、
私は、「あら、じゃぁ、10匹いただくわ」と伝えた。
周囲の人間は、10匹も?という顔で私を見る。
まぁ、ばんっと割って鍋にほり込むだけでも、美味しいと思うしと、
私は、ジェスチャーを交えながら、周囲の人々に、
「渡り蟹の様々な調理法」を、レクチャーしていた。
私は、やる気だった。
渡り蟹をどう料理してやろうかと、今にも走り出そうとする意欲を必死に抑えた。
しばらくすると、
「おかっぱちゃん、持ってきたよ。好きな蟹、選んで持ってって。」
そう言われて、私は品定めをすべく、渡り蟹達を見た。
蟹が、動いた。
「〇谷さん、この袋に、10匹入れてください。」と、伏し目がちに伝えた。
仕事も終わり、
帰り道、蟹をお裾分けすべく、実家に寄り、袋の中の渡り蟹達を見た。
また動いた。
「3匹、ここから父さんの手で取りなさい。」と、キレ気味で伝えた。
家に帰り、再度、袋の中の渡り蟹達を見た。
もう、動かんのか?
甲羅を、そっと触った。
そして、袋ごと冷蔵庫にしまい、正座で考え込んだ。
まず、触らん事には、なにも始まらんという事を。
小一時間考えた頃、おじさんが帰ってきた。
事の訳など何も知らぬおじさんが、靴を脱いでいる隙に、
私はこう言った。
「おじさん、後は任せた。」
という事で、次の日、
元フレンチのシェフだったおじさんが、キョトンとしながら作る、
「渡り蟹のビスク」
野菜を切って
蟹をさばき
その後、おかっぱ、うたた寝中に、
おじさんが、様々な工程を経て、
こうなった。 「渡り蟹のビスク」
その後、おかっぱ、テレビ観賞中に、
おじさんが、ビスクに何かを色々加えて、
「渡り蟹のクリームパスタ」 出来上がり。
おじさんが、休日を返上し、台所に立ち続ける中、
かまってもらえぬ、うんこは
ふてくされた。
丸投げして、すっかり肩の荷を降ろした、ご機嫌なおかっぱは
おもむろに一口食べて、感想を述べた。
私、買った時に初めて気付いたの。
渡り蟹、触った事も食べた事も無かったんだわ。
そして、今回初めて食べて、解ったの。
私、渡り蟹、苦手だってことが。
少し時間が経ち、おかっぱは、ようやく正気を取り戻した。
なんて、女だ!
そう気付いたおかっぱは、甘い物が好きなおじさんに、
反省と感謝の意を込めて、武骨なクッキーを焼いた。
おじさんは、2枚食べた時点で、小さな声で、
「無味(むみ)・・・ですね。」と呟いたのだった。
おそらく、おかっぱは、砂糖を入れ忘れたのだろう・・・
なんて、女だ!