月よ。
どうか、隠れないで。
台風が来ている。
夜空は暗い。
月はどこだ?
月よ、隠れてないで、
行くべき道を照らしておくれよ。
おはようございます。
うんこを病院へ連れて行った日は、
細い三日月が、眩しいくらい輝いていた。
あれから一週間、月など見ずに、うんこばっかり見ていた。
真ん丸なうんこは、ずっと真ん丸のままだ。
私の目は、次第に涙を流さなくなった。
「お腹の中の出来物は、ニキビみたいにしぼんだんだ。」
そんな奇跡を信じて、独りでウキウキしながら窓の外を覗いてみたら、
夜空には、楕円形に育った月が、慎ましく浮かんでいた。
一週間前に病院で見た、出来物のエコー画像と似ていて、
つかの間の奇跡は消えたような気がした。
ウキウキは消えた。
その代わり、愛しさに包まれた。
これでいいと思った。
そんなわけで、うんこの余命宣告「一週間」を過ぎました。
うんこさんは、いたって、ツーっという感じで過ごしています。
苦しそうでもないし、痛そうでもなく、
ご飯も食べるし、撫ぜればゴロゴロと喉を鳴らす。
ツーっという感じに、いわば普通に過ごしている。
違うのは、おやつだ。
大好きな生クリームを、思う存分あげている。
好きなだけ食べればいい。
そう思って、あげているのだが、そろそろ心配になってきた。
一週間だと思うから、いっぱいあげてるのに、
全然、死にそうな気配を感じないのだ。
こうなると、うんこの健康が気がかりだ。
手遅れの病気に侵された体の健康が気になるとは、なんて皮肉だろうか。
笑っちゃうじゃん?
さすが、うんこだな。
ということで、
おかしな言い方ですが、うんこさんは元気です。
こんな感じで、ご機嫌さんです。
うんこ「もそっと、ゴリゴリ掻いてちょーだい、母さん」
うんこ「まだ、やめちゃダメだかんね、母さん!」
私は、ご褒美をもらえるような、そんな善行をしてきていない。
けれど、この時間は、まるでご褒美だ。
あの宣告が無ければ、私は何も気づかず、ボケッと暮らしていたに違いない。
だから今、私の心には、不幸な要素がどこにも見当たらない。
月の見えない夜は、ありもしない夢を見る。
けれど、月は見えないだけで、確実にある。
私はそれも全て許そうと思う。
今の私は、何もかも、許そうと思えるのだ。
ただ・・・
最近、かかぁに思う存分甘えられない、のん太が、
こんな顔になっているのは、大丈夫だろうか?
笑っちゃうんだけど!