うめと愉快な仲間達

うめから始まった、我が家の猫模様。
犬好きな私は、チワワの夢を見ながら、
今日も癖が強めの猫達に振り回される。

いつも通りの、優しい猫

2023年11月25日 | ほくろたれ蔵の闘病記

夜空の月は満ちていくのに、

君の体は、ますます削がれていく。

まるで君の命が、みるみるうちに月に奪われて行くみたいだ。

 

おはようございます。

昨日はどうしても嫌な予感がして、

昼に職場を抜け出し、家へ向かった。

たれ蔵は、

「あれ?母ちゃん帰ってきたぁ」

と、満月みたいな瞳で私を見上げた。

私の脳裏に浮かんだ嫌な予感は外れてホッとしたのもつかの間、

床に、たれ蔵が下痢したのか嘔吐したのか分からない液体が、

水溜りのように出来ているのに気が付いた。

それをティッシュに吸わせてみると、

白いティッシュが赤黒い液体に侵略されていく。

私は、

「なんちゅーこと、するんや?!なんちゅーことを・・・」

と、何度も何度も呪いの呪文のように呟いていた。

 

たれ蔵のリンパ腫は、主に小腸に病巣が集まっている。

進行は、獣医師が戸惑うほど早い。

一気にぶっ壊された小腸は、どれだけ食べても栄養を吸収できない。

それでも食べなければ、生き物は生きてはいけない。

なのに、食べると苦しむ。

腫瘍化した胃腸に食物を入れれば、痛みや吐き気に襲われる。

そして、赤黒い液体を排出させる。

そのくせ、すぐには死なせない。

循環器と違って、消化器の疾病はとどめを刺さない。

一気にぶっ壊す癖に、じわじわと苦しめてくる。

ショック死か、多臓器不全か、餓死を待つしかないのが、

今のたれ蔵の現状だ。

 

「なんちゅーこと、するんや?!

たれ蔵が何を悪い事したっていうの?

何でこんなに苦しめるんや。」

生きろ、生きよう、治そうと始まった闘病は、

いつしか、早く死なせてやらなければと思うようになっていた。

そんな時、出てくる言葉は、怒りの言葉だ。

けれど、私の心は、実は全く怒りに満ちていない。

不思議なくらい、怒ってはいないのだ。

たれ蔵を苦しめる病さえも、たれ蔵のものだから、

悔しいけれど、憎み方が分からない。

赤黒い液体さえ、たれ蔵のものなんだから、大切なものだ。

 

私は、呪いの言葉を吐きながら、

赤黒い液体を愛おしむように拭き取った。

 

そして、何より、たれ蔵はいつも通りだ。

いつも通りに暮らしたいだけなんだ。

昨日の夕方は、思いのほか、顔色がいいじゃないか。

真っ黒だけど、顔色はいいのだ。

大好きな黄身も食べたり

 

おたまと一緒に、

たれ蔵「わーい、海苔だ、海苔だー」

と、はしゃいでパリパリ噛んだ。

ついでに、お刺身だって1切れ食べた。

 

おじさんの入浴にも、よたりながら懸命に着いて行った。

たれ蔵「たま兄ちゃん、ここは譲らないぞぉ」

たれ蔵は、いつも通りに過ごしている。

いつも通りに過ごしたいんだ。

今朝は、もう歩けない様子だ。

だけど、今日もたれ蔵は、いつも通りに過ごす。

私達は、それを守ろうと思っている。

満ちていく月に、あの子の命を捧げるように祈りながら。