去年の今ごろは、
タンポポが咲いていたのに。
おはようございます。
今年はまだ、タンポポが咲かない。
それは、チャー坊がいないせいかもしれない。
去年の今頃は、今年より寒かった気がするが、
道端には、ちらほらとタンポポが咲いていた。
3月は、タンポポとチャー坊だ。
風が冷たすぎる日、
私とチャー坊は太陽の光が集まる場所を探し回った。
「ああ、ここならあったかいな、チャー坊?」
太陽の光が集まる場所には、いつだってタンポポが咲いていた。
野良暮らしが長いチャー坊は、そんなこと知っていたのだろう。
君は、数え切れないたくさんのことを知っていたのでしょう?
チャー坊には、
厳しさと苦しさと孤独を引き換えに得た、命を繋ぐ智慧が
ぱんぱんに詰まっていた。
体はボロボロだったくせに、智慧で生き抜いてきたチャー坊は、
私が出会った猫の中で、もっとも堂々と立っていた。
そして、それと同じだけ優しかった。
その強さと優しさは息を吐くたび広がり、辺りを清らかに癒した。
タンポポさえ、チャー坊が咲かせたのかもしれない。
そう思わせる猫だった。
そんな猫のくせに、チャー坊は私に何かを問うてきた。
まるで命がけの強い意志を感じた。
それが何かが、私には分からなくて、
だから私は、必死でそれを探していたんだ。
太陽が集まる場所がどこなのかさえ知らない私に、
君ほどの猫に、どんな答えを出せるのだろうか。
私は今でも、それを考えている。
私は、チャー坊の問いに答えられたのか分からない。
ただ、君の知らなかっただろうことを一つだけ、
伝えてやれたと思う。
チャー坊、抱っこする?