台風が過ぎ去り、
気付けば9月になっていた。
9月はたれ蔵か。
その優しい色が、たれ蔵にぴったりだな。
9月はそんな穏やかな月になればいいのだけれど、
なりません。
ええ、断言できます。
なりません。
野良猫マアコは、予想通り妊婦さんになったから。
お乳も、赤く張ってきている。
出産は、9月の中旬だと思う。
最近は、インスタも更新していない。
ここでも、マアコのことを書こうとしても、
なかなか言葉が上手く見つからなかった。
だけど、だからといって何も動かず過ごしてきた訳ではない。
「マアコが妊娠しませんように」と仏壇に祈り続け、
オス猫を見かける度、「お前、マアコを妊娠させんなよ」とメンチ切ったり、
マアコを捕獲せんと企んでいたりした。
上記3つのうち、現実的なものは、3つ目だけだれども!
そんな訳で、まず始めたのは、これだ。
1、まずはこの上で食べることに慣れてもらう。
2以降は、壁を1辺ずつ設置して行き、最終的に箱状態の中で
ご飯が食べられるように馴れてもらい、
最後は、その箱に蓋を閉めて捕獲するという作戦だ。
これは、トラップシャイになった猫に対して有効な作戦だ。
そして、捕らえられる恐怖も最小限に抑えられる。
でも、金網には一切乗らないマアコさん。
ならば、上に段ボールを乗せよう!
寸足らずー!私のバカー!!
金網が丸見えだから、これもマアコにスルーされた。
こういう企みの中、私はマアコを見ていて確信した。
「バレてる」と。
「おばちゃんは、あたしを捕まえたいのよね?」と言いたげなマアコ。
そういう顔をするんだ、マアコは。
そんな中、マアコの腹はどんどん大きくなっていく。
私は焦った。
ますます言葉を失っていく。
近隣では、「野良猫に餌をやるな」と苦情を申し立てる住民が現れたことで、
今まで餌やりボランティアをしていた住民が皆、しり込み状態だ。
その点、弊社は田畑に囲まれおり、近隣住宅から離れている。
雌猫の行動範囲は、およそ半径50メートル。
ここなら、マアコに苦情を申し立てる人もいないはず。
けれど、子猫がちょろちょろするのは、決して好ましい事ではない。
避妊さえしてやれば、そう思ってもマアコはなかなか捕まらない。
最悪の場合、何日も餓えさせ捕獲機で捕獲を試みるとしても、
それでTNRをした暁に、マアコはここへ戻って来るだろうか?
猫ボランティアのSさんも
「今までも何度も一斉TNRをしていますが、
そうすると、その中には一部、もう二度と戻ってこない子も、
実際には居ます。
その子がどこかでご飯を貰えていればいいなって思うけれど、
行方を探し当てられる子は、そんなにいません。
それこそ、チャー坊ちゃんみたいな子は、少ないんです。
マアコちゃんは特に、無理に捕まえてしまうと、その後人間には近付けなくなる。
そんな気がするんです。
だから、ここなら、御社なら、
このまま寿命を全うしてもいいかもって思えちゃうんです。」
私は、それを聞いて、こう付け加えた。
「私も、マアコを見ていて、それが一番気にかかります。
苦しめるためにTNRさせることになるんじゃないか。」
けれど、「だったら、私は見て見ぬふりをします」とは続けられなかった。
それは、社会通念上、『無責任な餌やり』になるということだからだ。
そんな流れから、私は真剣に捕獲を目指していた。
TNRのためじゃない。
保護するという意味だ。
うちの子にする!
子猫は家で産んでもらう!!
マアコはうちの子にしちゃえば、今後一切、餓えさせる心配はないじゃん?!
私は恐ろしく単純だ。
マアコの心も無視をした単細胞だ。
それでも、私は言葉が見つからないままだった。
どうして?
一択の結論が出たのに、どうして言葉が見つからないんだ?
私が憑りつかれたように捕獲のテクニックばかりを勉強していたのに反し、
マアコは、以前頭を撫ぜられる程度になっていた所から後退していた。
手を伸ばすと、食べている最中でもサッと逃げる。
いやもはや、息を吸っても逃げる有様だ。
せっかく食べてるのに、何度も逃げるを繰り返す。
マアコは、恐る恐る餌に近づいていた、6月のマアコに戻っていた。
私は、それを見て我に返った。
「やーめた!」
「マアコ、おばちゃんはもう捕まえないよ。
マアコが嫌がることは、もうしない。
ゆっくり、ゆっくり、私を信じてくれればいい。」
そう決めた日、マアコは
設置した餌台の上で食べるようになった。
これが、今のマアコの答えだ。
私は当分、無責任な餌やりを続けます。
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