うめと愉快な仲間達

うめから始まった、我が家の猫模様。
犬好きな私は、チワワの夢を見ながら、
今日も癖が強めの猫達に振り回される。

未来のカプセル

2024年09月25日 | カズコさんの事

私達は、

少女みたいにはしゃいだ。


おはようございます。

土日は、カズコを連れて、どこかへ出かけるようにしている。

どこかといっても、かずこは風光明媚な行楽地へは行きたがらない。

川のせせらぎは、かずこにとっては「水がちょろちょろ流れとる」だけだし、

凛と咲く花々は、「花がぼーっと突っ立っとる」だけで、

木漏れ日は、「まっぶし!」と迷惑がる。

だからもちろん、秋の紅葉も連れては行かない。


以前は、パチンコ屋へ連れて行くのが、一番喜んだが、

今は、もう連れて行けない。

パチンコのことは忘れていないが、パチンコ台の扱い方はもう分からない。

おかげで、

買い物に連れて行くくらいしか、出かける場所が思いつからない。

車で30分圏内にある3~4軒のスーパーを日替わりで連れて行くだけ。

ワンパターンだ。

ただ、かずこは認知症だから、

同じスーパーへ何度連れて行っても、

「うわ~、わし、ここ来るの始めてやぁ。」と喜ぶものだから、

そこは非常に助かる。


かずこの眼に映る、見慣れたはんぺんと刺身とスパゲッティーサラダは、

いつだって、初めて出会うご馳走だ。

そして、どうしたって、丸くて綺麗な色の食べ物に心躍らせる。

だから実家の冷蔵庫には、いつもトマトが沢山入っている訳だが、

実は、かずこはトマトを食べない。

トマトケチャップさえ避けるくらい、トマトが嫌いらしい・・・。

なのに最近は、ゼリーにもはまっている。

「これ、綺麗やなぁ」

かずこは、ゼリーを手に持ち、まるで宝石を見つめるように

うっとりした顔をする。

周囲の買い物客から、

「このお婆さん、今までスーパーにさえ

連れて行ってもらえていなかったのかしら?気の毒に。」

と思われても仕方ないくらいの感動ぶりだ。

だけど、私はそんな時、

「うわぁ、本当に綺麗だねぇ。」

と驚いて見せるから、

「あら、娘さんもスーパーに来たこと無いのかしら?

店もない僻地から、遠路はるばる、この地へやって来たの?」

と、買い物客の想像力をさらに掻き立てているかもしれない。

ちなみに、ご想像通り、

かずこはゼリーも食べない。食感が好みではないらしい。


この日も、買い物袋にはトマトとゼリーが入っていた。

しかもなんと、ゼリーはトマトゼリー。

かずこの要望を、これ以上に叶えた逸品があるだろうか?!

しかし、

かずこは、出入り口の丸い物にも気が付いてしまった。

ガチャガチャだ。

ガチャガチャの中に入っている、青いカプセルに魅せられている。

「これ、綺麗やなぁ。どこから取ったらええんや?」

私はこの時、ドラえもんが長い年月、良い子に大人気な訳が分かった気がした。

あれは、夢を叶えてくれるロボットだから、ではない。

青くて丸いことに、人気の理由があるのだと。

もしかすると、ガチャガチャの人気を下支えしているのも、

丸いカプセルにあるのかもしれない。

だってこの時、私までもが、ガチャガチャにへばり付いていたのだから。

「ここに100円を差し込んで、ハンドルを回すんだよ。」

かずこにとって、ハンドルを回すのは、お手の物だ。

パチンコで鍛えた右手だ。

だがこの時だけは、かずこはどういう訳か、左手でハンドルを回した。

出てきた青いカプセルを手に、満足げなかずこに、

私は歓喜の追い打ちを掛けた。

「これねぇ、このカプセルを開けると、何かが入ってるんだよぉ」

「ほほぉー!なんじゃ?なにが入っとるん?」

しめしめ、喜んだ。

私は、かずこが欲しがったカプセルを握りつぶした。

そこに入っていたのは、小さな時計だった。

「うわっうわっ、時計やん?!」

「すごい、可愛い~」

スーパーの出入り口、

80代と50代の私達は、いつまでも、

少女みたいにはしゃいでいた。

楽しかったなぁ。


生きる時間が長くなるにつれ、頭ばかりがでかくなる。

まるで、この世のことが全て分かったみたいな気分になって、

そうすると、どういう訳か、不安というのは減るどころか増えていく。

私は最近、何から何まで不安で頭がパンパンだ。

どんなことも、うまく行く気がしないのだ。

それは、経験を重ねてきた証拠だ。

自分の過去の経験を引っ張り出しては、

「こうするべきか?ああするべきか?」と不安を募らせ、身動きが取れない。

大人って、つまらない。

でも実は、

これから起こるすべての出来事は、何一つ経験したことのない事だ。

どんなに経験を重ねても

未来というものは経験出来ないものだ。

同じような過去はあっても

寸分たがわぬ同じ未来なんて、きっと無い。

かずこと見た青いカプセルに、私は希望を感じた。

開けてみなければ、分からないという、曖昧で不安定な希望を。


何もかも忘れていく貴女に学ぶことは、

きっと、とても大事なことだ。


で、のんちゃんは何してるの?

のん太「ここはのんの陣地らぞ」

文句言ってる・・・・


のんちゃん、仲良くしなさい!

のん太「だって、のんの陣地らもん!」

うんちゃん、覚えるでしょ?


仲良くしなさい!

のん太「なんらよぉ。のんをみりゅな」

うんこ姉ちゃんは、とても強いことを思い出したらしい。