春の嵐は、
遠くから桜の花弁を運んで来た。
おはようございます。
強風から逃げるように足早に社内へ向かう途中、
水溜まりに、小さな花弁が3枚落ちているのを見つけた。
私の勤める会社の近くには、桜の木は見当たらない。
「ああ、川沿いに桜の木があったはずだ。
あんな遠くから、風に飛ばされてきたのか。」
せっかく花が咲いたというのに、風は何を怒っているのやら。
私は、私の髪をもぐしゃぐしゃにする風が憎らしくなって、
見えぬ風を睨んでやろうと目を見開いた。
すると、小さな花弁が、
荒れ狂う風をからかうように、ひらりひらりと舞っているじゃないか。
春の花は、なんとしたたかなのだろう。
実家のかずこも、春の嵐だ。
芽時枯れ時は、精神的に不安定になる。
特に認知症を患う人は影響を受けやすい。
爽やかな朝だというのに、起き抜けに、
「お前も、ジジィも、ぶち殺したらぁ。」
と叫びながらトイレへ歩いて行く。
「もう、目がいっちゃってるな。」
さて、今日はどう乗り切るか、あれこれ考えながら仏壇に火を灯す。
トイレから戻って来たかずこは、
仏壇に手を合わせる私の背中に罵声の矢を放ち続ける。
「お前もたいがいや。頭がおかしいわ。
こんなバカとなんて、とてもじゃないが一緒におれんわ。
頭おかしい。はよ死ね!」
私は自身を鎮めるために、ひたすら手を合わせ続けながら、
頭の中では、
この合わせた手で、かずこの脳天を思いっきりチョップする妄想が止まらない。
(ああ、殴り飛ばしてぇ。おお神よ、殴り飛ばしてぇわ!)
さすがに、手を合わせ続けるのも飽きてきて、
私は意を決して、くるりとかずこへ振り返った。
かずこは、目の周りが紅潮しており、髪はぼさぼさの落ち武者の亡霊みたいだ。
私の脳内は引き続き、チョップしてからキックして突き飛ばす妄想に進んだ。
「お前みたいなもん、半殺しにしたらぁ。」
と、かずこは私を睨んでいる。
私の妄想は、ついにチョップしてキックして突き飛ばした後の
かずこの状態にまで辿り着いた。
落ち武者の亡霊は、いとも簡単に突き飛ばされ、
独りでは立ち上がることも出来ず、ただ驚いた顔で私を見上げている。
「無理だ・・・。」
私は小さな声で呟いた。
「母さん、何をそんなに怒っとるん?」
我に返った私は、妄想の罪滅ぼしをするような気持ちで、
かずこにぴったりくっついて座り、かずこの背中を撫ぜた。
私ら母娘は、そもそも、そんなガラじゃない。
優しく励まして背中を撫ぜるような場面は、
テレビドラマに出てくる家族でしか知らない。
母親の背中を撫ぜるなんて、ハッキリ言って恥かしい。
ところが、かずこが認知症になって以来、
私は、歯の浮くような台詞や、
欧米のホームドラマばりの行動を取るようになった。
ボケたかずこには、分かりやすい言動でないと伝わらないからだ。
妄想に苦しみ亡霊と化したかずこの心を振るわせるには、
短くてキャッチーな名台詞と欧米のボディーランゲージなのだ。
コツは、女優になり切り、恥かしがらずにやるのみだ。
だから、父や我が家のおじさんには出来ない。
普通に「ごめんなさい」と言うのさえ憚る。
そんなガラじゃないんだ、私は。
けれど、そんな私でも、一度は言ってみたい言葉が幾つかある。
例えば、「おっしょはん、堪忍しておくれやす」だ。
何のドラマで聴いた台詞か覚えていないが、
我が人生で、この台詞が言える機会は、なかなかやって来ないだろう。
がしかし、
「ぼくは死にましぇん。貴方が好きだから」
これは、ボケた人には使いやすい台詞だ。
今度また、かずこが「死ね!」と言ったら、
耳に髪を掛けながら言ってみようと企んでいる。
かずこは、背中を撫ぜられながらも、まだ意味不明なことを話し続ける。
ただ少しずつ、言葉や内容が穏やかになっていくのを感じた。
「死ね!」とはもう言わない。
「わしは、はよ死にたい。」と言う。
私はかずこの背中のみならず頭も撫ぜ続ける。
落ち武者の亡霊は怒りの矢を放った後の顛末かのように
やるせなく萎んでいく。
私は、その肩を抱き寄せ、
最終的には抱きしめて撫ぜくり回していた。
もはや、ホステスに絡む酔っ払いみたいだ。
その時、かずこはようやく、ため息のように言葉を吐き出した。
「苦しいんや」
「うん、苦しいんだね。私も一緒に戦うから。」
その言葉をきっかけに、
私は、かずこのぼさぼさだった髪をちょんまげに整え直した。
やれやれと思ったが、心には棘が残る。
私は、まるで嘘つきだ。
一緒に戦うなんて言いながら、そのちょっと前まで、
かずこをチョップしてキックしてやりたいと思ってたくせに。
私は大ウソつきの偽善者だ。
その棘がチクリと刺さる。
そんな時、春の嵐に舞う花弁を見て、
狂風に遊ぶ花弁のようにしたたけであれと思い直した。
そんな我が家では、
最近、白湯がブームの白湯男子がいる!
おたま「やっぱり朝イチは白湯だ」
最近、巷でも白湯男子ってのが流行ってるらしいわね。
おたま「美容にもいいらしい」
美容ねぇ・・・
あやさん?
あや「ふん、朝はどんぶり飯かっくらってなんぼってもんよ!」
マインドが、どんどん、うんこに似て来たな?!
※皆様のブログを読み逃げが続いており、申し訳ありません。
苦しいと言うのは、きっと本音なんでしょうね。心の叫び。
そんなお母さんに対して湧き上がる、色々な思いと感情を拾い、考え、そして上手に選別してるおかっぱさん素晴らしいと思います。
どうかご無理されませんように。
引き続き猫さまらと仏のオジサンにたくさん癒されてくださいね。
あと、桜の花弁にも♥
桜の季節も過ぎようとしていますね。
この時期、桜吹雪に狂喜乱舞するかあちゃんです🌸
かずこさんへの言葉掛けや、ボディーランゲージを偽善者と感じ、棘が刺さるなんて思わないで〜!!
って心の中で叫んでいたら、おかっぱちゃんはちゃんと自己解決していてホッとしました✨
「強風に遊ぶ花弁のようにしたたかであれと思い直した」
この言葉にかあちゃんは安堵しました。
おかっぱちゃんの置かれた場所で、おかっぱちゃんの言うしたたかを偽善と感じる大人は一人もいないと思います。
でもおかっぱちゃんのしたたかは、なかなか高度だとも思うな。
そのしたたかを、我の強さ故に自分の中に落とし込めなくて、不要な争いをする人の方が多数だと思うから。
私も多数派の一人だから、おかっぱちゃんを心から凄いと思う✨
かく有りたいと思う✨
ああ、もう本当に、本当に辛いです。
でも何でしょう。おかっぱさんは
ご自身で選んだ道ではないにせよ、
海千山千の猛者だから、お母様を許しながら、
愛していらっしゃるんですよね。
その方法が切なくも尊いように思えます。
私も母の闘病中は、本来の母ではなく、
我が儘を言い、周囲を困らせ、それは
死を間近に控えて恐怖からだったにしろ、
正直、もう終わりにしたいな、と思った
事を思っていました。親不孝な娘です。
おかっぱさんのように、気づきがあって、
寄り添っていけるのは、本当に尊敬します。
おたまちゃん、白湯ですか。意識高い系
女子のようですね(笑)
あやさんのパワーはうんちゃん譲り^^
癒やされますよね。
おかっぱさんがちょいちょい入れて来る
思いもよらないセリフが、絶妙に緊迫感から
解放してくれる。
笑うとこじゃない!って思っていても
つい笑ってしまう。
おかっぱさんのその文才は、持って生まれたもの
なんだろうか・・・って、いつもあたしは感心し
心底羨ましさを感じてる。
本当に頭の良い人だなぁってあたしは思うよ。
そうやって、カズコさんと共に、真剣に生きてるから
今この時、どうすることが一番良いのかが
分かるんだよね、きっと。
あたしとかずえさんとの闘いなんて
今のおかっぱさんとカズコさんとは比べ物に
ならないくらいお粗末だったと思う。
ちっちぇちっちぇ人間だったと思わされるよ。
そんでね、おかっぱさんが己を偽善者だと思うことが
更におかっぱさんを、人として更なる高みへ
連れて行ってるんじゃないか、とも思う。
だけど本当は、そんな風に思わなくったっていい。
貴女は、本当に素晴らしい人だ。
下品で臆病でおっちょこちょいですっとこどっこいの
最高の人だ!ってあたしは思ってるよ。
怒っちゃったり、苛立っちゃうことも、よくあるんです。
でもやっぱり、笑顔で優しく接するほうが、
かずこさんの様子がうんと穏やかになるんですよね。
結局、その方が解決が早いんですよね。
ありがとうございます。
なんだかんだ、かずこはカラッとしたノリのいい人だから、
案外楽しくやれるんですよね。
こんのやろうめって時は、美しい物を見たり、
可愛い物に触れると癒されますね。
桜吹雪の舞う季節、こう書くと、
あの美しいさくらちゃんやふーちゃんが脳裏に浮かびます。
あっ、まうどんのコロンちゃんもね(笑)。
私、かずこや父さんと向きあっている時、
ふっと自分の心の在り様を探っちゃうんです。
笑顔の裏の自分は、ほんとはどんな顔してんだ?て。
子供ん頃から、自分の奥の奥の姿を探し当てちゃって、
うわ~なんて汚い心だろうか!ってびっくりちゃって。
消そう、そんな自分消したいって思っていたけど、
この歳になって、ちょっとしたたかさを知ったのかもしれんですね。
少しずつ、地球の歩き方を学んでいる原人です(笑)。
かあちゃん、いつもありがとうございます。
私ね、よく、かあちゃんのさりげない言葉にすっと救われる時があります。
その都度スゲーって思う。
それこそ、かくありたいなって思ってます♡
ひいなさんは、親不孝ではないです、絶対。
今でも、辛い頃を思い出して胸を痛めるほど、
真剣に向き合い逃げずに、お母様を守り抜いたんですから。
それも、一番楽しいはずの若い娘さん時代に。
私はそんな年の頃は、逃げに逃げまくってました、何もかも。
この歳になってようやく、向きあえるようになった感じです。
親と向きあいながら、実は己と向きあっているんですよね。
それがほんと、嫌な自分が出てくる出てくる、じゃんじゃん(笑)。
そしてもちろんと言うべきか、
「もう終わってくれー」って心の中で叫ぶ日もあります。
ひいなさんの、その時の気持ちは、決して悪いことじゃない。
その心に気付くことが、とても尊いんだと思います。
常日頃、ひいなさんの言葉を拝読していると、
いろんことに気付ける思慮と懐の深さに感服します。
それは、ひいなさんが様々な経験の中で、ご自身が築いてきた魅力なんだと思います。
そうなんです。意識高い系でしょ?
あさイチで、催促されて、正直鬱陶しい(笑)。
ほんと、あやがどんどん、うんこに見えてくるです~。
ほんとに、ぶち殺したらぁとかね、緊迫する場面なんですが、
かずこだと、なぜかネタになるというね。
記事の内容、すべて克明な描写しているだけなんですもんね(笑)。
ままんに笑ってもらえて、本望です!
ケアマネさんにも、ネタとして話すんだけど、
ケアマネさんも、下向いて笑ってたよね。
これは、かずこさんのキャラのおかげってとこも
あるんですよね~。
かずこは、もはや、私の書くことへのミューズです(爆)。
ままんとかずえさんの今のその関係が、私にとっての目標です。
そりゃもう、一緒に暮らしていれば、余裕なんて無くなりますよ。
私はまだ、逃げ場があるし、まだまだ全然、
これからが本番だっていう、序の口に立っていると思うんです。
さぁ、真価が問われるのはこれからだぞって覚悟してますが、
たぶん、己のスットコドッコイが暴走すると思うですよね~。
ダメ元で七転八倒した挙句、私じゃない誰かが、
かずこを導いてくださるのではないかなって。
そういうのも含めて、予想しております(そこは賢いオレ?!爆)
ままん、いつもありがとうございます。
ままんに褒められるって、嬉しいんだよ~イエーイ。
おれ、これからも自信をもって、
失敗失態をブチかましながら、頑張るー!
とにかく、腐らずに動き続けたいと思っております!!(半べそかきながらね笑)
毎回、毎回、おかっぱさんの文章から現実を見ています。 お母様の苦しみやお父様の痛み等を、あれこれ考えてやっている姿が浮かびますよ。
ケアマネさんも心強いでしょね。ご家族が頑張ってる姿が一番ですもの!
私は全て妹に任せて、見ない!口出ししない!を徹底しております。これも自分だから付き合っていきます!
老夫婦の暮らしのサポートは、やはり現実は大変な事も
多いですね。
次から次へと事件が起きる(笑)。
死にゆく時間が、こうして加速していくのかもですね。
ほんと、ケアマネさんってお仕事も大変でしょうね。
色んな家庭のいろんな事情に関わるんですもんね。
どんとこい姐さんで、ほんと心強いんです。
そして、この姐さんのお家、動物大家族なんですよ~(笑)。
最終的には、馬も飼いたいらしい!
妹様にとっては、きっとチコさんの存在も
心強いと思うんですよね。
案外、こういう案件(親の介護)って
ワンオペの方が動きやすい面もあります。
その流れを姉ちゃんにも知っておいてもらうってだけで、
なんか気持ちが軽くなったりすると思います。