maria-pon

お着物Enjoy生活からバレエ・オペラ・宝塚etcの観劇日記に...

ニコラ・ル・リッシュの「ボレロ」 ③

2010-08-18 11:06:46 | BALLET
本日のメイン・イベント。
「ボレロ」

赤い台のセンターに立つニコラ。
音楽(録音)が始まると、暗闇の中、手、だけにスポットが当たります。
ス――ッと伸びた指、空気をスッと軽やかに裂いて滑る動き。
正確に刻まれる膝と下半身が刻むリズム。
端正な、完璧にコントロールされたそのリズムに引き込まれていると、だんだんとライトが全体に当たって、
黒い足首までのパンツ姿のニコラのむき出しになった上半身が現れます。
うーん。大きい・・・。
永遠の青年・・・どこかナチュラルなどこにでもいそうな、(でもどこにもいない)青年らしい風貌と若々しい量感のある引き締まった体躯がプロフェッショナルなダンサーとして洗練されていながらも、生身の人間を感じさせるのが彼の魅力でもあり、持ち味でもあります。
その白い大きな身体が、踊りが進み、音楽が高まるにつれて中心部からほんのりと赤みが増してくるあたりにあぁ、ニコラだなぁ、と。
かといって、破綻していくほどに自分をたたきつけていく、というわけではなく、充分に余裕を持ってコントロールしきっていながらにして、しっかりと熱い、という。
彼らしい、本当に魅力的なボレロ、でした。

センターで踊る”メロディー”と周囲を囲む”リズム”の呼応する様が、この「ボレロ」のもう一つの見どころでもあるのですが、ほっそりとした東バダンサーの中にあって、ニコラは一人、異様な大きさでもって君臨する王様、でしたね。
ただ、例えばシルヴィー・ギエムのようなシャーマン的な要素はあまりなく、最後まで神がかったり、天と交信(笑)することはなく、明らかにこの集団を率いるリーダーとして、場を熱し、盛りたてていく・・・という感じに見受けました。

彼を囲む”リズム”隊、ものすごい目力で、しっかとニコラを見据えて離さない平野さん、抜群の身体能力によるキレの良い動きで場を引き締める松下さん。
この二人がまず始動して、脇を支え、そこに長瀬さん、宮本さんが加わり・・・。
最後、ニコラに正面から向き合い、客席に後ろ姿を見せるセンターポジションに位置していたのは高橋さん。
ニコラを見ながら、彼の後姿もセットでフォローしてしまいました^^

最後まで一体感が崩れず、カーテンコールでも、気さくに左右の平野さん、松下さんと肩を組むニコラ。
この日が3日間の公演の千秋楽、ということもあってか、スタンディングオベーションの興奮がようやくおさまり、幕が下りたあと、幕のあちら側から男組の(という感じでしたので^^;)歓声が聞こえてきました。
ニコラ兄貴と仲間たち公演(笑)
お人柄どおりの踊りで、とてもよかったです。

「ボレロ」は、踊り手の内面全てが出ますね。
ベジャールがメロディーを踊ることを許したダンサーを振りかえると、男性はどこか伸びやかな青年らしさのある人。
(ゆえに、硬質なルグリや内に向かう芸風が魅力のジル・ロマンは望んでも許可されず)
女性はちょっと巫女的な要素のある大柄なタイプ?(エリザベット・ロス、シルヴィー・ギエム、上野水香ちゃん・・・あ、男性ですが、シャーマン的、ということならジョルジュ・ドン、そして首藤さんもこのカテゴリー?)

今回、祭典会員よりも、アッサンブレ会員の先行予約が優先される、と聞き、シムキンくんのドン・キホーテも同様、ということでしたので、思い切って(そのために・笑)アッサンブレの会員に申し込みましたが、その甲斐あっての5列目センター。
ゆうぽうとは今回オーケストラ・ボックスがなかったので、実際にはその前に4列あったのですが、平面の4列の後の傾斜の入った5列目でしたので、センターでもとても見やすく、堪能できました。




ニコラ・ル・リッシュの「ボレロ」 ②

2010-08-18 10:30:58 | インポート
*編集画面の調子が悪いので、新規に記事を立てました。

まずは、「ギリシャの踊り」から・・・

東京バレエ団恒例の、夏のヨーロッパツアーの成果でしょうか。
潮騒の音をバックに、白い少し裾の広がったパンツ姿の男性と黒い背中が開いてフロントはボートネックの黒のレオタード姿の女性の群舞が静かに始動。
うっすらと日焼けした団員もいますが、最初から目を奪われたのが、男性ダンサーの充実。
「ギリシアの踊り」と言えば、この作品が踊りたくて東バに入団したようなものです、とかつて語ってくれたプリンシパルに就任まもなく若くして退団してしまわれた中島周さんの端正で伸びやかな音楽性豊かな踊りがまだ記憶に新しいので、正直、後藤さんがソロか・・・・という時点でテンションが下降気味だったのですが(ゴメンナサイ、後藤さん!)いやいやどうして、目を惹く男性ダンサーが舞台上に揃い踏み・・・で、楽しく観ることが出来ました。

まず、宮本さんと長瀬君の並びが新鮮。
ほっそりとしなやかな身体の線の美しさとどこか耽美的な雰囲気のある長瀬君と、かっちりとした造型で、着実な踊りを見せながらもどこかで失速しがちだった宮本さんが、この踊りでは、その緊張感を解くことなく、きれいに踊り切っていることに感心。

平野さんと高村さんのPDDは、東バ一の役者魂?(笑)を持つ平野さんと、すでにベテランの域に達しながらもキュートな役作りに定評のある高村さん、踊りの質や身体バランスがスゴク合う、というわけではないのですが、二人とも表情豊かであるというところに共通点が^^?

ハサピコお二人は華やかさと安定感でさすがはベテランプリンシパルの輝き。
木村さんと美香さんって、昔から、高岸さん斎藤さんペアの2番手どころで主役を務めていらしたベテランですが、あるときを境に大きく芸風がかわったように思います。
木村さんは、もともとテクニックに優れていて、端正でシュアな踊りに定評があったものの、どこか物堅い感じがつきまとっていましたが、どこかで殻を破られたようで、いい意味でのけれん味が出てきて、本当に観ごたえのあるダンサーです。
細身の若手が多い中、引き締まって陰影のある上半身にきれいについた筋肉は大人の存在感(?)を示してさすが、です。
吉岡さんは、その美貌、透明感は時に侵食されることなく不動なれど、エレガンスだけでない、何か個性的なものを、振付家、演出家の求めに応じて引きだして見せることのできる不思議な個性の持ち主。
今回は、長い手脚をきれいに見せた難しい技巧的なリフトをきれいに決めてくれました。

全体を通して印象に残ったのは、高橋竜太さん。
踊りに、振り、だけではない空気感や作品のスピリットを繊細にひとつひとつの動きに込めている感じと、長身ではないのですが細くて長い手足に華があり自然と目が行きます。
女性では、乾さん。もともとクールビューティで、着実な安定感のある踊りの彼女ですが、今回、皆と同じ衣装でも、どこか大人の女性らしいエレガントな雰囲気が漂って、今までよりも一層ムーブメントが洗練されていたように感じました。
今回、長いヨーロッパ・ツアーのあと、ということで、団員にも色々と経験や感じることがあって、それぞれ進化していらっしゃるのだろうな・・・と頼もしくさえ思えました^^

最後、また潮騒をバックに群舞で終わるところまで、ニコラの「ボレロ」のおまけか何かのようにあまり期待しないで観ていたのに、すっかり満足してしまいました^^
夏・太陽・風。。。って素晴らしい。
外の猛暑で、もう夏は結構・・という気分だったのが一新(笑)



休憩をはさんで「ドン・ジョバン二」

その場にはいない幻のドン・ジョバン二を思って、女性ダンサーたちが思い思いのソロを次々に繰り出します。
ヴァリ2の佐伯さんの伸びやかさ、4の西村さんのしなやかさはもとより、あまり好みではなかった(失礼!)奈良さんのスッキリした踊りのラインの爽快さが印象的でした。
ヴァリ6では翌週シムキンくんとの「ドン・キホーテ」で主役を務める小出さんが登場。
相変わらず手首から先のフォルムが美術工芸品のように美しい・・・。
ヴァリ3でお茶目な高村さんと艶やかな井脇さんが、お互い関係なく(笑)それぞれマイペースで(そういう振り、なんですが)踊っているのがステキ。
女性陣は全員揃いの短いフレアスカートつきのピンクのレオタード姿なのですが、時々、白いロマンティックチュチュのシルフィードが横切ります(笑)
これは完璧バレリーナ体型・お顔立ちの吉川留衣ちゃん。
ルグリ先生の公開レッスンでもシルフィードを指導され、ルグリ先生に舞台の上手から下手まで流れるようなリフト移動で本当の妖精のようだった彼女。
そのうち、本公演で、シルフィードの主役を観てみたいバレリーナさんでもあります。
リラックスしたムードの可愛らしくて楽しい演目。