シルヴィ・ギエム・オン・ステージ2011
HOPE JAPAN TOUR Aプロ
10月23日(日) 3:00p.m. at 東京文化会館
の感想です
【第1部】
■「白の組曲」
振付: セルジュ・リファール
音楽: エドゥアール・ラロ「ナムーナ」からの抜粋
東バのレパートリーのひとつで、何度か観ていますが、ゲストに外国人男性ダンサーを配していたことが
多かったような・・・?
今回、純東バキャストで観ると、なんだか新鮮。新鮮なのは、背景がすっかり黒で統一され、白いバレエであることが明確に強く打ち出されているせいもあるのかも?
シエストの並びが 乾友子さんセンターで嬉しい!もともとクール・ビューティで、端正な踊りをする彼女には注目していましたが、ここ2~3年、あでやかさが増していらしたような。
高木綾さんの安定感、、渡辺理恵さんのスタイルの良さにも満足。
テーム・ヴァリエ(パ・ド・トロワ)はスレンダーな田中結子さんを柄本弾さんがソフトにサポート。
今回弾さんがPDDの目立つポジションに多用されていましたが、踊りが見違えるほどしっかりしていて持ち前の容姿の甘さが引き立ちました。ポスト高岸さんを目指してほしいです・・・。
木村さんがソロで、力強いテクニックを披露。木村さんも端正さとテクニックがまず目立っていた若いころより、今の方が押し出しが強くて華がありますね。
セレナードの小出領子さんは持ち前の音楽性と安定感で盤石。
プレスト(パ・ド・サンク)の女性1人岸本夏未さん、一瞬 井脇さんかと思いました。体型が似ているのとはっきりとした顔立ちの美人だからかしら?下手に高橋竜太さん長瀬直義さん上手に小笠原亮さん、宮本祐宜さんと分かれましたが、長瀬さんのエレガントで伸びやかなアームスの使い方に目を惹かれました。
高橋さんはキレのある踊りと軽やかで飄々とした存在感が好きなのですが、今回、なぜか空中でのジャンプの軸が斜めっていたような・・・着地はキレイでしたけど。
シガレットの吉岡美佳さん、この方も年齢を超越していますね・・・。前髪あり、のヘアスタイルが残念。
モダンでダウンヘアのときは良いけれど、こういうバレエ・ブランでは、すっきりシニヨンのほうが素敵なのに・・・と一瞬思ったものの、やはり吉岡さんの存在感はステキ!
一瞬たりとも舞台の上でバレリーナでない瞬間がないんですよね・・・。いい意味で全く生活感がないダンサーで。やっぱり好きです。
マズルカの 後藤晴雄さん、ヘアスタイルがいつも残念なのですが、日本人離れした筋肉質の体型としなやかな踊りは健在。
アダージュ(パ・ド・ドゥ)は上野水香さんと柄本弾さんという、新鮮な並び。
近年、堂々とプリマの風格の感じられる水香さんと、甘いマスクの弾くん、というこの二人、なかなか良いかも。華のあるPDDでした。
フルートは、しなやかさと妖艶さが魅力的な西村真由美さん。彼女は舞台の上で表に出すパワーに結構ムラのある印象がありますが、今回は良い感じにラストの大事な役どころを務めてくれました^^
いつのまにか、東京バレエ団、こういう平板になりがちな演目(失礼!)でも、テクニックの確かさとソリストの個性で魅せてくれるバレエ団になっていたのですね。
・・・と、今更のように、東バ愛が胸に沸き起こった演目でした
■「マノン」より第一幕(寝室)のパ・ド・ドゥ
振付: ケネス・マクミラン
音楽: ジュール・マスネ
何度も観たことのある、シルヴィ・ギエムのマノン・・・。
変わらぬ美しさですが、いつものような情熱に導かれた衝動やアクロバティックなリフトの鮮やかさに息をのむ、というよりは、ギエムの超絶的な身体能力がこの技巧的なPDDの振付を如何にゆったりと楽しんでいるか・・・ということに目を見開かされました。
ムッルの踊りが全く重力を感じさせず、ほっそりとした身体でギエムの動きに連動し、呼応する様は、恋人通しと言うよりも、信頼感と友愛を感じさせ・・ってわたくしだけでしょうか^^;?
いたずらっぽく微笑んで戯れるマノンが印象に残りました。
このシリーズってHOPE JAPANがメインタイトルになる前は「さよならトウシューズ」という副題がついていたのですよね・・・。
こんなに軽やかに、マノンをみせて、トウシューズを履いたレパートリーを封印してしまうなんて、勿体ない・・・LASTマノンという実感が正直わきません・・・
■「スプリング・アンド・フォール」よりパ・ド・ドゥ
振付・装置・衣装・照明: ジョン・ノイマイヤー
音楽: アントニン・ドヴォルザーク セレナーデホ長調op.22
吉岡美佳さんと高岸直樹さんのPDD!
嬉しい・・・
東バのプリマが齊藤友佳理さんと吉岡さんの2TOP体制だった頃、なぜか齊藤さんには高岸さん、吉岡さんには木村さんがパートナーと決まっていて。
華やかでアポロニックな高岸さんと透明感のある優美な吉岡さんの組み合わせを熱望していたわたくしにとって、この演目での2人のPDDは・・・
本当に嬉しいことでした。
高岸さんも、副芸監ポジで、少しずつダンサーとしてのポジションを若手に譲っていらっしゃるご様子?だけあってウエストまわりが昔よりは貫録が出てきたようにも思いますが(?)、華やかな存在感が変わらないのは流石です。
吉岡さんはもう、超越されているようで、このまま美魔女ダンサーとして活躍し続けていただきたいです。
【休 憩】
―第2部―
■「田園の出来事」
振付: フレデリック・アシュトン
音楽: フレデリック・ショパン
編曲: ジョン・ランチベリー
初演は、1976年。今回、イスライエフ家の当主を踊り、振付指導も行うアンソニー・ダウエル氏が、
初演のベリヤエフであったということが感慨深いですね。
装置・衣装は、ナショナル・バレエ・オブ・カナダからの貸し出しだそうで、何重にもなった淡いベージュの別荘と遠景の装置、アイボリーのレースをふんだんに使い、水色のサテンリボンが優雅なナタ―リヤの衣装を始め、淡いパステルのシフォンを重ねたスカートのヴェラの衣装など、なんとも素敵。
1850年、イスライエフ家の別荘。
少年コ―リアの家庭教師として雇われた学生ベリヤエフが、一家の平穏を乱す・・・
原作はツルゲーネフ。
老いた資産家イスライエフ氏には2人の子供と美しい後妻がいて、夏の別荘で平和な日々を送っている。
友人ラキティンは若くて優雅なナタ―リヤを崇拝。
そこにコ―リアの家庭教師、スマートな学生ベリヤエフが訪れる。
互いに惹かれあうナタ―リヤとベリヤエフ。無邪気なコ―リアはベリヤエフが大好き。
思春期を迎える養女のヴェラは密かにベリヤエフに憧れている。
2005年のギエムの日本ツアーで、やはりヴェラを踊って、ギエムと対等に渡り合ったと話題になった小出さんが今回もまたキャスティングされていますが、今回は小出さんだけでなく、コケティッシュな小間使いカーチャの奈良春夏さん、元気いっぱいの無邪気な子供をわざとらしさのかけらもなく、存在感たっぷりにい踊り切った松下裕次さんなど、東バキャストもギエム・ダウエル・ムッルの錚々たるメンバーに臆することなく繊細かつ大胆に絡み合っていて完成度の高い舞台でした。
ナタ―リヤとベリヤエフのつかの間の愛の発露のPDDが流麗で美しい。
その間に間に挿入される挿話、篭に入った苺をベリヤエフの口に入れてからかうカーチャ、
ヴェラの真摯な告白と、いなしながらも思わず応えてしまいそうになるベリヤエフと
それを見かけてショックを受け、ヴェラを厳しく叱責してしまうナタ―リヤ。
ムッルが、カーチャと戯れ、ヴェラに憧れられ、ナタ―リヤに心からの憧れから来る恋心を捧げる天然タラシ男(笑)を好演。
3人の女性のポジションと美質の個性を明確に打ち出すそれぞれのPDDが味わい深い。
ベリヤエフが屋敷にいる、そのことだけでも浮き立つ心がナタ―リヤの美しさを増し、ラキティンが思わず彼女を口説こうとしてしまう・・・など、ナタ―リヤとベリヤエフを巡る人々の心のざわめき。
そこに、ボールや凧を手にしたコ―リアの、活発に遊ぶ様子をジャンプや回転の連続とボール遊びを組み合わせたアシュトンらしいさりげない超絶技巧のパを松下さんがダイナミックに踊り切り、客席から思わず大きな拍手。
冒頭で、イスライエフ氏の年齢を示唆する、鍵をなくして大騒ぎの場面などでも、奈良さんが今までのモダンで見せたクールでシャープな持ち味から一変した表情でコミカルでどこか暢気なカーチャとしてイキイキと息づいていて、驚きました。こんな演技が出来る人だったとは!
この2人がとにかく良かったです。
ヴェラの小出さんは、叱られた後、逆に陶酔的なナタ―リヤとベリヤエフの踊る場面を目撃し、屋敷中を呼び立て、養母を糾弾。
大人として、彼女が何を言っているのやら・・・ホホ・・・と取りつくろい、その場を収めるギエムとなじる小出さんは6年前の驚きをそのまま踏襲してはいるものの、小出さんに多少の貫録が^^;
ベリヤエフも仕方なく澄ましているものの、ラキティンが目ざとくボタンホールにナタ―リヤが挿したサーモンピンクのカーネーションを指さします。
彼ら2人は屋敷を去る旅支度をし、何のことやらわからない少年コ―リアは嘆き、全てを知って、大人の度量で静かに飲み込む父は息子の肩に手をやり、なだめて連れて行きます。
さすがにダウエルさんはさりげなくも味わい深い存在感。
広間に1人・・・
ナタ―リヤが肩を震わせて静かに嘆く。
そこに別れのあいさつのために1人戻ってきたベリヤエフ。そっと彼女の肩から床に流れる水色のリボンを手にとって、膝まづいて口づけます。
それでも気付かないナタ―リヤ。ベリヤエフは上着のボタンホールに挿しかえていたカーネーションをそっとはずし、床に置いて去ります。
そこで気配を感じて振りかえったナタ―リヤの目に、彼がいた印の花が。
手にして舞台中央で遠くを見るギエム・・・・
なんとも奥ゆかしい余韻を残した舞台でした。
フリーランスのピアニスト、ケイト・シップウェイさんのショパンが、しっとりとしてとても良かったです。
香り高く、人生の一瞬の美しい一時が、その人の一生を彩り続けるであろうというメッセージを感じたことでした
HOPE JAPAN TOUR Aプロ
10月23日(日) 3:00p.m. at 東京文化会館
の感想です
【第1部】
■「白の組曲」
振付: セルジュ・リファール
音楽: エドゥアール・ラロ「ナムーナ」からの抜粋
東バのレパートリーのひとつで、何度か観ていますが、ゲストに外国人男性ダンサーを配していたことが
多かったような・・・?
今回、純東バキャストで観ると、なんだか新鮮。新鮮なのは、背景がすっかり黒で統一され、白いバレエであることが明確に強く打ち出されているせいもあるのかも?
シエストの並びが 乾友子さんセンターで嬉しい!もともとクール・ビューティで、端正な踊りをする彼女には注目していましたが、ここ2~3年、あでやかさが増していらしたような。
高木綾さんの安定感、、渡辺理恵さんのスタイルの良さにも満足。
テーム・ヴァリエ(パ・ド・トロワ)はスレンダーな田中結子さんを柄本弾さんがソフトにサポート。
今回弾さんがPDDの目立つポジションに多用されていましたが、踊りが見違えるほどしっかりしていて持ち前の容姿の甘さが引き立ちました。ポスト高岸さんを目指してほしいです・・・。
木村さんがソロで、力強いテクニックを披露。木村さんも端正さとテクニックがまず目立っていた若いころより、今の方が押し出しが強くて華がありますね。
セレナードの小出領子さんは持ち前の音楽性と安定感で盤石。
プレスト(パ・ド・サンク)の女性1人岸本夏未さん、一瞬 井脇さんかと思いました。体型が似ているのとはっきりとした顔立ちの美人だからかしら?下手に高橋竜太さん長瀬直義さん上手に小笠原亮さん、宮本祐宜さんと分かれましたが、長瀬さんのエレガントで伸びやかなアームスの使い方に目を惹かれました。
高橋さんはキレのある踊りと軽やかで飄々とした存在感が好きなのですが、今回、なぜか空中でのジャンプの軸が斜めっていたような・・・着地はキレイでしたけど。
シガレットの吉岡美佳さん、この方も年齢を超越していますね・・・。前髪あり、のヘアスタイルが残念。
モダンでダウンヘアのときは良いけれど、こういうバレエ・ブランでは、すっきりシニヨンのほうが素敵なのに・・・と一瞬思ったものの、やはり吉岡さんの存在感はステキ!
一瞬たりとも舞台の上でバレリーナでない瞬間がないんですよね・・・。いい意味で全く生活感がないダンサーで。やっぱり好きです。
マズルカの 後藤晴雄さん、ヘアスタイルがいつも残念なのですが、日本人離れした筋肉質の体型としなやかな踊りは健在。
アダージュ(パ・ド・ドゥ)は上野水香さんと柄本弾さんという、新鮮な並び。
近年、堂々とプリマの風格の感じられる水香さんと、甘いマスクの弾くん、というこの二人、なかなか良いかも。華のあるPDDでした。
フルートは、しなやかさと妖艶さが魅力的な西村真由美さん。彼女は舞台の上で表に出すパワーに結構ムラのある印象がありますが、今回は良い感じにラストの大事な役どころを務めてくれました^^
いつのまにか、東京バレエ団、こういう平板になりがちな演目(失礼!)でも、テクニックの確かさとソリストの個性で魅せてくれるバレエ団になっていたのですね。
・・・と、今更のように、東バ愛が胸に沸き起こった演目でした
■「マノン」より第一幕(寝室)のパ・ド・ドゥ
振付: ケネス・マクミラン
音楽: ジュール・マスネ
何度も観たことのある、シルヴィ・ギエムのマノン・・・。
変わらぬ美しさですが、いつものような情熱に導かれた衝動やアクロバティックなリフトの鮮やかさに息をのむ、というよりは、ギエムの超絶的な身体能力がこの技巧的なPDDの振付を如何にゆったりと楽しんでいるか・・・ということに目を見開かされました。
ムッルの踊りが全く重力を感じさせず、ほっそりとした身体でギエムの動きに連動し、呼応する様は、恋人通しと言うよりも、信頼感と友愛を感じさせ・・ってわたくしだけでしょうか^^;?
いたずらっぽく微笑んで戯れるマノンが印象に残りました。
このシリーズってHOPE JAPANがメインタイトルになる前は「さよならトウシューズ」という副題がついていたのですよね・・・。
こんなに軽やかに、マノンをみせて、トウシューズを履いたレパートリーを封印してしまうなんて、勿体ない・・・LASTマノンという実感が正直わきません・・・
■「スプリング・アンド・フォール」よりパ・ド・ドゥ
振付・装置・衣装・照明: ジョン・ノイマイヤー
音楽: アントニン・ドヴォルザーク セレナーデホ長調op.22
吉岡美佳さんと高岸直樹さんのPDD!
嬉しい・・・
東バのプリマが齊藤友佳理さんと吉岡さんの2TOP体制だった頃、なぜか齊藤さんには高岸さん、吉岡さんには木村さんがパートナーと決まっていて。
華やかでアポロニックな高岸さんと透明感のある優美な吉岡さんの組み合わせを熱望していたわたくしにとって、この演目での2人のPDDは・・・
本当に嬉しいことでした。
高岸さんも、副芸監ポジで、少しずつダンサーとしてのポジションを若手に譲っていらっしゃるご様子?だけあってウエストまわりが昔よりは貫録が出てきたようにも思いますが(?)、華やかな存在感が変わらないのは流石です。
吉岡さんはもう、超越されているようで、このまま美魔女ダンサーとして活躍し続けていただきたいです。
【休 憩】
―第2部―
■「田園の出来事」
振付: フレデリック・アシュトン
音楽: フレデリック・ショパン
編曲: ジョン・ランチベリー
初演は、1976年。今回、イスライエフ家の当主を踊り、振付指導も行うアンソニー・ダウエル氏が、
初演のベリヤエフであったということが感慨深いですね。
装置・衣装は、ナショナル・バレエ・オブ・カナダからの貸し出しだそうで、何重にもなった淡いベージュの別荘と遠景の装置、アイボリーのレースをふんだんに使い、水色のサテンリボンが優雅なナタ―リヤの衣装を始め、淡いパステルのシフォンを重ねたスカートのヴェラの衣装など、なんとも素敵。
1850年、イスライエフ家の別荘。
少年コ―リアの家庭教師として雇われた学生ベリヤエフが、一家の平穏を乱す・・・
原作はツルゲーネフ。
老いた資産家イスライエフ氏には2人の子供と美しい後妻がいて、夏の別荘で平和な日々を送っている。
友人ラキティンは若くて優雅なナタ―リヤを崇拝。
そこにコ―リアの家庭教師、スマートな学生ベリヤエフが訪れる。
互いに惹かれあうナタ―リヤとベリヤエフ。無邪気なコ―リアはベリヤエフが大好き。
思春期を迎える養女のヴェラは密かにベリヤエフに憧れている。
2005年のギエムの日本ツアーで、やはりヴェラを踊って、ギエムと対等に渡り合ったと話題になった小出さんが今回もまたキャスティングされていますが、今回は小出さんだけでなく、コケティッシュな小間使いカーチャの奈良春夏さん、元気いっぱいの無邪気な子供をわざとらしさのかけらもなく、存在感たっぷりにい踊り切った松下裕次さんなど、東バキャストもギエム・ダウエル・ムッルの錚々たるメンバーに臆することなく繊細かつ大胆に絡み合っていて完成度の高い舞台でした。
ナタ―リヤとベリヤエフのつかの間の愛の発露のPDDが流麗で美しい。
その間に間に挿入される挿話、篭に入った苺をベリヤエフの口に入れてからかうカーチャ、
ヴェラの真摯な告白と、いなしながらも思わず応えてしまいそうになるベリヤエフと
それを見かけてショックを受け、ヴェラを厳しく叱責してしまうナタ―リヤ。
ムッルが、カーチャと戯れ、ヴェラに憧れられ、ナタ―リヤに心からの憧れから来る恋心を捧げる天然タラシ男(笑)を好演。
3人の女性のポジションと美質の個性を明確に打ち出すそれぞれのPDDが味わい深い。
ベリヤエフが屋敷にいる、そのことだけでも浮き立つ心がナタ―リヤの美しさを増し、ラキティンが思わず彼女を口説こうとしてしまう・・・など、ナタ―リヤとベリヤエフを巡る人々の心のざわめき。
そこに、ボールや凧を手にしたコ―リアの、活発に遊ぶ様子をジャンプや回転の連続とボール遊びを組み合わせたアシュトンらしいさりげない超絶技巧のパを松下さんがダイナミックに踊り切り、客席から思わず大きな拍手。
冒頭で、イスライエフ氏の年齢を示唆する、鍵をなくして大騒ぎの場面などでも、奈良さんが今までのモダンで見せたクールでシャープな持ち味から一変した表情でコミカルでどこか暢気なカーチャとしてイキイキと息づいていて、驚きました。こんな演技が出来る人だったとは!
この2人がとにかく良かったです。
ヴェラの小出さんは、叱られた後、逆に陶酔的なナタ―リヤとベリヤエフの踊る場面を目撃し、屋敷中を呼び立て、養母を糾弾。
大人として、彼女が何を言っているのやら・・・ホホ・・・と取りつくろい、その場を収めるギエムとなじる小出さんは6年前の驚きをそのまま踏襲してはいるものの、小出さんに多少の貫録が^^;
ベリヤエフも仕方なく澄ましているものの、ラキティンが目ざとくボタンホールにナタ―リヤが挿したサーモンピンクのカーネーションを指さします。
彼ら2人は屋敷を去る旅支度をし、何のことやらわからない少年コ―リアは嘆き、全てを知って、大人の度量で静かに飲み込む父は息子の肩に手をやり、なだめて連れて行きます。
さすがにダウエルさんはさりげなくも味わい深い存在感。
広間に1人・・・
ナタ―リヤが肩を震わせて静かに嘆く。
そこに別れのあいさつのために1人戻ってきたベリヤエフ。そっと彼女の肩から床に流れる水色のリボンを手にとって、膝まづいて口づけます。
それでも気付かないナタ―リヤ。ベリヤエフは上着のボタンホールに挿しかえていたカーネーションをそっとはずし、床に置いて去ります。
そこで気配を感じて振りかえったナタ―リヤの目に、彼がいた印の花が。
手にして舞台中央で遠くを見るギエム・・・・
なんとも奥ゆかしい余韻を残した舞台でした。
フリーランスのピアニスト、ケイト・シップウェイさんのショパンが、しっとりとしてとても良かったです。
香り高く、人生の一瞬の美しい一時が、その人の一生を彩り続けるであろうというメッセージを感じたことでした
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