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お着物Enjoy生活からバレエ・オペラ・宝塚etcの観劇日記に...

ルネ・フレミング

2006-06-18 09:41:53 | OPERA
さて、「椿姫」のヒロイン、ソプラノ、ルネ・フレミング。
以前はふくよかで優雅なマダム役がお似合い、という印象が強かったのですが、
最近はピラティスで鍛えてダイエットにも成功されたそう。
3幕の瀕死のヴィオレッタも無理のないヴィジュアルでした。
ある一定以上の年齢の女性にとって。ダウンヘアにすると老けてしまう・・・というのが実情ですが、
フレミングは若い!「若くして死んでゆくのね」と歌う姿に感情移入できるとは凄いことだと思います。

そんな彼女を形作ってきた今までの人生を振り返って、家族、自分自身、キャリアの作り方など
率直にユーモアを交えて語る「ルネ・フレミング 魂の声」という本を、NHKホ-ルの売店で発見!
今読み始めています。



あがり症について語る部分はこんな風;
「あがってしまって穴があったら入りたいと切実に願う歌手は数知れないのだから、すべての劇場は舞台の真ん中に穴をひとつ掘っておいてほしいと思う」

声楽のトレーニングについても、わかりやすく実際的な助言が満載で、
プロ・アマを問わず、声楽家には有益で、一般の音楽ファンにも、また、ひとりの魅力ある女性の自己実現への道のりをたどるという楽しみを味わうにもお奨めの一冊です





MET「椿姫」その4

2006-06-17 05:29:48 | OPERA
そしてヴィオレッタ登場。アルフレードとは別れたの、という彼女の後を追ってアルフレード登場。
自分を捨てた理由を知らされず、男爵とよりを戻したヴィオレッタに腹いせするため、賭け事で男爵と対戦して大勝。彼女に札束を叩きつけて、自分との愛の生活のために自らの財産を切り売りした女に返金をすると宣言し、満場の反感を買うばかりか、途中でその場に現れた父・ジェルモンから女性を冒涜するものはわたしの息子ではない!と叱責を受けます。

ジェルモンのホロストフスキー、2幕1場の登場から、その冴え渡る銀髪と同様の深みのある声、威厳溢れるいでたち、田舎貴族というよりは伝統と格式のロシア貴族、という雰囲気。
娘の縁談に差し支えるから息子と別れてほしい、とある種保守的な価値観から身勝手ともいえる頼みごとをする、バリトンの力量によっては只の了見の狭い田舎の保守派になってしまう難役ですが、アルフレードを食い物にするどころか自分の財産を差し出してまで心からの愛情を示しているヴィオレッタに驚きつつも娘の幸せのためと頼みごとをする父親、そして美貌と教養で社交界で勝ち上がってきた若さに似合わぬ成熟した世知があるヴィオレッタとの深い人生への洞察とお互いへの理解が感じられる対話のシーン、聴き応えのある名場面です。
そして、アルフレードに故郷を思い出して昔のように家族のもとに帰っておいでと歌うバリトンの聴かせどころ、「プロヴァンスの海と陸」も見事!
いやー、噂のバリトン、銀髪のホロストフスキー、人気のほども頷けます
2年ほど前だったか、「戦争と平和」でナターシャをアンナ・ネトレプコ、アンドレイ公爵をホロストフスキーという魅惑の配役で来日予定の際、ネトレプコのキャンセル(体調不良?)で2人揃って代役になってしまったことがあったのですが、もし実現していたらどんなに華のある舞台だっただろう・・と今更のように臍を噛んでしまいました!


写真、手前がホロストフスキー、そしてフレミング、ヴァルガスです。
ところで、MET話題ぜんぜん終わりませんね(自分)!
日曜日にドミンゴのワルキューレが控えているので、今日のベジャールバレエまでUPしようと思ったのですが・・・
まだ続きます(予告)



続・続・MET「椿姫」

2006-06-17 05:17:42 | OPERA
そして2幕2場。
アルフレードと分かれる決心をしてパリの元パトロン・ドゥフォール男爵とともに、ドビニー侯爵の舞踏会に行くヴィオレッタを追ってアルフレードが現れる、と言うシーン。
ちなみに男爵役のジョン・ハンコック、長身で口ひげの似合う美男で、大変見栄えがします。
赤い顔のラティーノ、ラモン・ヴァルガスと比べると圧倒的にこちらが洗練されて美しいのにヴィオレッタったらなぜ?と思うのですが(超・私見)。
この洗練された貴族の男性と華やかな高級娼婦の女性のカップルで構成された社交の場、を見るにつけ、社交上のパートナーとしてある種プロフェッショナルな美しさと洗練された接客を提供する契約で成り立つ関係に馴れたヴィオレッタが、愛と憧れだけで近づいてきた打算のないアルフレードに傾いてゆく心、というものもまたこのコントラストから伺い知ることが出来、味わい深い配役と言えましょう
さて、2幕2場。
幕が開くなり、赤と黒の世界に圧倒されます。
舞台中央の床は羅針盤のような意匠にデザインされた赤・黒・緑・白の大理石のモザイク、天井からは黒の薔薇模様のレースが幕の内側を彩り、華やかこの上なし。
女性たちの衣装もスペイン風。高さのある髪飾りを覆う黒のレースがスペインらしい正装で、今夜の舞踏会のドレスコードはスペイン、ということがわかります。

ヴィオレッタが登場する前に、舞踏会での余興としてジプシ-占いの場面が挿入されますが、この演出ではその場面をふくらませて、ジプシーの一群を10人ほどの男女のフラメンコダンサーたちが舞い歌い、続いて色鮮やかな衣装の闘牛士たちがデモンストレーションを行うという、大変に華やかなディベルティスマンとなっています。
さらりと流されることの多い導入部すらこれだけ充実したシーンにしてしまう、これがMETの底力というか、ゼフィレッリの演出の手腕というか・・・。

大変満足



続・MET「椿姫」

2006-06-17 04:51:38 | OPERA
「椿姫」、「ラ・トラヴィアータ」の続きです。

ゼフィレッリによる豪華な舞台美術はため息もの!
METの総帥ヴォルピー氏の引退記念ガラが5月に行われたのですが、
総帥たっての望みで、この「椿姫」 のSETが使われたそう。
おかげで、日本公演のための船便に間に合わず、ばらして空輸と相成ったというお話でした。
人気のSETもひっぱりだこで大変ですね。

1幕の「乾杯の歌」で有名な舞踏会のシーンは、重厚な色彩と奥行きのある舞台で、流石はクラシカルなゴージャスさに定評のあるMET、と感心。
2幕のアルフレードとヴィオレッタの愛の田舎暮らしのシーンは打って変わってアイボリーと空色で爽やかな色彩、とはいっても、マリー・アントワネットが「プチ・トリアノン」を田園をモチーフにした別荘と定義したものの実は贅を凝らしたものであったのと同様、洗練された装飾が美しい、貴族好みの別荘仕様。このインテリアがあって初めて、アルフレードの父ジェルモンが訪ねて来るなり、「この(田舎)暮らしはお金がかかるでしょう」と非難がましく言うのが納得できると言うものです。
ヴィオレッタは世間知らずの田舎の青年貴族で経費に疎いアルフレードに代わって自分の財産を切り売りしてこの暮らしを維持しているのですが、それもうなづけます。
アイボリーと簡単に言いましたが、ビーチ材のような気持ちピンクがかったさめた明度の高いベージュという繊細微妙な色合いで、ヴィオレッタのエレガントな部屋着も色が合わせてあります。
そして2幕2場。
アルフレードと分かれる決心をしてパリの元パトロン・ドゥフォール男爵とともに、ドビニー侯爵の舞踏会に行くヴィオレッタを追ってアルフレードが現れる、と言うシーン。



MET「椿姫」

2006-06-15 00:36:27 | OPERA
今日、ソワレで、メトロポリタン・オペラの「椿姫」を見て参りました。
ジェームス・レヴァイン指揮、と始めたいところですが、怪我で来日できず、パトリック・サマーズが務めます。
主役のヴィオレッタはエレガントなルネ・フレミング。
青年貴族アルフレードはラモン・ヴァルガス。この人は「リゴレット」のアルマヴィーヴァ伯爵役で鳴らした明るい声質のテノール。

そして、この役の解釈で作品全体のトーンが変わってしまう、陰の主役(と思っております)アルフレードの父、ジェルモンに今をときめく銀髪のバリトン、ディミトリー・ホロストフスキー。
この配役だけでも豪華、ですが、今回の決め手となったのは演出がフランコ・ゼフィレッリ、というところ。
新国立の杮落としの「AIDA」のゴージャスな演出でも話題になったこの方、映画監督としてもヴィスコンティのお弟子さん的存在で知られますが、わたくしはOPERA演出でのゼフィレッリの方が好き。
映画だと、悪い言い方をしてしまうとやや少女趣味的で、貴族的でゴージャスな世界を演出しつつも精神的にアヴァンギャルドな自由さを秘めたヴィスコンティとは違ってスケールが小さい感じがしてしまう・・・。
といった弱点は、OPERA演出では目立たず、完璧主義のセンス良くクラシックで華のある舞台作りに定評があり、今回も特に2幕2場の、スペイン風の意匠を凝らした舞踏会の赤い大理石と黒のレースをふんだんに用いた舞台、フラメンコダンサーと闘牛士が華麗に舞う華やかなディヴェルティスマンにはときめいてしまいました!