ヒトリシズカのつぶやき特論

起業家などの変革を目指す方々がどう汗をかいているかを時々リポートし、季節の移ろいも時々リポートします

10月1日から始まった講演会「東工大が誇る若手研究者たち」を拝聴しました

2011年10月02日 | イノベーション
 東京工業大学の社会人教育院は、10月1日から毎週土曜日の午後に「東工大が誇る若手研究者たち」という講演会を始めました。一般の市民に、東工大の研究開発成果を分かりやすく伝えるための講演会です。特に、高校生に来てもらいたいと考えているようです。

 10月1日の第1回目の開催に当たって、社会人教育院の代表の方が、この講演会を開催する理由を説明されました。「日本の大学・大学院の研究開発費の多くは究極的には税金が原資になっているため、その税金を払っている方々に、東工大がどんな研究を進めているのか説明する責任が生じています」と語りました。また、「大学などが進めている科学技術の面白さを一般の方々に伝えることも、動機の一つ」と説明されました。



 第1回目は、東工大応用セラミックス研究所の神谷利夫教授がお話しされました。



 その講演タイトルは「次世代ディスプレイやiPod3は『ガラス半導体』で動く」でした。



 『ガラス半導体』とは、神谷教授と細野秀雄教授の研究グループの研究成果の一つであるアモルファス半導体のことです。具体的には、2004年に研究成果として発表したInGaZnO(インジウム・ガリウム・亜鉛・酸素)製のアモルファス半導体を用いた薄膜トランジスタ(TFT)の実用化が近づいているという内容でした。

 講演の冒頭で、神谷さんは「実は、米アップルはタブレット型情報機器の『iPad3』にInGaZnO製のアモルファス半導体を用いた薄膜トランジスタ(TFT)を採用したディスプレイを採用する計画だった」という情報を語たりました。アップルは「iPad3」を当初、2011年夏ごろに販売する計画でしたが、技術面での課題から、「iPad3」の発売は2012年4月以降にずれ込む見通しになったという記事を、神谷さんは紹介しました。この薄膜トランジスタ(TFT)を採用した液晶ディスプレイをアップルに供給するのは、「日本のシャープだ」と説明します。

 今回、「iPad3」にInGaZnO製のアモルファス半導体を用いた薄膜トランジスタ(TFT)を採用する理由は、現行のアモルファスシリコンなどに比べて、InGaZnO製のアモルファス半導体は「10倍以上速い電子移動度を持っているからだ」と説明します。

 現在、発売されてるスマートフォンやタブレット型情報機器に比べて、新世代の「iPad3」は解像度を大幅に向上させるために、表示素子の大きさを0.096mmと、一桁小さくすることになるそうです。そのためには、「動作速度を速くできることが必要になり、InGaZnO製のアモルファス半導体の出番となる」と説明しました。

 神谷さんは「InGaZnO製のアモルファス半導体を発見した時は、何に使えるかは分からなかった。この当時はアモルファス酸化物は半導体になることを示すという基礎研究を精力的に進めた」といいます。その内に、「液晶テレビなどの大型の平面ディスプレイの実用化が進み、nGaZnO製のアモルファス半導体の用途があれこれ検討されるようになった」と説明します。

 学術面からの好奇心から基盤研究を進め、科学技術体系を深めておくと、その新しい知識を使う用途が出てくるという図式を説明します。この具体的な中身の説明は、予備知識があまりない高校生には少し難しかったと思いました。