新宿少数民族の声

国際ビジネスに長年携わった経験を活かして世相を論じる。

ドナルド・トランプ次期大統領の話題に戻ろう

2024-11-17 07:43:40 | コラム

トランプ次期大統領は側近に「忠誠心」を求めている:


前回は“tariff”から離れた話題を選んだが、今回は私が見るトランプ氏の問題点を。昨日ジムのサロンで拾い読みしたNew York Timesに「トランプ次期大統領が側近に求めるのは忠誠心であっても、専門的な知識ではない」という見出しがあった。偽らざる感想は「何という事を言うのか」ではなく「2期目ともなれば、自信を持ってそこまで乱暴な事を言うのか」だった。


その過剰なまでの表れが既に報道された疑問だらけの閣僚名簿であろう。「そういう背景があったのか」と納得させられた。トランプ氏はワシントンDCの官僚も入れ替えると予告したそうだ。一部には「トランプ氏の独裁が始まるのか」と危惧する向きもあった。思うに1期目の経験に加えて、選挙での予想を覆す大勝利で「何でも出来る」と一層意を強くしたのだろうと疑いたくなった。


このトランプ氏の勝利を「リベラルのハリス候補に対するトランプ氏の保守的な姿勢が民意を得た」と見る専門家が多かったが、私は違うと思っている。アメリカの大手企業に22年以上も勤務して、外国人が先ず経験する機会は希にしかないだろうと自負している「上はCEOから下は労働組合員たちまで接触(交流でも良いか)した経験したから「違うのではないか」と言えるのだ。


解りやすいかどうか解らないが、先ず指摘しておく事は「アメリカのように社会が明らかに階層化された国では、会社側の副社長以上の幹部やCEOが労働組合員と接触する機会など先ずあり得ない」のだ。日本固有の組織で言う課長クラスが組合員と語り合う様子など見た事もない世界なのだ。この辺りが「分化」乃至は「分断」の一面なのだ。


トランプ氏のように製造業界の労働者階層とは縁が薄かったはずのトランプ氏は自ら“working class”(=労働者階層)と呼んだ社会の低層を成す上流よりも遙かに数が多い人たちに向かって、上品ではなくても労働者階層の人たちには解りやすい言葉遣いで語りかけて、彼等の心を掌握していたのだ。「アメリカを再び偉大にする」とか「君らのjobを増やしてやる」と言って聞かせて。


アメリカの労働者階層の人たちには「識字率の向上」や「初等教育の充実」が必要である事に加えて「1桁の足し算と引き算が出来るような基礎的計算能力」が欠けているのだ。英語の理解力も十分ではない場合もあるのが実態。私はこういう実態を何年も彼等と交流する機会があったので、承知している。「嘘だろう」と思う方は、工場を訪れて、彼等と語り合ってみれば良い。


私は(「賢明にも」か、どうかは知らないが)トランプ氏はこのような社会の低層を成す者たちの群れに積極的に語りかけて、岩盤の支持層の形成に成功したのだと見ている。私は意識してアメリカ社会の中流より以上の世界を目指して転進したのではなく、偶々39歳にして転身した企業が支配階層の世界だったというだけのこと。


さらに、このアッパーミドルのような階層の人たちや、YM氏が所属していたような一流大学の教授たちの間には、当然の事のようにトランプ氏支持者など皆無だ。しかしながら、この階層に属する人たちはトランプ大統領を支持する層と比較すれば断然たる少数派なのだ。トランプ氏の数の勝利になる訳だ。


このように明らかに分断されている様をアメリカ社会の内側に入って実情を見てきた私は、トランプ候補が当選したのは当然の結果に過ぎないと思うのだ。そして、2025年から4年間トランプ大統領は忠誠を誓わせた側近を従えてアメリカを統治して「再び偉大にする」と言うのだ。私の率直な疑問は「MAGA」と言われるのは「現在のアメリカは偉大ではない」と批判しているのと同じ事になる点なのだが。


アメリカの知識階級の一部の中からは「2期目のトランプ政権の統治で傷つくだろうアメリカは、容易には元に戻れないのではないか」との声が上がっているという話を聞いた。



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