引き続き第35回しずおか地酒サロン『地酒は地域の元気のミナモト!』のご報告です。
当日の参加者のお一人で、ご夫妻で家具工房を営む久留聡さんから、今回のテーマである地酒を地域の元気の源泉にするための、大事な指針となるメッセージをいただきました。こういう考えを持って、地域に根をおろしてモノづくりをされている30~40代の存在は、とても心強いです。
私自身は何の創造性も生産性もない無力な人間ですが、こういう方々を仲立ちすることで、美味しい地酒を育む地域に何かしら恩返しができたら、と改めて実感しました。久留さん、本当にありがとうございました。
ご本人の了解を得ましたので、メッセージをご紹介させていただきます。
「サロンの後に、鈴木さんのブログを読んで、どのように静岡の地酒を地域の活性化に活かすか時々考えています。サロンの時の皆さんの意見を聞いて、地酒のレベルが向上しているのに、静岡の中での位置づけと消費量が向上していないことの解消を望んでいる気がしました。
私は地元藤枝の消防団に入っています。消防団は大量にアルコールを飲む集団ですが、あまり日本酒を飲みません。藤枝には良い地酒があるのに、不思議なくらいです。まずは、私が地元で、みんなの前で飲んで薦めるよう心掛けたいと思います。
また家具関係のワークショップで多くの人に出会うので、地酒を薦めるパンフレットがあったら配りたいと思いました。組合が出しているのではなく、鈴木さんたちの立場から発信している文章がとても説得力があると思いました。裾野を広げるためには、広報は日本酒と接点のない所でやるのがいいですね。私のワークショップに来る人たちは、モノづくりや地域の活性化に関心が深く、本物志向の人が多いので、理解しやすいと思います。パンフレットが無いようでしたら、私も出来る範囲で作ってみようかと思います。・・・そのような、小さな活動の積み重ねと共に、大きなビジョンを掲げることが大事と感じました。
これからの時代に求められているのは、文化の重層化と横断だと思います。
商品を売るだけでなく、背景、物語、文化、関連商品を通して、こころ豊かな生活を提案する。その中に地酒を置く。・・・酒という文化を通して、地域や静岡の活性化、豊かさに、どのように貢献できるか、です。
イメージするのは、ミラノコレクションやパリコレクションのように、地域に人やメディアを多く集める仕掛けです。そこでは、宿泊や飲食業、交通機関などにも利益が生まれ、その祭典を通じて文化が向上する。「静岡コレクション」「藤枝コレクション」という名称でも良いですが、酒にまつわる文化全体を満喫できるよう、酒蔵が新酒を発表する場を各所で設けたり、居酒屋やスイーツの店がメニューを発表したり、音楽とのコラボ、陶器や木工製品を自発的に発表する人達も出てきたり、お茶や食品を発表するのもありでしょう。そこで、静岡の地酒の底力と魅力を地元の人達が再確認して、ブームではない「おらが町の酒蔵」になっていく・・・そんなイメージを描いています。
蔵元さんも含め、静岡のモノづくりの人達は、外に向かって、お互いを紹介し合うのも良い。例えば、家具の展示会なら、酒や酒器や酒卓や食品を持っていったり、地酒のパンフレットを配ったりできる。損得と関係ないところで、お互いを紹介したり、助け合っている姿は、消費者として安心できるし、翻って他人を紹介できる人柄を信用します。
すごい大風呂敷みたいですが、それぐらい大きな夢を持って、道のりは長いくても一歩ずつ進めてみる。手始めに酒にまつわる商品をコラボして、生活のワンシーンを演出してもいいかもしれません。
イタリアデザインの祖、ジオ・ポンティは、イタリアをデザイン立国にするために、そこにいたる道のりを「ロードマップ」として表し、実践していき、今の状況を生み出したそうです。静岡の地酒でも、そのような大きなビジョンへのロードマップの作成が大切な気がします。
私たち作り手は、「モノづくりを通じて地域を豊かにする使命がある」と普段考えていて、豊かにすることは物質や金銭面と共に、環境面や文化面があると思っています。
そこで、私は微力ながらワークショップを行い、地域のみなさんにモノづくりの技術を伝え、モノづくりという生業の大変さと価値を伝えています。地域のショップのオリジナル商品を開発することで、ショップのオリジナル性を出し、地域ブランド、地域の商品レベルの向上を目指しています。
先日の松坂屋の展示会では当工房のテーブルの上に、連携している木造建築事務所が発行している冊子を置いてみました。雑誌しぞーかの地酒特集号もデスクに目立つように置いてみたら、結構の人が読んでいました。
仕事での取引は無くても、ワークショップで連携できるフラットな関係で、藤枝の活性化が出来ないか、アイデアを練りつつ、動いている状況です」。
久留さんは県外出身で、東京や長野を経て、焼津で木造船の伝統技術があることを知ってこの地へやってきたそうです。『吟醸王国しずおか』で初亀の橋本社長を撮影した岡部の神(みわ)神社で結婚式を挙げられ、そのときに呑んだ初亀の美味しさに感動し、学生時代以来の日本酒嫌いが一変したとか。・・・やっぱり酒縁があったんですね。
久留さんや、同志の野木村敦史さんも出展する展示会が、来週から静岡市の呉服町で始まりますので、ぜひのぞいてみてください!
8名によるグループ展「ココでしか会えない もの と 作り手」 家具 小物 食器 etc・・・
◆場所 ギャラリー ワタナベカメラ
静岡市葵区呉服町2-2-2 2F Tel 054-254-3571 *呉服町通り・五風来館(1階が無印良品)の向かいです。
◆会期 2009年9月10日(木)~15日(火) 10:00~19:00
◆久留さんの連絡先/H.W.F“木製の家具・玩具工房”
〒426-0009 静岡県藤枝市八幡248-1 Tel/Fax 054-643-8112