18日(金)は静岡経済研究所のSERI12月例会に、花の舞酒造の高田和夫社長とともにお招きいただき、企業経営者の方々を前に静岡の酒についてご紹介しました。
静岡経済研究所は過去ブログでもご報告したとおり、月刊誌SERI10月号で研究員の高橋晴美さんが『価値を伝え、市場を切り開く“静岡地酒”』と題した研究論文を書かれ、好評を集めています。
SERI例会では毎回、研究員が論文で書いたテーマについて研究発表するそうで、12月は年末で日本酒シーズンということもあって高橋さんが担当することになり、静岡経済研究所の会員である高田社長と、高橋さんの論文に取材協力した私が、ゲストにお誘いいただいた、という次第です。
最初に高橋さんが研究発表をし、続いて高田社長が花の舞酒造の社歴や経営課題について興味深いお話をされました。
高田社長とは長いおつきあいですが、改まって講演を聞くという機会は初めてです。
経営者としての課題について、①商品力、②販売力、③業務改革を3本柱に挙げ、「商品力、すなわちブランド力とは、お客様に“このブランドだったら間違いがない”と思っていただく信頼感に相違ない。そのため、級別制度の廃止を契機に思い切った設備投資をし、商品構成は特定名称酒に特化し、原料はすべて静岡県産米にすると決めた」と力強く語ります。
②の販売力については、「業務用には酒販店、一般家庭用にはスーパー量販店、という住み分けを行い、県内を第一の基盤にしているが、県外市場は東京、名古屋、海外の順に可能性を探っている。市場が大きいだけにやりがいはあるが、なかなか難しい」と率直に述べられました。
③の業務改革に関しては、「製造や瓶詰作業は、設備の改良である程度改善できるが、とにかく商品アイテムが多いので、梱包出荷作業に人手がかかり過ぎている。効率のよい仕組み作りが課題だ」とのこと。
お話を聞いているうちに、私が普段つきあっている中小の酒蔵とは、やはり別次元の経営者なんだと実感しましたが、伝統的な酒造業が、現代の経営手法と融合してどこまで発展していくのか、静岡県内では他に例がないだけに、大いに注目されます。
休憩をはさんで後半は『吟醸王国しずおか』パイロット版の試写と、私の酒蔵体験談。会場には経済研究所の会員企業の方以外に、研究所側の招きで静岡リビングの杉本編集長、フリーアナウンサー神田えり子さん、静岡市駅南銀座の鉄板焼ダイニング湧登(ゆうと)のご主人山口さんが来ていたので、地酒応援団の同志のつもりで紹介させていただきました。
静岡リビングさんは、11月末に地酒特集号を組んでくれて、映画制作についても温かい応援記事を作ってくれました。リビングさんで映画制作を紹介していただいたのは2回目です。本当に感謝の思いで一杯です。
リビングの記事の中で、私が湧登の企画で始まった『はしご酒』について発言したことが紹介されていて、山口さんから丁寧なお礼メールをいただいていました。また神田えり子さんは、はしご酒では地酒コンシェルジュになって、お客さんをもてなす側としてボランティア参加されています。
その“はしごつながり”の3人が、偶然顔をそろえて来てくれたことに感激したと同時に、地酒というのはいろんな人をはしごでつないでいく力がある、と再確認しました。
「真弓さんと花の舞さんの組み合わせは珍しいですね」と、えり子さんから冷やかされましたが、花の舞という酒は、段差の少ない、誰でも気軽に登れるはしごみたいな酒かもしれません。
私が愛飲する「花の舞・つう」は、この時期、燗酒にはもってこいで、他県の普通酒や本醸造と比べたら、吟醸と見紛うほどの品質だと思っています。こういう酒がふだんづかいで飲める幸せを忘れちゃいかんですね。
・・・そうはいっても、サロン終了後の懇親会で高田社長から提供された花の舞限定大吟醸には舌を巻き、高橋さんに「花の舞さんとは対極的な、県内の蔵元自醸酒があっても面白いよ」とアドバイスしてそろえてもらった白隠正宗山廃純米山田錦65%、杉錦特別本醸造、喜久醉純米吟醸、H森本(小夜衣)入力手搾り炸裂辛口純米+9、國香特別純米中汲み無ろ過生原酒は、全部抱えてお持ち帰りしたくなるほど、ハズレなしの美味しさ!
会員の経営者からの「醸造アルコール添加の酒って邪道でしょう?」「なんで米をそんなに小さく磨くの?」「米を小さく磨いて使うなら値段が安くなってもいいんじゃないの?」の質問に、ありゃ~社長さんクラスの人でも知らないんだなぁと思いつつ、丁寧に説明したら、「今夜はそれを覚えただけで儲かった」と喜んでいただけました。
とくに日本酒にある種の先入観を持っている世代に対するとき、酒の伝道に早道・近道がないなぁ…と、これも再確認できた夜でした。