今朝になって、このブログに「鞆の浦」で検索して来る方が急に増えたので、何かあったのかなと思ったら、facebookの書き込みで、「埋め立て計画中止」が決定したとのこと。改めて毎日新聞ウェブ版のこちらの記事で確認しました。
宮崎駿監督が『崖の上のポニョ』の構想を練った地として知られる広島県福山市鞆ですが、私にとっては、やっぱり、なんといっても2007年に制作した『朝鮮通信使』の舞台。
徳川家康大御所四百年祭の記念事業で静岡市が製作した映画なのに、駿府公園や久能山東照宮よりも時間をかけてロケをして、実際に使った映像も長くて、たぶん気分を害した人もいたと思いますが(苦笑)、山本起也監督も私も、それだけ思いを込めずにいられなかった、美しくて素朴な港町でした。
もし機会があったらふたたび上映会をやってほしいのですが、鞆の浦のトワイライト~夜景に、林隆三さんの詩的なナレーションがかぶり、プロモーション映像としても見応えがあると思います(こちらを参照)。
鞆の浦で、取材やロケ時に出会った町の人々も、本当に素朴で温かな方々でした。このブログを書き始めた2007年暮れから、そんな方々との交流をたびたび紹介させてもらいました(こちらを)。
宮崎監督が滞在した家のことも聞いていましたが、宮崎アニメをほとんど観たことのない私にとっては、特別関心が湧いたわけでもなく、そ
れよりも、保命酒の醸造元や、坂本龍馬のいろは丸事件史跡のほうが興味深かった・・・。
埋め立て問題の深刻さを知ったのは、2008年になってから。ご縁が出来た朝鮮通信使研究家の方々と交流を続けているうちに、町を二分する論争に発展していることを知り、あるときは、賛成反対の町民が同席する酒宴に偶然参加して、本音をぶつけ合う場面にも出くわしました(こちらを参照)。
軽自動車でも対向車とすれ違うのが大変な、細くて坂の多い道。自分も実際にロケ車を動かしてみて、その不便さを実感しました。江戸時代の町の区画がそのまま残っているというのは、確かに今の住民の方々にとっては住みづらいし、外の住人から、景観を守れと言われる地元の人々の心情も解る気がします。
自然や伝統を守ることと利便性を追求することを、どうやって擦り合わせたらいいのか、さらに広げれば、従来の資本主義経済の価値観が行き詰ったその先に、どんな新しい社会を望むべきなのか、自分の頭では予想のカケラもつかず、いろんな本を読んで答えを探っているところでした。
それだけに、今朝のこのニュースはとても心に響くものがありました。そして、こういうニュースを、ブログやfacebookによって知ったというのも、私にとっては感慨深いものがありました・・・。
朝鮮通信使が『日東第一形勝』と絶賛した鞆の浦。この景観を現代の人々が守り伝える意味は、単に“景観を守る”以上に深遠なものに違いありません。