杯が乾くまで

鈴木真弓(コピーライター/しずおか地酒研究会)の取材日記

大村屋酒造場七夕コンサートのお知らせ

2012-06-27 09:50:47 | 地酒

 なんだかんだで今年も半分が終わります。ホント、早いですねえ~。『若竹』の醸造元・島田の大村屋酒造場さんから、今年も七夕酒蔵コンサートのご案内が届きました。今年は土曜日なので、参加しやすいと思います。コンサート終了後には冷やした樽酒がふるまわれます。参加無料ですよ!

 

 

大村屋酒造場 第16回七夕コンサート

日時 2012年7月7日(土) 18時30分開場、19時開演

 

場所 大村屋酒造場 貯蔵倉 島田市本通1丁目1-8 TEL 0547-37-3058 JR島田駅から徒歩5分 詳しくはこちら

 

内容 大石陽介(バリトン)・大石真喜子(ソプラノ)・馬場祥子(ピアノ)による日本の叙情歌

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 こんな素敵なコンサートを16年も続けている大村屋酒造場の松永今朝二社長の地域貢献への思いを、2011年3月発行の『静岡発!文化の仕掛け人たちの熱き想い~文化を支えるプロジェクトレポート』(静岡県発行)で紹介しました。日本酒の蔵元がなぜ百年以上も事業継続し、地域に必要とされ続けてきたのか、その一端が伝われば、と思います。

 

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大村屋酒造場(島田市)】

民が心待ちにする文化事業を次々に発信、<o:p></o:p>

 「地域と共存共栄する酒蔵」を実践する。<o:p></o:p>

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日本酒の造り酒屋は創業100年以上の歴史を持つ老舗が多く、地域の暮らしの移り変わりとともに発展・継続してきた。島田市の大村屋酒造場は「若竹鬼ころし」「おんな泣かせ」で知られる銘醸。天保3年(1832)に創業し、東海道島田宿の蔵として発展した。島田市唯一の地酒の灯を守っている。それは、地域の人々に支えられ、灯された文化の光でもある。<o:p></o:p>

 

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地元の人々に“地酒の灯を消すな”と背を押され…<o:p></o:p>

 

 大村屋酒造場6代目当主・松永今朝二さんは昭和42年に入社し、義父で5代目当主松永始郎氏(故人)とともに伝統蔵の継承発展に努めてきた。<o:p></o:p>

 

松永さんが入社した当時は、島田市に7軒の酒蔵があったが、地方の酒蔵経営が厳しくなり、島田市内でも廃業が相次ぐ。“最後の砦”となった松永さんを「最後の地酒の灯を消してくれるな」と激励したのは、島田市内の名士の集り「若竹会」だった。

この会で「慶長9年(1604)の大井川の氾濫で消滅した地酒・鬼ころしを復活させよう」と呼びかけ、今では蔵の看板銘柄である「若竹鬼ころし」が誕生。その5年後には、辛口の鬼ころしとは対照的にソフトでまろやかな「おんな泣かせ」が誕生した。粋な酒銘は、若竹会の宴席で島田の芸者さんのひと言だったという。これも静岡県を代表する人気銘柄に成長した。<o:p></o:p>

 

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音楽のまち島田をほうふつとさせる酒蔵コンサート

 

 そんな経緯もあって、松永さんには地元島田への思いがひときわ強く、「地域の皆さんとともに共存共栄するのが地酒の使命」と明言する。<o:p></o:p>

 

 音楽好きの松永さんは10数年前、妻が師事するオルガンの先生に「蔵には独特の音響効果がある。何か演奏してみたら?」と勧められ、貯蔵タンクが並ぶ蔵で室内楽コンサートを企画した。100人が集まり、音楽ホールとはひと味違う、酒蔵に響くクラシックの音色を堪能した。<o:p></o:p>

 

 さらに「島田の七夕に賑わいを復活させたい」という町の声に応え、七夕の日に静岡大学のジャズバンドを招いて酒蔵コンサートを開催。蔵を開放し、生ライブを楽しんでもらった後は、樽詰めの生酒を無料でふるまった。<o:p></o:p>

 

ステージ設営も七夕飾りもすべて社員の手作り。最近ではテノール歌手の加藤信行さん、中鉢聡さん、ザルツブルクのモーツァルテウム管弦楽団首席ホルン奏者シュヴァイガー氏といったビッグネームもやってくる。松永さんの「出演料は出せないけど酒はたっぷり飲ませるよ」が口説き文句だといい、アーティスト自身も酒蔵の空間に魅力を感じ、手弁当で参加するという。<o:p></o:p>

 

 聴衆は年々増えて今では400人を超え、蔵の中に入りきれない人が路上で演奏に耳を傾けるということも。「島田市はもともと音楽好きの市民が多く、静岡市に市民会館が出来る前は、県下で唯一NHK交響楽団の演奏会が島田市民会館で開かれていた。音楽が身近にあった街なんです」と松永さん。今年で14回目を数える七夕酒蔵コンサートは、島田市の夏の風物詩になった。<o:p></o:p>

 

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NY三ツ星フレンチレストランの地酒パーティーをきっかけに<o:p></o:p>

 

 松永さんは日本酒の蔵元として島田の食文化振興にも努めている。1999年、ニューヨークの三ツ星フレンチレストランで開かれた日本酒パーティーに招待されたとき、「若竹鬼ころし」がフレンチ料理と見事にマッチし、NYの食通たちに喜ばれる姿に感激する。NYナンバーワンの呼び声高いワインソムリエとシェフが事前に島田までやってきて蔵できき酒するなど準備も万全だった。

 「海外で島田の地酒がこれだけのもてなしを受けているのに、自分たちは地元では何もしていない」と実感した松永さんは、帰国後、蔵に隣接する大井神社宮美殿の調理長と協働で【島田の食と地酒を楽しむ会】を企画した。<o:p></o:p>

 

翌年からは酒米作りで縁のある島田市初倉地区の農家、大井川奥のヤマメ養殖業者にも声を掛け、食事の合間に生産者の苦労話や地域の自然の価値などを解説してもらうなど、地産地消をテーマにした食文化の会に発展した。5000円のチケットは受付直後に定員満員となり、今では抽選制にせざるをえないほどの人気ぶりだ。<o:p></o:p>

 

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親子で体験学習、「お米とお酒の学校」開催<o:p></o:p>

 

 2005年からは親子対象の食育活動【お米とお酒の学校】を始めた。初倉の農家の協力で、5月に酒米の田植えをし、9月に稲刈り、3月に酒蔵工場見学を行う。

 子どもたちは田植えや稲刈り時に農家から米作りや田んぼの生態系などを聞き、バケツにひと株ずつ稲を持ち帰る。田んぼには自分の名前の立て札が立っているので、下校途中に様子を見に行くことも。田植えの日は午後、かかしづくりの体験。稲刈りの日は島田市金谷の伝統の志戸呂焼き工房で茶碗やぐい飲みづくりの体験。お酒が完成する3月にはオリジナルラベルをデザインして酒瓶に貼る。

 そんな稲作体験が、親子のコミュニケーションづくり、地域農業や酒造り・陶芸等のモノづくり文化を学ぶ好機にもつながっている。<o:p></o:p>

 

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酒蔵2階の文化発信基地「若竹サロン」<o:p></o:p>

 

 本社2階フロアは、貸しギャラリーとして市民に開放している。ここで2カ月に1度のペースで文化交流会「若竹サロン」を開催し、地元で活躍する学識経験者、経済人、文化人等を講師に招いてさまざまなトークときき酒を楽しんでもらう。蔵を支えてくれた「若竹会」の伝統がそこに息づいている。ギャラリーは、若い陶芸家や書家たちの作品発表の場にも活用している。<o:p></o:p>

 

 これら事業は参加者から費用をとらないか、必要最小限の実費しかとらず、企画や運営はすべて松永さんと社員でまかなっている。「スポンサーをつけたり補助金をもらったりすると、いろいろ制約が出てくるから」と苦笑いする松永さんだが、会社の“持ち出し分”は広報活動の範疇をゆうに超えている。

 その原動力は、数々の催しを通して、地域住民から寄せられる「自分たちが住む町に誇りが持てる、ぜひ続けてほしい」という声。「酒蔵が地域に存在する意義もそこにあります」と力を込める。(文・鈴木真弓)<o:p></o:p>