杯が乾くまで

鈴木真弓(コピーライター/しずおか地酒研究会)の取材日記

中日新聞環境特集「豊かな暮らしと廃棄物は表裏一体」

2012-06-23 19:22:20 | 環境問題

 本日(23日)付けの中日新聞朝刊の環境特集で、産業廃棄物問題の記事を書きました。

 震災ガレキ処理で改めてクローズアップされている廃棄物処理という社会の負の問題。今はどちらかというと、産業Imgp0004
廃棄物よりも一般ごみの不法投棄のほうが深刻なようで、処理業者の方々の本音をオフレコで聞いたうえで、広告特集記事(=スポンサーの校正チェックが入る記事)としてギリギリの表現に挑戦してみました。一部、ソフトな表現に直された部分もありますが、一般ごみの“排出者”である我々市民が、少しでも多くの方に考えるきっかけになれば。

 

 

 

 

廃棄物処理の現状と課題「豊かな暮らしと廃棄物は表裏一体」<o:p></o:p>

 

昨年の3・11以降、日本人が直面したエネルギーやゴミ・廃棄物の問題は、今のライフスタイルの見直しを迫る、大きく切実なものとなった。ゴミを減らし、資源や物資を大切に使う循環型社会のしくみづくりに必要なものは何か。廃棄物処理の最前線に立つ静岡県産業廃棄物協会の活動を岩間雄一副会長に解説してもらった。<o:p></o:p>

 

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 産業廃棄物の定義<o:p></o:p>

  モノを作れば、使えば、必ず生まれる廃棄物。モノに満ち溢れた豊かな生活とは、同じ量の廃棄物と表裏一体であることを、私たち生活者は時折、見過ごすことがある。

 廃棄物とは、家庭から出される一般ゴミやし尿と、会社・工場・商店など事業活動にともなって出た事業ゴミに大きく分けられる。事業ゴミのうち、がれきや廃油や汚泥など法令で定められた20種が『産業廃棄物』と定義され、事業者に処理責任が課せられている。処理の形としては、事業者自らが行うケース、処理業者に委託するケース、行政機関が公共サービスとして処理するケースがある。<o:p></o:p>

 

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 静岡県産業廃棄物協会―廃棄物の入口(排出業者)と出口(処理業者)と排出業者が同居する稀有な団体<o:p></o:p>

  「適正な廃棄物処理は、健全な社会の発展に不可欠である」という理念のもと、昭和50年に設立した静岡県産業廃棄物協会。産業廃棄物の処理事業者と、排出事業者を合わせた計1140社が加盟している。<o:p></o:p>

  実は排出(入口)と処理(出口)双方の業者が“同居”する団体は全国的にも珍しい。静岡県産業廃棄物協会は、平成3年の法改正で排出業者の責任が強化された時、全国に先駆けて排出業者の入会を受け入れた。岩間副会長は「多種多様な製造業が拠点を置くモノづくり県静岡では、廃棄物への対応は相対する両者が同じベクトルで取り組む必要があるとの強い共通認識があった」と振り返る。<o:p></o:p>

 

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 社会に不可欠な公益事業<o:p></o:p>

  先月、利根川水系の浄水場で水質基準値を超えるホルムアルデヒドが検出され、関東広域で水道が止まるというアクシデントが発生。今月7日に「原因物質が十分に処理されずに放流されたと強く推定される」との最終的な調査結果が群馬・埼玉両県と高崎市から発表された。<o:p></o:p>

  原因物質が法規制の対象外だったため、原因物質を含む廃液の処理を委託した金属加工メーカーに法的責任はなく、委託を受けた処理業者の処理方法に問題があったとし、文書で再発防止を求めるのみとなった。<o:p></o:p>

  この事例は、排出業者と処理業者の連携ミスや責任の所在の曖昧さ等、廃棄物処理が抱える問題を如実に示す結果となった。「廃棄物処理は自己処理が原則。業者に委託する場合は信頼できるかどうか少なくとも年に1回は処理現場を点検するぐらいの意識が必要」と岩間副会長は指摘する。<o:p></o:p>

 

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 平成24年4月、公益社団化<o:p></o:p>

  静岡県産業廃棄物協会が手がける事業は、<o:p></o:p>

 ①公益目的事業<o:p></o:p>

 ・不法投棄防止活動事業<o:p></o:p>

 ・不法投棄情報収集事業<o:p></o:p>

 ・災害復興支援事業<o:p></o:p>

 ②適正処理啓蒙事業<o:p></o:p>

 ・産廃処理施設視察会の実施<o:p></o:p>

 ・展示会等出展事業<o:p></o:p>

 ③能力開発支援事業<o:p></o:p>

 ④産廃技術ニュース発行<o:p></o:p>

 ⑤協会機関誌の発行<o:p></o:p>

 等、公益性の高い事業を行っている。<o:p></o:p>

  昭和52年に社団法人化した同協会は、平成24年4月1日、「公益社団法人静岡県産業廃棄物協会」に移行した。<o:p></o:p>

 全国各都道府県にある産廃協会のうち、一般社団ではなく公益社団に移行したのは8道県のみ。公益社団への移行はハードルも高いが(注1)、組織としての社会的信用性も当然高くなる。協会幹部も「当協会が、公益目的事業を遂行できる基盤がしっかりあるという証明」と自信を示した。公益社団化初年度の今年は、不法投棄の問題や一般への啓蒙活動に厚みをもたせている。<o:p></o:p>

 

(注1)平成18年の法改正で、公益法人は、①一般社団法人及び一般財団法人、②公益社団法人及び公益財団法人の2つに改組された。②の認定には、主たる目的とする公益目的事業費比率を50%以上とし、その事業を行うために必要な経理的基礎および技術的能力を持つこと、すべての関係者に特別の利益を与えないことなどがある。税制に関しては、公益目的事業として認定された事業は収益事業から除外される等の優遇措置がある。<o:p></o:p>

 

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 浜松市と不法投棄防止協定を締結<o:p></o:p>

  今年3月、協会は浜松市と「廃棄物の不法投棄等の防止に向けた協定」を締結した。従前より不法投棄防止にかかわる協力関係にあった協会が市と正式に協定を結ぶことにより、連携をより強固で円滑なものにし「美しいまち浜松」の創造を目指すこととなった。<o:p></o:p>

  その一環として6月8日、浜松市北区三ケ日町大崎一帯で実施された回収作業には、59人の協会員と自治会10人、市職員12人の計81人が参加。協会浜松支部がアームロール5台、ユニック6台、小型重機2台を提供し、不法投棄された15トンあまりの廃棄物を回収した。4トントラック14台分に相当する量である。<o:p></o:p>

 

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 増加する一般ごみの不法投棄<o:p></o:p>

  今回、回収した廃棄物の中には浜名湖のマリンレジャー客が投棄したと思われるレジャーごみや生活ごみも目立った。場所は「車で運びやすく、捨ててもすぐに自分の視界から見えなくなるところ」という。<o:p></o:p>

  このように現在、顕在化している廃棄物問題の主役は、産業廃棄物から一般廃棄物(生活ごみ、廃タイヤ、廃家電等)へと移っている。昨年度から廃棄物処理法の一部が改正され、不法投棄や不適正処理への対策、最終処分場の環境汚染対策、廃棄物の循環的利用の促進等が強化された。協会の法令遵守への働きかけも奏功し、県内では大規模は産業廃棄物の不法投棄は減少傾向にある。<o:p></o:p>

  一方、生活ごみや廃家電といった一般廃棄物の扱いは、法というよりも一般市民のモラルに依るところが大きい。岩間副会長は「産業廃棄物は入口(排出業者)と出口(処理業者)の努力によって減らすことができた。一般ごみも同じ。自分が出すごみには自己責任を持つという意識を、家庭や職場で保持してほしい」と力を込める。<o:p></o:p>

 

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 御前崎中学の“亀バックホーム作戦”をサポート<o:p></o:p>

  協会では日頃から廃棄物処理事業への理解や啓蒙にも努めており、県内7支部ごとに、地域の小・中・高校で環境教育プログラム事業を実施中だ。今年度は協会中遠支部が中心となって、御前崎市牧之原市学校組合立御前崎中学校全生徒(約450 名)を対象に行った。<o:p></o:p>

4月の廃棄物セミナーでは、会員企業の社員が講師となってごみ問題やリサイクル事例等を紹介した。5月には、御前崎マリンパーク海岸で同校が行った清掃活動“亀バックホーム作戦”に協力。重機等を提供し、燃えるごみ約1460キログラム、金属くず60キログラム、その他(廃タイヤ・ビン類等)1200キログラムの回収をサポート。廃棄物セミナーでごみ問題について理解を得ていた生徒たちは、リサイクル可能な廃棄物を海亀の棲息地に投棄する“愚行”に心を痛めていた。<o:p></o:p>

 

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 電子マニフェストの推進<o:p></o:p>

  協会では廃棄物の減量化に向け、県が奨励する3R運動(注2)を事業所にも広く呼び掛け、研修会を各地で開催している。<o:p></o:p>

  また廃棄物を適正に処理するために有効な「電子マニフェスト」の加盟登録を事業所に呼び掛け、静岡県は平成23年度までに、東京都、神奈川県に次いで全国3位の登録件数(6232件)となった。27年度までに8000件を目指している。<o:p></o:p>

  岩間副会長が所属する協会の医療廃棄物部では、医療施設への電子マニフェストの導入を積極的に呼び掛け、部会員のほとんどが導入している。その一方で導入が遅れている一部の医療機関には、処理業者の立場から導入をお願いしている。岩間副会長は「静岡の電子マニフェスト導入は全国的なモデルケースとして注目されている。会員企業に趣旨を徹底させたい」と気を引き締める。<o:p></o:p>

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<o:p> </o:p>(注2)3R運動=ゴミを出にくくする(Reduce)、再使用(Reuse)、再生利用(Recycle)を呼び掛ける。<o:p></o:p>

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  「モノを造ればゴミが出るのは当たり前。健全で豊かな暮らしとは、廃棄物と表裏一体であることを忘れないでほしい」と真摯に語る協会スタッフ。毎年8月には協会7支部で小学生を対象にした施設見学会「ぼくらはさんぱい探偵団」を実施しており、今年も準備に余念がない。

 子どもの意識が変われば親の意識も変わり、地域や職場での行動にもつながってくる。公益社団化した協会の使命もそこにある。<o:p></o:p>

 (文・鈴木真弓)<o:p></o:p>