当ブログも今月末で3年経ちます。スタート時に、旬の話題ということもあって、酒粕とみかんのことを書いた記事を、この季節になるといまだに読んでくださる方がいます。本当にありがたい限りです。
酒粕は最近テレビ情報番組で機能性が取り上げられたこともあって、再ブレークしているみたいですね。5日の酒と匠の文化祭でも、酒粕料理ワークショップや甘酒コーナーに女性やファミリーや熟年夫婦層が関心を寄せてくれました。
文化祭告知期間に、地酒イベントだと紹介すると「酔っ払いが集まる会でしょ?」「私、飲めないからダメダメ」とチラシを受け取ってくれない人も少なからずいました。もちろんそういう人を無理にお誘いは出来ませんが、私がやっている会イコール飲ん兵衛の溜まり場みたいに先入観で拒否されるのは辛いし、そんなときに「酒粕で健康美肌づくり、しませんか?」みたいな誘導が出来るとよかったかも・・・と反省します。
昨日、今年度、県が始めた『ふじのくに食と都づくり』事業について、県産食材のPRに人気料理研究家の栗原はるみさんやフランスの三ツ星シェフのアラン・パッサールさんを招聘して大々的に料理教室を開いた事例や、県産食材を積極的に使う地元料理人を“仕事人”として表彰した制度等を取材しました。
表彰者一覧を見たら、地酒研会員店やアットエス「地酒を飲める店」でお世話になったお店がズラリ なんだか凄くうれしく誇らしく思いました(そういえば過去ブログにコメントをくださった剣士郎さんも仕事人に選ばれた方なんですね、すみません、どなたか分からずお返事コメントせず失礼しました、よければ直接メールで店名教えてください)。
ふじのくに食と都づくり仕事人(200人)リストはこちらをどうぞ。
地場野菜にしても地酒にしても、やっぱり生産者やオタクファンだけが一生懸命アピールしようとしても、未開拓層に切り込むには限界があるようです。川勝知事がよく「モノづくりの達人」から「モノづかいの達人」にとおっしゃるように、造り手は、使い手のプロのスキルを上手に活用すべきなんだと思います。
両者のスキルがない私のような半端な人間は、コーディネートをして広報するぐらいしか出来ませんが、予算をドーンとかけられる県や業界団体と違い、個人に出来ることといったらホントに微々たること。5日の酒粕料理ワークショップも素晴らしい内容だったのに30人も集められず、担当の後藤さんには申し訳ない思いでした。
・・・地元で地道に努力する「モノづくり」「モノづかい」「仲介役」の活動が実りあるものとして継続できるしくみを、力ある組織がぜひバックアップしてほしいと願わずにいられません。声が小さい、存在が見えないからとスルーされないよう、私もHP等で多くの同志の紹介をし、少しでも“可視化努力”をしようと改めて腹をくくったところです。
ところで吟醸王国HPの『読んで酔う静岡酒』では今月から、2004年開催の浜名湖花博での地酒テイスティングサロンのレポートを再掲中で、今後掲載予定の記事に、酒粕料理レシピがあります。
当ブログスタート時にも紹介したレシピですが、考案してくれた浜名湖ロイヤルホテルパティシエの田米嘉宏さんは、私にとって地酒がらみでお世話になった大切な“仕事人”のお一人(県で表彰されたのは田米さんの上司でもある浜名湖ロイヤルホテル総支配人&総料理長の長門慶次さん)。私からささやかな感謝の気持ちを込めて、酒粕デザートレシピを再掲させていただきます。
パーティーシーズン前、しかも吟醸酒粕もボチボチ出始めますから、ぜひご参考にどうぞ
★美味しい甘酒の作り方&シャーベット仕立て★
(材料・15カップ分)酒粕350g、水1リットル、上白糖140g、塩小さじ2分の1
①材料をすべて鍋にかけて甘酒をつくる。酒粕を鍋に一度に入れると焦げやすいので、ボール等で少量ずつ溶かして鍋に移し、最後に砂糖と塩で味付けするとよい。
②甘酒を冷やし容器に移して冷凍庫に入れる。
③約2時間後、半分が凍ったところを見計らい、フォークでザクザクかき混ぜ空気を入れる。
④冷凍庫へ戻し、さらに1時間ごとにフォークを入れる。これを2~3回繰り返して完成。ハーブやかんきつ類の皮を添えてもよい。
★酒粕サブレ★
(材料60~70枚分)酒粕150g、バター60g、グラニュー糖200g、薄力粉250g
①バターを常温に戻し、酒粕となじませ、グラニュー糖を入れる。
②ふるった薄力粉を加えて、こねずにざっくり合わせる。
③棒状に伸ばし、適当な数に切る。
④160度のオーブンで10~15分焼く。
『しずおかの酒を読んで酔う~國本良博の吟醸王国リーディング』後半は、静岡の蔵元9蔵の物語。過去に書いた記事をベースに、朗読用にリライトしたものです。3本ずつ読んでいただいて、5分の休憩をはさむというプログラム。休憩タイムにはお客様に、次に読む酒を試飲コーナーから調達してもらいました。MCの神田えり子さんが「さぁ、“給水タイム”ですよ」と軽妙に呼び掛けてく ださるので、会場は実にアットホームな雰囲気でした
トップバッターはご当地『初亀』。会場である大旅籠柏屋の名前を入れ、地域の発展と酒蔵の存在について紹介しました。先月、國本さんとの2回目の読み合わせの直前に、名杜氏瀧上秀三さんの訃報に接し、急きょ、追悼の一文を加えました。
最初、「ご冥福をお祈りします」と書いたところ、國本さんから「瀧上さんのお宅が浄土真宗だったら、ご冥福は祈っちゃいけないから・・・」と指摘され、ご冥福をお祈りしますって弔文を電報で送ってしまった後だったので慌てましたが、後で蔵元の橋本さんに確認し、セーフ。
・・・とはいえ、ご冥福を~って言い方はなんとなく杓子定規のような気もして、「天国から初亀と岡部の町の発展を見守ってくださっているでしょう」と〆させていただきました。
次いで地元藤枝の『杉錦』『志太泉』。杉井さんはその実直なお人柄を、志太泉は98年に毎日新聞「しずおか酒と人」でも紹介した、桜の季節に瀬戸川上流を訪ねたときの思い出(こちらの記事)を読んでいただきました。蔵の直接的な紹介ではありませんが、朗読では風景や情景の具体的な描写があると聴き手が想像を膨らませやすいと考えました。
杉錦の紹介の後、國本さんも「この文の通り、本当に杉錦の味って杉井さんの人柄そのものなんですよね~」と実感を込めてフォローしてくださったのがありがたかった
次の『國香』も蔵の周辺の田園風景や人々の暮らしを通し、國香という酒が生まれるバックボーンを想像してもらおうと、2006年に書いた雑誌sizo;ka掲載の『真弓の酒蔵スケッチ』の文をチョイスしました。
『國香』の次は、弟(おとうと)弟子にあたる『喜久醉』です。これは松下米誕生の経緯を紹介した「しずおか酒と人」の2本の原稿をつなげ、再構成したもの。過去の歩みや実績を取材でうかがって書いた原稿とは違い、私自身が現場に立ち会い、ライブで見守ってきた物語だけに、どうしても長文になってしまい、削る作業はとても辛かった…。それを補完してくれたのは音楽でした。
今回の朗読企画で楽しかったのは音楽選び。私が好き勝手に選んだCDを國本さんが朗読の長さや順番に合わせて編集してくれて、当日は私が 音出しを担当しました(写真右奥)。
基本的には『吟醸王国しずおか』パイロット版編集時に集めた音源からチョイスしましたが、喜久醉の場合は、昨年、松下さん青島さんと3人でトークセッションをしたときのことを思い返し、自然に浮かんだのが映画『ミッション』(ロバート・デニーロ、ジェレミー・アイアンズ主演)の主題テーマ“Gabriel's Oboe”のメロディでした。作曲したエンニオ・モリコーネが、自身一番のお気に入りだそうで、サラ・ブライトマンが歌詞を付けて歌ったことでも知られています。旋律の美しさもさることながら、『ミッション』で描かれた宣教師たちの厳しい伝道活動の姿が、喜久醉松下米という酒が生まれるまでの2人の道程に重なってみえたのでした。
朗読の間、客席の青島社長の表情が気になり、チラチラ見ていたんですが、目を閉じてじっと下を向いておられました。
「この酒を春から夏の間、数回試飲したところ、時を追うごとに味が丸くなっていった・・・」というくだりでは、搾りたての頃は味もそっけもなく、どうなっちゃうんだろうと心配になり、やがて少しずつ変化していく酒に不安と期待を膨らませた当時を思い出しました。松下さんの初挑戦の山田錦を、たとえ不作でも松下家と青島酒造の負担にならないようにと、ご自分のポケットマネーで全量買い取った青島社長…。初試飲のときの社長のお気持ちを想像したら、涙がこみあげてきました。
原稿を書いているときは何でもなかったのに、國本さんの語りがこんなに心に響いてくるとは・・・。
次の『若竹』は、「しずおか酒と人」の連載で自分が一番のお気に入りのこちらの記事。「今朝の寒さに洗い場はどなたよ~♪」という酒造り唄から始まる物語で、実際に南部杜氏酒造り唄を流しました。・・・といっても私のミスで國本さんの読みだしとタイミングが合わず、やりなおし。せっかくの感動物語なのに出だしにつまずいてしまってブワッと大汗をかいてしまいました。あ~あ
ラスト3本は『正雪』『磯自慢』『開運』と、静岡が全国に誇る名杜氏のいる蔵のお話です。『正雪』の元原稿はこちら。ご覧の通り杜氏の山影純悦さんのメッセージも入っているんですが、朗読では時間の都合で泣く泣くカット。逆境を乗り越えた蔵元一家のお話にまとめてみました。
『磯自慢』は、なぜ今磯自慢が日本で指折りの名醸になったのか、さらには私が最初に訪問した酒蔵であり、私が最初に感動した酒を造った杜氏多田信男さんの麹造りを撮ることが『吟醸王国しずおか』の一つのミッションだったというお話を紹介しました。
最後は『開運』の故・杜氏波瀬正吉さんと奥さまの物語。ベースになっているのはこのブログ記事です。この記事を書いたときは、まさかこんな形でこのお話を朗読していただく日が来るなんて想像もしていませんでした。夫婦のお話だったので、音楽は、大河ドラマ『龍馬伝』で夫婦愛を描いたシーンに使われていた『想望』という曲を使いました。後で何人かに「龍馬伝の音楽、よかったね」と褒めていただきました
奥さま豊子さんの、畑で採れたネギをお父ちゃんに送ってやるんだ…という台詞のくだりは、國本さんの温かい口語が情感を際立たせ、現場を思い出して涙がじんわり滲んできました。
・・・気が付くと、会場からもさかんに鼻をすする音が。最初、「あれ、エアコンの温度が低いかな」と思ったんですが、後で参加者のみなさんのブログに「嗚咽をこらえていた」「あのお話は泣けた」と紹介されていて、ハッとしました。現場を知っている私が思い出して泣くのは当たり前かもしれないけど、波瀬さんや豊子さんを直接知らない人も、朗読だけで泣けるんだ・・・と。
・・・やっぱり朗読ってすごいですね。ブログを読むだけなら嗚咽をこらえるほど泣けるなんてことはないと思いますが、朗読という血の通った人間の声の変換作用によって、物語に“体温”が与えられたんですね。
実は10日午前、FM-Hiの『ひるラジ静岡情報館』に出演させていただいたとき、パーソナリティTJさんに、このお話を「想望」付きで読んでいただいたのです。最初、20分ほど出演時間があると聞き、だったら朗読を1本お願いしようと、短めの文をチョイスしたんですが、5日参加者のブログで開運のお話に泣けたというコメントがたくさんあるのを知って差し替えたんです。
女性のTJさんが読まれると、書き手である私自身の声として聴いていただけるかもしれない、自分も聴いてみたいという願望もありました。
「國本さんの朗読と比較されるとイヤだな~」と苦笑いされていたTJさんに、その旨を伝えると、「わかった、鈴木真弓の代理として読めばいいんだね」とニッコリ。一度も事前読み合わせをしなかったのに、パーフェクトな語りを披露してくださいました。・・・さすがプロは凄いっと鳥肌が立ちました。
事前告知をほとんどしていなかったのでどれだけの方が聴いてくださったのかわかりませんが、私自身は目の前でTJさんに読んでいただいて、生放送中にもかかわらずウルウルしてしまいました。TJさんには無理をお願いしたお礼に『開運大吟醸 波瀬正吉・伝』を差し入れました
5日の吟醸王国リーディングの終了は結局20時30分。まるまる3時間の長丁場になってしまいましたが、國本良博さんの責任感と使命感に支えられ、充実した朗読会となりました。このような語り部に出会わせてくれた神様に「オネスト・ゴッド!」と杯を捧げたいと思います。
最後になりましたが、会場を提供し、素晴らしいお料理・お酒・お茶を給仕してくださった一祥庵のみなさま、見事な進行で3時間を飽きさせずに仕切ってくれた神田さん、試飲コーナーを担当してくれた篠田さん&小楠さん、受付と写真記録を担当してくれた櫻井さん、外の寒空でノミの市の番をしてくれた高島さん&後藤さんに、改めてこの場を借り、心から感謝申し上げます。
そして参加者のみなさま、とりわけブログで温かいお言葉をくださったみなさま、この2ヶ月の不安と苦労が一気に吹き飛びました。本当にありがとうございました。
「ぜひ次の機会を」とのお言葉もいただきましたが、来年はとにかく映画を完成させることを優先しなくては。完成の折には、朗読会や音楽ライブもミックスさせて、吟醸王国にふさわしい、もっとにぎやかな“酒の総合文化祭”にできたらと思います
それまでに、地域のみなさま、クリエイターのみなさまも、ぜひぜひ地酒と組んで出来そうな何か新しいこと、面白いことをプランニングし、実現の道を探っておいてくださいね
5日17時30分より、酒と匠の文化祭『しずおかの酒を読んで酔う~國本良博の吟醸王国リーディング』が始まりました。最初の30分は、一祥庵特製松花堂弁当と『富蔵』純米吟醸を味わいながら、『吟醸王国しずおか』パイロット版を観賞していただき、川柳即興コンテストの結果発表&表彰式、サンシンのシアンさんの生演奏をはさみ、予定より少し遅れて18時30分頃から朗読が始まり ました。
朗読プログラムは以下の通りです。
1.日本酒の季節ごよみ 篠田次郎『日本酒ことば入門』から
2.文士、酒を詠むⅠ 井伏鱒二『厄除け詩集』から「泥酔」「勧酒」
3.英文学者の日本酒文化論 吉田健一『まろやかな日本~日本酒の定義』から
4.文士、酒を詠むⅡ 若山牧水『酒の賛と苦笑』から
5.鈴木真弓のしずおか蔵元物語から『初亀が地元にある喜び』
6.『杉錦~地道に造り、丁寧に売る』
7.『志太泉~このごちそうは水の恵み』
8.『國香~蔵元杜氏を育てた里』
9.『喜久醉~きずな結んだ栽培醸造の夢』
10.『若竹~蔵元父子の心つなぐ造り唄』
11.『正雪~酒は家族の履歴書』
12.『磯自慢~吟醸王国しずおかの、ことのはじまり』
13.『開運を支えた男』
当初は私の蔵元物語を先に(前座として)、後半に文士の名文をじっくり聞いていただこうと思っていたのですが、國本さんの「篠田さんのことば入門は日本酒のイロハがわかるから先のほうがいいんじゃない?」との助言で、プログラムを立てなおしました。
私の原稿を後半にしたほうが、もし時間が長引いて、終了時間がオーバーして途中でお帰りになる人がいてもいいですしね。もちろん最後までじっくり聴いていただきたいところですが
篠田さんの12月・にごり酒編に書かれた、『(アルコール度20度の)にごりをグイーっとやるのは“油断召されるな”』との忠告に、朗読後のミニトークで、國本さんご自身が“油断をして腰が立たなくなった”経験を披露され、ラジオ番組を聴いているようで楽しかった!! フリートークの達人國本さんですから、ホントは1作ごとにそんなミニトークが入ると盛り上がるところですが、用意した朗読原稿のボリュームが多すぎて、せっかくの國本さんの持ち味を活かすことができませんでした。・・・これは反省材料でしたね。
吉田健一さんは昭和を代表する英文学者で、吉田茂の息子さん。この『日本酒の定義』が収録されている『まろやかな日本』(昭和53年刊)は、外国の新聞に発表したエッセイをまとめたもので、もちろん原文は英語。イギリスの批評家から「著者は完全無比な英語を使いこなす日本人」「本書は名人が作ったけっこうなスフレのような味わい」と絶賛されました。内容も、日本酒を世界の食文化の中で位置付けたり、日本の庭園造りに喩えるなど、素晴らしい比較文化論になっていて、こういうふうに日本酒が描かれると、日本酒はやっぱり“国酒だ”と誇りに思えてきます。
朗読原稿はいつもご自分で入力し直し、読みやすいよう、オリジナルの台本を作るとおっしゃる國本さん。今回は原稿の本数が多く、すべてを入力するにはいくらなんでも時間がなさすぎるし、私がテキストデータを提供すれば済むことなので、すべてこちらで用意するつもりでしたが、この、吉田さんの原稿だけは「じっくり読んでみたいから、自分で入力してみるよ」とおっしゃってくださいました。
ところがところが、実際に音読すると、これがやたら回りっクドイ?文章で、読むほうも聴くほうも苦痛に思える個所がしばしば…(苦笑)。翻訳者が小説家や脚本家だったらきっともっと読みやすい翻訳文にできたんでしょうが、どうやらそうではなかったようです。
困惑する國本さんの様子に、ここは思い切って手を入れるしかないと腹をくくり、原文で伝えようとしたであろう主旨を活かしつつ、日本語訳を簡素化してみました。
井伏鱒二の『泥酔』は、名訳『勧酒』が収録されている復刻版『厄除け詩集』を買った時、見つけた詩です。「べろべろの神様は~」と歌がはさまる詩で、國本さんがどんなふうに読まれるのか、ちょっぴり“お手並み拝見”。國本さんも「メロディが想像つかないからなぁ」と頭をかいておられましたが、見事な“くんちゃん節”で、
♪べろべろの神様、イズ・ア・バッカァス、
バッカァス・イズ・ア・オネスト・ゴッド♪
と読み上げてくださいました。
お忙しい中、朗読会に駆けつけてくださった『喜久醉』青島酒造の社長夫妻が、終了後、真っ先に「あの、べろべろの詩、うちの親父が酔っぱらって気分のいい時、よく唄っていたんだよ。歌なんか唄うような人じゃなかったんだが、あの詩だけはお気に入りだったんだなぁ。凄く懐かしかったよ」と話してくださってビックリ!。
・・・『喜久醉』の物語の感想をドキドキしながら聞こうと思っていたので、一瞬、拍子抜けしちゃったんですが、よくよく考えてみると凄い偶然です。世の中にあまたある酒の詩の中、井伏鱒二の詩集にもたくさんある中で、たまたま選んだ「べろべろの神様」が、國本さんや私が敬愛する蔵元さんにゆかりがあったなんて・・・。まさに「べろべろの神様」がもたらしてくれた素敵な偶然ですね。(つづく)
5日酒と匠の文化祭の続き・・・といっても、もう1週間経ってしまいました。この間、参加者の方々がご自分のブログ等でいろいろ感想を書いてくださって、ありがたく拝見しました。中には「こんなに良い酒の会は初めて」とお褒めくださった方も・・・。お酒を愛する人に喜んでもらえてホッとしました
スタッフの櫻井美佳さんが、酒粕料理ワークショップについて詳しく紹介してくれてますので、こちらをぜひ さらに神田えり子さんが夜の朗読会について素敵なレポをしてくださったので、こちらをぜひ
当日メイン会場の柏屋和食処一祥庵では、新酒の無料試飲&吟醸熟成酒の有料試飲、『吟醸王国しずおか』パイロット版試写、『しずおかの酒を読んで 酔う~國本良博の吟醸王国リーディング(朗読会)』を開催しました。
とりわけ、しずおか地酒研究会14年目にして初めての挑戦である、酒の物語を、その酒を飲みながら聴いてもらう朗読会・・・。このアイディアは、過去の様々な経験がベースになっています。
まず朗読の魅力。これは、なんといっても『朝鮮通信使~駿府発二十一世紀の使行録』で林隆三さんの朗読やナレーションと間近に接してからです。映像に付ける語りは、どうしても映像の補完、というポジションに置かれがちですが、『朝鮮通信使』の中で、黒バックに隆三さんの語りの表情だけで、600字ちょっと読んでいただくシーン(雨森芳洲の『交隣提醒』朗読シーン)があり、当初は不安がありましたが、語りと音楽だけ、というのが、逆に非常に説得力を持ち、とても印象的なシーンになりました。
朗読は映像だけでなく活字を補完する力もあると気づかせ、これまで“読んでもらう文章”しか書いてこなかった私に、“語ってもらう・聞いてもらう文章”の書き方を教えてくれた、とても意義深い仕事でした。
2009年の静岡県地酒まつり(沼津)で、長年、ボランディアでMCを務めてくださった國本さんに対する主催者側の態度に疑問を感じ、語りのプロである國本さんに、地酒の魅力を伝えていただく方法はもっともっとあるはずだ…と痛感し、まだご依頼できる段階ではなかったのですが、『吟醸王国しずおか』のナレーションを國本さんにお願いしました。ちょうど1年前のことです。
資金難に直面し、なかなか編集作業に入れない日が続く中、今年9月、蒲原の和食店『よし川』の女将さんのお誘いで浮月楼で開催された和太鼓ようそろライブに参加したとき、食事し、酒を飲みながら聴く和太鼓や横笛の演奏がとても心地よく、その場で吉川さんに「酒を飲みながら酒の物語を聴く朗読会ってどうでしょうねぇ?」とつぶやき、脳裏には(なかなか映画の編集&ナレーション収録に入れず申し訳なく思っていた)國本さんの顔が自然と浮かびました。
9月には篠田酒店さんの会、藤枝はしご酒協賛のノミの市をやらせていただきましたが、パイロット版上映会は6月以来、ご無沙汰していたので、斗瓶会員(ボランティアスタッフ)に「年内にもう1回、パイロット版上映が出来たら・・・」と相談したところ、とんとん拍子で12月5日一祥庵での開催が決まり、一祥庵では定期的に音楽ライブや朗読会もやっていると知って、準備期間は2ヶ月しかありませんでしたが「これはやるしかない!」と。
やると決めたら後先考えず、走り出してしまう私…。さっそく國本さんに打診をして快諾をいただき、次いでブログで「朗読で聴いてみたい酒の小説やエッセイがあったら教えて」と呼びかけ、東京の編集者冨板さんからは「なんといっても“サヨナラダケガ人生ダ”の勧酒(井伏鱒二訳)でしょう~」のメール、浜松の料亭『弁一』鈴木さんからは、酒の名著リストが載っている古い雑誌のコピーを送っていただき、吉田健一の日本文化論集『まろやかな日本』に辿り着きました。
ほか、何人かに推薦してもらったり自分で集めた本など7~8冊をリストアップをして、國本さんと打ち合わせができたのが10月下旬。その中から、國本さんご自身が読んでみたいとおっしゃった吉田健一『まろやかな日本~日本酒の定義』と篠田次郎『日本酒ことば入門』に、酔っ払いの気持ちを代弁してくれる若山牧水『酒の賛と苦笑』、井伏鱒二『厄除け詩集』の詩歌を加え、4作品を選びました。
最初は名著名文学を中心に、私の原稿は前座的に読んでいただければいいかなと思っていました。文士の名文と自分の原稿を比較されるのはなんとも辛いのですが、どんな稚拙な文でも、「その酒を飲みながら聴く」のであればお客様もそれなりに楽しんでいただけるだろうと、HPでも紹介している過去記事から、自分が気に入っている話、朗読に適していそうな話9本をピックアップしました。
9本ってちょっと多いかなと思いましたが、お客様にしてみればいろんな銘柄のお話が聞けたほうが楽しいですよね。そのかわり、1本をうんとコンパクトに削らなければならないし、耳で聞いただけでは意味が伝わりにくい専門用語・・・たとえば「浸漬(しんせき)・・・しかも國本さんが言語学的に調べたところ正式には“しんし”と読むそうな」とか、「酒林(さかばやし)・・・蔵の玄関の軒下に吊るされる杉の玉」―などはカットしなければなりません。
でも、國本さんと読み合わせをし、あれこれディスカッションをしながらリライトしていくことで、かえって非常に分かりやすく、すっきりした文章に甦ったのです。吉田健一さんや篠田次郎さんの文も、難解&くどくて読みにくい個所がたくさんあり、これも國本さんの意見をうかがいながら手を加えました。
・・・声に出して読んで伝えるという作業は、文章を活性化させる貴重な作業なんだと、ホント、実感しました。
また、こういうときって、天の恵みというのか、巡り合わせがよいというんでしょうか、たまたま國本さんが、フリーになって初めて10月末に朗読会を頼まれてやることになり、ご自分で朗読会や単独ライブ用にPA(音響機器)をひと揃えされたんですね。
國本さんはバンド活動をされていて、ご自分で音楽編集ソフトも自在に操られるので、私が好き勝手に「このお話にはこれ」と持ちこんだCDを、朗読順につなげて編集し直してくださいました。
結局、読み合わせは初回8時間、2回目も4時間ぐらいかかってしまいましたが、最初からライブと同じようにマイク&スピーカーに音楽まで付けて、ばっちり出来ました
そんなこんなの準備を1ヶ月足らずでこなしてくださった國本さんのおかげで、無事、5日当日を迎えることができたのです。
また当日はライブイベントの進行に慣れているMC神田えり子さんのおかげで、長時間の朗読ライブをお客様に飽きさせることなく遂行することができました。準備期間が短くても、スキルを持ったプロがコラボレートすればちゃんと出来るってことを、まざまざと実感したのでした
準備のお話で終わってしまいました。スミマセン、続きはまた。