5月28日 NHK海外ネットワーク
使用済み核燃料は核物質を取り出し、新しい核燃料として再利用される。
その中心となっているのがフランス。
フランス北西日にあるラ・アーグ再処理工場は、
世界各地の原発から使用済みの核燃料が送られてくる最大規模の再処理施設である。
日本からも約3、000トンが輸送された。
去年この施設から日本の原発へ、
使用済み核燃料から取り出されたプルトニウムでつくられたMOX燃料と呼ばれる核燃料が
運ばれた。
プルトニウムは核兵器の原料になるため厳重な警戒態勢での輸送。
使用済み核燃料には原料のウランが燃えてできる核物質のプルトニウムが含まれている。
プルトニウムを取り出す作業を行なうのが再処理工場である。
プルトニウムとウランなどを混ぜ合わせて円筒形に固められた燃料を
細長い管につめたのが燃料棒。
複数の燃料棒を束ねて、実際に原子炉で使われる形になる。
日本では核燃料を再処理できる施設がまだ稼動しておらず、
ラ・アーグなど海外に使い終わった核燃料を送っていた。
そこで再処理して作られたMOX燃料を日本の原発で利用する仕組みが出来たのである。
この仕組みはプルトニウム(plutonium)のプルと、
サーマルリアクター(thermal reactor)のサーマルをとって
プルサーマル(plu-thermal)とよばれている。
日本のプルサーマルはおととし九州電力の玄海原発で初導入された。
その後、他の原発でも導入が始まり、
2015年度までには全国の16~18基の原発でプルサーマル開始の計画だった。
MOX燃料は日本の原発のエネルギー政策の支える存在になるはずだったが、
福島第一原発の事故によって状況が大きく変わった。
日本政府は事故を教訓に原子力政策の見直しを行なうことを明言。
各地のプルサーマルが不透明な状況になった。
こうした中でもMOX燃料を生産しているフランスの姿勢は変わらない。
サルコジ大統領は福島の事故のあとも、原子力政策の推進を強調している。
しかしフランス国内でも市民の間では懸念の声が広がっている。
原発政策に反対する政治団体がパリ市内で開いた集会では、
世界中から使用済み核燃料を集めてプルトニウムをとりだす再利用に、
フランスが深くかかわることへの批判が相次いだ。
専門家は福島第一原発の事故をきっかけに、
使用済み核燃料の再利用について世界的に論議が起きる可能性を指摘している。
使用済み核燃料の再処理の大きな問題は、
核兵器の原料にもなるプルトニウムが大量に取り出されてしまうことである。
フランスの工場には核兵器数千個分相当のプルトニウムがあるとみられ、
核拡散防止の懸念材料になっている。
使用済み核燃料の再処理事業はフランスとイギリスにとって原子力政策の要で、
両政府は今後も再処理路線を堅持する方針である。
しかし福島第一原発の事故で各国で不安が広がっており、
再処理事業がこれまでどうり進められるかどうかは不透明な状況である。
使用済み核燃料の最終処分は何万年にもわたって安全性を確保するため、
深い地層に埋めることなどを想定しているが、
ほとんどの国ではその処分場がまだ確保できていない。
日本では、
使用済み核燃料を再処理した際に発生するきわめて放射能が強い高レベル放射性廃棄物を
ガラスと混ぜて固めて最終処分することにしているが、
処分場の選定はメドが立っていない。