10月5日 NHK海外ネットワーク
香港で現在行われている抗議活動のきっかけとなったのは香港政府のトップを選ぶ行政長官選挙の改革だった。
市民による直接選挙とは名ばかりで
中国の体制に批判的な人物は事実上立候補できない仕組みだったため市民の間から不満が噴出した。
こうした抗議活動の中心となってきたのは1997年の中国返還後の香港で育った高校生を含めた若い世代である。
抗議活動の中心となっている学生団体のメンバー 劉家棟さん 18歳。
日本でいえば高校3年生。
毎晩のように学生らが占拠する区域に足を運び高校生たちを励ます。
(劉家棟さん)
「このままでは香港の民主主義は後退してしまう。
真の意味での直接選挙を求める。」
中国本土広東省生まれの劉さんは小学3年生の時に家族で香港に移住。
そこで“1国2制度”のもとでの自由な空気にふれる。
政治に興味を持つようになったのは中学生の時
中国本土では教えられることのなかった1989年の天安門事件に関する式典に参加したのかきっかけだった。
(劉家棟さん)
「もし中国本土に残っていたら天安門事件の真実に触れる機会はなく
政治に関心を持つことはなかったと思う。」
一昨年 劉さんが政治への関心をさらに強めるきっかけとなった出来事があった。
小学校から高校まで中国共産党をたたえるいわゆる“愛国教育”の義務化が打ち出されたのである。
劉さんをはじめ高校生らは政府が学生を扇動しようとしていると反発し大規模な抗議活動を行った。
最終的に香港政府に愛国教育の義務化を撤回させたのである。
(劉家棟さん)
「“愛国教育”は学生の自主性を奪う。
次の世代の権利を守らないといけないと考えた。」
今回 選挙制度の変更によって1国2制度は再び危機に直面していると考える劉さん。
しかし先頭に立って抗議する劉さんのことを両親は心配している。
父親からは頻繁にメールが届く。
(劉家棟さん)
「あまり遅くならないように言われました。
現場のことを全部は話せない。
親に心配をかけたくない。」
劉さんは香港のラジオ局の討論番組に呼ばれ他の高校生らと抗議活動を巡って意見を交わした。
抗議活動に反対する動きも拡大し衝突も起きているなか参加者の意見は分かれた。
「中央政府は決定を撤回しないと表明した。
我々の目標を見直すべきではないか。
時機を見て撤退すべきだと思う。」
「大きな目標どころかまだ小さな目標すら達成できていない。
中央政府は痛くもかゆくもないはずだ。」
劉さんはいずれ自らが生まれた中国本土に香港ならではの自由な価値観をもたらしたいとまで考えている。
(劉家棟さん)
「民主主義は次の世代まで続いていかないといけない。
私の夢は香港の民主主義の良いところを生かし中国本土に影響を与えることだ。」