10月16日 キャッチ!
タイの首都バンコク。
日本食レストランの自慢は新鮮なサカナ。
ブリやメバル、カレイと一緒にテーブルに並んだのは北海道函館の魚介魚介を代用するスルメイカ。
水揚げした新鮮さをそのままに提供されている。
(客)
「タイで食べるイカと全く違って歯ごたえがあっておいしかったです。
日本で食べたものと同じですね。」
日本からの距離5000㎞。
36時間もの長旅にもかかわらずなぜ新鮮さを保つことができたのか。
そこには日本の漁業関係者の新たな取り組みがある。
新鮮な海産物の宝庫 北海道函館。
1日100トンの魚介が市場に水揚げされる。
中でも刺身で食べるとおいしい新鮮なイカが特に人気である。
しかし国内の人口の減少や人々のサカナ離れなどで魚の消費量は低迷。
日本人が1年間に食べるサカナの量はここ10年で約25%近く減少している。
水産業の継続について関係者らは危機感を高めている。
(北海道食品開発流通地興 谷澤廣代表理事)
「人口減少が著しい。
市場を日本だけではなく海外に求めていきたい。」
10月 函館の水産業関係者らは経済産業省の支援を受けて鮮魚を海外に輸出する実証実験を始めた。
これまで魚介の空輸には氷や保冷材が使われてきたが
冷やすところにむらが出来たり保冷効果が長時間持続しなかったりという課題があった。
そこで鮮度を保つために今回選ばれたのがある特殊な氷である。
シャーベット状の氷。
函館市にある研究所がメーカーと共同で開発した。
肉眼にほとんど見えないぐらいに非常に細かい粒でサカナの表面から体内の隅々までむらなく冷やすことができる。
氷は真水に海水を混ぜて作られている。
海水の塩分によって氷の融点が下がり低い温度を持続できるのである。
塩分濃度を調整すればサカナも種類ごとに最適な温度を保つこともできるようになった。
(北海道立工業技術センター 吉岡武也主任研究員)
「低い温度で輸送ができると言うことは従来よりも長い期間鮮度を保つことができる。
従来よりもより遠方の消費者に対して鮮度の良い魚を届けることができる。」
今回遠方の消費地として選ばれたのが東南アジア有数の大都市タイのバンコク。
函館から羽田を経由して丸一日かけて鮮魚を空輸した。
バンコクに到着すると早速料理人が味を確かめた。
(調理師)
「歯ごたえも全然違う。
やっぱりおいしいですね。」
函館で食べる味そのもの。
客の評判の上々だった。
そもそもタイには冷蔵車の数が少なく商品は冷たい状態で長時間保たれることはない。
このため日本から保冷剤を入れて魚を空輸しても
バンコク市内のレストランに運び込まれるまでにはサカナの温度は上がってしまう。
保冷材を使った従来の方法によるものと
シャーベット状の氷を入れた新しい方法の温度変化を比較すると
タイに到着して8時間後
従来の方法ではサカナの温度が6,4℃まで上昇したのに対し
新しい方法ではサカナの温度に大きな変化はなく氷点下7℃と低い温度が維持されていた。
この実験結果に北海道の漁業関係者は手ごたえを感じている。
(北海道食品開発流通地興 谷澤廣代表理事)
「温度がフラットな状況で管理して送ることができた。
これは大きな成果だと思う。」