日暮しの種 

経済やら芸能やらスポーツやら
お勉強いたします

愚行の極み

2014-10-11 10:30:00 | 編集手帳

10月3日 編集手帳

 

その昔、
風呂を沸かし、
飯を炊くとき、
竹の筒で火をおこした。
火吹き竹という。
竹筒の根っこをたどれば、
藪(やぶ)の中に行き着く。
〈火吹き竹の根は藪にあり〉は、
物事の本当の原因は別の場所にある、
の意味で用いられる。

日本人が浴びた不名誉な火の粉を払うべく、
みんなで藪の所在を突き止めようとしているとき、
火吹き竹を吹いた人の周辺をテロまがいの暴力で脅し上げて何になる。
愚かという以前に、
卑劣で許しがたい犯罪である。

「元記者を辞めさせなければ、
 ガス爆弾を爆発させる」。
かつて慰安婦報道に携わった元朝日新聞記者が教授や講師を務める二つの大学に、
脅迫文が届い た。

気に入らぬ報道に暴力で落とし前をつけるのを許せば、
民主主義は成り立たない。
誤報の火をつけた“火吹き竹”の記者個人を責めるのではなく、
誤報が放置された“藪”の真相を解明して他山の石にしようとする真摯(しんし)な言論活動への侮辱でもある。

朝日の誤報は日本人の名誉を炎にさらしたが、
自分の野蛮な行為もそうであることに天誅(てんちゅう)気取りの脅迫者は気づいていまい。
〈薪(たきぎ)を抱(いだ)きて火を救う〉。
愚行の極みである。

コメント