6月14日 国際報道2017
日本では
この10年で約460もの高校が閉校に追い込まれるなど
教育現場は少子化による生徒の減少に悩まされている。
こうしたなか高知県のある私立高校は
新たな生き残り戦略として
ナイジェリアから8人の留学生を招いた。
その名も「アスリート留学生」。
高知市にある高知中央高校。
過去に生徒数が定員の4割に減り
廃校が検討されたこともある。
4月 鳴り物入りで入学したのが8人のナイジェリア人留学生である。
今年度からこの高校が始めた“アスリート留学生制度”。
部活動で好成績をおさめ知名度を上げることが狙いである。
(高知中央高等学校 近森正久理事長)
「全国から生徒さんに来てもらうには部活動の強豪校でないと。
注目してもらうために
留学生に頑張ってもらって
県外の生徒を獲得しないと
学校経営自体がやっていけない時代が来ると思います。」
部活動の即戦力として注目したのがアフリカの選手。
ナイジェリアで幅広い人脈を持つ商社マンの力を借り
留学生の選抜を行うことにした。
ナイジェリア政府の協力を仰ぎ
各地で選抜テストを開催。
選ばれた留学生は将来有望な選手ばかりである。
バスケットの本場アメリカの高校からのオファーを断り日本行きを選んだ選手もいれば
190cmの長身に跳躍力を兼ね備えた女子バレーボール選手。
学費は高校が全額負担を約束。
卒業後は日本の実業団やプロでの活躍も期待できる。
(留学生)
「日本に行けるなんて本当に夢みたい。
部活動でベストを尽くしたいです。」
しかし日本での生活は苦労の連続である。
放課後は毎日日本語の授業。
それだけにとどまらない。
2mの体に窮屈な寮のベッド。
慣れない日本食。
環境の変化についていけない留学性も出てきた。
男子バスケットボール部のアデオラ・シェウン・アデロラさん。
たび重なる遅刻や朝から大音量で音楽を流すなどの行動が問題視されていた。
そのシェウンさんが不満をあらわにしたのが日本の部活動特有の集団行動である。
(ナイジェリア人留学生 アデオラ・シェウン・アデロラさん)
「ナイジェリアは集団行動など無いのに
日本は厳しすぎる。」
シェウンさんの態度に日本人の部員も困惑を隠せない。
特に悩み続けたのはキャプテンの中岡陸斗さんである。
(キャプテン 中岡陸斗さん)
「すぐ調子に乗ってすぐどっか行ったりすぐ手を出したりするので
ガツンと言わないとなめられるんで。」
留学生が入学して1か月。
寮にガラスの割れたあとが。
ついに中岡さんとシェウンさんが大喧嘩をしたというのである。
(キャプテン 中岡陸斗さん)
「シェウンが強い口調で手を出してきたリ
もう自分も腹立ってて。」
(ナイジェリア人留学生 アデオラ・シェウン・アデロラさん)
「肩をたたいただけなんだ。
ケンカしたかった訳じゃない。」
急きょ留学生のスカウト担当者が部員を集めミーティングが開かれた。
(スカウト担当 伊藤政則さん)
「部活でも言葉の壁でもストレスを抱えて
相当なストレスだと思う。
その気持ちだけは分かってあげて欲しい。」
一方で留学生にも辛抱強さを求めた。
「大変だが
日本のやり方に合わせないといけない。」
それから4週間後のインターハイ県予選の直前。
中岡さんはシェウンさんの変化を感じていた。
少しずつ規律を守ろうとする努力が見え始めたのである。
(キャプテン 中岡陸斗さん)
「今度の試合でベストを尽くそう。」
5月末
全国大会への切符がかかる決勝戦。
相手は強豪校に勝ち続け勢いに乗る高知追手前高等学校。
序盤 中岡さんを中心に試合のペースを握る。
後半シェウンさんがコートへ。
チーム最多42得点の活躍だった。
試合は115対35の圧勝。
目標の全国制覇に向け弾みとなる勝利だった。
(キャプテン 中岡陸斗さん)
「これから四国大会とインターハイがあるので
コミュニケーションの面では日頃から話していく。」
(ナイジェリア人留学生 アデオラ・シェウン・アデロラさん)
「日本一になるため誇りを持って頑張るよ。」
生徒確保のため外国人に見出す地方の高校。
文化の違いを乗り越えようともがく
高校生たちの青春が始まった。