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127万人が手にした若手官僚の“提言”

2017-07-24 06:30:00 | 報道/ニュース

6月23日 おはよう日本


中央官庁が集まる霞が関。
5月
ここで働く官僚たちからある提言が出された。
タイトルは
不安な個人、立ちすくむ国家」。
・手厚い年金や医療も
 必ずしも高齢者を幸せにしていない
・若者の社会貢献意識は高いのに
 活躍できていない
こんなもったいない状況を放置していいはずがない。
率直な言葉で日本の現状に強い危機感を訴える内容である。
公表から1か月余で約127万人が文章をダウンロード。
反響が広がっている。
「新鮮だったのでおもしろいなと思った。」
「官僚の人たちも危機意識がすごくあるんだというのが印象的。」
この提言
もともとは経済産業省の会議用資料で
ホームページに公開したところSNSなどを通じて拡散していったのである。
インターネット上では提言が打ち出す強い危機感に対して
・「なんとかしないとヤバイ感」がすごい
・共感をもった
という意見。
逆に
・具体的解決もなく甘い
・現場を知らない人々の“机上の空論”
賛否さまざまな多くの反響が出ている。
この提言はどのようにして書かれたのか。
そしてなぜ広がったのか。

昼休み経済産業省の官僚たちが集まってきた。
提言をまとめたプロジェクトのメンバー
20~30代の若手官僚たちである。
今回の反響は予想外だったという。
(平成26年入省 メディア・コンテンツ課)
「これまでの役人の仕事より
 少しでも皆さんにいろんな思いをお伝えできたかなと思う。」
(平成17年入省 石油・天然ガス課)
「12年仕事していて初めて
 嫁も弟も親父もじいちゃんもみんな食いついてきてくれた。
 ネタになったのは初めて。」
メンバーの1人
平成23年入省 大臣官房総務課課長補佐 高木聡さん。
プロジェクトに加わったのは官僚になった原点に立ち返りたいという思いからだった。
官僚になって7年、
様々な仕事を経験して家庭も築いた高木さん。
経済を通して
“誰もが豊かに暮らせる社会を作りたい”という入省した当時の思いが実現できているのか。
疑問を感じていたという。
(経済産業省 提言作成メンバー 高木聡さん)
「職場の先輩に飲み会のときに『高木は何で経産省に来たんだ』とか
 『そのために高木は何やってるんだ今』と言われて
 そのときに答えに詰まったのがすごく印象的で。
 目の前の仕事は一生懸命やっているけれど
 自分の元々経産省に入省した理由とあまりつなげて考えていないと
 すごく反省して。」
こうして高木さんたち若手官僚がまとめた提言。
各種のデータや調査をもとに
従来の政策が現状に合っているのかを率直に問い直す内容になった。
(「不安な個人、立ちすくむ国家」より)
・本格的な少子高齢化が進むなか
 過去に最適だった仕組みは明らかに現在に適応していない
・子ども・若者の貧困を食い止め
 連鎖を防ぐための政府の努力は十分か
(経済産業省 提言作成メンバー 高木聡さん)
「10年20年言われ続けて変わっていないことの方が提言の中身としては多いと思う。
 ただ若手がやって良かったかなと思うのは
 それを改めて恥ずかしげもなく
 “こういう問題ですよね”ということをきちんと再定義できたのは
 若手ならではだったかなと思っている。」
提言を読んだ1人
IT起業に勤める福岡明彦さん(28)。
福岡さんはより自分に合った職場を求め転職し
今の会社が3社目である。
一方でこのままでは将来は大丈夫なのか
時折不安も感じていた。
しかし提言は
“若い世代の新しい生き方にも目を向けている”と感じたと言う。
(「不安な個人、立ちすくむ国家」より)
“昭和の標準モデル”を前提に作られた制度と
それを当然と思いがちな価値観が絡み合い
変革が進まない
これが多様な生き方をしようとする個人の選択を歪めているのではないか
(IT起業社員 福岡明彦さん)
「高齢者の方が幸せに暮らせる環境ももちろんなんですけれど
 若者がもっと挑戦できる環境だったり
 若者に対しても十分幸せに暮らせるような制度だったり
 環境というか
 何かそういうのが追いついてくれればいいかなと思う。」 
一方この提言の内容に違和感を持った人もいる。
人口約2万の宮崎県国富町で暮らす佐藤友宥子さん(39)。
町役場で高齢者福祉を担当している。
提言に気になる言葉があった。
“高齢者が支えられる側から支える側へと”
働ける高齢者が社会福祉に依存しなくなれば
財政負担の軽減にもつながるという内容である。
日々接しているのは都会とは取り巻く環境が違うお年寄りたち。
佐藤さんはこうした発想が地方のそのまま当てはまるのか
疑問に感じたのである。
(地方公務員 佐藤友宥子さん)
「提言に地方の目線は無いのかなと思う。
 各個人ではなくてあくまで国としての平均の数値で見ているのかなと感じた。」
佐藤さんはいま県内の若手の公務員と共に
地方の観点を取り入れた宮崎県版の提言を作ろうと議論している。
「今の宮崎で本当にやばいことってある?」
「預貯金額とか財産。」
「自分の子どもの世代は年金どうなんだろうとか。
 先々ね20~30年後。」
地方からも独自の提言を考えていこうという模索が始まっている。
さまざまな波紋を広げる提言。
この日プロジェクトのメンバーは今回の提言をテーマにした市民主催のイベントに参加した。
高木さんは多様な生き方を目指す人たちの声を実感した。
「地域で働くというのに魅力を感じている。
 2拠点とかで働くことに興味を持っている。」
「理想は雇用形態レベルで流動性が高まること。
 一度フリーランスになってまた会社に戻ってとか。」
提言で集まり始めたこうした声を今後どう生かしていくか。
今その責任を感じている。
(経済産業省 提言作成メンバー 高木聡さん)
「具体的な政策提言までいっていないことはまずちゃんと反省しないといけないと思っていて
 他省庁の人たちとの連携も含めて政策の具体的な形に落とし込まないと
 “言いっ放し”と言われて当然だと思うので。
 社会全体で次の新しい制度なり
 仕組みのあり方というのを考えていくような進め方をしたいなと思う。」




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