6月21日 キャッチ!
5月30日 EUは
地域の活性化や人道支援などを行う若者のボランティア活動を後押しする取り組みを発表した。
EU加盟国の若者の交流を深め
連帯や人権意識など
EUの理念を浸透させるのが狙いである。
2020年まで420億円余を支出する大規模な計画である。
(EU委員会・教育担当 ナブラチッチ委員)
「“ヨーロッパ市民”というアイデンティティーの危機だ。
この取り組みで
ヨーロッパの若者に“連帯”を経験する場を提供したい。」
EUはこれまでも学生同士の交流を支援してきたが
その中核をなすのが加盟国内の留学を促す「エラスムス計画」である。
この計画を利用するのがフランスの学生マキシム・ラガジさん(19)。
現在ベルギーの首都ブリュッセルの大学に留学し
政治やマーケティングを学んでいる。
フランス地方都市出身のラガジさんは
これまでEUやヨーロッパを意識することはあまりなかった。
しかし各国のさまざまな学生と議論を交わすうちに
お互いの中に共通点を見出し同朋意識を抱くようになったという。
(留学生 マキシム・ラガジさん)
「ここに来て“ヨーロッパ市民”という意識が以前より強くなりました。
自分の国に愛着を感じる若者も多いですが
もっと外に出るべきです。」
「エラスムス計画」では協定を結んだ大学の間で学生たちは自由に留学できる。
留学先での単位は帰国後に在籍する大学の単位として認められるほか
留学中は最大で1人あたり日本円で月4万円余が支給される。
異なる文化や価値観を受け入れる姿勢
またEUの連帯意識を
学生に自主的に学んでもらうのが狙いである。
これまで900万人の学生がこの制度を利用している。
この「エラスムス計画」は6月で開始からちょうど30年。
かつての留学生やEUの関係者が参加する式典が行われた。
EUの執行機関にあたるヨーロッパ委員会のトップ ユンケル委員長は
ヨーロッパで懸念される自国第一主義の広がりを防ぐためには
「エラスムス計画」こそが確かな解決策になると訴えた。
(ヨーロッパ委員会 ユンケル委員長)
「エラスムス計画は国家の愚かなエゴイズムに対する明確な答えだ。
計画は結束し確信に満ちたヨーロッパ
未来へと確実に渉ヨーロッパそのものだ。」
EUがどのような理念のもとに作られたのかに興味が湧いたラガジさん。
ヨーロッパの歴史が学べるヨーロッパ歴史観を訪れた。
ラガジさんの目を引いたのは2度にわたる世界大戦の映像だった。
各国が自国の利益を追求するなかでナショナリズムが台頭。
またたく間にヨーロッパが地獄へと転落していく姿に衝撃を受けた。
過去の反省から
寛容さや結束を理念として今のEUが作り上げられたことを
ラガジさんはあらためて学んだのである。
(留学生 マキシム・ラガジさん)
「過ちを繰り返さないため
EUの連帯は大切です。
フランスに戻って反EUの若者がいたら
自分の経験を話し
間違っていると伝えたい。」
教育は時間がかかるもののEUの結束を取り戻すためには最も着実な方法だとして
EUは今後も教育に力を入れていく方針である。
(EU委員会・教育担当 ナブラチッチ委員)
「民主主義やEU統合の歴史を教育に加え
ヨーロッパ市民としてのアイデンティティーの教育の強化に力を注いでいきます。」