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伝説の国語教師が遺したもの

2020-01-07 07:00:00 | 編集手帳

12月8日 読売新聞「編集手帳」


つれづれなるままに…で始まる「徒然草」の序段はなぜ珠玉の名文だと言えるのか。

灘中・高校で教え、
伝説の国語教師の異名を取った橋本武さんは、
わずか60字ほどの段を九つのパーツに分解、
図式化して、
兼好法師の工夫や思いを鮮やかに解き明かす。
中学時代に出会ってから大切に読み続け、
古希近くに成果を『解説 徒然草』(ちくま学芸文庫)としてまとめた。

教科書は使わずに中勘助の小説「銀の
匙さじ」を3年かけて読み解く。
型破りな授業で知られたが、
古典も独特だった。
草仮名で
綴(つづ)られた原本を自らなぞり、
ガリ版刷りで教材を作る。
グループでの共同研究を課題に出す。
「味わいつくし、
 調べつくす。
 読書が自分の体験になると一生の財産になる」。
そんな言葉を
遺(のこ)している。

読解力とか試験の見直しとか。
先生の働き方も含め、
ここ数日、
耳にする難題は一つの輪っかでつながるようにも思える。

先の書の解説で教育学者の斎藤孝さんが説いていた。
橋本先生の徒然草への熱いあこがれが生徒に
伝播(でんぱ)し、
彼らも深い洞察にあこがれる。
<教育の原理とは、
 
「あこがれにあこがれる関係性」>だと。

 

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