12月10日 NHKBS1「キャッチ!世界のトップニュース」
世界経済の減速傾向が強まるなかで“一強”の感すらあるのがアメリカ。
特にその7割を占める消費の好調さが際立っている。
しかし消費拡大のエンジンともいえる消費のサイクルを
近い将来 根底から揺るがしかねない懸念もあるようである。
本格的に始まった年末商戦。
アメリカでは今年
いわゆるブラックフライデーをはさんだ5日間
1億8,960万人が買い物をしたという。
去年より14%増えて過去最高。
実に全米の人口の6割にあたる。
消費の柱のひとつ
住宅も好調である。
アメリカ南部テキサス州オースティンの郊外。
町の中心部からは車で1時間以上かかる場所だが
続々と住宅が建設されている。
広さ230㎡3階建ての新築物件。
価格は約7,000万円。
ここ5年ほどで2倍近くに跳ね上がったという。
(不動産業者)
「オースティンの住宅市場は絶好調で
いくら建設しても需要に追いつきません。」
全米の住宅ローンの残高も今年に入って史上最高記録。
旺盛な購入意欲が住宅価格を上げ
次の投資につながる。
住宅市場はアメリカ経済を動かすエンジンである。
ところがこのエンジンを回す人たちがいなくなるのではとの懸念が出ている。
アメリカで最も人口の多いいわゆるミレニアル世代(今の20代半ば~30代後半)が
家を買わなくなるのではと心配されているのである。
住宅市場とミレニアル世代の関係を研究する ニールさん。
(シンクタンク ニールさん)
「他の世代に比べてミレニアル世代の住宅保有率は約8%低くなっています。
ミレニアル世代は大きな購買層です。
彼らの動向は15年・20年・30年後まで影響します。」
家離れの大きな理由の1つが多額の借金である。
ニューヨークから車で2時間。
アレンタウンにあるニューレンバーグ大学。
ここで非常勤講師をしているマシューさん(32)。
彼もミレニアル世代の1人である。
3年前 大学院のアートの修士号を取得。
専門は写真である。
彼にのしかかるのが大学院の学費のために借りた学生ローンである。
学生ローンはいまアメリカで急速に増えていて
総額は160兆円余。
借りている人は4,500万人にものぼる。
驚くのはその金利である。
公的なものでも固定で年5~7%。
民間はそれ以上である。
マシューさんは3つのローンを組み
まだ350万円残っている。
(非常勤講師 マシューさん)
「返済に20年かかるかもしれません。」
誤算だったのは就職先が安定しないことである。
マシューさんはどこかの大学に籍を置きながら自身も芸術を学び
返済を続けようと考えていた。
しかしそうした職は見つからず
今は非常勤講師で契約は来年5月までである。
高校時代からの同級生の妻のブリトニーさん。
彼女自身も学生ローンを抱えていて
日々の生活で精一杯だという。
(妻 ブリトニーさん)
「就職に必要と思い学位をとったのに社会に出て何もできなくなります。
家を買うなんて夢のまた夢なんです。」
(非常勤講師 マシューさん)
「家を買うどころではないです。」
次の就職先を探すマシューさん。
修士号を生かした待遇の良い仕事はそうは無い。
彼が今住んでいるアレンタウンを歌ったビリー・ジョエルの歌詞には
こんなフレーズがあった。
♪ アレンタウン
教師たちはいつも言っていた
まじめに働けば
立派にふるまえば
必ず報われると
壁に飾ってある卒業証書も
結局僕らには何の役にも立たなかった