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気候変動“待ったなし” 中東「鉄砲水」対策

2020-01-13 07:00:00 | 報道/ニュース

11月28日 NHKBS1「国際報道2019」


約2,000年前
貿易で栄えた王国の中心都市だった中東ヨルダンのペトラ遺跡。
アメリカの人気映画「インディ・ジョーンズ」のロケ地としても有名である。
しかしこの遺跡で去年11月
局地的な大雨いわゆるゲリラ豪雨による鉄砲水が発生して
遺跡内にいた日本人を含む外国人観光客ら3,000人以上が避難する事態となった。
乾燥地帯の中東は雨の量がそれほど多くないにも関わらず
最近はゲリラ豪雨が頻発していて
大きな問題となっている。
その背景には地球温暖化があると
国連は危機感を強めている。

中東ヨルダンの南部 砂漠地帯にあるペトラ遺跡。
ヨルダンで最も人が集まる観光地である。
去年11月ここをゲリラ豪雨による鉄砲水が襲った。
天候が急激に変わり一気に道に濁流が流れ込み
大勢の観光客が避難を余儀なくされた。
(観光客)
「警察がやってきて
 上に登れと。
 岩と一緒に大量の水が流れ込んだ。」
近年ヨルダンでは鉄砲水によって多くの人命が奪われている。
ヨルダンの医師 アブシードさん(64)。
14才の娘サラさんを鉄砲水の被害で失った。
サラさんは去年10月
学校の遠足で訪れた観光地で高さ数メートルの鉄砲水に襲われた。
崖に登って避難しようとしたが鉄砲水に飲み込まれたという。
教師や生徒合わせて16人が犠牲となった。
娘を失ったアブシードさんは
早急に鉄砲水への安全対策をとるよう国に訴えている。
(アブシードさん)
「政府が対策をとっていなかったのは誤りだ。
 その結果が娘の死だ。」
こうしたゲリラ豪雨は中東やアフリカで相次いでいる。
レバノン ベイルートの中心部。
雨が降り始めてわずか3分で道路は川のようになった。
乾燥地帯が広がる中東は年間を通した雨の量が限られている。
ただ地域によっては短時間の間で激しい雨が降るケースが増えている。
その結果 頻発しているのが鉄砲水である。
この15年で大幅に増加している。
国連は“気候変動による影響が表れている”と指摘する。
(国連 西アジア経済社会委員会 アラブ気候変動制作センター マジュダラニ センター長)
「明らかに強力な鉄砲水は気候変動によって起きている。
 こうした気候減少は頻発し断続的に起きている。
 各国は十分な備えができていない。」
局地的な雨の影響は別の問題にも及んでいる。
集中的な雨が岩盤を侵食。
岩に亀裂を作り出しているのである。
多くの観光客が通るペトラ遺跡の周辺では
国連が岩が崩落する危険性を指摘。
60か所以上に機器を設置して監視を続けている。
(ユネスコの担当者)
「集中豪雨は岩の浸食の引き金となっている。
 水の流れはいま全くコントロールが効かなくなってしまった。」
気候変動の脅威にさらされている中東地域。
この地域で大雨による被害を調査している
京都大学防災研究所の角哲也教授。
中東の乾いた土地で岩盤が露出し表面はコンクリートのように固くなっている。
このため雨が地面にしみこまないまま谷へに流れ込み
強力な鉄砲水を引き起こすという。
とりわけペトラ遺跡は山の渓谷の中にあり
降った雨が集中しやすい地形である。
雨は地面に浸透することなく
大半が山のふもとに流れる構造となっているのである。
(京都大学再研究所 角哲也教授)
「いったん山に降った雨がなかなかしみこまずに全部地表に出てきてしまう。
 川に流れ込んで集まって
 下流の川の水位が急激に上がってしまう。」
“今後対策を進めなければ各地で深刻な被害が生じる”と角教授は言う。
(京都大学防災研究所 角哲也教授)
「洪水の頻度が増えているので
 対策は待ったなしの状態。」
急がれる対策。
鉄砲水による事故を防ぐ対策が一部で始まっている。
ヨルダンの大学が日本の大学と共同で設置した施設。
鉄砲水が発生しやすい場所の近くに水の逃げ道を作り
農業用の貯水池に引き込もうというのである。
データを集めながらより効果的な対策を目指し
手探りの実験が進められている。
(ヨルダン ムータ大学 モハウシ教授)
「鉄砲水は全く予測できない状況で突然やってきます。
 年内には実践的に使えるようにしたい。」



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